原題:SPRING TIME

第17回東京国際映画祭2004/アジアの風部門 コンペティション特別枠 第25回青龍賞/音楽賞(チョ・ソンウ)

2004年9月23日韓国公開

2004年/韓国/カラー/128分/ 配給:ソニー・ピクチャーズエンターテインメント

2006年09月06日よりDVDリリース 2006年3月25日、シネマスクエアとうきゅうにて公開

公開初日 2006/03/25

配給会社名 0042

解説


傷だらけで、
落ちこぼれて。
それでも人生は
悪くない。

韓国を代表する名優チェ・ミンシクによる心温まる再生の物語
トランペッターのヒョヌの夢は、交響楽団に入って名声を得ること。だが、その夢も実現しないまま、気がつけば中年の年齢になっていた。愛する人を幸せにする自信もない。いつの間にか不機嫌で頑なな人間になっていたヒョヌだが、ソウルから遠く離れた炭鉱町の中学校で吹奏楽部の指導をするうちに、人の心の温かさに触れ、ゆっくりと自分自身も成長していく。ヒョヌを演じるのは、名優チェ・ミンシク。雪深い冬の時代を経て、やがて春を迎える炭鉱町ののどかな風景の中で、季節の移り変わりとともに生まれ変わっていく中年男性を、時に豪快に、時に繊細に、チェ・ミンシク独 特の色気を漂わせながら演じていく。常に第一線で活躍してきたチェ・ミンシクだが、特に近年、『オールド・ボーイ』『親切なクムジャさん』『クライング・フィスト』と、立て続けに出演作が大ヒット。暴力に彩られた作品が続く中で、この『春が来れば』は、ひさびさに人間賛歌にしみじみと感動させられる名作だ。
師弟関係を超えてインスパイアしあう、リュ・ジャンハ監督とホ・ジノ監督
この静かなる傑作が長編デビュー作になるリュ・ジャンハ監督は、ホ・ジノ監督の『八月のクリスマス』『春の日は過ぎゆく』で助監督をつとめ、また『春の日は過ぎゆく』の脚本にも参加した経歴をもつ。わずか3歳違いの2人は、ともに大学卒業後に一般企業に就職するも、映画への夢が忘れられず韓国映画アカデミーに入った経歴も、分かち合っている。『春の日は過ぎゆく』が、桜の舞う中で別れる男女を描いたのに対して、自分の作品では桜の舞う中でやり直す男女を描きたかったと語るリュ監督。ホ・ジノ監督からはその演出法などで多大な影響を受けたというが、反対に彼自 身、ホ監督に大きな影響を与えてもいる。『春が来れば』が撮影されたサムチョクは、ご存知、のちに撮影された『四月の雪』でペ・ヨンジュンとソン・イェジンが出会う場所であるし、また『春が来れば』の撮影監督イ・モゲは、『四月の雪』で初めてホ・ジノ監督と組んだのである。ホ監督は『春が来れば』を「大好きな作品」と称讃してやまないのだ。
ヒョヌを優しく包み込む韓国映画界を支える名優たち
チェ・ミンシクが演じるヒョヌの元恋人を演じるのは、主に舞台女優として活躍するキム・ホジョン。映画では『ほえる犬は噛まない』の不機嫌な妊婦役が印象深いほか、諏訪敦彦監督の中編『広島からの手紙』に、監督たっての要望で主演した。口うるさいけれども大きな愛情でヒョヌを見守る母親を演じるのは、『浮気な家族』で愛人に溺れる姑を演じたユン・ヨジョン。そして、ヒョヌとたびたび同じ鍋からラーメンを食べる中学生ジェイルを演じるのは、韓国映画界きっての名子役、イ・ジェウンだ。『殺人の追憶』『大統領の理髪師』そして本作につづき、最新作は再びムン・ソリと共演の『愛してる、マルスンさん(原題)』と、その愛らしさと天才的な演技力によって出演作が途切れることのない小さな名優。ヒョヌは、彼らが心の奥深いところで家族や恋人に抱きつづけている愛情の尊さに触れることで、生きていく中で一番大切な力、すなわち愛とやさしさを、知るのだ。

ストーリー

 中年主婦たち相手の市民講座でクラシック音楽を指導しているイ・ヒョヌ。トランペッターとして交響楽団のメンバーになる夢もいつしか色褪せ始め、酔えばつい親友のギョンスに苛立ちをぶつけてしまう。かつての恋人、ヨニは、新しい相手を見つけたらしい。

 母親と二人暮らしのヒョヌだが、お母さんにあげてと栄養剤を持ってきたヨニにつれない態度をとってしまう。「結婚するかもしれない」とヨニに告げられると、「幸せになれよ」と応えるが、本当はまだ二人とも相手に想いを残しているのだった。

 ソウルの古びた一軒家から、ヒョヌと母親はマンションに引っ越す。何くれとなく心配し、小言をいう母親をつい煙たがってしまうヒョヌは、カンウォン道サムチョク市の中学校で音楽指導者を募集していることを知り、心機一転、その寂れた炭鉱の町に向かう。

 トゲ中学の吹奏楽部は、かつては全国大会で入賞したこともあったが、町の人口が減るにつれて部員も減り、学校の中でもお荷物のような扱いを受けていた。今度の全国吹奏楽コンクールで入賞しなければ、廃部になってしまう。

 トランペットを吹くのは、おばあさんと二人暮らしのジェイル。サックスのヨンソクは、ケニー・Gに憧れていて、付き合っている女の子もいる大人びた少年。意欲もなくやって来たヒョヌだが、次第に子供たちと心を通わせ、若い薬剤師スヨンとも打ち解けていく。

 雪道で転んだジェイルのおばあさんの入院費を稼ぐため、ヒョヌはナイトクラブに飛び込んで派手な衣装を着て演奏する。退院したおばあちゃんは、正月、雑煮をごちそうしてくれる。
 ヨンソクは父の反対で吹奏楽部を抜けてしまった。ヒョヌは炭鉱に行き、父親を説得しようとするが、「叶わない夢もある」と静かに言い切られ、言葉を返せない……

スタッフ

監督:リュ・ジャンハ
脚本:ユン・ジェグン、イ・ウンギョン、チョン・ホドクチェ、リュ・ジャンハ
撮影監督:イ・モゲ

キャスト

チェ・ミンシク
キム・ホジョン
チャン・シニョン
ユン・ヨジョン
キム・ヨンオク
チャン・ヒョンソン
キム・ガンウ
チェ・イルファ
キム・ドンヨン
イ・ジェウン
ピョン・チャンソク
ヤン・ヒョンボン
イ・セウン

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