原題:Enduring Love

本国イギリスにて、2004年11月26日公開

2004/UK/100min/カラー 配給;ワイズポリシー

2006年04月28日よりDVDリリース 2005年11月19日、日比谷シャンテシネにてロードショー公開

公開初日 2005/11/19

配給会社名 0043

解説


穏やかな午後のピクニックが、一瞬にして悲劇へと一変する。
青空に浮かぶ赤い気球、地面に転がり堕ちる男たち、
草原に投げ出された死体、そして運命の出逢い……。
イアン・マキューアンVSロジャー・ミッチェル
イギリスを代表する2人の奇才が仕掛ける愛の罠

ブッカー賞作家イアン・マキューアンの原作「愛の続き」(新潮クレスト・ブックス刊)はその衝撃的なストーリーが大きな話題を呼んだ世界的なベストセラーである。ハリウッドのメジャースタジオがその映画化権を取得し、名だたる名匠が監督に名乗りを上げたものの、マキューアン独自の繊細な世界は映像化が難しく、ついにはスタジオもギブアップしてしまった。そのチャンスを密かに狙っていたのが『ノッティングヒルの恋人』の監督ロジャー・ミッチェル。メジャースタジオではなし得ない緻密な脚本とプロットを原作者とともに練り上げ、見事完全映画化に成功したのである。こうして『Jの悲劇』は“愛”を求めることで平穏な日常が非日常へと加速度をつけて転がり落ちていく快感にも似た恐怖と甘美なる妄想というマキューアンの世界とミッチェルの洗練されたコンテンポラリーな映像感覚が見事に融合した稀に見る極上のサスペンス映画となったのである。

◆“永続する愛”の終焉なのか?“崩壊する愛”の始まりなのか?

作家で大学教授のジョーは、長年の恋人で彫刻家のクレアと郊外の草原でピクニックを愉しんでいた。彼女に永遠の愛を誓うプロポーズをするために…。そんな至福の最中、操縦不可能となった赤い気球が落下するのを目撃したジョーは、他の3人の男たちと気球を押さえようと駆け寄る。ところが、その瞬間、強風にあおられ、気球はひとりの少年を乗せたまま、空中に浮いてしまう。オトコタチは、ロープから手を放し、大地に投げ出される。ところが、ひとりの男がそのまま青空高く運ばれ、しばらくした死の落下を遂げる。思いがけない悲劇に茫然とするジョーは、そのときジェッドという男と出逢った。数日後、ジョーはジェッドからの電話を受ける。これがすべての始まり…。偶然出逢った男の出現により、“愛”に翻弄される登場人物たち。果たしてあなたは目にするのは“永続する愛”の終焉なのか?“崩壊する愛”の始まりなのか?

◆洗練された映像と巧妙に仕掛けられた罠、
 恐怖と戦慄の絶妙なる味わい。これはまさにヒッチコックだ!
 
監督のロジャー・ミッチェルは、サスペンスの巨匠アルフレッド・ヒッチコックにも共通する衝撃的なタッチで、甘美なる妄想と愛の罠をセンシティブにスクリーンに映し出す一方、原色が印象的な映像感覚によって、巧妙に紐解かれるコンテンポラリーな愛の悲劇は、時にミケランジェロ・アントニオーニの映画を想起させる幻想美に満ちている。とりわけ、赤い気球が風にあおられ、緑の草原から青い空へと吸い寄せられるように浮かびあがるオープニングの映画的な魅惑は圧倒的だ。
出演は、見知らぬ男の死という思いがけない悲劇によって苦悩と当惑にとらわれる大学教授のジョーに、ロジャー・ミッチェルの前作“The Mother”に主演し、『ロード・トゥ・パーディション』『シルヴィア』での好演も記憶に新しいダニエル・クレイグ。ジョーの長年のパートナーで彫刻家のクレアには、『ギター弾きの恋』『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』で2度、。アカデミー賞候補となった演技派サマンサ・モートン。そして、孤独な世界でひたすら愛を追い求めるジェッドに、ミッチェルの『ノッティングヒルの恋人』でスターダムとなった、『ヒューマンネイチュア』『シッピング・ニュース』の個性派リス・エヴァンスというイギリス映画界を代表する魅力的な本格俳優が正面からぶつかりあい、謎が謎を呼ぶ緊迫感あふれる愛のドラマをスリリングに構築、観るものの視線を捉えて離さない。そして、ジョーの親友ロビンに『ラブ・アクチュアリー』のビル・ナイ、彼の妻レイチェルに『ノーラ・ジョイス/或る小説家の妻』のスーザン・リンチが脇を固める。

◆赤の映像が暗示するものは…

映画化不可能といわれたイアン・マキューアンの原作を立体的に脚色すたのは、2000年にダニエル・クレイグ酒宴の“Some Voices”を手がけ、王立国立劇場での公演“Blue/Orange”で絶賛された劇作家ジョン・ペンホール。原作と比較して、一人称で語られるジョーの焦燥やクレアとの愛の葛藤を、第三者的立場のキャラクターを設定し、彼らと会話することによって、マキューアンの文学世界に映画的な広がりを与えるころに成功している。また、赤い気球、赤いジャージ、赤いバス、赤いトマトソースの瓶といった「赤」の映像を強烈なインパクトで映し取る撮影監督は、ギリシャ出身の新鋭ハリス・ザンバーラウコス。音楽は『待ち焦がれて』“The Mother”でミッチェル監督と組んだジェレミー・サムズ。編集を『ビフォア・ザ・レイン』『ダスト』のニコラス・ガスター、プロダクション・デザインを『アンダー・ザ・スキン』『トゥエンティフォー・セブン』のジョン・ポール・ケリーと、精鋭スタッフが顔を揃えている。
ロンドンの人気スポットである現代美術館「テートモダン」、おしゃれな機能美が魅力的なモダン・インテリアななど、ロンドン最先端のスタイリッシュなディティールも見逃せない。
『Jの悲劇』は、04年のヴェネツィア国際映画祭≪ヴェネツィア・メッザノッテ≫部門で正式上映された後、トロント映画祭、ロンドン映画祭などで特別上映され、その現代社会をヴィヴィッドに反映させた愛のドラマが大きな反響を巻き起こした。さらに、04年のイギリス・インディペンデント映画賞では、監督賞、主演男優賞(クレイグ)、助演女優賞(モートン)、撮影賞と4部門でノミネートされたほか、ロンドン批評家協会賞でダニエル・クレイグが英国男優賞に輝くなど、高い評価を獲得している。
さまざまな愛のかたちに翻弄される登場人物たちが、やがて辿る驚愕のエンディング。あなたは目をそらさずにいられるだろうか?

ストーリー



ジョーは理系大学教授で作家でもあり、気鋭の彫刻家のクレアと長い恋愛関係を築いている。テートモダンでデートし、最先端のシックなインテリアの家に住むふたりはロンドンっ子の憧れの的だった。ジョーの唱える恋愛理論は斬新でクール、容赦ない。クレアは子作り、結婚を求めていたが、ジョーは結婚に懐疑的だった。

オックスフォード郊外でクレアと絵に描いたような午後を過ごそうと考えたジョー。しかし、ジョーとクレアがシャンペンのボトルを開けようとしたまさにその瞬間、悲劇は起こった。明らかな運転障害で、気球が草原に落下して来たのである。ジョーと現場にいた3人の男たち(40歳代のジョン・ローガン、若い男ジェッド、通りすがりの農夫)は、すぐさまバスケットの中で泣き叫ぶ少年と操縦していた祖父を助けるために気球へと駆け寄る。懸命にロープを引っ張る彼らは、一瞬だけ気球をコントロールすることに成功するが、その時、強風が吹いてロープをつかむ4人の男たちと共に気球は再び空中へ舞い上がる。

しばらくしてジョーを含む3人の男があきらめてロープから手を離して地上へ降りるが、ジョン・ローガンだけは手を離さず、とうとう何百フィートも上空へと運ばれてしまうのだった。地上からジョーとクレアと男たちが見守る、この奇妙なほどの晴れ渡った空の中、ついにジョン・ローガンは死の落下をする。

2人の子持ちの医者であるジョン・ローガンは明らかに即死した模様。ジョーとジェッドは落下地点へと駆け寄る。2人が死体を発見した時、ジェッドは嫌がるジョーを説き伏せ強引に祈りを捧げるのだった。

友人のロビンとレイチェルとの夕食の席で事件を振り返りながら、ジョーはこの悲惨な事故がどれほど彼に精神的インパクトを与えているかを告白する。クレアが慰める。ジョーは、一体誰が一番最初に気球のロープから手を離したか、もし4人とも手を離さなかったら結果は変わっていただろうか、と自問自答を繰り返す。皮肉にも気球はその後無事に着陸し、乗っていた少年も無事保護されたという。そして、運命はさらにジョーを苦しめることとなる。事故直後に男が落下した場所に、偶然居合わせたジェッドと駆けつけた事は大きな間違いだった。ジェッドはジョーに直感的なコネクションを感じ、時が過ぎるとともに、ジェッドのジョーへの執着心は危険なほど強まってゆくのだった。
数日後、ジェッドがジョーに接近し始める。最初はこれといって問題ないように見えたが、ジョーはジェッドが自分に近づいてきて来た事を不思議に感じるのだった。しかし、しばらくすると、ジェッドのタイドは豹変する。嫌がるジョーに無理やり対面を強要するジェッドは、公共の場で恥ずかしい態度でジョーに接する。まるで、事故に対するジョーの気持ちを汲んだかのように、ジェッドは繰り返し「僕も同じように感じるよ」とジョーに訴える。しかしながら、そのうちジェッドは自分とジョーの間にある愛をもはや否定などしない、と訴えるようになるのだった。

スタッフ

監督:ロジャー・ミッチェル
プロデューサー:ケヴィン・ローダー
脚本:ジョー・ペンホール
原作:イアン・マキューアン
エグゼクティブ・プロデューサー:フランソア・イヴァーネル、キャメロン・マクラッケン、ダンカン・レイド、テッサ・ロス
アソシエイト・プロデューサー:イアン・マキューアン
ライン・プロデューサー:ローザ・ロメロ
撮影:パリス・ザンバーラウコス
編集:ニコラス・ガスター
プロダクション・デザイン:ジョン・ポール・ケリー
衣装デザイン:ナタリー・ワード
ヘア/メーキャップ・デザイン:コニー・ダニエル
音楽:ジェレミー・サムズ
キャスティング:メアリー・セルウェイ、フィオナ・ウェイアー

キャスト

ダニエル・クレイグ
リス・エヴァンス
サマンサ・モートン
ビル・ナイ
スーザン・リンチ
ヘレン・マクロリー

LINK

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