2005年/日本/カラー/ビスタサイズ/85分/ 配給:フォルム

2006年06月23日よりDVDリリース 10月29日(土)より渋谷シネ・ラセットにてレイトショー順次全国公開

©2005『スリーピングフラワー』製作委員会

公開初日 2005/10/29

配給会社名 0679

解説


ここ数年、日本映画が元気になってきている。観客が劇場に足を運ぶ魅力溢れる秀作が増え、大作といわれる作品からコンパクトでローバジェット作品までさまざまな形態で製作、公開されている。そして2005年。たくさんの日本映画が製作されている。この夏には、約90本余りもの作品が撮影されていたという。そんな中、新たな才能たちによる、光を放つ1本の作品、『スリーピングフラワー』が出来上がった。

ヒロイン深雪の姉・千春は「しばらく何もないところで休んでください。妹さんにも、あなたにも今必要なのは休息です。」と医者にある田舎町で休養をすすめられる。元気な深雪と物静かな千春。そして二人はキャベツ畑が一面に広がり、近くには湖もあるゆっくりと時間の流れる村がやってきた。紹介してもらったホテルは、ホテルとは名ばかりの古びた佇まい。緑豊かな自然と、ホテルのオーナー“オヤジ”、息子の正午、釣り人・峰さん、ヒッピー姿のかず子、個性的でどこか影のある人々とのふれあいの中で、深雪と千春は自分になにが必要なのか気づく・・・

“スリーピングフラワー”=“咲かない花” 咲かない花を人は花と呼ぶのだろうか・・・。いつか咲くかもしれないその花は、誰からも水や光を与えられないのか?何か事情があって咲くことができないのか?そして咲かないのではなく眠っているだけなのか・・・?
人間も同様で、愛情を感じ取れずにいたり、過去に傷ついたことがあったりして心を閉ざしてしまい開く(咲く)機会を逃してしまうのではないだろうか・・・。
物や情報に溢れ、人間関係や愛情が薄くなったといわれる昨今。誰もが、咲く機会を待っている、そのための愛情・ふれあいが欲しいと感じるときがあるのでは?映画『スリーピングフラワー』は、それぞれの悩みを、豊かな自然の中で暖かなふれあいによって、ゆっくりと光あるほうへ導いていく—癒し系かつスタイリッシュな“自分=幸せ”探しムービーである。

主人公・深雪を演じるのは、2004年12月グラビアデビュー後、CX「うまッチ!」でお天気コーナーを担当し、屈託のない笑顔で人気上昇中の工藤里紗。映画初出演・初主演とは思えぬ存在感とナチュラルな演技を披露している。姉・千春に映画・ドラマなど多数出演の実力派若手女優、藤真美穂。深雪を心配し、そして自分自身もなにかを見出そうとしている感情を見事に演じきっている。共演に『KILL BILL』など出演する作品ごとに、強烈なインパクトを残す名バイブレーヤー・田中要次、『仮面ライダー-THE FIRST-』の一文字隼人役に抜擢された高野八誠、ストリート・ファッションのカリスマ・今宿麻美、蜷川幸雄演出の舞台などで活躍の俳優そしてマジシャンのマメ山田、『リアリズムの宿』『ばかのハコ船』で主演を演じ人気の山本浩司など個性的な俳優が脇を固めている。監督は劇場公開、デビュー作品となる柿本ケンサクが、新しい目線で物語りを彩る。

ストーリー


病院で医者の話を聞いている千春。
「だいぶ疲れが出ていますね。しばらく何もないところで休んでください。妹さんにもあなたにも今必要なのは休息です。あの、ひとつ提案があるのですが・・・」

まっすぐなキャベツ畑を続く道に千春と妹の深雪は、大きな荷物を持ち地図を見ながらきょろきょろしている。やっとたどり着いた二人は、そのホテルとは名ばかりの古くてボロイ佇まいに呆然とする。しかし着くや否や、活動的な深雪は荷物を置いて近くを探索に出かける。千春は残りオーナー“オヤジ”の帰りを待つことにする。
ホテルを飛び出した深雪は、ホテル ド アサダの人間らしいヒッピー姿のかず子に出会う。湖畔に着くと深雪は釣り人・峰さんに声を掛ける。すると少し離れた桟橋で浅田正午の竿がかなり大きくしなっている。峰さんは悔しがるが、糸が切れ正午は勢いよく後ろに倒れてしまう。途端に子供のように茶化す峰さん。
その夜、食卓に付く深雪、千春。落ち着かない様子で正午が料理を運んでいる。正午はホテルの息子だったのだ。
オヤジは毎朝、亡くなった正午の母親のお墓参りが日課になっている。正午は「ロマンチストなんだ」と語る。オヤジが鉢植えに水をやっている。するとオヤジの後ろにかず子が立ち、後ろから抱きしめる。鉢植えの水が溢れ、オヤジのサンダルを濡らす。不意に我に返るオヤジ。幻だったかのようにかず子の姿はもうない。

深雪と正午は意気投合し、日中ほとんど一緒に過ごすようになる。散歩から帰ってくると、千春はオヤジの料理を手伝っている。生き生きとした目で料理を手伝う千春。
その夜、眠れずにいるオヤジ。一番奥のドアの前で立ち止り鍵を出し、真っ暗の部屋に入っていく。深雪もふと目覚め、廊下のオヤジの様子を身を隠して見ている。
翌朝、正午と深雪は迷路のような雑木林を散歩に出かける。雑木林を抜けた丘の頂上は下が崖になっている。正午が
「ここから飛び降りたんだ・・・お袋。」と告白をする。寂しそうな横顔を見つめる深雪。
夜、深雪は眠れずに縁側に座って何も咲いていない鉢植えをぼんやり見ている。正午が缶ビール2本を持って隣に座る。深雪缶ビールを一気に飲み干す。
「ねぇ、キスしようか?」と深雪。
「・・・やだ」
「つまんないの。しばらくこうしててくれる?」
目を閉じて正午によりかかった無防備な深雪にためらいながらキスをする正午。深雪は眠ってしまっている。

ある日、眠っている深雪を残し、正午と千春は買出しに出かけあの雑木林を散歩する。眠りから覚めた深雪は、正午を探して、崖にいる2人の姿を見つけ気を失ってしまう。
深雪を見つけたオヤジはホテルにつれて帰りベットに寝かせるが、目覚めた深雪の顔に表情はなく、まるで糸に引っ張られるかのようにまた雑木林に向かって歩いていく。そして崖の前で立ちつくし、力なく景色をボーっと眺めている。今にも崖から飛び降りそうな表情で・・・。

深雪がいないとこに気づいた千春と正午はホテルを飛び出す。崖で深雪を見つけると千春は、「・・・馬鹿なことして。みんなに迷惑かけて」とビンタをする。
「おねぇちゃんこそなんなのよー?急にみんなに媚びて私を一人にして楽しい?」
深雪は千春の静養のためにここにきていると思い込んでいたが、本当は深雪が病気なのだ。不安で眠れず、深雪は入院しても夜虚ろな表情でパジャマのまま家に帰っている。医者からは、深雪もそして千春も何もないところで休んだほうがよいとホテル ド アサダでの静養を勧められたのだ。
自分が病気で、それを受け止められず逃げていることをわかっていたと告白する深雪。目には涙が溢れ、体が震え、膝から崩れ落ちる。オヤジも深雪を探しに崖にたどり着き、唖然見ている。涙でぼろぼろの千春。

翌日、オヤジと千春は料理をしている。
「もう帰ろうと思います。」と千春
静かな千春と深雪の食卓。深雪は「みんなで食べようよ」とみんなを誘う。席に着く、オヤジと正午に向かって「かず子さんは?」深雪が2人に問いかける。驚くオヤジと正午。かず子は亡くなった正午の母親だったのだ。そしてかず子は深雪にしか見えていなかったことにきづく。
「かず子は元気そうだった?」
「いつも幸せそうでした。」
オヤジは植木鉢を見つめ、
「この花、いつからだろうずーっと咲かないんだ。いつか咲いてくれるかな・・・」

深雪を残し、千春はホテルを出る。
「おねぇちゃんを開放してあげる。」深雪はすがすがしい表情で千春を見送る。
深雪と千春がここにやってくる途中で、乗せてもらった軽トラの持ち主・ジジィはかず子の父親で、かず子を不幸にしたとオヤジを許せず、二人の間には確執ができていた。しかし深雪の自分を受け入れる姿に、オヤジはジジィに挨拶に行くと決意をする。

スタッフ

監督:柿本ケンサク

プロデューサー:狩野善則
山梨一寿
ラインプロデューサー:大島孝夫
脚本:川端麻祐子
   打木健司
   柿本ケンサク
音楽:大橋好規
撮影:刈谷亮介
照明:原 春男
録音:海野サヨコ
美術:延賀 亮
スタイリスト:田村和之
ヘアメイク:有川曜平
企画・製作:フォルム/Breath

キャスト

坪井深雪(20):工藤里紗
坪井千春(24):藤真美穂
浅田正一(48):田中要次
浅田正午(27):高野八誠
かず子 (25):今宿麻美
峰さん (40):マメ山田
ジジィ (65):菅登未男
医者  (30):山本浩司

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