原題:TIDELAND

2005年/イギリス・カナダ合作/英語/カラー/スコープサイズ/SRD/117分/ 配給:東北新社

2007年01月26日よりDVDリリース 2006年7月8日、恵比寿ガーデンシネマ、新宿武蔵野館他にてロードショー 

公開初日 2006/07/08

配給会社名 0051

解説


ギリアムの”アリス”は、孤独の迷宮をさまよう

『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』などの奇想天外な世界観がブラッド・ピットやジョニー・デップら多くの俳優たちに熱烈に支持されている監督テリー・ギリアム。2005年にはおよそ7年ぶりになる『ブラザーズ・グリム』を発表し、完全復活を遂げた。それから時をおかずに発表された最新作『ローズ・イン・タイドランド』は、まさに”ギリアム版「不思議の国のアリス」”と呼べるような、少女の幻想的な想像力を見事に映像化した作品。2005年9月のトロント映画祭で初披露され、同月に開催されたスペインのサン・セバスチャン映画祭でThe FIPRESCI Jury賞を受賞している。

独りぼっちの主人公ジェライザ=ローズの目に映る不思議なできごと、ちょっと変わった隣人たち、草原に現れる海など、ギリアムが得意とするファンタジックな世界観は本作でも健在。見る者を魅了すると同時に、いびつなものの中に宿る美しさ、無邪気さの中に在るしたたかさを垣間見せて、私たちの狭い価値観を打ち破る。
彼は全編において少女の目線で物語を綴ることを貫き、少女がひとり遊びに興じる心情や想像力の豊かさ、どんな逆境においても未来を選び取ることができる子供たちの逞しさを描き出す。また、彼女がリスに導かれ古い家の秘密を知るエピソードや、草原にぽかんと空いた穴に深く深く落ちて行く幻想的な描写は、監督の思惑通り「不思議の国のアリス」を彷彿とさせる。ちなみに、原作のタイトルである”タイドランド”とは干潟を表し、一方では境界線という意味も持つ。つまりジェライザ=ローズの幻想(=海)と、現実(=大地)との境界線となる場所が”タイドランド”なのだ。

主人公はとんでもなく悲惨な状況にいるジェライザ=ローズという名の女の子。彼女の日常はパパとママの世話をすることから始まる。元ロックスターのパパは、お気に入りのユトランドの地図を前に、クスリで”バケーション”に入るのが日課。昔はきれいだったママは今ではすっかり太ってしまい、いつも娘に足を揉ませては辛くあたる。

主人公のジェライザ=ローズを演じ、4体のバービー人形の声も担当したのは、カナダ・バンクーバー出身のジョデル・フェルランド。現在11歳にしてすでに26本ものテレビや映画に出演している小さなべテラン子役だ。ギリアムにして「ジョデルは普通じゃない」と言わしめた、天性の女優である。ジェライザ=ローズの父親で、元ロック・スターのノアをジェフ・ブリッジズが演じ、ギリアムと『フィッシャー・キング』に続き久々にタッグを組む。
さらに、ジェライザ=ローズが出会う幽霊女デルにはロンドンの舞台で活躍するジャネット・マクティア、デルの弟で精神年齢10歳のディケンズにバンクーバー出身の若手俳優ブレンダン・フレッチャーが扮している。

原作は、アメりカの若手人気作家ミッチ・カリンによる「タイドランド」(金原瑞人訳、角川書店刊)。脚本は『ラスペガスをやっつけろ』で共同脚本を務めたトニー・グリゾーニとともにギリアムが執筆、その間には何度もカリンとのやりとりがなされたという。カリンが描いた”少女の奇妙なイマジネーションの世界”を骨組みに、希代の映像作家であるテリー・ギリアムによって映画化された『ローズ・イン・タイドランド』は、誰もが経験してきた幼少期の記憶へと誘う。そこには、どんなに厳しい現実が待ち受けようとも、それをはねのけることができる子供の力強い生命力がある。それこそ、ギリアムが最も恐れ、同時に敬愛する想像力の源なのだ。

ストーリー



現実と幻想のアップサイドダウン!

「不思議の国のアリス」を読むのが大好きな10歳の少女、ジェライザ=ローズ(ジョデル・フェルランド)。まだ幼い彼女は学校には行っていない。彼女の役目は、元ロックスターでジャンキーのパパ、ノア(ジェフ・ブリッジス)の世話やママ(ジェニファー・ティリー)の足をマッサージしてあげること。ママは「いつかいい思いをさせてあげる」と言うけど、口先だけなのをローズは痛いほど分っている。パパは昔を懐かしみ、ママを今でも”グンヒルド王妃”と呼んでいる。
ある日、ローズはいつものようにノアがクスリで”バケーション”に入るお手伝いをした。お気に入りの「ユトランド」の地図を前に、サングラスをかけたまま夢の中を旅するパパは、旅がら戻ると寝ているローズを揺り起こし、二千年以上も地底で眠り続ける”沼男”の話をするのだった。その次の日、ママがオーバードースで死んでしまう。ローズはノアとふたりでママを盛大に見葬ると、バスに乗ってユトランドを目指して旅に出た。でも、行き先はノアの故郷、テキサスだったけれど……。

ローズのトランクには、ママの形見のドレスとお気に入りのお友達—頭だけのバービー人形たち—が入っている。
4人のお友達の名前はミスティーク、サテン・リップス、ベイビー・ブロンド、そしてグリッター・ガール。みんなそれぞれ違う性格で、時にローズを励まし、いい話し相手になってくれる。長いバス旅行の末に、ローズはノアがテキサスに住むお祖母ちゃんのために建てた家に着くが、あちこち壊れた古い家にがっがり。しかも、ノアは一息つくと”バケーション”に出てしまった。
家のまわりは見渡すかぎり金色の草原で、その真ん中を1日1回だけ列車が通る線路があるだけ。好奇心の強いローズはお気に入りのミスティークと一緒に探索に出ると、焼けこげてひっくり返ったスクールバスを見つける。そして、バスの中を舞っているホタルに一匹ずつ名前をつけてはお友達になるのだった。でもそこに黒ずくめの服を着た幽霊のような女(ジャネット・マクティア)が現れる。ミスティークとふたりでこっそりその場を離れたローズは、一目散に走って帰り、家の前で理解不能な言葉で話しかけるリスに出会う。怖がるミスティークとサテン・リッブスを励ましながらリスを追いかけたローズは、秘密の屋根裏部屋を発見。そこで、ワードローブがどこまでも続く不思議なクローゼットに入り込み、お祖母ちゃんの宝物を発見するのだった。夜になって、お腹の空いたローズはパパに甘えるが、ノアは”バケーション”から戻らない。

明くる日、ローズはパパの膝の上で目覚めた。空腹と孤独に襲われた彼女はなんとか父の気を引こうとするが、ノアはまったく反応しない。しかたなく草原で遊んでいると、黒ずくめの服を着た幽霊女にまた遭遇する。そこで言葉を交わしたローズは、彼女がまだ幽霊ではないことを知り、家に帰って「幽霊女と友達になれるかも」とノアに報告。
次の日、彼女をつけたローズは、家の中で幽霊女のデルと、彼女の弟ディケンズ(ブレンダン・フレッチャー)が言い合う姿を覗き見る。その様子をデルに見つかりそうになり急いで逃げるのだが、本心は彼らのことをもっと知りたくて仕方がないのだった。でも、その後すぐにウェットスーツ姿のディケンズに再会する。手術で頭にイナズマ型の傷をもつディケンズは、精神年齢が10歳で止まっている。ローズはディケンズに、秘密の屋根裏で見つけた金髪のウィッグを着けてお化粧を施したパパを紹介。ローズはこの新しいお友達に夢中になり、ディケンズに淡い恋心を抱き始める。

次の日、ローズが目覚めると家の中は水でいっぱい、草原は海と化していた。彼女はディケンズの家まで草原を泳いで渡るが、そこでデルの秘密を目撃。慌てて逃げる途中で親友のミスティークをうさぎ穴に落としてしまう。
ディケンズに助けを求あたローズはうさぎ穴の淵でミスティークの救出を試みるが、そこに銃を構えたデルが登場。
ショックでローズもうさぎ穴に落ちてしまう。本棚や食器棚が並ぶ穴の中を、深く深くゆっくりと落ちてゆくローズ。彼女の後を追って、バービーたちもうさぎ穴の底ヘ……。

スタッフ

監督:テリー・ギリアム
共同脚本:トニー・グリゾーニ
原作:ミッチ・カリン
撮影監督:ニコラ・ペッコリーニ
プロダクション・デザイン:ヤスナ・ステファノヴィック
編集:レスリー・ウォーカー
音楽:ミカエル&ジェフ・ダナー
衣装デザイン:マリオ・ダヴィニョン
衣装デザイン:デルフィーヌ・ホワイト
ヘア・アーティスト:レジーン・フォルジェ
メイク:クリスティーン・ハート
プロデューサー:ジェレミー・トーマス
プロデューサー:ガブリエラ・マルティネリ

キャスト

ジョデル・フェルランド
ジェフ・ブリッジス
ジェニファー・ティリー
ジャネット・マクティア
ブレンダン・フレッチャー

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