原題:Voces inocentes

2005年ベルリン国際映画祭 最優秀作品賞受賞<児童映画部門> 2005年アカデミー賞外国語映画部門メキシコ代表 ヒューマンライツ国際映画祭正式出品(イギリス) AFIロサンジェルス国際映画祭正式出品(アメリカ) トロント国際映画祭正式出品(カナダ) バンコク国際映画祭正式出品(タイ) エジンバラ国際映画祭正式出品(イギリス) フランダース国際映画祭正式出品(ベルギー) ジッフォーニ国際映画祭正式出品(イタリア)

2004年度作品/メキシコ映画/112分/ドルビーSRD/ビスタサイズ/カラー 配給・宣伝:アルバトロス・フィルム

2006年07月28日よりDVDリリース 1/21(土)より、シネスイッチ銀座他全国順次ロードショー

公開初日 2006/01/21

配給会社名 0012

解説


ロサンゼルス在住の新人俳優オスカー・トレス。全く無名だった彼の手による1本の脚本が、ハリウッドとメキシコの映画人たちの心を揺さぶった。1980年代、激しい内戦に包まれていた中南米エルサルバドル。少年時代をこの内戦下で過ごしたトレスは、14歳でアメリカへ亡命するまでの記憶を脚本に書き上げた。そして、2002年、ハリウッドで活躍するメキシコ出身の著名な監督ルイス・マンドーキに自ら脚本を売り込む。かねてからメキシコに戻って映画を作りたいと思っていたマンドーキは、即座に脚本を気に入り映画化を快諾。こうしてトレスの体験記は、『イノセント・ボイス-12歳の戦場-』のかたちに結実した。12年間に及ぶ内戦は、7万5千人の犠牲者、8千人の政治的失踪者、100万人近い亡命者を生んだ。また、本作が描き出すように、この間、多くの少年たちが軍に徴兵されていった。子ども兵士の問題は今なお深刻だ。現在も30以上の紛争地で、およそ30万人の子どもたちが兵士として働かされている。

 1980年代、エルサルバドルでは、政府軍と反政府ゲリラ組織FMLNが泥沼の内戦を繰り広げていた。11歳の少年チャバは、父親が家を出たため、母親と妹弟を守らなければならない。彼が恐れているのは、12歳の誕生日を迎えること。政府軍に徴収され、楽しい子ども時代が終わってしまうからだ。母親の愛情と、禁じられた反戦歌を流すラジオを頼りに強く生きるチャバ。だが、誕生日はすぐそこまで迫っていた……。
いつなんどき銃撃戦が始まるかわからない、内戦下での過酷な生活。けれど、少年チャバの目から見た日常は、辛いことばかりじゃない。家族との団欒に笑えば、家計を支える仕事もするし、恋もする。戦場に流れる幸福なひととき。ごく平凡な11歳という時間を、精一杯に生きるチャバの姿がまぶしい。そんなやんちゃなチャバをつねに見守っているのは、女手ひとつで子どもたちを育てる美しい母親。しっかりと大地を踏みしめ生きる女性だ。子どもたちに注ぐ母の絶対的な愛。襲撃の中で、さらに強く結ばれる母子の絆に涙せずにはいられないだろう。

 主人公チャバを演じるのは、3000人の中から選ばれたメキシコの少年、カルロス・パディジャ。その愛らしい笑顔と素朴な演技は、観客の心をとらえて放さない。母親役には、フランス映画『ルビー&カンタン』でヒロインを務め、ハリウッド大作にも出演している国際派女優レオノア・ヴァレラ。そのほか、『バッド・エデュケーション』の神父役が記憶に新しいダニエル・ヒメネス=カチョをはじめ、メキシコの名優たちが多数出演。オスカー・トレスの脚本を鮮やかに映像化したのは、『メッセージ・イン・ア・ボトル』『コール』などで知られる、ハリウッドで活躍中のメキシコ出身監督ルイス・マンドーキ。本作は彼にとって15年以上ぶりの祖国での仕事になる。製作総指揮には、『パルプ・フィクション』『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』などを生み出したローレンス・ベンダー。さらに、『アモーレス・ペロス』の名プロデューサー、アレハンドロ・ソベロン=クリが、メキシコを中心とする南米の一流スタッフを結集した。劇中に流れるプロテスト・ソング「ダンボ—ルの家」は、もともとはベネズエラのフォーク・グループ、ロス・グアラグアオスの歌である。

ストーリー


1980年、エルサルバドルでは、政府軍と、世界恐慌によって仕事を失った多くの貧しい農民を中心に結成された反政府組織FMLNとの激しい内戦下にあった。軍とゲリラの境界線に閉じこめられた、小さな町クスカタンシンゴ。物語はここから始まる。
11歳の少年チャバは、お父さんがアメリカへ去って以来、残された一家の大黒柱だ。「家族を守ってね」と、大好きなお母さんは口グセのように言う。ある晩、お母さんが仕事に出かけているとき、表で銃撃戦が始まった。家の中にも嵐のように撃ちこまれる弾丸。姉ロシータ、弟リカルドをベッドの下で必死に守るチャバ。少年たちは12歳になると政府軍に徴兵される。チャバが無垢な子供でいられるのもあと少し。チャバは12歳の誕生日が怖い。おつむの弱い大きな友人アンチャは誕生日を怖がることはないけれど。
銃撃戦の吹き荒れる外出禁止時刻が人々を縛る町。あの晩以来、お母さんは家で仕事をするようになった。戦争は生活のすぐ隣りにあるが、子どもたちの楽しい日常がなくなったわけじゃない。ちょっと変わった運転手さんの計らいで、バスの行き先案内の仕事をすることになったチャバ。学校では、新任の先生の娘クリスティナ・マリアに心をときめかせている。そんなある日、学校に政府軍が押し入り、12歳になった少年たちを無理やりトラックに乗せて行ってしまった。友人アントニオも一緒に。
チャバの家に懐かしいベト叔父さんがやって来た。今は、反政府ゲリラのメンバーだという。一家でベト叔父さんを囲み団欒するも束の間、また激しい銃撃戦が始まった。この夜は、近所に住む女の子が弾に当たって死んだ。悲しむチャバたちに、ベト叔父さんはギターを奏でプロテスト・ソングを歌う。「ダンボ—ルの家」を——。
チャバはベト叔父さんから貰ったラジオで、放送禁止の音楽を聴くようになる。町の緊張はますます高まってきた。兵士たちの突入により、学校内でも銃撃戦が展開。神父さんは教会の外に人々を集め、「もはや祈るだけでは足りません」と声を震わせる。
学校が無期閉鎖になった。チャバの住む家も軍とゲリラの攻防に阻まれ、一家はママトーヤお祖母さんのいる川の向こうに移住する。まもなくチャバは12歳の誕生日を迎えた。政府軍が次々と少年を徴兵しに来る。家の屋根の上に寝そべって身を隠す子どもたち。久しぶりにクリスティナ・マリアを訪れたチャバは、彼女の家が崩壊し、彼女の姿もないことに衝撃を受ける。そして、チャバの運命も動いていた。政府軍か反政府ゲリラか、いずれかに身を投じなければならない。デブの友人マルコスがゲリラのところへ志願。それを聞いたチャバは、2人の親友チェレとフィトとともに、その後を追う覚悟を決めるのだった——。

スタッフ

監督・製作・共同脚本:ルイス・マンドーキ
脚本:オスカー・トレス
製作総指揮:ローレンス・ベンダー
製作総指揮:アレハンドロ・ソベロン=クリ
撮影監督:ファン・ルイス=アンチア
編集:アレシュカ・フェレロ
音響:フェルナンド・カマラ
オリジナル音楽:アンドレ・アブジャムラ
衣裳:ヒルダ・ナバロ
美術:アントニオ・ムニオイエロ

キャスト

チャバ:カルロス・パディジャ
母親ケラ:レオノア・ヴァレラ
ベト叔父:ホセ・マリア・ヤスピク
司祭:ダニエル・ヒメネス=カチョ
クリスティナ・マリア:クスーナ・プリムス
アンチャ:グスタボ・ムニオス
祖母ママトーヤ:オフェリア・メディナ
バスの運転手:ヘスス・オチョア

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