2005/日本/カラー/35㎜/93分/ヴィスタサイズ/ドルビーSR 配給:ワイズポリシー

2006年03月03日よりDVDリリース 2005年9月23日、テアトル新宿、テアトル池袋他全国拡大ロードショー

公開初日 2005/09/23

配給会社名 0043

解説


「……そばにいたかった」
ただそう願い、かつて自分の父を殺した男のもとで生きてきた青年。
忠実なる影法師として。
ひとりの女の一途な思いに打たれるまでは。

 究極の肉弾戦、殴合。この闇の格闘技の背後には、二種類の男たちがいる。フロアに上がり闘う者と、それを仕掛ける者。しかし、いずれの男たちも血と汗にロマンを見る生粋のアウトローだ。『殴者』は、そんな男たちが繰り広げる愛と裏切りのドラマを、レトロモダンな様式美のなか、ケレンミたっぷりに描き出す。俳優×格闘家。これまでになかった夢のコラボレーションも実現。異なるジャンルの実力派たちがタッグを組み、全く新しいタイプの時代劇を誕生させた。

 町のヤクザ、ピストル愛次郎にひたむきに仕える暗雷。しかし、その絆のはじまりは皮肉なものだった。20年前、暗雷は愛次郎に実の父を目前で殺され、彼の置屋で育てられてきたのだ。地下賭博“殴合”は、愛次郎率いる雷一家の生業だった。二人の男が拳と拳で極限まで殴り合う闇の格闘技。あるとき、イギリスの商人が持ち込んだ妙薬の契約をめぐって、雷一家とライバル・蟷螂一家は一触即発となる。そこで暗雷が提案したのは、殴合でのケリ。洋館のホールに集う男たちの勝負を、置屋で暗雷と共に育った遊女・月音が紅一点、冷ややかに見つめる。暗雷を想う月音の秘めた情熱。愛次郎への忠誠と月音への恋慕に揺れる暗雷。そして闘いの夜、それぞれの思いが溢れ出し、絡み合い、衝撃のクライマックスになだれ込んでいく……。

 父親を目前で殺された暗雷。当の殺人者にも関わらず、暗雷を引き取り、自分の置屋で育ててきた愛次郎。敵同士でありながら、血よりも濃い、分かちがたい絆で結ばれた二人……。着流しにマフラー、ブーツという無国籍風のいでたちで暗雷を演じるのは、めきめきと人気と実力を伸ばす若手俳優・玉木宏。いつものさわやかな笑顔をここでは払拭し、複雑な感情を秘めた陰りある男を体現してみせる。冷たくも、暗い炎が燃えるまなざしには、何とも言えない男の色香が漂う。ヤクザ渡世で、暗雷をひそかに心のよりどころにする愛次郎を、ヤクザ役は実に十年ぶりという陣内孝則が熱演。いかがわしさのなかにアウトローの切なさを光らせる、まさにベテランの風格と遊び心に満ちた演技が圧巻だ。
 そんな二人の男たちを静かに見据える女がいる。暗雷同様、愛次郎に親を殺され、置屋で暗雷と共に育った月音。愛次郎にいたぶられ、遊郭の女にされながらも、暗雷への秘めた思いを胸に凛と佇む。演じるのは、映画やテレビで注目される水川あさみ。
 愛する者を独占したいと願う女の一途さが、やがて男たちの関係に変化をもたらす。男×男×女の愛憎の果てを切り取ったクライマックスは、観る者の心を震わせるだろう。

 明治時代初期、実際に行われていた異種格闘技。こうした歴史的事実が、『殴者』の格闘技要素の大きなインスピレーションになっている。アンダーグラウンドで繰り広げられる男たちの肉体勝負を描いた映画といえば、『ファイト・クラブ』があるが、『殴者』に登場する男たちもまた、闇のリングで内なる獣をむき出しにする。血と汗飛び散るリアルな格闘シーン。このリアリティを生むのは、本物のファイターたちだ。
人気格闘技イベントPRIDEのスター選手たちが、殴者役で映画初出演。PRIDEのファンタジスタこと桜庭和志、闘いこそ自分のすべてと言い切る王者ヴァンダレイ・シウバほか、クイントン・ランペイジ・ジャクソン、高山善廣、ドン・フライらが顔を揃える。本作は、PRIDEを企画運営するドリームステージエンターテインメント(DSE)が立ち上げた映画製作会社、ドリームステージピクチャーズ(DSP)の第一弾作品。だからこそ実現した豪華なキャスティングだと言える。

 そのほかの出演陣も充実している。殴者・虎走六役としてシウバとの対戦に実際に挑んだのは、プロ・ファイター経験を持つ虎牙光揮。蟷螂一家の親分・皮舌に、舞台と映像でひっぱりだこの個性派、篠井英介。老侍・黒田浅左右衛門役に扮するベテラン、山田明郷、イギリスの商人・ヴィンセント役の在日バイリンガル俳優クリスチャン・ストームズらの好演も見逃せない。
 監督は、ミュージック・ビデオを数多く手掛け、『けものがれ、俺らの猿と』で映画界にも進出した須永秀明。第二作目となる本作では、コミカルな前作にはなかったシリアスなドラマ作りにも力を入れている。時系列の入り組んだ物語を、スピード感溢れるタッチでさばく腕前もさすがだ。原作は、俳優、ミュージシャンなど幅広いジャンルで活躍する田中雄一郎。その原作を、テレビ界、映画界を支え続ける名脚本家・伴一彦が脚色。撮影に、『花と蛇』の小松高志。美術に、北野武作品『座頭市』『DOLLS』で日本アカデミー賞美術賞にノミネートされた磯田典宏。音楽を『けものがれ、俺らの猿と』で須永監督と組んだ曾田茂一が担当し、新進ミュージシャン、奥田美和子が柳美里作詞による主題歌「ぼくが生きていたこと」を歌う。
 才能豊かなスタッフ、キャストの情熱によって生まれた『殴者』は、日本映画界に新たな刺激と衝撃をもたらすだろう。

ストーリー

時は明治の初頭、主人公の暗雷はやくざ世界の顔役、ピストル愛次郎率いる雷一家が開催しているならず者や格闘家達(総称して「殴者」と呼ぶ)を集めた闇試合、「殴合」の世話役を勤めていた。
父親を殺した男、愛次郎に育てられるという、異常な日常の中、暗雷の心の救いは、同じくピストル愛次郎の元で一緒に育てられた月音ただ一人だった。その月音と共に愛次郎の元を離れて生きていく方法を模索し続ける暗雷に突如、対立する組織、蟷螂一家と雷一家の抗争という千載一遇のチャンスが訪れる。
お互いの策略が水面下で蠢き、抗争の決着を付ける場所として用意をされた洋館の舞台で殴者達のプライドを賭けた死闘が繰り広げられる中、暗雷は全てを裏切り、月音と共に生きていく為の引き金を弾く。

スタッフ

監督:須永秀明
製作総指揮:榊原信行
エグゼクティブプロデューサー:葵てるよし
原作:田中雄一郎
脚本:伴一彦
製作統括:池本浩史、楠部孝

アソシエイトプロデューサー:西前俊典、明石雅晋
ラインプロデューサー:田中敏雄

撮影:小松高志
美術:磯田典宏
照明:松岡泰彦
録音:山田幸治
編集:菊井貴繁

音楽プロデューサー:茂木英興
音楽:曾田茂一

主題歌「ぼくが生きていたこと」
歌:奥田美和子(BMGファンハウス)

キャスト

玉木宏
水川あさみ
虎牙光揮
陣内孝則

マギー
クリスチャン・ストームズ
池津祥子
久保晶
水口てつ
竹井洋介
田中雄一郎
寺田省平
若林優佳
鎌田拓充
小林愛里香

桜庭和志
高山善廣
ヴァンダレイ・シウバ
クイントン・ランペイジ・ジャクソン
ドン・フライ

金原弘光
松井大二郎
アレクサンダー大塚
島田裕二
野口大輔
今村雄介

田中要次
山田明郷
篠井英介

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す