夫婦だから許しあい、家族だからこそ助けあう・・・ 山本周五郎、藤沢周平を継ぐ

2006年/日本/カラー/120分/7巻/3265m/ビスタサイズ/ドルビーSRD 配給:角川ヘラルド映画

2007年10月12日よりDVDリリース 2007年3月31日、新宿ガーデンシネマ・恵比寿ガーデンシネマほか全国ロードショー

(c)2006 あかね空LLP

公開初日 2007/03/31

配給会社名 0058

解説


明けない夜がないように 
つらいことや悲しいことも 
あかね色の朝が包んでくれる

夫婦だから許しあい、家族だからこそ助けあう・・・
山本周五郎、藤沢周平を継ぐ
人情時代小説の名作がついに映画化!
 京から江戸に下った豆腐職人永吉と深川育ちの娘おふみ・・・味覚の違い、しきたりの違いなどで苦労しながら大通りに店を構えるまでの夫婦と子供たち2代に渡る愛情と葛藤の歳月を描いた直木賞受賞作の映画化。原作者山本一力、初の長編時代小説であり、市井の人々のさまざまな人間模様を細やかに描写する著者得意の分野を確立した記念碑的名作といえる。殺伐とした現代だからこそ“家族”という一番小さな単位を見つめ直し、力を合わせて困難に立ち向かっていくことの大切さを爽やかな感動とともに教えてくれる。
 03年に『スパイ・ゾルゲ』をもって映画監督業からの引退を宣言した篠田正浩はその直後にこの原作と出会い映画化を決意。「山本さんの並々ならぬ筆力に感銘を受けた。人と人の出会いのやるせなさは現代にも通じるテーマ」と絶賛する。そこで監督には近年の篠田組を支え、00年『ekiden[駅伝]』で監督デビューを果たした俊英、浜本正機が時代劇に新風を吹き込むべく迎えられ、約2年をかけて共同で脚本化。「現代劇を撮る感覚で挑んだ。夫婦とは何かを描きたかった」と大きな目標に向けて全力で挑んでいる。

いま最も旬なふたりが魅せる・・・
目を見張る実力派キャストが競う!
永代橋から賑わう深川界隈へ
江戸情緒たっぷりに再現!
 主演はまさにエポックメイキングな実力派スターの初めての共演となった。2007年のNHK大河ドラマ「風林火山」で主役の山本勘助を演じる内野聖陽と近年『電車男』や『嫌われ松子の一生』など話題作に立て続けに主演している中谷美紀の2人である。内野は京で修行を積んで深川蛤町の長屋で豆腐屋“京や”を営む永吉、中谷はその妻おふみを演じる。希望にあふれる夫婦の姿を若々しい装いで魅せる映画の前半から、風雪に耐え幾多の困難を乗り越えることで固く結ばれていくまでを今一番脂の乗り切った2人が演じきった。
 内野は、永吉役と賭場の親分、傳蔵を2役で熱演している。傳蔵という剃髪した異相の怪人に扮した内野は、「一人で2役という面白い経験をさせていただきました。どちらも家族の大切さを心から願う男。最も身近で忘れがちな家族の絆を感じていただければ嬉しい」と話している。一方、20数年という歳月を通して「胸がキュンとするような初恋に始まり、やがて3人の子供をもうけ、果ては夫を看取り、初七日まで大事に演じた」と語る中谷。今までにない役柄を得て、新たなステップアップを目指す主演2人の情熱あふれる自信作となっている。
 しゃきっと腰のある江戸前木綿豆腐と、柔らかい京風豆腐。初めは売れなかった永吉の豆腐だが明るく気丈なおふみの努力で次第に客もついてくる。職人気質丸出しの永吉と働き者のおふみ。若い二人の出会い、切磋琢磨して一途に働く姿、そしてそれを見守る深川市井の人々。やがて栄太郎、悟郎、おきみという3人の子供にも恵まれ、小さいながらも“京や”には幸せが満ちていた。
 天明三年七月、浅間山大噴火。今では大通りに店を構えるまでになった“京や”だが長男栄太郎をめぐって家族の諍いが絶えない。店の発展、それぞれの成長、家族ゆえの愛憎、そして何よりもどこよりも強い絆がはじけてはまた紡がれる。そんな時、永吉が侍の乗る馬に撥ねられて命を落としてしまった。 
 映画はこの後、予断を許さない波乱万丈の展開をみせつつ、感動のクライマックスへと突き進んでいく。それらストーリーの脇を埋めて余りある実力派助演陣が勢ぞろいした。今や押しも推されぬ名女優岩下志麻、歌手であり俳優としても有名なマルチタレント泉谷しげる、インパクトのある悪役からコミカルな役どころまでこなす名バイプレーヤー石橋蓮司、歌舞伎などの舞台やテレビ・映画など時代ものから現代ものと活躍する中村梅雀、幅の広い役どころでは若手の中でもトップといわれる勝村政信などが呼び集められた。これら豪華キャストに子供たちの役として3人の若手が出演、今後が期待できる演技を見せている。

 また特筆すべきは、オープニングを飾る富士山も見渡せる大江戸全景、人々が行きかう深川の町や巨大な永代橋などが卓越したVFX映像で現代によみがえり物語にリアルな迫力を生んでいる。映画が始まってから最後まで観客はあたかも自分が今まさに200年以上も前の世界にいるという疑似体験を堪能することができるのだ。
 明けない夜はない・・・夜の闇があかね色の朝日で染められていくように、幾多のつらいことや悲しいことを乗り越えて
いったときに訪れる人生の充実感や願いや夢や・・・
そんな想いに満ち溢れた感動作である。

ストーリー



京生まれの永吉と深川育ちのおふみ ふたりで作った“京や”の豆腐
大きさ、固さは違うけど 味と香りで真っ向勝負
誰よりもどこよりも愛しくて、 優しくて、暖かい・・・

深川蛤町、夏。さまざまな店が軒を連ねる大通りを少し入ると、三軒長屋が四棟、井戸の周りを取り囲むようにして建っている。子沢山の職人が多く暮らすどこにでもある裏店だった。その井戸端で汲み上げたばかりの釣瓶の中の水をじっと見つめている旅姿の男がいた。京の南禅寺そばの由緒ある豆腐屋で修行し、江戸で店を持つためにやってきた永吉だった。その水を美味しそうに飲み干し、目を閉じて吟味する永吉。「この辺りの井戸はみんな塩辛くって飲めたもんじゃないけど、この水はおいしいって評判なんだから」。近くに住む桶屋の娘おふみが微笑みながら立っていた。慌てて自己紹介する永吉とおふみ。なぜかお互い心ひかれるものを感じていた。
 「江戸の豆腐、大っきいとは聞いてたけど大っきさも値もうちの豆腐の四つ分はあるわ。ほんでまた・・・固い」。おふみの父、源治の計らいで同じ長屋に落ち着いた永吉だが、京の柔らかな豆腐が江戸の人たちの口に合うか不安は尽きなかった。腰高障子に真新しく“京や”と書かれた店開きの日は、長屋中の人が鍋や器を手に集まってくれたが、翌日から早くも不安が的中してしまった。腰のある木綿豆腐に慣れていた人たちには、やはり合わなかったのだ。水桶に売れ残った豆腐を前に考え込む永吉をおふみは明るく勇気付ける。「時間がかかるかもしれないけど永吉さんのやり方は変えないでね」「ほら、これが大豆の乳や。江戸の豆腐はこの乳が薄いねん」「美味しい。まるで生きてるみたい」。
 そんな二人を陰ながら見守る相州屋清兵衛と女房のおしの。永代寺出入りの老舗の豆腐屋だ。実は相州屋夫婦には正吉という子がいたのだが、4歳のとき賑わう永代橋の上で迷子になりそれっきり行方知らずになったままなのだ。夫婦は年恰好の似ている永吉と重ね合わせた。身分を明かさず毎日“京や”から豆腐を買ってくるおしのの話では相変わらず客は来ない様子。そんな時、残った豆腐を永代寺に喜捨をさせてもらいたいと永吉とおふみが訪ねてきた。寺や茶屋、料理屋の多い深川で“京や”の名を売るためだった。「勝手にやんな」冷たく突き放した清兵衛だが、このままでは長くはもたないと永代寺に相州屋の代わりに“京や”の豆腐を仕入れてもらうように願い出るのだった。
 十八年後、浅間山の噴火による飢饉や大火が江戸を襲い、人々は不安の中で過ごしていた。表通りに面した相州屋があった家作に“京や”の屋号が懸かっている。永代寺から居ぬきで借りているのだった。今では永吉とおふみには長男栄太郎、次男悟郎、長女おきみという3人の子がいる。栄太郎には末は店を任せるつもりで外回りをやらせ、悟郎とおきみには豆腐作りを教え込んだ。気がかりなのはおふみの栄太郎への度を越した溺愛ぶりだった。寄り合いと称しての夜遊びのあげく、奪うように金を手にする栄太郎のことは夫婦だけでなく弟妹との仲までおかしくしてしまった。
 今夜も霊巌寺の賭場に同業の平田屋に連れられた栄太郎がいた。ここのところ負けが込んだ栄太郎は平田屋の言うがままに借金の証文を書き加えていた。平田屋には昔からの野望があった。狙いは豆腐屋の命ともいえる井戸だった。「あそこの井戸は、深川、いや江戸一番だ」それを手に入れるためには“京や”を潰すしかない。平田屋の仕掛けた罠はついに賭場を仕切る大親分の傳蔵まで巻き込んでゆく。だが頭髪はもとより毛という毛を剃り上げた異形の男、傳蔵が“京や”を訪ねてきたとき店先で懐かしそうに豆腐の匂いを嗅いでいたのを誰も知らない。
 栄太郎を勘当してしまい、抜け殻のようになった永吉が永代寺の西周に呼ばれて出向くと思いもかけない相州屋からの言伝を聞かされた。そして、もし二十年経って正吉が訪ねてこなかったときは渡すようにと言付かっていた土地の権利書を手渡されたのだ。「うちの子らに、店残したれる」一目散に飛び出した永吉の目に栄太郎らしき人影が映ったそのとき、人ごみを蹴散らして侍の乗った早馬がもの凄い勢いで駆けてきた—。

スタッフ

監督 :浜本正機
エグゼクティブプロデューサー :稲葉正治
プロデューサー :永井正夫/石黒美和
企画 :篠田正浩/長岡彰夫/堀田尚平
脚本 :浜本正機/篠田正浩
撮影 :鈴木達夫
照明 :水野研一
美術 :川口直次
録音 :藤丸和徳
整音 :瀬川徹夫
編集 :川島章正
音楽 :岩代太郎
原作 :山本一力(文藝春秋刊)

キャスト

永吉/傳蔵 :内野聖陽
おふみ :中谷美紀
平田屋 :中村梅雀
嘉次郎 :勝村政信
源治 :泉谷しげる
おみつ :角替和枝
栄太郎 :武田航平
悟郎 :細田よしひこ
おきみ :柳生みゆ
西周:小池榮 
卯之吉:六平直政 
役者:村杉蝉之介 
着流し:吉満涼太 
スリ:伊藤高史 
常陸屋:鴻上尚史 
上州屋:津村鷹志 
武蔵屋:石井愃一 
瓦版屋:東貴博(Take2)
清兵衛:石橋蓮司
おしの:岩下志麻

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