原題:Where the Truth Lies

秘密を抱えているひとは、 いつか秘密に殺される

2005年/カナダ・イギリス・アメリカ/108分 配給:ムービーアイ・エンタテインメント

2007年11月28日よりDVDリリース 2006年05月27日よりDVDリリース 2006年12月23日、シャンテシネほか全国ロードショー

公開初日 2005/12/23

配給会社名 0366

解説


ショウビズ界の裏側に潜む”スキャンダル”という名の”秘密”…。
一人の女性ジャーナリストが15年前の”事件”を追い始める。
そこに眠る真実とは…。
世界が注目する監督、アトム・エゴヤンが紡ぎ出す一流のビジュアル・サスペンス。

ショウビズ界の裏側に潜む”スキャンダル”という名の”秘密”…。
 アメリカが最も輝いていた1950年代。ラニーとヴィンスは、国民的なアイドルの座に君臨するエンタテイナーのデュオ。人気と名声、富と成功。あらゆるものを手に入れたふたりは、華やかなショウビズ界の中でも特別なきらめきを放っていた。だが、あるスキャンダルによって、彼らの築き上げた世界は脆くも崩壊する。宿泊予定のホテルの部屋で発見されたブロンドの美女モーリーンの全裸死体。自殺か他殺かも釈然としないまま、闇から闇へと葬られた事件。ラニーとヴィンスには完璧なアリバイがあり、容疑をかけられることはなかったが、ふたりの間には永遠に修復できない溝が刻まれ、デュオは解散に追い込まれた。
 それから15年後。別々の道を歩んでいたラニーとヴィンスの前に、あの事件の封印を解こうとする、若く野心的な女性ジャーナリストが現れる……。
 人気絶頂のデュオを解散に追い込んだスキャンダラスな事件。その秘密を暴こうとするうちに、きらびやかなスポットライトの背後に潜む暗闇の世界に迷い込んでいく気鋭の女性ジャーナリスト。彼女の周囲にたちこめる虚飾と頽廃、セックスと死の匂い。その中から一片の真実が浮かび上がっていく過程を、スリリングに、官能的に描きあげた本作は、2005年のカンヌ映画祭で大きな反響を呼んだ一級のビジュアル・サスペンスである。
 監督・脚本は『スウィート ヒアアフター』でカンヌ映画祭グランプリを受賞し、前作『アララトの聖母』でも本国カナダの映画賞を総なめにした鬼才アトム・エゴヤン。謎解きの妙味に満ちた物語を、複数の視点と時間軸を行き交いながら、重層的かつ幻惑的に綴り上げていくストーリーテリングは、彼のいちばんの特徴だが、今回も、その魔術師ぶりを遺憾なく発揮。人気デュオのラニーとヴィンス、彼らの秘密を探るジャーナリストのカレン、そして、カレンと同じジャーナリストの道を歩もうとしていた事件の被害者モーリーン。ふたりの男とふたりの女の過去と現在、虚構と真実、虚像と実像が、交錯し、もつれあい、接点を持っていく様を、エゴヤンは縦横無尽な筆遣いで緻密に描き出し、めくるめく興奮を味わわせてくれる。
 果たして、モーリーンの死は他殺だったのか? もしそうならば、彼女を殺したのは誰だったのか? そして、ラニーとヴィンスはなぜ解散に追いつめられていったのか? ラストで明かされるのは、予測を遙かに超えた衝撃の真実。その果てに、胸が引き裂かれるほど痛切な友情ドラマが浮かび上がってくるという二重のサプライズが待ちうけている展開は、まさしくエゴヤンマジック。その巧みさに誰もが驚き、誰もが感嘆の声をあげずにはいられないだろう。
 そんなエゴヤン・ワールドを豊かに彩るべく、主演陣には英米から選りすぐりのスターが集結した。陽気な人気者ラニーの苦悩と葛藤を繊細に表現するのは『ミスティック・リバー』での名演が記憶に新しいケヴィン・ベーコン。スマートな英国紳士の顔の下に思いがけない凶暴さを秘めたヴィンスを演じるのは『真珠の耳飾りの少女』のコリン・ファース。これまでのイメージを覆す大胆なセックス・シーンも含めた野心的な演技に挑戦する女性ジャーナリストのカレンを『ビッグ・フィッシュ』のアリソン・ローマンが熱演。ウサギ穴に落ちた『不思議の国のアリス』のアリスさながらに、15年前のスキャンダルを追いかけているうちにショウビズ界の迷宮に迷い込んでいくヒロインを、あるときは少女のイノセンス、あるときは成熟した女の色香を漂わせ、体当たりで演じている。
 原作は、作曲家・演劇プロデューサーとしても知られるルパート・ホルムズのベストセラー。2004年のネロ・ウルフ賞最優秀アメリカン・ミステリー小説賞を受賞したこの作品は、黄金期のハリウッドに実在した有名なデュオをモデルにしているが、脚色するにあたって、エゴヤンはヴィンスのキャラクターをイギリス人に変更。劇を彩る様々な対比に、イギリス対アメリカというもうひとつの要素を加え、キャラクターと物語に、多層的な味わいを持たせている。
 ゴージャスでなまめかしい50年代と、放埒で開放的な気分に満ちた70年代。ふたつの時代の空気感を伝える魅惑的なヴィジュアルを作り上げた撮影監督は、過去6作でエゴヤンとコンビを組んでいるポール・サロッシー。彼を筆頭に、編集のスーザン・シプトン、プロダクション・デザインのフィリップ・バーカー、衣装デザインのベス・パスターナク、音楽のマイケル・ダナなど、スタッフにはエゴヤン監督作の常連が結集。アートの薫り高い世界の構築に貢献している。

ストーリー



一人の女性ジャーナリストが15年前の”事件”を追い始める。そこに眠る真実とは・・・。
 1972年のロサンゼルス。カレン・オコナー(アリソン・ローマン)は、才能豊かな若手のジャーナリスト。成功への野心を胸に秘めた彼女は、いま、自身の過去とつながりを持つ有名人の暴露本を執筆することで、飛翔のチャンスをものにしようとしていた。
 カレンが準備中の本は、1950年代に一世を風靡したエンタテイナーのデュオ、ラニー・モリス(ケヴィン・ベーコン)とヴィンス・コリンズ(コリン・ファース)にまつわるものだった。草創期のテレビで活躍し、チャリティのテレソン番組でホストをつとめるほど人気者だったふたりは、少女時代のカレンのヒーローでもあった人物だ。そんなラニーとヴィンスがコンビを解消したのは、いまから15年前のこと。原因は、ふたりが女性の全裸死体をめぐるスキャンダルに巻き込まれたことだったが、その事件の真相こそ、いまのカレンが追い求めているものだった。
 真実の追求は、予想外の苦痛をともなうものになった。最初に接触したヴィンスから100万ドルの取材料を要求され、少女時代の憧れがガラガラと音をたてて崩れていくのを感じるカレン。もうひとりのラニーは、自ら執筆中の手記の一部を、代理人を通じてカレンに読ませ、彼女の出版の意図を打ち砕こうとした。
 その事実もさることながら、カレンにとってショックだったのは、ラニーが赤裸々に記した手記の内容だった。アメリカの国民的なアイドルとしてチャリティの顔をつとめるかたわら、そのチャリティの関係者とベッドを共にし、ドラッグを常用していたラニー。彼の知られざる裏の顔を知ったカレンは、胸の中に、強い興味と苦い幻滅が同時に広がっていくのを感じる。
 カレンとラニーの運命が、ひとつに交わる出来事が起こる。出版社の招きでニューヨークへ出張したカレンの飛行機に、偶然にもラニーが乗り込んできたのだ。しかも、彼女の座席は、ラニーの忠実な執事ルーベン(デヴィッド・ヘイマン)の隣だった。「一緒に食事を」と言うラニーに対し、とっさに教師だと自分の身分を偽るカレン。翌日、ラニーのデートの誘いに応じた彼女は、彼の複雑な内面に強くひきつけられ、情熱のおもむくまま一夜を共にする。
 時を同じくして、親友のボニー(ソニヤ・ベネット)が留守を預かるカレンの自宅には、ラニーの手記の第2章が郵便で届けられた。ボニーがカレンに電話で知らせてきた手記の内容は、ニュージャージーで起こった事件の序章が、マイアミのホテルの一室で始まっていたことを示唆していた。
 それは、ラニーとヴィンスが、ポリオの子供たちへの寄付を募るために、マイアミで行われた39時間のテレソンに出演した前夜のこと──。現地の高級ホテル、ヴェルサイユに宿泊したラニーとヴィンスは、メイドのアルバイトをする女子大生のモーリーン(レイチェル・ブランチャード)を部屋に招き、一夜のお楽しみに興じた。そして、このモーリーンこそが、人気絶頂のコンビを解散に追い込んだスキャンダラスな事件の被害者だったのだ。
 しかし、全裸でバスタブに横たわるモーリーンの死体が発見されたのは、マイアミではなく、ニュージャージーのホテル、パレス・デル・ソルのスイートルームだった。事件当日、その部屋の宿泊名簿にあったのは、ラニーとヴィンスの名前。だが、テレソンのあと、すぐに護衛付きでニュージャージーへ飛び、死体発見の直前まで記者会見を開いていたふたりのアリバイは、完璧だった。しかも、マイアミにいたはずのモーリーンが、どうやってニュージャージーまでやって来たのか、ラニーの手記からでは足取りがつかめない。
 自殺なのか他殺なのかも曖昧なまま、闇から闇へ葬られていったひとりの女の死。深まるばかりの謎を解き明かそうと、モーリーンの母や、死体発見の瞬間に立ち会った当時の警察署長のもとに出向き、取材をすすめるカレン。やがて、再びヴィンスと接触した彼女は、真実を追っているはずの自分が、頽廃の匂いがたちこめる危険な迷宮の中に足を踏み入れてしまったことに気づく……。

スタッフ

監督・脚本:アトム・エゴヤン
製作:ロバート・ラントス
製作総指揮:アトム・エゴヤン
      コリン・リーヴェンタール
      ダニエル・J・B・テイラー
      ドナルド・A・スター
アソシエイト・プロデューサー:マーク・マッセルマン
               ジュリア・ローゼンバーグ
共同プロデューサー:サンドラ・カニンガム
          クリス・クリサフィス
キャスティング:マリ・フィン
        ジョン・バカン
        レオ・デイヴィス
原作:ルパート・ホルムズ
撮影:ポール・サロッシー
編集:スーザン・シプトン
音楽:マイケル・ダナ
音響:スティーヴン・ムンロ
音楽監修:リズ・ギャラシャー
美術:フィリップ・バーカー
衣装:ベス・パスターナク

キャスト

ラニー・モリス:ケヴィン・ベーコン
ヴィンス・コリンズ:コリン・ファース
カレン・オコナー:アリソン・ローマン
モーリーン:レイチェル・ブランチャード
ルーベン:デヴィッド・ヘイマン
サリー・サンマルコ:モーリー・チェイキン
アリス:キルスティン・アダムス
ボニー・トラウト:ソニヤ・ベネット
オフラハティ夫人:デボラ・グローヴァー
ジャック・スカーリャ:ボー・スター

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