原題:EL ABRAZO PARTIDO/LOST EMBRACE

第54回ベルリン国際映画祭 銀熊賞ダブル受賞  ★審査員特別大賞★最優秀男優賞 第77回 アカデミー外国語映画賞  <アルゼンチン>代表作品

2003年/アルゼンチン、フランス、イタリア、スペイン合作/1時間40分/配給:ハピネット・ピクチャーズ、アニープラネット

2006年08月25日よりDVDリリース 2006年1月14日、銀座テアトルシネマにてロードショー!以降全国順次公開

(C) 2003 - bd cine SRL

公開初日 2006/01/14

配給会社名 0187/0406

解説


舞台は下町の商店街。
明日を探す青年とその父の、切なくて暖かい
「初めて」の出会いを描く感動の物語。

ブエノスアイレスのガレリア(アーケード商店街)。そこに生きるのはイタリア、韓国、リトアニア、ポーランド……ルーツはそれぞれだが“インターナショナルなアルゼンチン庶民”。母と二人、ランジェリーショップを営む青年アリエルは、そんな自分の故郷に愛着はあるものの、祖父母の母国ポーランドのパスポートをとってヨーロッパに移住しようと考えている。アリエルは父親の顔を覚えていない。父親は、彼が生まれてすぐ、母と二人の息子を置き去りにして、外国へ戦争に行ったきり戻らないからだ。そんなある日、父がガレリアに帰ってくる……。はたしてアリエルと父との関係は、どうなるのだろう?そして彼は望み通り、ポーランド人になって新しい未来を手に入れることができるのだろうか?
モラトリアムな青年と彼を取り巻く人々、家族、そして不在の父との初めての出会いをユーモアと感動で描いた本作。ここ数年、ラテンアメリカで最も活気あるアルゼンチン映画界で、ひときわ大きな国際的栄誉(ベルリン国際映画祭銀熊賞2冠)を獲得し、アカデミー賞の外国語映画賞でも文句なしに<アルゼンチン>代表作品に選ばれた。本国アルゼンチンはじめラテンアメリカ各国、そしてスペイン、イタリアなどで大ヒットを記録したフレッシュな話題作だ。

タンゴでもない、サッカーでもない。
ブエノスアイレスの人情の魅力。

アルゼンチンと言えば、タンゴ、サッカー、もしくはパタゴニアの自然などが思い浮かぶが、本作で描かれるのは観光的イメージとはひと味違う、ブエノスアイレスの下町にあるガレリアの住人たち。ブルマン監督が「外国からの移民が多く、それでもある連帯感を持っている現代アルゼンチン社会の縮図」と言う、国際色豊かな人間味あふれる世界が舞台だ。ガレリアとは、ラテンアメリカだけでなくラテンヨーロッパにもよくあるアーケードつきの商店街のこと。映画の中では少しひなびたガレリアが舞台で、それぞれ濃い“下町キャラ”の登場人物たちが主人公のアリエルを取り囲んでいる。一方、ポーランド人になりたいアリエルも、アルゼンチン社会の象徴のような存在。監督は、数年前の経済危機をきっかけに「若者がヨーロッパ人としてのルーツを探し、ヨーロッパでの新しい生活を夢見ていた」と言う。人情喜劇のようにコミカルで暖かく、それでいて現代を反映した映画の奥行きの深さが、この映画の批評的・興行的成功の最大の理由だろう。

南米のウディ・アレン?ブルマン監督をはじめとする若き才能あるスタッフが結集。

監督のダニエル・ブルマンは、20歳で発表した第1作のドキュメンタリーから、すでに注目を浴びていたアルゼンチン映画界の俊英。本作の撮影時はまだ20代、ベルリン国際映画祭での栄誉に輝いた時はわずか30歳だった。その出自であるユダヤ的ユーモアをベースに、様々なキャラクターを織り上げていくセンスは、世界的な批評家がウディ・アレンにたとえたほど。プロデューサーとしても活躍し、ウォルター・サレス監督の『モーターサイクル・ダイアリーズ』(04)を共同製作。今後のラテンアメリカ映画をリードする存在に間違いない。その他のスタッフもすべて90年代後半から活躍をはじめた映画人。若い才能が結集し、主人公がよく走り、よくしゃべるように、常にカメラが動き回り、編集のリズムも若々しい躍動感に満ちている。
主演は、ベルリンで見事、男優賞を獲得したダニエル・エンドレール。ウルグアイ出身で、かの国が生んだ初めてのスター男優として中南米全域で高い人気を誇っている。私生活でも親友のパブロ・ストール&フアン・パブロ・レベージャが監督したウルグアイ映画『ウィスキー』にはカメオ出演で顔を見せていた。エンドレールを取り囲む家族やガレリアの人々には、アルゼンチン映画・演劇界のベテランが顔を揃え、若さだけでは得られない、人間の滋味を映画に与えている。

ストーリー

主人公アリエル・マカロフによる、
ガレリアの紹介。

僕は、ブエノスアイレスのオンセ地区にある、小さなガレリアで母の店を手伝っている。このガレリアが僕の世界。
だけど風前の灯といった世界かもしれない。母はランジェリーショップの店を経営している。兄のジョセフは雑貨(ガラクタ雑貨と呼んだ方がいい)の輸出入が商売。向かいのオスワルドは文房具屋だが、店は傾ききっている。イタリア人のサリガーニ一家はラジオの修理屋で、ボリュームいっぱいのイタリア語で1日中がなり合っている。韓国人カップルはカタコトのスペイン語で風水グッズを扱い、レビン“兄弟”は生地商人だ。そして友人のミッテルマンは旅行代理店だが、実際は金融商売。ありがたいことにリタの店もある。流行りのインターネットカフェだ。パトロンらしき老人ヘラルドとどんな関係なのか、すごく気になっている。

ポーランド人になること。

小さくても居心地のいい世界—-だけど、なんとなく無気力で、とてもじゃないが未来は明るく見えない。友人たちも違う人間になろうとして、“外国籍のパスポート”に救いを求めている。フランス人になった者、スペイン人になった者、そして、僕ももうすぐポーランド人になろうとしている。ポーランドは、祖父母がホロコーストを逃れて去った国だ。祖母は、ポーランドの話をしたがらない。思い出せば傷つくから。でも僕は、死んだ祖父の出生証明書を探し出してもらわなければならないんだ。

父エリアス・マカロフのこと。

僕が見た父親の姿は、たったこれだけ。
それはホームビデオだ。父は伯父とともに、ユダヤ司祭の後ろにいる。彼らは誇らしげに、赤ちゃんの僕を割礼している。その翌日、父はイスラエルへ戦争に行ってしまった。間もなく戦争は終わったのに、以来父は帰ってこなかった。
毎月電話はかかってくる。養育費と言ってお金も送ってくる。
母はそんな状態を当たり前のようにしている。なぜ?自分の息子の割礼に立ち会って、それから30年近く姿を消した父親のどこが当たり前なんだ?

ガレリアの一大イベント、僕と父が失くしたもの。

近頃、母の様子がおかしい。色男気取りのマルコスを連れてきたり、オスワルドが店を手放すことに随分と動揺したり。いったいどうしたっていうんだ?
そういう僕にも小さな波風がたった。昔の彼女エステラに会って僕は驚いた。大きなお腹で、じきに子供が生まれるという。幼なじみでずっと一緒、ほんの少し自分の時間を生きたくて結婚の決心がつかなかっただけなのに。エステラは僕をふって他の男と幸せになる。

ガレリアの仲間たちが一致団結して立ち上がる時が来た。兄のジョセフが商売敵である別の商店街のラファルディと揉め、路上での100メートル競争で白黒をつけることになったのだ。
これはガレリアを挙げての勝負。僕らの代表は兄のもとで働くボリビア人のラモン。敵はペルー人。負けるわけにはいかない。

レースの日。
僕はそこで見たこともない男を見つけた。“初めて”会うが、それが父エリアスだとすぐにわかった。僕はなぜか逃げ出したい気分になって、選手でもないのにラモンも抜いて、ペルー人も抜いて走り続けた。

母は僕に真実を語った。それは僕がずっと思い込んでいたこととは違っていた。
父は片腕を失っていた。きっと母も何かを失っていたのかもしれない。そして僕は?
父と僕はもう抱きしめあうことはできないけれど、それでも今、失っていたものを取り戻せるような、そんな気がした。そうだよね、おばあちゃん。

スタッフ

監督:ダニエル・ブルマン
製作:ディエゴ・ドゥブコフスキー、ダニエル・ブルマン
脚本:マルセロ・ビルマヘール、ダニエル・ブルマン
製作総指揮:ディエゴ・ドゥブコフスキー
撮影監督:ラミロ・シビータ(ADF)
編集:アレハンドロ・ブロデルソン

キャスト

ダニエル・エンドレール
アドリアーナ・アイゼンベルグ
ホルヘ・デリーア
セルヒオ・ボリス
ディエゴ・コロル
アティリオ・ポソボン
シルビーナ・ボスコ
イサーク・ファヒン
サロ・パシク
メリナ・ペトリエラ
ノルマン・エルリッチ
ロシータ・ロンドネル

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