平成15年度東京ウィメンズプラザ民間活動助成対象事業

2004年/カラー/83分/ 配給:パイオニア映画シネマデスク

2005年4月16日、ポレポレ東中野にてモーニングショー

公開初日 2005/04/16

配給会社名 0147

解説


世界から忘れられた国

 アフガニスタンは、建国以来、イギリスやロシア、アメリカなどの大国、さらに隣国イランやパキスタンなどに翻弄され続けました。1979年のソ連の侵攻、そして十年後の撤退、さらにその後も続く内戦、過激なイスラム原理主義の台頭、タリバン支配、9.11以降の米軍攻撃まで激動の渦に中にありました。その結果、やむなく国を逃れる難民も絶えることがありませんでした。そして戦いと難民が日常化してしまったこの国はやがて、世界から忘れられた国となりました。

 こうした状況に対して、多くのアフガニスタン人は言います。「戦争前は、平和でよかった」と。しかし「平和でよかった」と思われた時代に重大な問題があったから、戦争をまねいたのです。多くの人々が漫然と「平和」だと思っている間に、問題が悪化し、気がついたときには戦争に突き進むしかなくなっていたといえるでしょう。それは日本の現在とも重なり合う状況なのです。

 アフガニスタン内戦の原因は、何だったのでしょうか?そして、なぜ、20年以上も戦いが続いてしまったのでしょうか?長期にわたる戦争は、社会や人々に何をもたらしたのでしょうか?

「平和」に潜む罠

 アフガニスタンでは長い間、女性は男性に従って生きるものとされ、多くの女性は読み書きを学ぶことすら許されませんでした。それは、力の強いものが支配し、服従を強いる社会でもありました。こうした社会のありようが、内戦の一因だったのではないかと思います。

 アフガニスタン内戦の原因が、今なお未解決であるなら、再び同じ悲劇を繰り返すことになるかもしれません。

 アフガニスタンに悲劇をもたらした原因が何だったかを見つめることで、「平和」に潜む罠の存在を提示したいと思います。そして、アフガニスタンや日本、世界の国々で、同じ悲劇を繰り返さないために、わたしたち一人一人に何ができるのか、何をすべきなのかを考えるきっかけになればと願い、「ヤカオランの春〜あるアフガン家族の肖像」を制作しました。

ストーリー


やがて教師は語り始めた。
   封印された暗い過去の秘密を、
      故郷で起こった衝撃の真実を—。

 2003年春、パキスタン・ペシャワール郊外のアフガン難民キャンプ。アリ・アクバル(51歳)とその家族は、難民生活を送っている。教師のアクバルは、難民キャンプの学校で子どもたちにアフガニスタンの歴史や地理を教えて細々と暮らしを支えていた。一見平穏な日常生活の中で、彼は、暗い過去の記憶に苦しんでいた。その胸中に去来するのは、戦争に翻弄された無念の人生、亡くなっていた人々の思い出、そして、今なお還ることのできない祖国アフガニスタン、故郷ヤカオランへの望郷の想いであった。また、拷問などで痛めつけられた身体は思うように動かず、目も少しづつ見えなくなりつつあった。

 これ以上、教師を務めることは困難と悟ったアクバルはある日、子どもたちを前にこれまで自分が生きてきた人生を語り始めた。故郷で、祖国で何が起き、何が変わっていったのか。村の人々や自分の兄弟、親戚がどのようにして生命を落としていったのか。妻や娘たちがなぜ、教育を受けることも出来なかったのか。祖国の明日を担う子どもたちに、どうしても伝えなければいけないと考えたアクバルの特別授業であった。

 授業は次第に熱をおび、子供たちとのやりとりは、緊迫していく。やがて、教師アクバルは、決して語るまいと心の奥底に封印していた暗い過去の秘密を吐露し始める。それは、故郷で起こった衝撃の真実だった。

ヤカオランとは、ダリ語で「ひとつの美しい大地」
   そのヤカオランを吹き抜けた風の中に人びとは還っていく。

 ヤカオランは、アフガニスタンの首都カブールから西北に約350km離れた地方であり、アフガニスタンを南北に貫くヒンズークシ山脈の山岳地帯にある標高2500mを越える高地である。ヤカオランの行政府ナヤクは、2001年3月にタリバンによって破壊されたバーミヤンの石仏から西へ約100キロの地点にある。首都カブールからバーミヤンまでは車で約8時間、さらに、ガタガタの道を走ること数時間でナヤクに到着する。2002年10月に初めてナヤクを訪れたとき、戦火の爪痕が生々しく、ゴーストタウンのようだった。ナヤク周辺には小さな村が数多く点在するが、道らしい道もなく、電気も通じていない。

スタッフ

企画・制作・監督:川崎けい子/中津義人
取材・写真:川崎けい子
脚本・編集:中津義人
撮影:堀田泰寛(JSC)、川崎けい子
音楽:吉田哲/児島由美
録音・効果:福田 伸/瀬谷 満
モノローグ:高塚玄
ダリ語翻訳:駿渓トロペカイ
ダリ語朗読:駿渓ナーデル
本編集:ナオ
音楽録音:蟠龍寺スタジオ
録音スタジオ:福島音響
制作:「ヤカオランの春」制作の会(日本)
制作協力:RAWA(The Revolutionary Association of the Women of Afghanistan)

キャスト

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