原題:The Three Burials of Melquiades Estrada

2005年第58回カンヌ国際映画祭 最優秀男優賞/最優秀脚本賞 受賞 2005年第18回東京国際映画祭特別招待作品 2005年第32回フランドル国際映画祭グランプリ受賞 2005年第30回トロント国際映画祭特別招待作品 2005年第19回AFIフェスティバル特別招待作品

2005年アメリカ=フランス/ヨーロッパ・コープ提供 ヨーロッパ・コープ=ハヴェリナ・フィルム製作 カラー/2時間2分/スコープサイズ/ドルビー・デジタル/日本語字幕:松浦美奈 配給:アスミック・エース

2006年09月08日よりDVDリリース 2006年3月11日、恵比寿ガーデンシネマほかにて全国順次ロードショー

(c)2005 EUROPACORP-JAVELINA FILM COMPANY

公開初日 2006/03/11

配給会社名 0007

解説


カンヌ、そして世界から喝采を浴びたトミー・リー・ジョーンズ劇場用映画監督デビュー作

2005年のカンヌ国際映画祭には、常連の巨匠、名匠たちが集結した。そんな映画祭で一際光彩を放った一人の新人監督が現れた。ハリウッドを代表する名優トミー・リー・ジョーンズである。主演としてだけでなく劇場用映画監督として初のメガホンを取った本作は、見事、同映画祭で最優秀男優賞と最優秀脚本賞の2部門受賞に輝いた。また、すでに2006年のアカデミー賞候補の呼び声高く、トロント国際映画祭、東京国際映画祭特別招待作品公式上映でも満場の喝采を博した。ジョーンズ監督自身「カウボーイハットや馬が出てくるが、西部劇ではない」と言う通り、本作は西部劇というジャンルを遥かに越えた、人間ドラマである。国境(ボーダー)を舞台に、全く先の読めない展開と衝撃のラストに心震わせる感動作がここに誕生した。

親友との約束、「俺が死んだら、故郷ヒメネスへ遺体を運んで埋めてくれ」

メキシコ人カウボーイのメルキアデス・エストラーダは、ある日突然、山間にある羊の放牧場で銃弾に倒れる。変わり果てた親友の姿を目にした同僚のカウボーイ、ピート・パーキンズは、生前に彼と交わした約束を思い出す。
「俺が死んだら、故郷ヒメネスへ遺体を運んで埋めてくれ」。
ピートは、この事件を闇に葬ろうとする地元警察官に憤りを感じ、自ら必死になって犯人を捜す。そして、赴任してきたばかりの国境警備員マイク・ノートンが彼を殺した事を突き止める。ピートはノートンを力ずくで拉致しメルキアデスの遺体をラバに担がせ、以前メルキアデスから見せられた故郷ヒメネスで家族と撮った写真と地図を頼りに、メキシコへと向かう。
心腹の友と交わした約束を守ろうとするピートの狂気にも似た一途の愛、そして彼らの目指すメルキアデスの故郷メキシコ・ヒメネスへの旅の先には、何が待ち受けているのだろうか?

脚本家アリアガが仕掛け、監督ジョーンズが描く、繊細かつ巧妙な展開と心動かされる感動のラスト

脚本は『アモーレス・ペロス』で衝撃的デビューを果たし、続く『21グラム』でも数々の賞を受賞したギジェルモ・アリアガ。本作でも時間軸を前後させた独自の手法と、先の読めない仕掛けは健在である。監督トミー・リー・ジョーンズとは、公私共に付き合いがあり、一緒に狩りに行ったときにした話が、本作脚本を執筆するきっかけとなった。テキサス出身のジョーンズ監督とメキシコ出身のアリアガは、それぞれの故郷を隔てる混沌とした国境(ボーダー)をテーマに原案を練り上げた。
「国境のどちら側にも誤解と偏見は存在するが、実際、川はただの川でしかなく、どちらの側にいても人や文化などすべては全く同じである」。ジョーンズ監督が語るように、テキサスとメキシコを隔てる川、人間が作りあげた国と国を隔てる国境はただの境界線でしかなく、そこに生きる人々にとっては全く意味を成さない。境界線とは国を隔てるだけでなく、人々の中にもあり、人が差別や偏見を生み出す。本作で描かれた友情は、その境界線を拭い去ることで結ばれた本当の意味での情愛である。一対一の人間同士に生まれる友情そして愛は、境界線を越えた先に必ずある。テキサスからメキシコへ、国境を越えたマイクはその境界線から少しずつ解き放たれていく。マイクがこの旅の最後で見つけ出したものとは?本作で監督にこだわったトミー・リー・ジョーンズ。衝撃的な感動のラストで彼が描きたかったものとは?

美しく残酷な大地と個性的な才能たち

撮影の舞台は西テキサスの国境地帯で、『キリング・フィールド』『ミッション』で2度アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した高名な撮影監督クリス・メンゲスが壮大で孤独な平原、渓谷、山脈、そして砂漠の表情を余すところなく完璧に収めた。犯人のマイク・ノートンには、『プライベート・ライアン』でスクリーンデビューし『エネミー・オブ・アメリカ』『グリーン・マイル』『25時』でキャリアを重ねたバリー・ペッパーが、苦渋の旅を通じて成長していくマイクを見事、体を張って演じきった。また、優しいカウボーイのメルキアデスには『アラモ』のフリオ・セサール・セディージョ、どこか空虚なノートンの若き妻ルー・アンを『ラブ・アクチュアリー』のジャニュアリー・ジョーンズ、事件を闇に葬ろうとするが、どこか人間くさい保安官ベルモントをミュージシャンとしてグラミー賞も受賞している『スリング・ブレイド』のドワイト・ヨーカムが好演している。また、音楽を『スクリーム』『ターミネーター3』『アイ,ロボット』などを手がけたマルコ・ベルトラミが担当し、美術監督に『アポロ13』と『グリンチ』で2度アカデミー賞美術賞にノミネートされたメリディス・ボズウェルを迎え、本作が衣装デザインとして全面参加した初の作品となったキャスリーン・キアッタが「旅」に使用する衣装を6段階にわけてデザインし、それぞれに汚れ、埃、血痕、傷、コーヒー跡、破れ目、日焼けを施した。これらの個性的な才能が集結することによって、観客を魅了して止まないエンタテインメントが完成した。

ストーリー



アメリカ、テキサス州。狩りをしている2人の男がコヨーテを撃ち殺す。獲物を取りに近づくと、そこには食い荒らされた男の死体があった。それはメキシコ人カウボーイ、メルキアデス・エストラーダだった。
遺体安置所で呆然と死体を眺める男、ピート・パーキンズ。初めてメルキアデスと出会ったのは、ピートが働く牧場だった。メキシコから不法入国したメルキアデスは、ピートの計らいでカウボーイとして働き出す。純朴で優しい彼は、心の底からピートを信頼し、2人は年齢を越えた友情で深く結ばれる。ある日、大事にしている写真をメルキアデスから見せられる。故郷メキシコに残してきた5年会っていない彼の家族が写っている。
「約束してほしい。もし俺が死んだら、故郷ヒメネスに埋めてくれ」
メルキアデスはそう言い添えるのだった。
マイク・ノートンは美しい妻ルー・アンとテキサスに引っ越してきた。国境警備隊員として、不法入国絶えない国境を守るために。今日も不法入国を計るメキシコ人の一団を追い詰め、女だろうと容赦なく拳で殴る。一方、ルー・アンは知り合いがいない田舎町で空虚な毎日を過ごしていた。近所のダイナーでウェイトレスのレイチェルとおしゃべりするのが日課。夫との生活に満たされないレイチェルは保安官ベルモント、ピートとの逢引を密かに楽しんでいた。
ある日、見回りをしていたマイクがポルノ雑誌を片手にジープから降りると、突如銃声が鳴り響く。驚いたマイクは慌てて撃ち返す。手ごたえを感じて恐る恐る近づくと、撃たれた男が血を流して倒れていた。ヤギを守るためコヨーテを射殺したメルキアデスだった。途方にくれたマイクは、丘に死体を埋め、逃げ出す。
「メルキアデスの遺体を俺にくれ」。保安官ベルモントに頼んだにもかかわらず、共同墓地に埋葬された。落ち込み、家に篭るピートを友人が尋ねてくる。ピートに薬莢を差し出し、友人が言う。「遺体の近くに薬莢が落ちていた。何か意味があるのかもしれない」。
ある夕方、レイチェルが訪ねてくる。ダイナーで、国境警備隊長ゴメスとベルモントがメルキアデスを殺したのは新任警備隊員マイク、と話していたと言う。
ピートはベルモントにマイクを逮捕するよう詰め寄るが、全く相手にされない。
怒ったピートは夜になるのを待ち、マイクの家に押し入る。銃で脅かして、ルー・アンを椅子に縛り付け、無理矢理マイクを拉致する。共同墓地に埋葬された遺体を掘り返させ、メルキアデスの服をマイクに着せる。そして、メルキアデスを殺めた男、メルキアデスの夢を叶えたい男と遺体と、の3人の旅が始まる。美しさに心が張り裂けるという、故郷ヒメネスを目指して。
翌朝、マイク誘拐を知った警察と国境警備隊は、大規模な捜索隊を組む。
一行が荒野を行くと、廃家で大きく鳴り響くスペイン語のラジオを聴いている盲目の老人に出会う。食事を振舞われた後で、ピートは老人に頼まれる。『わしを撃ってくれ』。断るピートに老人は言う、『あんたらはいい人間だ』。
再びメキシコに向かう一行、マイクは事件のことを口にする。『俺に罪はない、事故だったんだ。殺そうとしたんじゃない』。
砂漠に脚をとられ、ピートの馬が転倒する。熱砂の中を裸足で必死に逃げ出すマイク。やっとの思いで岩穴に逃げ込んだマイクだったが、ガラガラ蛇に噛まれて失神する。ピートはメキシコ人の一団に、薬草に強い女マリアナを紹介してもらう。川の中を、悪態をつき暴れるマイクをひきずっていくピート。
警備隊から隠れて国境を越え、一行は無事にマリアナの家に辿り着く。彼女は以前に不法入国を試み、マイクに殴られた女だった。長い昏睡から目が覚めたマイクの脚に、彼女は怒りを込めて熱いコーヒーをかける。
旅を再開した一行は、メキシコ人カウボーイの一団と出会う。マイクが以前にルー・アンと観たドラマがポータブルTVで再放送されている。マイクの頬を思わず涙が流れる。そんな彼に、見知らぬメキシコ人たちは優しく酒を差し出す。
遂に、長く苦しい旅の末、ピートはメルキアデスの妻を見つけ出したのだったが・・・。
親友との約束を守り抜こうとする男、人を殺めた男、最後の夢を叶えて欲しい男。旅の最後に、3人を待ち受けていたのは、果たしてなんだったのだろうか・・・?

スタッフ

監督...トミー・リー・ジョーンズ
脚本...ギジェルモ・アリアガ
音楽...マルコ・ベルトラミ
撮影...クリス・メンゲス
プロダクションデザイナー...メリディス・ボズウェル
衣裳...キャスリーン・キアッタ
製作...マイケル・フィッツジェラルド
   リュック・ベッソン
   ピエランジュ・ル・ポギャム
   トミー・リー・ジョーンズ
編集...ロベルト・シルヴィ
リリコーディングミキサー...ドミニク・エネキン
ラインプロデューサー...エリック・オースティン・ウィリアムズ
キャスティング...ジャンヌ・マッカーシー
美術...ジェフ・ニップ
助監督...フィリップ・ハーデイジ

キャスト

トミー・リー・ジョーンズ
バリー・ペッパー
フリオ・セサール・セディージョ
ドワイト・ヨアカム
ジャニュアリー・ジョーンズ
メリッサ・レオ
ヴァネッサ・ボーシェ
レヴォン・ヘルム
メル・ロドリゲス
セシリア・スアレス

LINK

□公式サイト
□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す