寝ずの番
第30回湯布院映画祭正式上映作品::http://www.d-b.ne.jp/yufuin-c/
2005年/日本/カラー/110分 配給:日本ヘラルド映画
2006年11月01日よりDVDリリース 2006年4月8日、シネスイッチ銀座他全国ロードショー
公開初日 2006/04/08
配給会社名 0058
解説
マキノ映画史100年記念年に、“マキノ雅彦”誕生!
映画に携わる人たちを今でも「カツドウヤ」という。そのカツドウヤの元祖とも言うべき人がマキノ省三である。発明王エジソンが1894年にキネトスコープを世に送り出してから13年、日本がやっと世界の主要国の仲間入りを果たした時代、省三は興行師横田永之助と知り合い、先達となるべく本格的な活動写真を手がけることになった。京都の芝居小屋千本座を経営する省三と後に日活社長になる二人の運命の邂逅である。1907年省三は第1回作品として「狐忠信」の撮影に挑んだ。以来、尾上松之助の忍術映画や阪東妻三郎の時代劇で一世を風靡、その息子・マキノ雅弘は監督として生涯261本の作品を映画史に刻み込んだ。2006年は省三が映画を撮り始めてから丁度100年目。その記念すべき年に、省三を祖父に、雅弘を叔父に持つ日本映画界を代表する俳優・津川雅彦が、マキノ家3代目監督“マキノ雅彦”として大名跡を継承することとなった!
構想3年、カツドウヤ3代目が選んだのは中島らも原作「寝ずの番」!
「津川雅彦という役者もマキノ雅弘に育てられた。いい芝居、悪い芝居のエッセンスは全部もらっている。マキノ節といわれるリズムを復活させたい!」とマキノDNAが開花するにふさわしい夢は企画選びから実現まで決してやさしいことではなかった。日本映画が忘れてしまった“洒落と粋”の世界——そんな世界を愛してやまない俳優・津川雅彦がマキノ姓を襲名して初監督作品に選んだのは2004年7月、52歳の若さで急逝した中島らもの短編3部作「寝ずの番」。ベストセラー作家であり、劇団の主宰者であり、ちょっと過激なロックバンドのリーダーでもあった中島らもが、その独特な語り口で上方落語界の人間模様をお通夜を通して描いた洒落気たっぷりの物語だ。津川が目指す“ドラマチック”は、まさにここにあったのだ!
バチが当たるほど面白い! とことん艶っぽい!大人のエンターテインメント!!
物語の舞台はお通夜だからややこしい。本当は悲しくて寂しくてたまらないのだけれど、そこに集まってくるのは親しい仲間や久しぶりに会う親戚だったりで、それはそれで不謹慎ながら楽しい一夜が繰り広げられる。しかも亡くなったのが上方落語界の重鎮といわれる師匠、一番弟子、おかみさんの3連荘だったからもう大変な騒ぎ。回を重ねる毎に寝ずの番をする故人ゆかりの人たちが、悲喜こもごもの想い出話に花を咲かせ、興が乗れば三味線片手に歌って踊る大パーティーが始まる。そんなエッチで危なっかしい爆笑エピソードの連続の中に師弟の強い愛情、仲間たちの絆が爽やかな涙を誘い、心暖まる感動を生み出している。大人のためのエンターテインメントを目指したマキノ雅彦監督のオモシロ・ダイナミズムが劇的な成果を収めたのだ。
珠玉のキャストが勢ぞろい!
主要登場人物が殆ど噺家ということで、求められたのはテンポの良い台詞の応酬。作品を根っこで支える実力派、一風違った味を添える個性派、そしてフレッシュな若手を選り抜いて起用、その珍妙ともいえる取り合わせゆえに各俳優、役者魂溢れる快演対決となった。「喜劇的センスがある」と当初から主演に想定されていた笑満亭橋太役の中井貴一をはじめ、師匠には監督の実兄である長門裕之、一番弟子に笹野高史、師匠の息子に岸部一徳、橋太の嫁に木村佳乃、おかみさんに富司純子、さらに弔問客に桂三枝、笑福亭鶴瓶、浅丘ルリ子、米倉涼子、中村勘三郎と、“これでもか”という豪華メンバーが顔を連ねる。
なかでも真打(?)として最後の最後、富司純子扮するおかみさんのお通夜のくだりで登場するのが堺正章というのが凄い!堺扮する元鉄工所の社長が突然歌い始めた歌に、「堺さん、ここまでやりますかぁ!」と笑い転げること必至!中井貴一、木村佳乃まで加わって抱腹絶倒の歌合戦が展開されます!!
第18回東京国際映画祭のレッドカーペットを監督と主演の二人が練り歩いて話題を振りまいたのも記憶に新しい。企画・製作は、「の・ようなもの」でデビューを飾り、現在「花田少年史」を製作中の鈴木光。脚本を手がけるのは「星になった少年」等で大活躍中の大森寿美男。
若い子たちにはまだ早い! アノ話で笑ってください、おかみさん!!
「テレビではマネのできない映画らしい映画を撮る!」と宣言したマキノ雅彦監督。狙いはいま流行りの泣ける純愛映画と真っ向勝負の刺激満載“粋”な映画だった。いつの世でも酸いも甘いも知った大人が好きなのは男と女のおもろい話。監督が選んだのは若い子たちにはまだ早いとばかり自立した女性が笑える明るく健康的な艶話。過日その名も“全国商店街おかみさん会”のメンバーが試写室に集結。鑑賞後、監督を胴上げせんばかりに強力なパワーで応援団として名乗りを上げた!酸いも甘いも噛みしめた女性だからこそハマルこの映画の魅力。中でも公には歌えない艶歌合戦は秀逸。四文字言葉満載の歌を中井貴一はもちろん木村佳乃、富司純子、土屋久美子、真由子たち女優陣が大声で歌う。若い娘たちに「この映画を観て一皮も二皮もむけなさい。きっと新しい何かがつかめるよ。」と何気ないメッセージを伝える、これぞマキノマジックの真骨頂なのだ。
ストーリー
上方落語界の重鎮・笑満亭橋鶴—今まさに、臨終のとき。
弟子たちが見守る中、一番弟子の橋次が言った。
—橋次「師匠、何か心残りはありませんか?最期に、これはやっておきたかったということはありませんか?」
橋鶴の口がもごもごと動いた。
「そ、そ○が見たい…」
「!」「!!」「!!!」
皆が呆気に取られる中、橋次はおとうと弟子の橋太に言った。
—橋次「お前、ちょっと家へ帰って、嫁さんを説得してこい」
—橋太「あの、なんですか。うちの女房にそのう、師匠におそ○を見せろと言うんですか?」
—橋次「そうや」
—橋太「……」
果たして“そ○”とは、一体何のことなのか—。
兎にも角にも、師匠の最後の願いを叶えるため、家へ帰り、嫁の茂子と対峙する橋太。
キップはいいが、気に食わないと口より手や足や物が飛ぶといった気の強い茂子。
—茂子「でも、それやったらどうして、志津子ねえさん(橋鶴の奥さん)のを見せてあげへんのよ?」
—橋太「志津子ねえさん?あの人ははっきり言ってばばあやぞ。BABA(ビーエービーエー)ばばあやぞ。師匠かて、いまわの際にそんな婆さんのもの見たくないに決まってるやないか。 お前みたいな美人のおそ○が見たいのは当たり前やろ!お前みたいな美人のおそ○ やないと、あかんのや!」
この言葉にくらっと来た嫁の茂子は、ポンと胸を叩いて言った。
—茂子「わかったわ。あたしかてこう見えて咄家の女房よ。師匠のご臨終に恥ずかしいもへたたもないわ。見せましょう、こんなおそ○で良かったら」
果たして、“そ○”とは、何のことか
—そろそろお分かりですか?
(ちなみに、九州では“ぼぼ”、関西では“おめこ”、東北では“べっちょ”、沖縄では“ほーみー”、淡路島では“おちゃこ”と言うのだそうです)
茂子の到着と入れ替わりに、病室を出て行く弟子たち。
その場には橋太、そしてなぜか橋次が残った。
—茂子「ほな師匠、いきますよ」
というなり、橋鶴のベッドに上がって、相撲取りのように股を割る茂子。
そのまま、橋鶴の顔の辺りまでにじり寄る。
師匠の目は、茂子の股間にじっと注がれていた。
果たして、“そ○”とは
—もうお分かりですね。
役目を終えて、ベッドから下りる茂子。
橋次が、師匠の耳元で囁いた。
—橋次「どうでした、師匠、そそをお見せしましたが」
すると橋鶴は、今にも泣きそうな顔で、弱々しく首を振った。
—橋鶴「……アホウ!そそやない。そとが見たいというたんや……」
—橋次「……そと……!」
—橋太「外!……」
—茂子「……」
—その3分後に、師匠は亡くなった。
えーぇー、咄家だけにこんなそそっかしい噺ばかりですが、これからが映画本番の始まりです。茶子は茶子でも“淡路島のチャコの海岸物語”とか橋太の“初体験の相手はあの魚のエイやった”事件や、“ハワイの芝生マリファナ・パーティ”やらもう、むちゃくちゃ爆笑エピソード一気飲み状態でございますがな。
そうこうしていますとこれがもう大変!橋次兄さん、志津子ねえさんがポックリいっちゃいまして、そんなお通夜の席でこれがこれがまた出るわ出るわのおもろい噺、せつない噺。
もう誰も止められるわけありまへん。亡き骸を引っ張りあげての“らくだのカンカン踊り”、挙句の果てに、志津子ねえさんの元彼が現れて、そう橋鶴師匠の恋敵っていうんですか、その元彼が唄うエッチでシャレた座敷歌のうまいのなんのって…。そのうち負けじとばかり皆が皆歌いだしてしまい、終いにゃ下ウタ合戦って言うわけで…。
師匠、そちらはどうですか?
こんなわけで、こちらは大騒ぎですよ。
スタッフ
企画・製作: 鈴木光
原作: 中島らも
脚本: 大森寿美男
監督: マキノ雅彦(第一回監督作品)
キャスト
中井貴一
木村佳乃
岸部一徳
堺正章
笹野高史
木下ほうか
長門裕之
富司純子
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