原題:Living on the River Agano

佐藤真 第一回監督作品

第24回ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭 銀賞/国際批評家連盟賞/新鋭批評家賞/エキュメニック賞受賞 サンダンス・フィルム・フェスティバルIN TOKYO コンペティション部門グランプリ受賞(93年) パルヌ映画祭 グランプリ受賞 山形国際ドキュメンタリー映画祭 優秀賞(93年) フランス・ベルフォール映画祭 最優秀ドキュメンタリー賞受賞(93年) アースビジョン 地球環境映像祭 特別賞(環境庁長官賞)受賞(92年) OCIC 日本カトリック映画賞受賞 文化庁優秀映画 作品賞受賞(92年) 芸術選奨 文部大臣新人賞受賞 <監督・佐藤真>(92年) 92年度キネマ旬報ベストテン日本映画 第3位 日本映画撮影監督協会 第1回「JSC賞」受賞 <撮影・小林茂> 日本映画ペンクラブベスト5 ノンシアトリカル部門第1位 (92年) 日本映画ペンクラブ推薦 優秀映画鑑賞会推薦 青少年映画審議会推薦

1992年/日本/115分/カラー/16ミリ/スタンダードサイズ/モノラル 製作:阿賀に生きる製作委員会 配給・宣伝:太秦 配給協力:コミュニティシネマセンター

2012年11月24日よりユーロスペースほか全国順次公開 1992年9月26日公開

Ⓒ阿賀に生きる製作委員会

公開初日 1992/09/26

配給会社名 0629

解説


国内外のドキュメンタリー映画各賞を総なめした映画史に残る傑作
当時異例のロードショー公開された日本初のドキュメンタリー映画
『阿賀に生きる』は2007年に亡くなったドキュメンタリー映画作家、佐藤真の初監督作品である。1992年当時、映画館でドキュメンタリー映画が上映されることがなかった時代、異例ともいえるロードショー公開がなされ、第24回ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭で銀賞ほか4賞受賞、山形国際ドキュメンタリー映画祭優秀賞受賞、文化庁優秀映画作品賞、フランス・ベルフォール映画祭最優秀ドキュメンタリー賞、サンダンス・フィルム・フェスティバルIN TOKYOグランプリ受賞など、名だたるドキュメンタリー映画祭で最高賞を次々獲得。新潟水俣病という社会的なテーマを根底に据えながらも、そこからはみ出す人間の命の賛歌をまるごと収め、世界中に大きな感動を与えた。

水俣病を患いながらも自然とともに生きる阿賀の人々
繰り返される日常はこんなにも愛おしい——
1956年に熊本で公式確認された水俣病は、環境汚染と食物連鎖により引き起こされた人類史上最初の公害病と言われる。本作では、1965年、新潟県の阿賀野川流域で昭和電工が引き起こした水俣病を患う3組の老夫婦が主役である。かつては鮭漁の名人で田んぼを守り続ける長谷川芳男さんとミヤエさん、200隻以上の川舟を作ってきた舟大工の遠藤武さんとミキさん、餅つき職人の加藤作二さんとキソさん。自然の恩恵を受けて生きてきたが故に被害を受けてしまった人々は、それでも変わらず川とともに生きていた。佐藤監督らスタッフ7人は、1989年から川の流域に住み込み、田植えを手伝い、酒を呑みかわし、3年間阿賀の人々と生活を共にした。日常の一部となったカメラは、阿賀野川の豊かな自然の中、山仕事に励み、餅をつき、干し柿を作り、皆で酒に酔って歌い、夫婦げんかをする、ありのままの営みを写した。

日本全国で自主上映され一大ブームを巻き起こした生の記録が、いま未来を問いかける
川、山、自然を内包した生き方をする人々の営みの日常の機微にカメラが分け入ったとき、生きる喜びに溢れた豊かな暮らしがまるごと映しとられた。それはまた、それまでとはちがう異相をもって、新潟水俣病をあぶりだした。その試行錯誤をともにした全国の1400人余りのカンパにより、映画は完成した。地元での上映では、老夫婦のやりとりに笑いが起こり、つきたての餅の熱さに「熱い熱い(あっちぇ、あちぇ)」と声があがり、自らの人生と風土を見直す賛辞がうずまいた。東京での劇場公開後は全国で自主上映され、『阿賀に生きる』は町の誇りになった。
封切りから20年が経ち、映像に筋が入るなど傷みが見られるようになったフィルムを新しくするため、寄付金を募る活動が動き出した。この映画を未来に残したいと多くの支持が集まり、『阿賀に生きる』は時を超えて再び21世紀に甦った。
日本人の誰もが4世代遡れば皆百姓だという。本作は心の奥深くに眠る狩猟・農耕民族としての日本人の原点に触れ、懐かしさを喚起させる。今、未曾有の転換期に直面する我々は、土を踏んで自然とともに生きる人間の力強さを描いた生の記録に一筋の光を見出すだろう。

ストーリー








新潟県の大河である阿賀野川。監督を始めとする7人のスタッフがその川筋に住み込み、そこに暮らす人々を3年間にわたって撮影した。山間の鹿瀬(かのせ)町に住む長谷川芳男・ミヤエさん夫婦は先祖代々田んぼを守り続けている。阿賀野川に浮かぶ舟の大半—200隻以上の川舟を造った大工・遠藤武さんとそれを見守る妻ミキさん、名人と呼ばれる餅つき職人・加藤作二さんとその妻キソさんら3組の夫婦の日常をカメラが追い続ける。長谷川さん夫婦は雨の日も稲を刈る。元船頭の帆苅周弥さんが阿賀野川に吹く風の話を語る。その帆苅さんが会長を務める「水俣病患者の会」の活動。鹿瀬町の夏祭り。長谷川さんがかつて行っていた鮭漁の自慢話。囲炉裏を囲んでの酒宴。季節の川魚や山の幸を前に、唄を歌い酔いどれ話しに花が咲く。舟作りをやめて5年もたつ遠藤さんの仕事場。新潟水俣病の裁判史上はじめて、労働者の立場から水銀垂れ流しの実態を証言した江花豊栄さんの話。やがて遠藤さんははじめて弟子を取り、川舟造りを教えるようになり、また天正川の漁師たちが、長谷川さんの鉤釣り漁を再び行うという、夢の実現を手伝ってくれる。そしてまた春、長谷川さん夫婦は田植えの準備を始める。

スタッフ

監督:佐藤真
撮影:小林茂
録音:鈴木彰二
撮影助手:山崎修
録音助手:石田芳英
助監督:熊倉克久
スチール:村井勇
音楽:経麻朗
整音:久保田幸雄
録音協力:菊池信之
ナレーター:鈴木彰二
題字:小山一則
ネガ編集:高橋辰雄
製作:阿賀に生きる製作委員会
提供:カサマフィルム
協賛:シグロ
配給・宣伝:太秦
配給協力:コミュニティシネマセンター

キャスト

長谷川芳男
長谷川ミヤエ
遠藤武
遠藤ミキ
加藤作二
加藤キソ
旗野秀人
ほか

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