原題:The Summer of Stickleback

高校最後の夏、少女は魚になった・・・。

SKIPシティ 国際Dシネマ映画祭2006正式出品作品 第11回釜山国際映画祭NEW CURRENTS部門出品作品

2006年/日本/35mm/カラー/アメリカンビスタ/レーザーステレオ/99分/ 配給:葵プロモーション

2006年10月14日(土)シネマート六本木他全国順次ロードショー

公開初日 2006/10/14

配給会社名 0369

解説


17歳の少女は、純粋だからこそたくさん傷つき、また、傷つける。そうして次の春がくるころには、孵化した魚のように大人へと成長を遂げるのだ。

1990年の夏、京都。高校3年生の瑞穂は、同級生の翔に夜のプールで泳ぎを教えてもらうが、なかなかコツが掴めない。陽気な母の奔放さに反抗心をむき出しにしながら、家を出た父が戻ってくれることを願っている瑞穂。その父がくれたハリヨ。背中にある3本のトゲで小さな体を守る、澄んだ水にしか生息しない魚だ。この年の夏休み、瑞穂の人生はまるで水中でもがいているごとく、思いもよらない展開を迎える。

女子高校生の妊娠と出産という出来事を通して、揺れ動く思春期の心をみずみずしく描き出したのは、新鋭女性監督の中村真夕。京都で生まれ育ち、高校時代からイギリスに留学し、ニューヨーク大学大学院映画科を卒業した中村監督は、この劇場用映画デビュー作で、鴨川べりを初め、京都の街の魅力を下敷きに、さまざまな思いを込めて青春の痛みと輝きを撮り上げた。団塊の世代に属する瑞穂の両親は、学生運動を通じて知り合った仲だ。そして瑞穂の人生に大きな変化をもたらすアメリカ人のチャーリーは、ベトナム戦争で脚を負傷し、今なお癒えない心の傷を抱えている。青春時代の挫折感を抱えたまま生きる彼ら大人たちの存在が、瑞穂の不器用なほど一本気な生き方に、深みのある陰影を与える。

瑞穂を演じるのは、これが初主演作になる於保佐代子。鋭く強い眼差しを時に悲しみや不安で曇らせ、痛々しいほどまっすぐに生きる瑞穂を生き生きと演じて、実に見事だ。瑞穂を遠くから見つめる、その誠実さがまぶしい同級生の翔を演じるのは、これが映画初出演の新人、高良健吾。本作以降、出演作がたてつづけの注目の逸材だ。このフレッシュな2人を、円熟した風吹ジュンと柄本明の2者がしっかり支え、物語に奥行きをもたらす。2人が演じる両親との関係の変化の中にも、瑞穂の成長がありありと描き込まれているのだ。

柄本明が演じる父親に対する瑞穂の思いには、中村監督自身の父親への思いが重なっているという。京都への思いと家族への思い。個人的な思いをたっぷり込めながら、中村監督は普遍的かつ新鮮な成長物語を誕生させた。

ストーリー


 1990年の夏。父がハリヨをくれた。オスが卵を育てる珍しい魚だ。
私は京都に暮らす高校3年生の瑞穂。父とは別居中で、母と妹と暮らしている。大好きな父とはときどき鴨川べりで落ち合って、お喋り。学生時代に父が書いた詩集ノートも繰り返し読む。でも、父には若い恋人がいて、しかも妊娠中のよう。ひどい。
 同級生の翔とは、学校帰りに鴨川で水をかけあったり、夜のプールで泳ぎを教わる仲だ。でも翔の気持ちがはっきりわからない。夜、プールサイドでキスを迫っても、潔癖だからか、何もしない。それからは2人の間に距離ができてしまう。
母親の働く居酒屋で、どこか翳りのあるアメリカ人チャーリーに会う。その優しさが怖くて最初は避けていたけど、彼は私のことを強がってはいるが、繊細で傷つきやすいと見抜く。彼はベトナム戦争で片脚を負傷し、離婚して娘がひとりいる。私と同じ孤独感を持つチャーリー。以前ほど私を大事にしてくれなくなった父や翔とは違って、彼にはすべてを委ねられる気がする。夏休みの旅行中、私たちは、結ばれる。
 そして、妊娠。チャーリーも母も、堕ろすことしか頭にない。でも結局、母がチャーリーに啖呵を切って、私と母で赤ちゃんを育てることになる。今まで反発してばかりだったけど、この時初めて、母のありがたさが身に沁みる。
 赤ちゃんの世話に戸惑っているうち、母がすべてやってくれる。自分の無力さをなんとかしたくてチャーリーと父に助けを求めたけれど、無駄だった……

スタッフ

製作総指揮:大村正一郎
エグゼグティブプロデューサー:岡田裕/熱田俊治/中野一郎
プロデューサー:姫田伸也/増田悟司/奈良聡久
音楽プロデューサー:浅野勇一/島田尚
撮影監督:山崎裕
録音:滝澤修
美術:矢内京子
編集:井上雅貴
助監督:千村利光
制作担当:中村隆行
スチール:間部百合
ハリヨ指導・資料提供:森誠一

音楽:PE'Z
監督・脚本:中村真夕

協力:独立行政法人国際交流基金
支援:文化庁
宣伝:ライスタウンカンパニー
制作・配給:葵プロモーション
製作:葵プロモーション/毎日広告社/アルゴ・ピクチャーズ/World apart ltd.

キャスト

大島瑞穂:於保佐代子

大島敦子:風吹ジュン

チャーリー・シャーマン:キャメロン・スティール

杉本翔:高良健吾
大田節子:前田昌代
甲斐:甲斐扶佐義
桜井直子:五十嵐愛生
大島治子:松本花奈

三木先生:谷川俊太郎

トランペッター:大山渉(PE'Z)

大学院生:山池健二
岡本:若林宏紀
看護婦:友寄由香利

大島洋介:柄本明

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