原題:HenriCartier-Bresson-Biographied'unregard

2003年/スイス・フランス/72分 配給:ロングライド

2006年5月20日よりライズXにて”決定的”ロードショー!!

(C)Henri Cartier-bresson/Magnum Photos

公開初日 2006/05/20

配給会社名 0389

解説


20世紀最大の写真家アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908-2004)
2004年8月アンリ・カルティエ=ブレッソンの言卜報が駆け巡った。世界中のメディァが彼の死を伝えた。「”決定的瞬間”で知られる20世紀最大の写真家死す」。95歳だった。
20世紀は写真の時代ともいわれるが、それまでの写真の概念を大きく変えたのは、当時売り出された小型のライカで”スナップショット”を芸術にしたカルティエ=ブレッソンだった。そして彼は、ライカ片手に、欧州各国、メキシコ、アメリカ、インド、中国、日本など世界中を駆けまわり、2つの大戦を経験する激動の20世紀を捉えた報道写真の先駆者ともなった。ロバート・キャパらと共に、写真家集団”マグナム”を設立、亡くなる前には集大成ともいえる写真集を刊行し、アンリ・カルティエ=ブレッソン財団も設立。95年の生涯を鮮やかに閉じたのだった。

カルティエ=ブレッソンが、その人生と作品を自ら語る唯一のドキュメンタリー。

本作撮影時、アンリ・カルティエ=ブレッソンは93歳。「写真撮影の妨げになる」と人前に姿を出すことを徹底して避けていたカルティエ=ブレッソンが、人生の最期に初めて、自身の生涯と、その作品を自ら語る貴重なドキュメンタリーである。20世紀史に残る写真の数々を、撮影者自身が観客に語り聞かせる。これほどの贅二沢があるだろうか。
主な場面は、パリ、ルーブル美術館にほど近いリヴォリ通り、チュイルリー公園を見渡すアパルトマン最上階の5階にあるカルティエ=ブレッソンの自宅で撮影された。かつてこのアパルトマンの3階にはセザンヌが、4階にはマネが住んでいたという。時にワインを傾けながら、時にバッハに聞き惚れながら。青春のメキシコ、捕虜収容所の脱走、戦時下のパリ、助監督もつとめた映画監督ジャン・ルノワールとの出会い、”マグナム”の思い出、マリリン・モンロー、ココ・シャネル、トルーマン・カポーティ、サルトルとボーヴォワールら20世紀の顔ともいえる人々を撮影したエピソード……。そして、それぞれの写真に刻まれた”決定的瞬間”を語る。

豪華なアーティストたちが証言するカルティエ=ブレッソン。

カルティエ=ブレッソン本人のほか、映画には彼を良く知る人々が登場する。写真家エリオット・アーウィット。日本でも圧倒的な人気を誇るアーウィットは、カルティエ=ブレッソンの写真を見たことが写真家を志すきっかけだったことを告白する。女優イザベル・ユペールは、彼の被写体になることが他の写真家の被写体でいることと何が違うのかを話す。昨年惜しくも亡くなった劇作家アーサー・ミラー。この20世紀アメリカを描きつづけた劇作家は、カルティエ=ブレッソンの写真を通してアメリカを語る。カルティエ=ブレッソンが撮影した、かつての妻マリリン・モンローの写真をじっと見つめる場面は、映画でなくては捉えられないエモーションをあふれさせ、感動的だ。

果たして”決定的瞬間”とは何だったのか。

1952年に出版され、画家アンリ・マティスが装丁を手がけたカルティエ=ブレッソンの写真集[mageaIasauvette」は、写真の世界に大きな衝撃を与えた。そしてこの写真集がアメリカで出版される際、翻訳すれば「逃げ去るイメージ」という写真集タイトルが「The Decisive Moment=決定的瞬間」というタイトルに変わり、カルティエ=ブレッソンの写真美学を語る言葉として、そしてフォト・ジャーナリズムを語る言葉として、世界中に広がっていった。
しかし、”決定的瞬間”という言葉からこぼれ落ちてしまうものはなかったのか。
若き日に出会ったメキシコの娼婦の笑顔を愉し気に思い起こし、妻マルティー一ヌや娘メラニーの写真に眼を細め、バッハの旋律に共鳴し、アパルトマンの屋上からパリの光を眺める。映画の中の彼の姿は、私たちに彼の”決定的瞬間”を感じるヒントを与えてくれる。カメラは、人生の中に”決定的瞬間”を見いだす彼のまなざしそのものだった。彼はその瞬間を生き生きと語り、そして微笑む。まるで人生を愛していると告白するように。

21世紀へ。これはカルティエ=ブレッソンが私たちに贈ってくれた”遺言”。

監督は、スイスのドキュメンタリー監督、ハインツ・バトラー。バルテユスやジャコメッティなど芸術家のドキュメンタリーで高く評価されている。製作には、スイスのNZZフィルムとアンリ・カルティエ=ブレッソン財団がクレジットされている。撮影は、2002年から2003年にかけて行われた。完成の翌年、カルティエ=ブレッソンは、まるですべてを語り終えたと安心したかのように世を去ったのだ。
カルティエ=ブレッソンの死とともに写真の20世紀は幕をおろした。デジタルの時代となった21世紀。写真は大きく変わろうとしている。カルティエ=ブレッソン自らが語る”決定的瞬間”はどんな形で生き続けていくのだろう。この映画はまさに彼の”遺言”ともいうべき”奇跡”のドキュメンタリーである。

ストーリー

スタッフ

監督
ハインツ・バトラー
撮影監督
マティアス・カリン
サウンド
アンリ・マイコフ
編集
アーニャ・ボンベリ
音楽
バッハ、モーツァルト、モーリス・ラヴェル、マーク・コープランド、マル・ウォルドロン
サウンドデザイン
ユルグ・フオン・アルメン
製作総指揮
ウォルフガング・フライ、アニエス・シール

キャスト

アンリ・カルティエ=ブレッソン
エリオット・アーウィット
アーサー・ミラー
イザベル・ユペール、
ロベール・デルピール
ジョセフ・クーデルカ
フエルディナンド・シアナ

LINK

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