原題:SPELLBOUND

ソフィア・コッポラ厳選「私のベスト1映画よ!」

2003年4月30日全米公開

2002年/アメリカ/97分/35㎜/ビスタサイズ/ステレオ 配給:ハピネット・ピクチャーズ/配給協力:レゾナント・コミュニケーションズ

2006年04月28日よりDVDリリース 2005年5月28日、東京都写真美術館ホールにてロードショー

公開初日 2005/05/28

配給会社名 0187

解説


『チャレンジ・キッズー未来に架ける子どもたち』は、アメリカで80年にわたり絶大な人気を誇るく全米スペル暗記大会>にチャレンジする8人の子どもたちをドキュメントした、真実のストーリーである。単語の綴りを竸う、ただそれだけの競技とはいえ、大会に参加するまでのドラマは驚くほど濃密で、感動的だ。人種も宗教も経済的背景も全く異なる8人の子どもたちとその家族。そんな彼らが、たった1つのチャンピオンの座を目指して、決勝大会まで上りつめていく。最後に勝者となるのは誰なのか?そこには、スボーツを見るようなスリリングな醍醐昧があり、手に汗握るほどの興奮に見舞われる。それと同時にカメラは、敗者になってしまった子どもたちの”爽やかな”表情もつぶさに写しだす。努力して頑張ってきたことは、たとえチャンピオンになれなくても、その過程こそに大きな意昧があるのだということを、この映画は伝えてくれる。1つの目的に向かってチヤレンジし、努力し続ける子どもたちの姿は、結果にかかわらず、未来に向けて明るく輝いている。そんな子どもたちの姿に、誰もが心からエールを送りたくなるだろう。

18世紀後半にアメリカの牧師が行ったスペリング大会に端を発している<全米スペル暗記大会>。大会に出場する子どもたちは、たった1つのチャンピオンの座を目指して、47万語を超えるリストの中から出題される単語の綴りを正確に答え、卜一ナメント方式で勝ち抜いていかなければならない。全米では1994年から毎年全米最大のスポーツチャンネルESPNで決勝大会が放映され、高視聴率を記録している。スペル暗記大会をスポーツチャンネルでオンエア?と思うが、見れば納得。これぞ、知力と精神力を極限まで駆使するく頭脳オリンピック>ともいえるものなのだ。

この映画で描かれているのは、1999年の第72回大会まで勝ち進んだ子どもたちとその家族の姿である。ワシントンD.C.で開催された決勝大会に出場する、9歳から15歳まで249名の出場者のうち、8人の出場者、アンジェラ、ヌープル、テッド、エミリー、アシュレー、ニ一ル、エイプリル、ハリーとその家族のドラマをカメラは追っていく。優勝候補の下馬評高いエミリーは、「勝ちたいの。1番になりたい」と語り、黒人のシングルマザーの娘アシュレーは、「いい仕事に就き、家族の助けになるような生活がしたい」と将来への展望を語る。彼らが、目標に向かって懸命にスペルの勉強に打ち込むさまや、友人の遊びの誘いより勉強を優先させることに対して悩み、葛藤する姿は、国境や世代を越えて私たちの心に深く語りかけてくる。

20年前メキシコから密入国してきて牧場で働くアンジェラの父親は、英語が話せない。彼が逮捕される危険を冒してまでアメリカに来た目的は、「子供にいい教育を受けさせること」だった。また、インドからの移民であるニ一ルの父は、子どもを大会に挑戦させるのは、「人生で価値があるものはそんなに簡単に手に入らない」「難解で複雑なことを1つでもやり遂げることができれば、他のことをやっても成功できる」からだと答える。そこには、子どもの明るい未来を願う親の切なる思いが溢れている。どの親も、ナーバスになっている子どもを暖かく包み込むように支えつつ、大会の檜舞台に立つわが子の努力が報われることを願っている。そして、大会で正解を答えられなかったとしても、わが子の健闘を称え、誇りに思う親の姿に私たちは心を揺さぶられ、親子の絆の強さと無償の愛の深さを思い返す。未来を担う子どもを愛し、信頼し、送り出そうとする家族の姿は万国共通であることも、この映画は確かな説得力で教えてくれるのだ。監督は本作が第1回長編監督作品となるジェフリー・ブリッツ。彼はプロデューサーのショーン・ウェルチとともに、1998年の出場者から12家族を絞り込み、自ら他の映画の現場で働き、資金づくりをしながら撮影を行った。撮影地は、ミズーリ、テキサス、コネチカット、カリフォルニア中部、ミシガン、インディアナ、イリノイ、フロリダ、ペンシルバニア、ニュージャージー、そしてワシントンD.C。。総撮影時間は160時間にも及び、編集して完成させるまで2年間の年月を費やした。

なお、原題のspellboundとはスペルに魅せられて、という意昧である。監督は「子どもたちが自発的に、チセレンジし目標に向かって必死に努力する姿。それこそが、最も尊いということを何より伝えたかった」と語っている。

『チャレンジ・キッズー未来へ架ける子どもたち』は、2003年アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた。惜しくも受賞は『ボウリングフォー・コロンバイン』に譲ったものの、ロサンゼルス、サンフランシスコなどの多くの映画祭でさまざまな賞に輝き、高い評価を獲得している。2003年夏には、全米50館で公開され、18週間で約540万ドルの興行収入をあげるという、ドキュメンタリー作品としては異例のヒットを記録した。また11月には英国で公開され、55万USドルの興行収入を上げて、マスコミ、観客共から熱烈に支持され、さらに今後、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、アイスランドでも公開予定となっている。
この作品が各国で高く評価されているのも、国境や人種を超えた普遍的なメッセージが掲げられているからではないだろうか。人生は経験の積み重ねだ。自ら努力してこそ、初めて手に入れられる精神的な豊かさや、親と子の絆や愛情の大切さなど、ともすれば見失いがちな、だからこそ忘れてはならないものが、この映画では真摯な視線で描かれ、それが見るものに限りない希望と感動を与えてくれる。そして見終わった後、私たちひとりひとりに、謙虚にかつ、失敗を怖れずに前向きに生きることの大切さを思い出させてくれるだろう。

ストーリー


全国参加総数900万人。約80年もの歴史を持つ<全米スペル暗記大会>。出場資格は9〜15歳の子どもたち。審査員が出題する難しい単語を聞いただけで、綴りを答えなければならない過酷なレースだ。今年もまた地区大会を勝ち抜き、故郷から決戦の地ワシントンD.Cへと249人の子どもたちが辿りついた。家族の歴史、生まれた環境、信仰などバックグラウンドは皆、さまざま。でも、ここで紹介する8人を含め、誰もが優勝したいと夢見ている一。

良い教育を求めて移住してきたメキシコ移民の両親を持つアンジェラ。地区大会突破を決めた勝利のラストワードは「CROCODLIAN(ワニ系類)」だった。「最高の気分よ!」。決勝大会へのチケットを手に入れて、生まれて初めてうれし涙を流したアンジェラは、同じく、笑顔が涙でいっぱいになっている両親と抱き合って喜んだ。
「娘は幼い頃から難解な言葉を好む変わった子だった」と語るヌープルの両親は、インド系移民、前年度の大会では3回戦で敗退した彼女は、「今年は絶対負けない!」と闘志満々だ。母親と学校の先生の協力で、さらにレベルアップを図る。地区大会では「打倒ヌープル!」と意気込む男子3人組も出場したが、ズバ抜けて聡明な彼女は余裕の予選突破で、勝ち進んだ。「MAYONNAIZE(マヨネーズ)」という単語で、地区大会決勝を制したテッド。初出場にして優勝したテッドは、燈が非常に高く、勉強だけでなくスポーツも万能なスーパーボーイだ。だがそれが災いしてか、同じ学校の他の生徒に溶け込めないでいる。そんな兄をテッドの弟は、”チャンプ”と尊敬し、憧れている。クールに、心に闘志を秘めた彼は、家族や近所に住む人々の応援を受け、決勝大会ヘコマを進めた。
裕福な家庭に育つエミリーは、とにかく勝気だ。両親からの絶大なる信頼のもと、大会の”勝者”になるために、スペルの勉強をしている。乗馬やコーラスといろんなことに興昧はあるが、何より大切なのは、人より突出した成績を出すこと。学校でも優等生の彼女は、「賢く見えないように、普通の女の子のような話し方をするの」と、友だちづきあいにも気を遣う。3度、決勝大会出場の経験があるが、憶えた単語の大半は意昧も知らない。知らなくてかまわないのだ。地区大会を突破した彼女は、ひたすら1番を目指し、ワシントンD.Cへ向かう。

「私の人生は映画みたい」と語るアシュレーは、母子家庭の長女だ。周囲の偏見や家庭の経済問題に小さな胸を痛めながらも、見事地区大会を勝ち抜いた。今の環境から抜け出し、家族と安心して生活できる将来を夢見て、彼女はこの試練を乗り越えようとを決めている。貧欲にそして素直に知識を吸収する彼女を担任教師は”天使”と呼ぶ。「様々な試練や苦悩を乗り越えて勝つことができた」「上にいけばいくほどゴールは高くなる。だからひたすら上を目指すわ」と語るアシュレーのまなざしは輝いている。

インド系移民であるニ一ルの父はアメリカンドリームを信じている。「この国で失敗はありえない。懸命に働けば、必ず報われる」アメリカで成功した父は、二一ルにとって、親であり教師であり、人生の水先案内人だ。教育の重要さを痛いほど感じ、最高の教育環境を息子に用意する父と、懸命に期待に応えようと努力する二一ル。父は息子がプレッシャーを感じていることも承知している。「大変なことは百も承知だ。人生で大切なものがそう簡単に手に入るかね?」「一生に一度の体験だから、一所懸命に勉強する」と、瞑想で精神を鍛えながら自分を駆り立てる。地区大会で優勝した二一ルは決勝大会に進んだ。

言葉遊びが大好きな母親の影響で、自然と単語で遊ぶ術を覚えたエイプリルは、友だちとの遊びよりも単語の勉強のほうが好きだ。コメディ俳優のようにコミカルで瞬るい両親は、聞いたこともない難解な単語を勉強する娘を愛してやまない。普段は無口で自分を主張しない彼女が、初めて両親に「私は絶対に決勝大会で勝ちたいの!」と訴えた。ぽろぼろの辞書に向かって、黙々と勉強するエイプリル。決勝大会の日は近づいている。

ハリーは、母親に内緒で地区大会に出場し、あっさり優勝した。勉強時闇は毎日30分程度だというハリーは、何事にもマイペース。自慢のギターで国歌を爪弾いたり、自分のことを”ミュージカル・ロボッドト”と呼んだり、捉えどころがない。だが、解らないことについては徹底的に質問して、納得しないと気がすまないところを見ると、なかなか頑固者のようだ。全米各地からチャンピオン目指して、地区大会勝者が集結する決勝大会を前に、彼は何を思うのだろう。ワシントンD.C.は目の前だ一。

そして、ついにその日がやってきた一。2日間に渡って開催される決勝大会。白熱した会場で、地区予選から共に戦い、励ましてくれた家族が見守る中、子どもたちの知的バトルが始まった。1日目の戦いが終わり、残ったのは半分以下の104人。5回戦、7回戦と進むにつれ、問題は難しくなり、次々と挑戦者は脱落していく。会場内に不正解を知らせるベルが響き渡るたび、ひとりひとり、舞台から去っていく。だが、悔しいはずの子どもたちの表情は晴れやかだ。勝負が終わった安堵感とやり抜いた充実感に満ちている。

さあ、いよいよ10回戦。残ったのはわずか3人。それぞれの家族が固唾を呑む中、最終ラウンドが開始した。会場の空気が張り詰めている。緊張の瞬間、優勝の栄冠は誰の手に渡るのか!?

スタッフ

監督・製作・撮影:ジェフリー・ブリッツ 
製作・録音:ショーン・ウェルチ
編集:ヤナ・ゴースカヤ 
音楽:ダニエル・ハルサイザー
製作補:ロニー・アイゼン 
タイトル制作:アダム・バーン、ヤナ・ゴースカヤ
整音:ピーター・ブラウン 
効果音編集:ジョ・ジュバン

キャスト

ハリー・アルトマン 
アンジェラ・アルニバル 
テッド・ブリハム 
エイプリル・デジデオ 
ニール・カダキア 
ヌ-プル・ラーラ 
エミリー・スタッグ 
アシュレー・ホワイト

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