原題:The Down Fall

彼の敵は世界

2004年/ドイツ/カラー/155分/ドルビーSR、ドルビーデジタル/ビスタサイズ 配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2006年11月10日よりDVDリリース 2006年01月14日よりDVDリリース 2005年7月9日、シネマライズ他全国順次ロードショー

公開初日 2005/07/09

配給会社名 0025

解説



ヒトラー最後の秘書が半世紀を越え封印を解いた戦後最大のタブー。
誰も描けなかった驚愕の真実に世界が揺れた。
2005年最大の問題作、遂に日本上陸。あなたもその目撃者になる!

史上最も有名な独裁者アドルフ・ヒトラー。さまざまな歴史上の人物に焦点を当ててきた映画界においてさえ、この”呪われた男”を直視することは”タブー”とされてきた。戦後60年が経とうとしている今、ドイツ自らがついにその”タブー”を破った。彼らは長年にわたり突きつけられてきた宿命的な課題にあえて挑戦し、世界で大論争を巻き起こした本作『ヒトラー?最期の12日間?』を提出したのだ。敗戦直前という極限状態を舞台にした”ヒトラー最期の12日間”が、彼の女性秘書トラウドゥル・ユンゲの目を通し、息詰まる緊張感とともに真実の重みを持って描かれていく。彼女はベルリン映画祭で彼女自身の告白を綴ったドキュメンタリー「Blind Spot,Hitler’s Secretary」が上映されたまさにその当日、全ての役割を終えたかの如く、劇的な生涯を閉じた。
謎に包まれたヒトラーの”最期”に焦点を当てるこの作品は、公開されるや、戦後初めて明かされる衝撃の事実に人々の論争は激化、映画の枠を飛び越え公開自体が一つの”事件”として大きな社会現象を巻き起こすこととなった。興行的にも『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』『スパイダーマン2』を抜き去る超大ヒットを記録。また、現在公開中のアメリカではドイツ映画史上最高の館アベレージを叩き出し、まさに歴史的ヒットとなっている。ドイツアカデミー賞をはじめ数々の賞を総ナメにした上、本年度アカデミー賞にもノミネート。話題性のみに終わらない圧倒的な”映画力”で世界の批評家たちに絶賛を浴びた。

“ナチス”というひとつの組織の崩壊劇

本作で描かれるもう一つの重要なテーマは、組織の崩壊に直面する人々の心理的葛藤だ。敗戦を確信し先を争うようにベルリンを離れる者、絶対であった組織の崩壊を最後まで信じられずただ呆然とする者、総統と運命を共にすることを決意する者等、様々な人間心理を繊細かつ骨太な描写で描いた本作は現代社会にも充分通じる組織論として大変興味深い。なかでもヒトラーにとって代わろうとの野望を最後まで抱き続ける全ドイツ警察長官ヒムラー、ヒトラーとともにベルリン改造計画に取り組みながらもリアリストらしく冷静に総統との別れを決意するシュペーア軍需大臣、さらにはヒトラーへの忠誠を最後まで貫き通す宣伝大臣ゲッベルスら、歴史上その名を知られたナチス幹部たちが、それぞれ忘れがたい印象を見る者に残す。また、18年間も愛人としてヒトラーの身近にあったエヴァ・ブラウン、総統の狂信的崇拝者ゲッベルス夫人、帝国の最後を冷静に見守るユンゲなど、帝国を影で支えた女性たちの肖像も物語にリアリティーと奥行きを与えている。
その一方で、映画は地下要塞の外に出て、ベルリンの一般市民の悲劇にも視線を向けることを忘れない。ヒトラーに同情されることもなく敵軍の砲撃に虚しく抵抗し、逃げ惑う彼らの”絶望”と、要塞の中でどこかデカダンな空気に身を預ける上層部の”絶望”との対比はこの映画をより”本物”に近づけている。

最高のスタッフ&キャストが挑戦した、かつてない究極の”タブー”

晩年のヒトラーを見事に演じきったのは、『ベルリン・天使の詩』(87)など、ドイツ映画界を代表する名優として長らく君臨するブルーノ・ガンツ。だれも積極的に扮したいと願わない史上”最悪”のキャラクターをあえて”人間”として演じた彼の勇気と自信、それらに裏づけられた迫真の演技こそが、本作最大の見所であることは疑いない。物語のキーとなる秘書役には今ドイツで最も注目されている女優の一人、『トンネル』(01)のアレクサンドラ・マリア・ララが、ヒトラーの愛人エヴァ役には『名もなきアフリカの地で』(01)のユリアーネ・ケーラーが、それぞれ存在感ある演技でしっかりと脇を固めている。
また、本作をドイツアカデミー賞はじめ数々の賞を総ナメにするまでのクオリティへと高めた最大の貢献者といえるのが、監督のオリヴァー・ヒルシュビーゲル。取り扱いが非常に危険な題材ゆえ当初はこの映画に関わることを家族から強く反対されていたという。だが、彼は”ヒトラー”というモンスターを正面から描きたいという強い信念を捨てきれず本作の監督を引き受けた。世界各地で高い評価を受け、日本でも大ヒットした前作『es』(01)での緊張感溢れる演出を、今回の大作でも余すことなく発揮。”首相官邸の地下要塞”という密室空間を舞台にした12日間の物語を、息つく間もない高いテンションを維持したまま見事に描ききっている。彼の右腕として独特の世界観を作り出している撮影監督は『es』でもコンビを組んだライナー・クラウスマン、そしてこの困難なプロジェクトをあらゆる逆風に立ち向かい成立させた製作者が『名もなきアフリカの地で』のベルント・アイヒンガー。現在ドイツで考えうる最高のドリームチームを結成した。

ストーリー


目撃者は一人の秘書。
戦後はじめてあかされるヒトラー最期の12日間。

1942年11月、ナチス親衛隊の将校に護衛されて数人の若い女性たちが夜中の欝蒼とした森を抜け、ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)のいる東プロイセンの指令本部”狼の巣”に向かっていた。彼女らは総統の個人秘書候補で、だれもが職務の重大さやこれから会う人物のカリスマ性に緊張を隠しきれずにいる。そんな女性たちのなかから、ミュンヘン出身のトラウドゥル・ユンゲ(アレクサンドラ・マリア・ララ)がヒトラーに気に入られ個人秘書の職を得る。ナチス旗揚げの地であるミュンヘンは、ヒトラーにとっても懐かしい思い出の地だったのだ。それからおよそ2年半が経過した、1945年4月20日、ベルリン。第2次世界大戦のヨーロッパ戦線も大詰めを迎えつつあった。迫りくるソ連軍の砲火から身を守るため、ヒトラーはごく限られた身内や側近らとともにドイツ首相官邸の地下にある堅牢な要塞へ退却、ユンゲもそのなかにあって”歴史の証人”となった。戦況は明らかに連合軍側優勢で、側近たちも敗戦を確信、ナチス・ナンバー3の地位にあるヒムラー警察長官でさえ、ベルリンからの逃亡を総統に勧めるほどだった。ただ、客観的な状況判断を下す能力を失いつつあったヒトラーだけが、実現不可能としか思えない大逆転劇のシナリオ(作戦)について熱く語りつづけ、側近たちをますます困惑させていく。そんな中、ヒトラーにとって最後となった56回目の誕生日を祝福すべく、アルベルト・シュぺーア軍需大臣が官邸を訪れる。建築家としてヒトラーの壮大なベルリン改造計画に関わってきたシュペーアを前に、彼は今回の戦争でベルリンが焼け野原になることの唯一の利点は、その後に新たな都市を建造しやすくなることだと語る。実際、ベルリンからの退却や降伏を頑なに拒絶するヒトラーに、ベルリン市民の生命や財産を守ろうとする意志など皆無だった。総統への狂信的な忠誠から、ほとんど武器のない状態のままソ連軍の攻撃に立ち向かい、首都ベルリンの防衛に当たる子どもを含めた民兵がいる一方、それに参加しない市民は敵への寝返りを疑われ親衛隊の手で容赦なく射殺された。ベルリン市内はさながら地獄絵のような様相を呈していた。地下要塞内に潜むユンゲの周りも次第に異様な空気がたちこめ始める。大物側近らが次々と逃亡し姿を消していったのだ。また、兵士たちの士気は下がり酒盛りは日に日に度を越していく。ついには側近中の側近ヒムラーやゲーリングらの裏切りが伝えられた。ヒトラーは最終決戦を決意、全ての兵力をベルリンに集結させるようゲッベルスに指示した。しかし、すでに消耗しきったドイツ軍にそんな余力は残されていなかった。ついに敗北を覚悟したヒトラーは、18年にわたり彼の愛人だったエヴァと質素な結婚式を済ませ、翌日、自室において二人でピストル自殺する。第三帝国の末路を見届け、ユンゲは少ない生き残りとともに地下要塞を後にする。ここで目撃した”歴史”をわれわれに伝えるために。

スタッフ

監督・・・オリヴァー・ヒルシュビーゲル
製作・脚本・・・ベルント・アイヒンガー
原作・・・ヨアヒム・フェスト
「ダウンフォール:ヒトラーの地下要塞における第三帝国 最期の日々」
原作・・・トラウドゥル・ユンゲ&メリッサ・ミュラー
「最後の時間まで:ヒトラー最後の秘書」
撮影・・・ライナー・クラウスマン
音楽・・・ステファン・ツァハリアス
美術・・・ベルント・ルペル

キャスト

ブルーノ・ガンツ・・・アドルフ・ヒトラー
アレクサンドラ・マリア・ララ・・・トラウドゥル・ユンゲ
コリンナ・ハルフォーフ・・・マグダ・ゲッベルス
ウルリッヒ・マテス・・・ヨーゼフ・ゲッベルス
ユリアーネ・ケーラー・・・エヴァ・ブラウン
ハイノ・フェルヒ・・・アルベルト・シュペーア
クリスチャン・ベルケル・・・シェンク博士
トーマス・クレッチマン・・・ヘルマン・フェーゲライン

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