原題:Inside Deep Throat

1972年アメリカ——わずか$25,000で制作された1本の映画が、 すべての歴史を塗り替えた。

2005年/アメリカ/ 提供:ポニーキャニオン×コムストック×トルネード・フィルム 配給:コムストック×トルネード・フィルム

2006年05月26日よりDVDリリース 2005年11月12日、ヴァージンTOHOシネマズ六本木ヒルズにて公開

公開初日 2005/11/12

配給会社名 0028/0633

解説



たった6日で撮影され、1972年にアメリカで公開された1本のハードコア・ポルノ映画が社会現象になり、老若男女が劇場に駆けつけ、セックスの概念、そして憲法まで変えてしまった。そして映画のスタッフ及びキャストも歴史の波に翻弄されていく。
 その映画は『ディープ・スロート』だ。名前は知っているが観たことはない人でも、このタイトルは現在でもセックス時のテクニックとして、最近ではウォーターゲイト事件の情報ソースの匿名「ディープ・スロート」が名乗り上げてニュースになったことから知っているだろう。タイトル通り「喉の奥深く」に男性のモノを咥え込むテクニックなのだが、映画自体は「不感症の女性が医者に診察してもらったら、クリトリスが喉にあった」というコンセプトのコメディである。ジェラルド・ダミアーノ監督本人が認めているように「決して出来の良い作品」ではない。60年代後半から続く性解放や反体制の流れで作られた1本で、現在、ホラーの分野で主に活躍するウェス・クレイブン監督も、その当時のポルノ製作に携わっており、「当時のポルノ映画にはクリエィティブな人々が集まる気運があった」と映画の中で証言している。この映画を今見ると興味深い点として、性の満足感を求める女性を描くことで、男女同権及び女性の自立として捉えることもできるストーリーになっていることだ。この点が他のハードコア・ポルノとは違う要素でもあり、当時のベストセラーで女性の自立を描いた「飛ぶのが怖い」のエリカ・ジョングが出てくるのも興味深い(他にもゴア・ヴィダルやノーマン・メイラー、ジョン・ウォーターズなども出てくる)。
 上記の珍奇なコンセプトが受け、25,000ドルの製作費で現在までに6億ドル以上の興収をあげる作品になったが、この大ヒットが保守層の多大な反発を招く。「このような不道徳な映画が上映されるのはけしからん」というわけで裁判になり、猥褻さよりも「表現の自由」が取り沙汰されるようになり、ニューヨークタイムズが擁護の大きなコラムを掲載したことから、映画は保守層の思惑と違って、より大ヒットを記録。『ディープ・スロート』が効率ばかりでなく、史上もっとも利益をあげた映画であり、歴代1位の『タイタニック』と並ぶほどの興収をあげ、しかもマフィアが興行に関わっていることから、実際の興収は更に天文学的な数字であろうことも『ディープ・スロート』の謎でありながら魅力にもなり、その価値をより伝説的なものにしている。
 司法取引に応じたダミアーノ監督(興行に関わっていたマフィアとの関係を終わらせたいこともあった)や主演女優のリンダ・ラヴレイスは難を逃れたが、主演のハリー・リームズのみが裁判の対象になり(”映画出演”だけで実刑判決が下るのは全米初の事件)、市民解放団体やジャック・ニコルソン、ウォーレン・ビーティなどのスターが支援を表明する。だが、結果は敗訴。リームズは、元々シェークスピア劇などの舞台役者で『ディープ・スロート』には撮影助手で参加のはずが代役で主演したことからポルノ業界でのキャリアを積んでいくことになり、日本でも山本晋也監督の『生贄の女たち』(78)に出演もするが、80年代半ばにはアル中になり、自己破産し、微罪で留置所に入ったときに人生をやり直すことを深く考え、現在はユタ州で不動産セールスマンとして成功している。ラヴレイスに関しては、『ディープ・スロート』での役名がリンダ・ラヴレイス自身であったことから、彼女はある意味、現在のリアリティテレビのスターと同じであった。彼女を大統領にしようという『Linda Lovelace for President』(75)が製作されるほどの『ディープ・スロート』の余波を受けていたが、後に当時の夫に洗脳されポルノ出演させられていたと告白し、反ポルノ運動に身を投じていくものの、2002年に自分が運転する車の交通事故で亡くなっている。ダミアーノ監督は、その後もポルノの名作『ウォーターパワ−:アブノーマル・スペシャル』(78)などを製作している。
 70年代前半は一般映画と肩を並べる可能性があったハードコア・ポルノが、創造性よりも商品としての価値を重んじる産業になっていく様子も、この映画は映し出していく。このように『ディープ・スロート』は作品の完成度ではなく、社会的な意味でも歴史に名を残したのである。

ストーリー



  

スタッフ

製作:ブライアン・グレイザー 
監督:フェントン・ベイリー&ランディ・バルバート
オリジナル音楽:デヴィッド・ベンジャミン・ステインバーグ
音楽スーパーバイザー:ビル・コールマン
ナレーション:デニス・ホッパー
提供:ポニーキャニオン×コムストック×トルネード・フィルム
配給:コムストック×トルネード・フィルム
 

キャスト

ジェラルド・ダミアーノ(『ディープ・スロート』監督)
ハリー・リームス(同主演男優)
リンダ・ラヴレイス(同主演女優)
ロン・ヴェルテイム(同プロダクション・マネージャー)
リチャード・ニクソン(米37代大統領)
アラン・ダーショウィッツ(人権弁護の世界的権威)
ゴア・ヴィダル(作家)
ノーマン・メイラー(作家)
ジョン・ウォーターズ(映画監督)
ウェス・クレイブン(映画監督)
エリカ・ジャング(作家)
ディック・カヴェット(スタンダップ・コメディアン)
ビル・メイハー(人気コメンテーター)
ヒュー・ヘフナー(雑誌「プレイボーイ」創始者)
ラリー・フリント(雑誌「ハスラー」創始者)
ジャック・ニコルソン(俳優)
ウォーレン・ビーティー(俳優)
フランシス・F・コッポラ(映画監督)ほか

LINK

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□IMDb
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http://www.insidedeepthroatmovie.com/
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