原題:Kinsey

2004年11月12日全米公開

2004年/アメリカ/カラー/118分/ 配給:松竹

2007年11月28日よりDVDリリース 2006年03月20日よりDVDリリース 2005年8月27日、新宿シネマスクエアとうきゅう、シネスイッチ銀座にてロードショー

公開初日 2005/08/27

配給会社名 0003

解説



350の質問を全米1万8000人にたずねたキンゼイ博士が、
最後にたどり着いた、たった一つの答えとは?

世の中の人たちは、一体どんなセックスをしているのだろうか? 自分の愛情表現は普通なのか、それとも少し変わっているのだろうか? そんな誰もが抱く疑問を、なんと350もの質問にして1万8000人にぶつけ、その結果をまとめた一大レポートが実在する。それが、世界中で大反響を呼んだ「キンゼイ・レポート」だ。
 さらに驚くことに、「キンゼイ・レポート」が出版されたのは、今から50年前。性について語ることはタブーだったアメリカで、どうやって、そんなにたくさんの人々から、プライベートな秘密を聞き出すことができたのか? その方法は実にユニークかつ大胆だった。調べたのは、アルフレッド・キンゼイ博士。アメリカのインディアナ大学の動物学の助教授だ。キンゼイは、助手たちを連れてアメリカ各地を訪問し、多種多様な年齢・職業の人々に、一人一人面と向かって直接インタヴューを行った。相手が細かく答えられるように練りに練られた質問と、正直に話してくれるように何度も練習を重ねた方法で。
 そうやって集めた調査結果を男性版と女性版に分けて出版、誰もが知りたかったのに誰も聞けなかった他人の性体験を、史上初めてまとめ上げた 「キンゼイ・レポート」は、今もなお語り継がれる驚異の大ベストセラーになった。
 「キンゼイ・レポート」を手にした人々は、あっと驚いたかと思うと、深くうなずきながらページをめくり、好奇心を大いに満足した後、キンゼイが証明したかった”ある真実”に感動する。それは、人間は一人一人違うのが当たり前だということだった。性行為の分析を通して、人間には”多数派と少数派”が存在するだけで、”ノーマルとアブノーマル”という分け方はないと主張したのだ。それは、”自分らしく生きたい”という、現代社会では誰もが抱く願いを持つ人々に、勇気と希望を与えたのだ。
 さらに、映画では、「キンゼイ・レポート」を出版した後も、人生のすべてを科学に捧げたキンゼイが、最後には科学の限界を知る姿を描き出す。何百万という質問を繰り返したキンゼイは、結局人間にとって一番大切なものは、科学では測定不可能の”愛”だという、たった一つの答えにたどり着いたのだ。彼をその答えに導く手助けをしたのは、栄光の時の輝かしい喜びも、世間の非難を浴びた身を切るような苦しみも共に分かち合い、魂で強く結ばれた妻のクララだった。

実在の人物を”生きた”ハリウッドが誇る演技派キャストと
愛の真実に迫った個性派スタッフ

キンゼイを演じるのは、「シンドラーのリスト」でアカデミー賞にノミネートされ、「キングダム・オブ・ヘブン」「バットマン ビギンズ」など話題作に次々と出演しているリーアム・ニーソン。人を惹きつける魅力と、一流の研究者としてのカリスマ性に隠された、愛を求める孤独な魂を見事に演じきり、本作でゴールデン・グローブ賞にノミネートされた。妻クララに扮するのは、「ミスティック・リバー」「ラブ・アクチュアリー」のローラ・リニー。自分の人生が夫の研究に巻き込まれることに葛藤を抱きながらも、自立した人間同士が信頼と敬意の上に愛を築くという、理想的なパートナーシップを貫き通すクララを演じ、ゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされた。
 その他、キンゼイの研究を支えた3人の助手に、「バーティカル・リミット」のクリス・オドネル、「K-19」のピーター・サースガード、「普通の人々」でアカデミー賞に輝いたティモシー・ハットンが扮している。また、キンゼイの人格形成に大きな影を落とした父親役で「ガープの世界」「愛と追憶の日々」でアカデミー賞にノミネートされた名優ジョン・リスゴーが出演、息子と初めて心を通わせるシーンが、観る者の胸を熱くする。
 監督は、「ゴッド・アンド・モンスター」でアカデミー賞脚色賞受賞、「シカゴ」では同賞にノミネートされたビル・コンドン。本作でも自ら脚本を手がけ、波乱に満ちたキンゼイの人生のエピソードから、愛とは、人間とは何かを問いかける普遍的なドラマを引き出した。撮影は「ワイルド・アット・ハート」などデヴィッド・リンチ監督作品を手がけたフレデリック・エルムス、音楽は「バーバー」などコーエン監督作品で知られるカーター・バーウェル。また、「ゴッドファーザー」「地獄の黙示録」の巨匠フランシス・フォード・コッポラが、製作総指揮を務めている。

ストーリー



すべては”インタヴュー”から始まった──
秘密を聞き出すテクニック
 インディアナ大学の動物学の助教授、アルフレッド・キンゼイ(リーアム・ニーソン)は、3人の助手、クライド・マーティン(ピーター・サースガード)、ワーデル・ポメロイ(クリス・オドネル)、ポール・ゲブハルト(ティモシー・ハットン)に質問の仕方を指導していた。キンゼイは、アメリカ人が今までタブー視してきたセックスの実態について調査するために、独自のインタヴュー・テクニックを開発したのだ。

少年時代──
家に戻るのがとても悲しかった
 インタヴューの練習で質問される役を引き受けたキンゼイは、両親との仲を聞かれて、エンジニアの父(ジョン・リスゴー)を思い出す。日曜学校の教師も務め、不道徳な行為を戒めていた厳格な父は、早くから息子も技術者にすると決めていた。
 少年時代のキンゼイは、病弱な体を鍛えるためにボーイ・スカウトに入り、野生動物の観察に熱中する日々を送っていた。その後、父の命令通り工科大学に進むが、生物学への情熱は断ち切れず、ボードン大学に転入する。父は激怒し、二人の関係は修復不可能なほど悪化する。

タマバチの秘密──
親を恨んでいる人には良い報せだ
 ボードン大学卒業後、ハーバード大学で博士号を得て、インディアナ大学の助教授になったキンゼイは、友人も恋人も作らず、ひたすらタマバチの研究に没頭する。キンゼイを虜にした最大の理由は、3年間全国を旅して採集した何千というタマバチの中に、一つとして同じものがいないということだった。自分は父と似ていないし、どうやら周りの人たちからも孤立している。そう感じていたキンゼイは、違うことが当たり前のタマバチが、自分の存在を祝福してくれるような気がしたのだ。

結婚──
すぐにおとずれた最初の夫婦の危機
 キンゼイの講義に熱心に耳を傾ける女学生がいた。彼女の名はクララ・マクミレン(ローラ・リニー)、キンゼイと同じ無類の昆虫好きだった。クララから声をかけ、二人は急速に親しくなる。何事も夢中になると一直線のキンゼイは、まもなくクララにプロポーズ、返事を留保する彼女に子供のように怒るが、数日後、クララは結婚を承諾する。
 文字通り二人とも、初めての夜だった。痛がるクララに無理強いすることなど、キンゼイには出来なかった。「専門家に相談すればいい」常に前向きなキンゼイの発案で、二人は医師の指導を仰ぎ、最初の夫婦の危機を素晴らしい体験に変えることに成功する。

キンゼイにも答えられない質問──
私は正常ですか?
 自信を得たキンゼイが、同じ悩みを持つ学生の相談に乗っているうちに、講座を開いてくれと頼まれる。最初は躊躇した校長(オリバー・プラット)も、衛生学は既に時代遅れだと気付き、”結婚講座”の開講を許可する。キンゼイの率直な教えに講座は大人気となるが、学生たちの質問は多岐にわたり、キンゼイの知識では到底答え切れなかった。セックスという分野がいかに未開拓かを思い知ったこの時、キンゼイは科学者として実態を調査することを決意したのだ。最初に助手になったマーティンは、この時の講座の学生だった。

新たなる関係──
心と身体は別々なの?
 キンゼイとマーティンはインタヴューの旅に出る。クララは3人の子供と留守をまもる。二人の娘は父親の研究に理解を示していたが、息子は反発していた。
 今回の旅は、シカゴの同性愛者に話を聞くことが目的だった。彼らは偏見を持たないキンゼイに心を開き、進んで質問に答える。同性愛の経験があるマーティンはそんなキンゼイに惹かれ、キンゼイは未知の体験に惹かれ、二人は宿泊先のホテルで関係を持つ。
 帰宅したキンゼイは、クララに包み隠さず告白する。クララは、キンゼイを理解しようと努力するが、キンゼイに愛の存在だけは忘れてほしくなかった。

“原子爆弾並みの衝撃”──
遂に出版された調査結果の報告書
 校長の計らいで、キンゼイはロックフェラー財団のアラン・グレッグ博士(ディラン・ベイカー)と会い、調査のための資金援助を取り付ける。益々調査・分析に忙殺されていた時、母が亡くなる。葬儀で、相変わらず威圧的な態度の父に腹を立てたキンゼイは、半ば強引に父にインタヴューを試みる。父は静かな口調で過去の辛い体験を告白、キンゼイは初めて知った父の苦しみに胸を痛めるのだった。
 遂に調査結果をまとめた「キンゼイ・レポート」男性版が発売され、大ベストセラーとなる。連日マスコミに追いかけられ一躍有名人となったキンゼイは、次は女性版を出すと宣言する。

地に落ちた名誉──
キンゼイが発見したものとは?
 キンゼイは世間の注目のなか、女性版を出版するが、マスコミから激しいバッシングを浴びる。まだ、アメリカ社会は、女性の性の解放を認めるほど開かれてはいなかったのだ。その日から、事態は次々と暗転する。議会からかけられた共産主義者疑惑、ロックフェラー財団の資金援助打ち切り、助手たちのトラブル、体を蝕む心臓の病……。
 しかし、数々の危機を乗り越えたクララの愛と信頼だけは、一瞬たりとも揺らぐことはなかった。そして面接調査を続けるキンゼイは、一人の女性(リン・レッドグレーブ)の告白から、科学の域を超えたある発見をするのだった……。

スタッフ

監督・脚本:ビル・コンドン
プロデューサー:ゲイル・マトラックス
製作総指揮:マイケル・カーン
     フランシス・フォード・コッポラ
     ボビー・ロック
     カーク・ダミコ
撮影:フレデリック・エルムス A.S.C.
美術:リチャード・シャーマン
編集:ヴァージニア・カッツ
衣装デザイン:ブルース・フィンレイソン
共同プロデューサー:リチャード・グァイ
音楽:カーター・バーウェル

キャスト

(アルフレッド・キンゼイ):リーアム・ニーソン
(クララ・マクミレン):ローラ・リニー
(ワーデル・ポメロイ):クリス・オドネル
(クライド・マーティン):ピーター・サースガード
(ポール・ゲブハルト):ティモシー・ハットン
(アルフレッド・シークイン・キンゼイ):ジョン・リスゴー
(サーマン・ライス):ティム・カリー
(ハーマン・ウェルズ):オリバー・プラット
(アラン・グレッグ):ディラン・ベイカー
(最後にインタヴューを受けた女性):リン・レッドグレーブ

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