原題:Bomb the System

2005年5月27日全米公開

2002年/アメリカ/カラー/91分/アメリカンビスタ/ドルビーデジタル/ 配給:メディア・スーツ/ナウオンメディア

2006年04月04日よりDVDリリース 2005年9月3日より、シブヤ・シネマ・ソサエティにてロードショー

公開初日 2005/09/03

配給会社名 0066/0502

解説


 “グラフィティ”とは、街中にスプレーで思い思いのデザインや主張をペインティングする落書きアートのこと。MC、DJ、ブレイクダンスと並ぶヒップホップ・カルチャーにおける4大要素のひとつである。法の目をくぐって絵を描き、やがては権力によって消されていく“アート・クライム(芸術犯罪)”。このグラフィティに自らの存在証明を賭ける、ストリートの若者たちを描いた。鮮烈な青春映画の傑作が登場した。
 舞台はヒップホップの本場、ニューヨーク。ブレストの異名を取る19歳の白人青年アンソニーは、ローカル・シーンで最高の評価を受けているグラフィティ・ライターだ。彼はNY市警のヴァンダル・スクワッド(落書き取り締まり班)のしつこい追跡を交わしながら、毎晩ハンドスタイルで街中の壁に向かい、見事なアートをモノにする。だがクルー(仲間)の逮捕をきっかけに、NY市警との衝突が激化。事態は予測のつかぬカオスへと展開し、ブレストはひとつの決断を迫られる…。
 ヒップホップ・カルチャーを扱った劇映画はたくさんあるが、ここまでグラフィティを中心に据えた作品は、ヒップホップ映画のバイブルとして伝説化している『ワイルド・スタイル』(82年)と『ビート・ストリート』(84年)以来、実に20年ぶり。しかも80年代当時のNYでは、地下鉄の車体や駅のプラットホームがグラフィティの舞台だったが、現在ではよりアンダーグラウンドな都市の闇部へと場所を移し、シーンの様子も一変している。また、NYの“現場”でロケしているため、いまではもう消されてしまった、日本では拝めない幻のグラフィティの数々を唯一見ることができる映画としても、大変貴重な一本なのだ。
 主人公ブレストを演じたのは、自らプロデューサーも兼任したマーク・ウェバー。トッド・ソロンズ監督の『ストーリーテリング』(01年)で無気力なティーンエイジャーを、ウディ・アレン監督の『さよなら、さよならハリウッド』(02年)でアレン扮する映画監督のトラッシュな息子役を演じ、さらに日本公開待機作として、ラース・フォン・トリアー脚本作『Dear Wendy』(05年)、今年のカンヌ国際映画祭でグランプリに輝いたジム・ジャームッシュ監督の『Broken Flower』(05年)がある。鬼才監督からのオファーが続く注目の新進俳優だ。シングル・マザーに育てられ、一時はホームレスも体験した彼は、ストリートの感触と苛酷さを肌で知っており、ブレストの個性に確かなリアリティを与えている。
 監督は、これが長編デビュー作となるアダム・バラ・ラフ。23歳にして堂々とした語りのスキル、そしてその若さならではのみずみずしい感性を見せつけた彼は、インディーズ映画界のアカデミー賞とも呼ばれるインディペンデント・スピリット・アワードで、最優秀新人賞にノミネート。さらにサンフランシスコ・インディペンデント映画祭の作品賞など、数多くの映画祭で重要な賞を獲得した。音楽はNYアンダーグラウンド・シーンのカリスマ的トラックメイカー、元カンパニー・フロウ、現デフィニティヴ・ジャックスのエル・Pが手がけている。
 NYはヒップホップ・カルチャーが生まれた街。同じ2002年にハリウッド・メジャーで制作された笑みネム主演の『8Miles』が、デトロイトという地方都市からの成り上がりを目指す物語だったのに対し、『ボム・ザ・システム(体制を爆破しろ)』は、中心地でうごめく“本物”のシーンに捧げた青春劇詩だ。ヒップホップ映画の新たなマスターピースとして、長く記憶されることになるだろう。

ストーリー



「絵描きは自分が捕まるとは予期しない。警官が自分が撃たれるとは予期もしないように」
ニューヨーク。“ブレスト”の愛称で知られる19歳のアンソニー・カンポーは、地元のシーンで最も注目を浴びているグラフィティ・ライター。彼は今夜もクルーと共に、盗んだペンキを使って、ストリートの壁という壁に、自分のアートを表現しつづける。
 そんな彼らの天敵が、NYPD(ニューヨーク市警察)の“ヴァンダル・スクワット(落書き取り締まり班)”のイカレた白人男、ボビー・コックスだ。相棒の黒人青年ショーツは、元グラフィティ・ライターだったが、今ではボビーの言いなりになっている。
 ブレストたちの溜まり場は、連日パーティーを開いているヘイザーの家だ。彼は、伝説のグラフィティ・ライターであるブレストの兄の幼なじみ。その兄はブレストが7歳の時に死んだ。母親は、仕事もせず学校も行かず落書きアートに熱中するブレストが、兄と同じ道をたどるのではないかと心配している。
 ある時、ブレストはアレックスというストリートで独自の政治活動を行っている女の子と知り合い、瞬く間に恋に落ちる。だがちょうど同じ頃、クルーのひとりであるケビン・“ルーン”・ブローディーがボビー・コックスに逮捕され、顔をナイフで切られる事件が勃発。それが対立の激化の始まりだった。ケビンの兄のジャスティンは、帰ってきた弟と共にNYPDに“戦争”を仕掛けていく。
 そして運命の夜。ブレスト、ケビン、ジャスティンの3人が佇んでいるところに、ヴァンダル・スクワットの二人組みが乗り込んでくる。まもなくボビー・コックスともみ合っているうちに、ジャスティンが転落死してしまった!悲しみに暮れるブレストは、果たしてどういった決断を下すのか…?

スタッフ

監督:アダム・バラ・ラフ
製作:ベン・レキー
撮影監督:ベン・カットチンズ
編集:ジェイ・ラノヴィッツ

キャスト

マーク・ウェバー
ゲイノ・グリルズ
ジャクリン・デ・サンティス
ジェイド・ヨーカー

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