原題:5×2

2004年9月1日フランス公開

2004年/フランス/カラー/90分/ 配給:ギャガ・コミニュケーションズ

2006年02月24日よりDVDリリース 2005年8月20日、シャンテシネ他ロードショー

公開初日 2005/08/20

配給会社名 0025

解説


『8人の女たち』『まぼろし』のフランソワ・オゾンが描く
ある夫婦の 別れ から 出会い に時間を遡る
愛に関する5つの季節。
そこには愛の行方を占う5つの分かれ路があった——
愛の痛みを知るすべての大人の女性たちへ
結婚が永遠の誓いではなくなった現代、恋愛は終わるのだという結末から出発し、
そこにある幸せをみつめなおさせてくれるラブ ・ ストーリー
 恋愛には、必ず終わりがある。認めたくはないがいつかは訪れるその事実。しかし、ひょっとしたら、その現実を認めた時から、愛はもっと輝くのかもしれない。
 『8人の女たち』で絢爛豪華なキャストと舞台設定で世界中の女性を虜にし、喪失と再生を描いた『まぼろし』で全世界を涙させたフランソワ ・ オゾンが挑んだ新作『ふたりの5つの分かれ路』は、シンプルに一組のカップルの「恋愛」に焦点を絞るというスタイルで、新たなる愛の謎に迫った野心作。
 夫婦の離婚調停の席から始まり、あるディナー、出産、結婚、恋に落ちた瞬間へと時間を遡る物語は、時間軸の逆さの妙が夫婦のディテールと軌跡をなぞり、二人の関係がいつから、どう変化していったのか、何故終りに向かったのかという問いへの答えを、わずかな謎を残しながら克明に切り取っていく。随所に仕掛けられた名作へのオマージュ。結果が分かっているから、浮き彫りになってくる別れへの伏線。「結婚」が永遠の近いでなくなった現代に、恋愛は終わるものなのだという結論から出発して、「だから愛は輝く」ことに気付かせ、そこにある幸せを見つめなおさせてくれるラブ ・ ストーリー。
 愛とは、結婚とは、夫婦とは、離婚とは・・・。オゾンの誘う新たなる愛のミステリーへようこそ。

婚約指輪をはめる前に、結婚指輪を外した後に──
あるフランスの夫婦の5つのエピソード
 淡々と事務的に離婚の手続きをする夫婦。いまやどこにでもある風景だ。しかし、マリオンとジルは少し違った。その後、とあるホテルへと向かい、何年かぶりに、しかし慣れた手順で互いの素肌に触れたのだ。けれども愛の奇跡は起きることなく、やがて2人はわかりきった結末に、予想外の道筋でたどり着く。閉じられるドア、立ち去るマリオン。そしてそこから、2人の時計は左に回り、思い出のページは逆へとめくられる。──微かに感じていた不協和音がはっきりと聞こえた特別なディナー、分かち合うはずの喜びが曖昧に溶けていった出産、幸せに酔いつぶれて小さな翳りを見逃した結婚、そして何の理由も根拠もなく真っ直ぐに恋に落ちていく瞬間……。
 それは、ある男女の人生における5つの重要な瞬間であり、夫婦の愛の行方を占う5つの分かれ路だった。ほんの少しのかけちがいが、埋められない溝になっていくこともある。「あの時ああ言っていたら」「あのときこうしなければ」後悔は先に立たない。しかし彼らは間違いなく愛し合い、明るい未来を信じていた本当のカップルだった。大切なのは別れという結末ではなく、ふたりが愛の一部始終を経験したこと。たとえ失敗し、苦い経験となってもラブ ・ ストーリーはいつでもハッピー ・ ビギニングであることを忘れず、愛を信じることを肯定したい。

オゾン新ミューズのヴァレリアをはじめ、フランスの新旧の才能が集結
マスコミが「最高傑作」「最も心を揺さぶる作品」と大絶賛!
 シャーロット ・ ランプリング、リュディヴィーヌ ・ サニエに続く、オゾン監督の新ミューズは『10ミニッツ ・ オールダー』『愛する者よ、列車に乗れ』のヴァレリア ・ ブルーニ ・ テデスキ。シャロウ組で鍛えられ、スーパーモデル、カーラ ・ ブルーニの姉でもある彼女は本作で、若さと成熟、幸福と倦怠という時間 ・ 心理状態に幅のある難しい役どころに挑み、髪型や服装、ボディラインなど外見上の工夫はもちろん、時間が戻るに従って、魂に積もった澱のような悲しみが徐々に抜け、輝くような無垢の美しさを取り戻していくという様を見事に演じている。
 夫のジルに扮するのは、『私たちが結婚した理由』『仮面の愛 マスカレード』のステファン ・ フレイス。愛の本質を掴みきれない男の孤独を台詞ではなく、繊細な表情と肉体の動きで雄弁に物語っている。
 その他、フランスの演技派たちが脇を固めた。マリオンの母モニクには、『遠い日の家族』『思い出のマルセイユ』のベテラン女優、フランソワーズ ・ ファビアン、ジルの兄のクリストフには、『家路』『クレーヴの奥方』のアントワーヌ ・ シャピー、ジルの前の恋人、ヴァレリーには、『IP5 愛を探す旅人たち』『パリの確率』のジェラルディン ・ ペラスが扮している。
 スタッフにはオゾン組が集結、台詞を必要最小限に絞り、精緻に練られた共同脚本は『まぼろし』『スイミング ・ プール』のエマニュエル ・ ベルンエイム、室内、病院、結婚式、海岸とエピソードごとに全く違う風景を切り取った撮影は、『スイミング ・ プール』のヨリック ・ ルソー、時間の流れを衣裳で表現したのは『8人の女たち』のパスカリーヌ ・ シャヴァンヌ、感傷的な音楽を抜群の手さばきで配したのは、『まぼろし』『スイミング ・ プール』のフィリップ ・ ロンビ。

ストーリー

30代の若いカップル、ジルとマリオン。
時は遡り、愛の軌跡と別れへの伏線が浮かび上がる。

1、 2人のことなど何も知らない男が言った
「離婚が成立しました」
 
書類2枚へのサインで、2人のラブ ・ ストーリーは終わるはずだった。しかし、離婚手続きを終えたマリオン(ヴァレリア ・ ブルーニ ・ テデスキ)とジル(ステファン ・ フレイス)は、小さなホテルの薄暗い廊下を歩いていた。
 離れていた時間を埋められるとでも思ったのか、性急に肌を重ねる2人。その虚しい錯覚に気づいたのは、マリオンの方だった。拒絶するマリオンを、無理やり押さえつけるジル。マリオンの大きな瞳から、最後の未練が一筋の涙になって流れ落ちた。
 服を着て、立ち去ろうとするマリオンに「君の勝ちだ」と言い放つジル。「勝ち負けじゃない。終わっただけよ」それでもなお「やり直せないか?」と問いかけるジルに、見知らぬ他人を見るような一瞥を投げかけたマリオンは、黙ってドアを閉める。
 そして、2人の時計の針は、出会いの日に向かって、静かに逆さまに回り始めた……。

2、夫があるディナーの席で語る
「僕は1度だけ裏切った」

 その日、マリオンとジルは、ジルの兄のクリストフ(アントワーヌ ・ シャピー)をディナーに招く。少し遅れて、ゲイのクリストフの新しい恋人、マチュー(マーク ・ ラシュマン)も到着する。
 まだ若いマチューの浮気話に触発されたジルが、突然口を開く。「普通の夫婦の不倫話を聞きたいだろ?」それは、マリオンと参加したパーティが、真夜中過ぎに乱交パーティに変わったという話だった。ジルは、見ているだけの彼女の前でその輪に加わり、男とも関係を持ったと語る。ディテールの説明に心を砕き、次第に口調が得意げに変わるジルと、顔から表情が消えて行くマリオン。
 酒が見せた一夜の幻が、言葉の力を借りて残酷な現実に変わった瞬間、マリオンの艶やかな瞳から、信頼が一滴の涙になって零れ落ちた。

3、妻の出産に戸惑う夫
「予定していなかったので……」
 マリオンの出産は予定より早まり、しかも帝王切開になった。知らせを受けたジルは「すぐに行く」と答えたものの、ぐずぐずと時間をつぶし、病院に着いたのは、出産後3時間も経ってからのことだった。保育器に入れられた未熟児の息子を、マリオンの母モニク(フランソワーズ ・ ファビアン)に責められながら見ているうちに、気分が悪くなってしまうジル。
 結局ジルはマリオンに会わずに病院を出てしまう。夜遅く、車の中からようやくマリオンの携帯に電話をかけるジル。「なぜ帰ったの?」「分からない。ごめん……」病院で痛みも喜びも分かち合わずに、離れた所から「愛してる」というジルの声が耳に届いた時、マリオンの真っ直ぐな瞳から、希望が、にじむ涙になって目尻に消えた。

4、結婚式の日、
「幸せ」と言いすぎたのかもしれない

 真っ白なウェディングドレスに身を包んだマリオンは、どこから見ても一点の曇りもない幸せに包まれた花嫁だった。披露宴の席で踊り疲れたマリオンとジルは、抱き合いもつれ合いながらホテルの部屋へ入る。しかし、マリオンがバスルームでドレスを脱いでベッドに戻ると、ジルは酔いつぶれて眠ってしまっていた。
 宙ぶらりんの気持ちのまま、庭に出たマリオンは、ホテルの宿泊客であるアメリカ人青年に声をかけられる。タバコを1本一緒に吸って、部屋に戻ろうとするマリオンを強引に引き寄せる男。逃れようとするマリオンの手が、やがて男の顔を引き寄せる。
 マリオンが息を弾ませて部屋に戻ると、ジルは熟睡していた。安心したマリオンの笑顔が似合う唇から、ジルの頬に「好きよ」という言葉が、花びらのように舞い散った。

5、出会いは、カリプソの海。
太陽は希望に輝いていた

 ジルは恋人のヴァレリー(ジェラルディン ・ ペラス)と共にカリプソで夏の休暇を楽しんでいたが、付き合って4年、互いへの不満が、少しずつ形になり始めてもいた。ジルは海で、付き合い先の会社の若い女性、マリオンとバッタリ出会う。友達が急に予定を変更したため、一人旅だというマリオンを夕食に誘うジル。
 無垢な瞳にはにかんだ優しい笑顔。そんなマリオンが恋人と別れたばかりだと聞いたとき、ジルは彼女に惹かれ始めたことを意識する。
 翌朝、山登りのヴァレリーと別行動をとったジルが海岸に出ると、マリオンが日光浴をしていた。他愛のないおしゃべりを始める2人。やがて2人は海に入り、幸せな未来へ、輝く明日へと、肩を並べて泳ぎ始める……。

スタッフ

監督・脚本:フランソワ・オゾン
共同脚本:エマニュエル・ベルンエイム
撮影監督:ヨリック・ルソー
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
音楽:フィリップ・ロンビ
音響:ジャン=ピエール・デュレ
キャスティング:アントワネット・ブーラ
編集:モニカ・コールマン
ミキサー:ジャン=ピエール・ラフォルス
ラインプロデューサー:マリー=ジャンス・パスカル
製作:フィデリテ

キャスト

ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ
ステファン・フレイス
ジュラルディン・ペラス
フランソワーズ・ファビアン
ミシャル・ロングール
アントワーヌ・シャビー

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