原題:A Scanner Darkly

2006年/アメリカ/カラー/100分/ 配給:ワーナー・ブラザース

2007年12月07日よりDVDリリース 2007年05月25日よりDVDリリース 2006年12月9日、シネセゾン渋谷他にてロードショー

(C)2006 Warner Bros. Entertainment Inc.

公開初日 2006/12/09

配給会社名 0085

解説


酸性雨が降りしきり、全動物が絶滅寸前にある『ブレード・ランナー』の2019年・ロサンジェルス。
予知能力者を使った犯罪取締りシステムにより、将来に犯す罪で逮捕されてしまう『マイノリティ・リポート』の2054年・ワシントンD.C.。
数々の悪夢的未来図を描き出し、世界中に熱狂的な信奉者をもつSF作家フィリップ・K・ディック。
彼の著者の中でもこの『スキャナー・ダークリー』は、自らの体験をストレートに反映した極めて現実に近い作品という意味で、最も異色な光彩を放つ。本作は、かつてディック自身が身を沈めたドラッグ・カルチャーの凄絶な体験が元となっており、ディック作品の中で、上位3作品に入るベスト・セラーなのだ。
現在とほとんど変わらない7年先。『スキャナー・ダークリ』にSF的な要素として登場するのは、わずか3点にすぎない。
1つは脳の右半球と左半球の機能を切断し、人格分裂を引き起こす新ドラッグ”物質D”。
2つ目は”物質D”をはじめとするドラッグ撲滅のために、アメリカ政府が採用した常時システム”ホロスキャナー”。
そして、実際の捜査にあたる覆面麻薬捜査官が、署内において上司や同僚からも自らの正体を覆い隠す為に着用しなくてはならない”スクランブル・スーツ”。
たった3点。だが、その3つが絡み合ったことで、主人公の覆面麻薬捜査官ボブ・アークターは、常軌を逸した板ばさみのトラブルに陥ることになる。
”スクランブル・スーツ”に身を包まれながらの、捜査官としての勤務。”物質D”の供給ルートを探るため、自らその幻覚剤を服用して潜入した自分を、ホロスキャナー越しに自分自身で監視する———。
迫り来る”物質D”による思考の交錯、監視の目を逃れるジャンキーたちの間に渦巻く疑惑。
そしてそれらの先には、予想を超えた陰の力が見え隠れする……。

主人公のボブ・アークターを演じるのは、『マトリックス』3部作やサンドラ・ブロックと12年ぶりに共演した『イルマーレ』で話題のキアヌ・リーブス。
恋人ドナ役に、『若草物語』『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』でアカデミー賞候補になったウィノナ・ライダー。
アークターの捜査対象となるジャンキーを、『グッドナイト&グットラック』『キス・キス・バンバン』のロバート・ダウニーJr.、『ナチュラル・ボーン・キラーズ』のウディ・ハレルソン、TVドラマ『CSI:マイアミ』のロリー・コクレンと、個性の強い3人が演じている。
原作者ディック自身がドラッグに耽溺していた時代に知り合った、麻薬常用者の若者たちへの悲痛なレクイエムでもある、このアンチ・ドラッグSFを脚色・監督したのは、繊細なラブ・ストーリーの『恋人までの距離(ディスタンス)』から学園コメディの『スクール・オブ・ロック』、リメイク作の『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』まで、幅広いジャンルで異才を発揮しているリチャード・リンクレイター。『ウェイキング・ライフ』で採用した現実と非現実に揺れる浮遊感を見事に表現した新感覚の映像にも、注目が集まっている。
さらに、レディオヘッドのボーカルとしても有名なトム・ヨークや、DJスプーキーが音楽で参加していることも、サブカルチャー好きな本作のファンには見逃せない要素だろう。

ストーリー






今からほんの7年先の近未来のアメリカ。”物質D”と呼ばれる脳を破壊する幻覚剤をはじめ、各種ドラッグクが蔓延している世界。ドラッグ撲滅のため、政府はあらゆる場所に”ホロスキャナー”と呼ばれる常時監視盗聴システムを設置しているか、撲滅にはほど遠い。個人のプライバシーがひどく侵害される社会で、唯一効を奏しているのは、麻薬リハビリ施設”ニュー・バズ”だが、連邦政府はこの組織に疑念を抱いていた……
ホプ・アークター(キアヌ・リーブス)は、カリフォルニア州オレンジ郡にある保安官事務所の麻薬課に所属する覆面捜査官。彼は誰にも正体を知られてはならないという、覆面捜査官の立場をまっとうするために、顔や姿ばかりか声すらも明かされない”スクランブル・スーツ”を常時着用し、上司や同僚からも”フレッド”というコードネーム”で呼ばれている。目下の任務は、”物質D”の供給源を突き止めること。そのため、あえて自宅を解放し、おしゃべりで活動的なオタクのパリス(ロバート・ダウニーJr.)、粗暴だが間の抜けたラックマン(ウディ・ハレルソン)と共同生活を送りながら、虫にたかられる幻覚に襲われているフレック(ロリー・コクレン)と、恋人関係になった売人のドナ(ウィノナ・ライダー)の、計3人のジャンキーを監視下に置いていた。

こうしてアークターは、おとり捜査官としてジャンキー暮らしをしながら、本部の監視センターではフレッドとして、アークターの言動を”ホロスキャナー”でチェックするという不条理な二重生活を強いられる。
そんな日々の中、”物質D”は常用者たちを最終段階まで確実に蝕んでゆく。監視の目を怖れ、彼らの間に募っていく不安と被害妄想。その中でフレックは、自殺をはかって失敗するものの、新たな幻覚の虜になり”ニュー・バス”に運び込まれる。アークターもまた、話している最中に他人が怪物に変身したり、コカイン中毒を理由に肌に触れるのも拒否するドナの腹いせに、連れ込んだ娼婦の顔がドナに変化したりと、幻覚を見るようになる。さらに、自分が自分を監視するうち、アークターとフレッドに人格が分裂し始めていることにも気付かずに、本当の自分は誰なのかしだいに見失ってゆく———。

スタッフ

脚色・監督:リチャード・リンクレイター
製作:アン・ウォーカー=マクベイ/トミ・一・パロッタ
製作:パーマー・ウエスト/ジョナ・スミス
製作:アーウィン・ストフ

フィリップ・K・ディックの原作小説に基づく

撮影:シェ一ン・F・ケリー
編集:サンドラ・アデア,A.C.E.
美術:ブルース・カーティス
音楽:グレイアム・レイノルズ

キャスト

キアヌ・リーブス
ウィノナ・ライダー
ロバート・ダウニーJr.
ウディ・ハレルソン
ローリー・コクレイン

LINK

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□IMDb
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http://wip.warnerbros.com/ascannerdarkly/
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