2005/日本/113min 配給:映画「ひだるか」製作上映委員会

2006年10月21日よりシネマ・アートン下北沢にてロードショー 2005年7月1日〜18日東京・京橋、MAKOTOシアター銀座にて上映

公開初日 2005/07/01

公開終了日 2005/07/18

配給会社名 0649

解説


■この映画の企画は、25年前から始まった。福岡県・大牟田市出身の映像作家・港健二郎が、故郷・大牟田で幼少のころ体験した「三井三池争議」を題材に書いたシナリオ「洋子・32歳・夏」が、「ひだるか」の原型である。この作品は、その前年に城戸賞準入選に選ばれた「よみがえれ 歌」の続編になり、その年のベスト4に選ばれた。三井三池争議、その3年後の「三川鉱炭塵爆発事故」を背景に高校生の愛と挫折を描いた前作のヒロイン・洋子が、大学卒業後、テレビ・ディレクターとなり三池に取材に訪れ、かっての恋人・修二と再会するというストーリーを通じて三井三池争議の意味を問い直すというものである。このシナリオは、その後、「海鳴り」というタイトルに変わり、台本も印刷されたのだが、映画化には至らなかった。
その後、主人公・洋子も50歳となり、また、時代の推移のなかで東京から三池へ取材に入るという設定も、現状に合わなくなった。そこで、3年前、港は、全面的に改稿し、現在の「ひだるか」として甦ったのである。
 港は、その間の事情と作品の狙いを、こう書き記している。
 「故郷・三池への想い・・・1960年の「三池争議」は、今なお関係した人々にとって鮮烈な記憶としてその胸に刻まれている。しかし、あの「熱き日々」から、すでに40数年。次代を担う若い世代は、その存在さえ知らない・・・三池に生を受けた私。最も多感な少年時代に目の当たりにした「親たちの世界」の厳しい現実。今思えば、社会というものに目を開かせた『私の学校』でもあったのだ。私が映画の道を選んだのも、「いつの日か、三池争議を映像化したい」という想いに突き動かされてのことであった。構想25年。今回、映画「ひだるか」として実を結んだのは、高校の同窓生をはじめとする多くの方々の支援があったからである。「幸せ者」だと心底思う。と、同時に、今という時代が、背中を押してくれたとも感じている。「リストラ」ということが当たり前のように語られる現代の風潮に対する人々の奥深い怒りが、その底流にあると思えてならないからである。だから、物語の基軸としたのは、放送のデジタル化に揺れる現代のテレビ局。「三池争議」は、「石炭から石油へ」という国策の転換のなかで起こった壮大な「反リストラ闘争」でもあった。ある意味、「デジタル化という国策」の中で翻弄される映画の主人公・陽子の苦悩は、かつて、「三池争議」に直面した私の父たちの苦悩と通じるものがあるのではないか・・・というのが、映画「ひだるか」の出発点であった。陽子という若い女性の自立の物語に込められた私の故郷・三池への深い想いが、多くの人々、とりわけ若い世代に届いて欲しいという願いは切なるものがある」
■この映画は、港の出身高校の三池高校や大牟田南高校、大牟田北高校の同窓生を中心に「映画鑑賞券予約署名運動」が2年ほど前から起こり、大牟田はもちろんのこと、東京、大阪、ニューヨークに応援団が発足。製作にあたって鑑賞予約署名(1500円/1枚)、カンパを含めて約800万円が集まった。もちろん、それだけで映画の製作費全体がまかなえたわけではないが、映画の成立に決定的な役割を果たした。また、映画の上映についても港の同級生が配給組織を設立。九州一円の配給・上映に責任を持つこととなった。そういった意味で、映画「ひだるか」は同窓生が作り、見せていく映画だということができる。
■ もう一つの特徴は、プロデューサー、監督、カメラマン以外は、全部福岡、大牟田在住のスタッフで作り上げたということである。今、地方映画な製作が盛んで、数多く作られているが、ほとんどは、東京のスタッフの手による。それは、多くの場合、フイルム撮影であることが多く、今回は、小型ビデオ・カメラ(DVX100)で撮影したことで「フイルム撮影」のノウハウが必要なかったこともある。
 しかし、これからの映画創造の多様化を考えると、福岡という地方から、「劇映画」を自らの力で発信できることを証明したことになり、その意味でも新しい試みの一つといえるだろう。また、キャストも大牟田出身の四方堂亘、たかお鷹、林田麻里、佐賀出身の佐藤允、北九州で演劇活動を行っている山口恭子、福岡の舞台女優・内田宏美、TVキャスターとして著名な福田健次が出演するなだ、まさに、純正・福岡発の映画なのある。
■ヒロイン・陽子を演じた岡本美沙は、関西で活躍するピアニストで、主にタンゴのライブ活動を行ってきた。その岡本美沙が、主演に初挑戦するとともに映画音楽も担当。彼女が作曲し演奏する華麗で美しいタンゴ調の音楽は、すでに試写を見た人々から絶賛されている。主演女優が音楽をも担当する例は、世界の映画の中でも稀なケースではなかろうか。

ストーリー


主人公・原陽子は、福岡の地方TV局で働く花形のニュースキャスター。その職場である福岡中央TV局は、テレビ放送のデジタル化という時代のうねりの中で存亡の危機にたたされ、対応をめぐり労働組合が分裂する。そうした組合分断化は、40数年前の「三井三池」でも起り、分断化で力を弱められた組合側は 1200名を超える仲間の解雇を撤回できなかった。陽子は、職場の組合が分裂するとともに、かつて三池の労働者であった父・謙作の謎の沈黙を大きな契機として、そのとき「三井三池」で何が起こったのかを検証し始め、取材を通じて、 我々の社会に今、何が必要とされているのかを考え始める・・・」

スタッフ

製作総指揮:石川幸男
製作:勝隆俊、吉光清都、猿渡広司
企画:大坪和彦、秋山亮介
チーフ・プロデューサー:天海翔
プロデユーサー:松井守、小池健三
配給プロデューサー:近藤和夫
企画協力:岡田裕、鳥井守幸、木崎敬一郎、山田卓幸、郡島恒昭、山一幸、服部信治、上形憲昭
原作:港健二郎
撮影:馬場良秀
照明:多田俊一郎
美術:安元孝憲
音楽:岡本美沙
録音:藤川一哉
VE:安木茂之
記録・編集:河島東史子
衣装:岡嵜祐子
スタイリスト:清水O子
ヘア・メイク:甲斐都、森田光子
助監督:本田克哉
制作主任:川上理
スチール:大橋弘
監督・脚本:港健二郎
企画・製作:映画「ひだるか」製作上映委員会
(コンシスナップ21ひだるか映画社)

キャスト

岡本美沙(新人)
小田壮史(新人)
内田宏美
佐藤允
入川保則
エド山口
四方堂亘
たかお鷹
林田麻里
佐々木省三
藤本幸弘
矢野宣
福田健次
福田純子
山口恭子
沢田亜矢子(友情出演)
星由利子(友情出演)

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