原題:Riding the Bullet

2004年10月15日全米公開

2004年/アメリカ/カラー/99分/ビスタサイズ/ 配給:日活

2005年12月09日よりDVDリリース 2005年7月23日、新宿トーア他、全国にてロードショー

公開初日 2005/07/23

配給会社名 0006

解説



『キャリー』(76)、『シャイニング』(80)、『デッドゾーン』(83)、『スタンド・バイ・ミー』(86)などを生んだ、モダン・ホラーの帝王スティーヴン・キングの短編「ライディング・ザ・ブレット」は、キング自身が99年に交通事故に遭って重傷を負い、臨死体験を経て生まれた小説である。インターネット上でダウンロードするという、特別な形で発表することになり、48時間で50万部もの売り上げを記録するという快挙を成し遂げた。
そのキングの死生観が込められた原作を、映画『スリープウォーカーズ』(92)やTV映画『シャイニング』(97)などで、何度もキングの映像化作品を手がけてきた盟友ミック・ギャリス監督の手によって、キング小説から、真のキング映画として生まれ変わった。

映画『ライディング・ザ・ブレット』の舞台は、1969年のハロウィン。その頃のアメリカは、べトナム戦争の渦中である一方で、アポロ11号の月面着陸の歴史的な大ニュースに湧いていた。そして英国のカルチャーが流入し、ジョン・レノンや英国のバンドの音楽に心酔していた。希望が溢れる未来を夢見つつ、マリファナでどこか不安を解消するという混迷の時代だった。主人公の大学生アランは、まさに69年を象徴するような若者で、どこか死に対して異常な考えを抱いていた。生死の間をさまよう母親に会うために、入院する病院までヒッチハイクをしようと選択した。それが予想もできないほどの波乱に満ちた恐怖の旅路へと変貌していく。彼は現実の恐怖と、度々現れる死神や悪霊に脅え、過去・現在・未来の真偽すらおぽつかない、恐怖迷宮の世界に入り込んでいく。
アランが体験するその恐怖には、6歳の時に亡くなった父親の死と、12歳の時に死を感じ取ったジエットコースター「ブレット」に秘密が隠されていた。特にアランの心に巣くう恐怖の象徴「ブレット」が、アランのヒッチハイクの旅と徐々に同化していき、恐怖の潮流となって襲いかかる。そしてアランは、まとわりつく不気味な死者ジョージ・ストーブから、”地獄の選択”を迫られる。それは自分に迫る、死の運命でもあった……。
そんな奇妙な世界観の中、英国バンド、ザ・ゾンビーズの名曲『二人のシーズン』、エレクトリック・プルーンズの『今夜は眠らない』、チエンバーズ・ブラザーズの『タイム・イズ・カム・トゥディ』など、60年代にヒットした英米の挿入歌がノスタルジーを誘うように効果的に使われている。

監督ギャリスの頭にあったのは、原作の設定を現在から1969年に変えて、キングの原作にはなかった導入部を加え、アランの過去を詳細に描く必要があった。原作の短編が旅で始まるのに対し、映画では地獄の道行がアランにとって、どれだけの意味を持つのかを明らかにしている。更に、過去の恐怖体験と現在の混乱が交錯することで、終盤でアランに迫る、”地獄の選択”の恐怖が、より一層際立つことになる。本作には、『キャリー』『シャイニング』の純粋な恐怖から、『スタンド・バイ・ミー』『グリーンマイル』(99)などの感情と思考に訴える要素まで盛り込んでいる。そればかりか、キング小説や映画を観ているのなら、ニンマリできるような、お遊び的な場面も楽しいハズだ。まさにキングとギャリスの最良の部分が凝縮された傑作になった。

深遠なホラー映画『ライディング・ザ・ブレット』には、脚本に惚れ込み、ホラー映画やダーク・スリラーを愛する、魅力的なスタッフが結集した。撮影には、カルトなホラー映画『プロムナイト』(80)や『クリープス』(86)を手がけてきたロバート・C・ニュー、音楽には、ギャリス監督作品の『スリープウォーカーズ』(92)、『バーチャル・ウォーズ3』(97)、TV映画『シャイニング』(97)などで組んできたニコラス・パイク、特殊メイクには、『スティーヴン・キング/ナイトフライヤー』(97)、『グリーンマイル』(99)、『アトランティスのこころ』(01)など、多くのキング映画の他、『スクリーム』(96)、、『ゴースト・オブ・マーズ』(01)、『キル・ビル』(03)などの話題作を手がけてきたKNBエフェクツが務めた。そしてユニークな世界観のため、繊細な感情の表現が必要なため、個性的な俳優たちが出演している。恐怖に脅えるアラン役には『ダンシング・ハバナ』(04)で注目のジョナサン・ジャクソン、彼の恋人ジェシカ役には『トラフィック』(00)で本物のヤク中と思わせるような熱演を見せ、『プール』(02)では男性を翻弄するサイコを演じて注目されたエリカ・クリステンセンがあたった。そして作品に厚みを加えるため、アランをブリットに乗せて地獄に導こうとするジョージ・ストーブ役に、『スクリーム』3部作(96〜00)で知られ、コメディからシリアス・ドラマまで幅広い演技で活躍するデヴィッド・アークエット、カンヌ国際映画祭の主演女優賞に2度連続で輝いた名女優バーバラ・ハーシー、そして謎の農夫役を『まごころを君に』(68)でアカデミー賞主演男優賞を受賞し、現在も『スパイダーマン』(02)などの話題作に出演するクリフ・ロバートソンが演じている。
スティーヴン・キングを愛し理解するミック・ギャリスのもと、キングが紡ぎ出してきた恐怖の人間ドラマに魅了されるスタッフ&キャストが、運命によって導かれるかのように『ライディング・ザ・ブレット』に集まってきた。まさに、この映画こそ、真のキング映画の集大成といえるかもしれない。

ストーリー



選択1=”電話が知らせる、恐怖の幕開け”
1969年10月30日、ハロウィン。

アラン・パーカー(ジョナサン・ジャクソン)は、メイン州立大学に通う21歳の画学生である。他の学生と同じく、マリファナを喫い、ロックを楽しみ、ガールフレンドとつきあい、それなりの学生生活を送っていた。だが、どこか他の生徒とは異なり、陰のある雰囲気を漂わせている。わずか6歳で父親を亡くしたことと、ある恐ろしい過去が契機となって、常にクールに客観視する別の自分が存在するようになり、恋人のジェシカ(エリカ・クリステンセン)の言葉さえ、全て否定的にとってしまう。

誕生日にも関わらず、一人でバスタブに浸かりながらマリファナを喫い、カミソリの刃を弄んでいると、かつて自ら描いた死神が現れた、死神は手首にあてて自殺するように誘惑する。そこにジェシカと友人たちがいきなり「誕生日おめでとう!」の声とともに部屋に入ってきた。驚いたアランは、思わず手首に刃を走らせてしまった。

結局、彼は病院に収容され、手首の縫合手術を受けた。ジェシカとは決別することになったが、彼女から特別な誕生日プレゼントをもらった。ジョン・レノンのペアのコンサート・チケットだ。全てから逃れようと、アランはルームメイトと旅の準備を始めるが、そこに電話が掛かってきた。アランの母ジーン(バーバラ・ハーシー)が脳卒中で倒れたという母親の隣人からの電話だった。その知らせを聞いた時のイメージが、6歳の頃に死んだ父親の死と重なった。アランはコンサートを諦め、母親に会いに行くと決意をする。

選択2=”12歳の時に遭遇した、忌まわしき思い出”

アランは自らの旅へ出発する。ヒッチハイクで、遥か190キロ先のルイストン病院に収容された母親に会いに行くのだ。しかし、乗せてくれるのは怪しい男たちばかり。
意を決して向かったこの旅は、アランを恐怖迷宮の世界へと誘っていく。カラスが喋りはじめたり、自動車事故の犠牲者が突然掴みかかってきたり、亡き父親の姿を目撃したりと、不気味な幻想に苛まれる。それは生と死の狭間の道行であり、絶え間ない幻想と恐怖が、彼の過去・現在・未来を徐々に明らかにしていく。

ヒッチハイクしようと腕を上げると、その小型トラックには銃を持った田舎の荒くれ者たちが乗り込んでいた。執拗に追いかけられ、必死で逃げ回っている時、遊園地”スリルビレッジ”のジェットコースター「ブレット」の恐怖と苦い思い出が蘇ってきた。12歳のときに母親と一緒にせっかく長い行列に並びながら、いざ乗る番になって、急にやめてしまった苦い思い出。実は「ブレット」に乗る直前になり、アランの目には、乗っている自分が死神に突き落とされる恐怖の光景が映ったからだ。それこそが彼が抱き続けていた恐怖<トラウマ>だったのだ。たまたま紛れ込んでしまった墓地で、アランは自分と同じ誕生日のジョージ・ストーブという男の墓が目に入った。2年前の今日、亡くなったとされるその墓には、r楽しむことと、死は全く別」と墓碑銘が刻まれていた。

選択3=”恐怖から逃れるための究極の選択”

次に、あの墓の男ジョージ・ストーブ(デヴィッド・アークエット〉の車に乗ってしまう。彼は何年も前に起きたハイウエイ事故で、頭がちぎれて死んだ。そして今は、死神の伝令者として生者の魂を集めている。ジョージは、アランとその人生について異常なまでに多くのことを知っていた。彼はアランに、父親が自動車事故で死んだのではなく、自殺だったことを教える。そしてジョージは、アランに《究極の選択》を迫る。アランか、母親か、どちらかが、恐怖と死の象徴である「ブレット」に乗ることになる。もし、その選択を拒めば、二人共、命が奪われるのだ。時間が差し迫っている、次の町に着くまでに、アランは決断しなければならない。
アランは、自分か、母親か、ジョージに告げなければならない……。

スタッフ

監督・製作・脚本:ミック・ギャリス
特殊メイク効果:KNBエフェクツ

キャスト

ジョナサン・ジャクソン
デヴィッド・アークエット
エリカ・クリステンセン
バーバラ・ハーシー
クリフ・フロバートソン

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