天上草原
原題：Heavenly Grassland
2002年／中国／カラー／ドルビーデジタル／ヴィスタサイズ／113分／ 配給：オムロ
2006年08月23日よりＤＶＤリリース 2005年3月12日、東京都写真美術館ホールにてロードショー
公開初日 2005/03/12
配給会社名 0216
解説
内モンゴル−大自然の中で繰り広げられる癒しの物語
映画の舞台はモンゴル高原地帯の内モンゴル自治区。中国で最初に成立した少数民族の自治区である。
物語は心に傷を負い失語症に陥ってしまった漢族の少年・フ−ズ（虎子）が草原に暮らす男女の元にやってくるところから始まる。当初、フ−ズは全くしゃべることが出来ず、心を固く閉ざしている。一方、彼を預かる男女もまた、過去に離婚を経験している。互いの心は当初、決して一つではない。しかし、天上をそのまま地上に再現したかのような美しく素晴しいモンゴルの自然は、そんな三人の心を少しずつ結びあわせていく。目が醒めるような緑や雄大な空の青、動物たちとの共存など、画面に映し出される草原の風景はとてもこの世のものとは思えないほど。
物語は草原の四季の移り変わりと共に、ゆっくりとゆっくりと移り変わっていく。三人の間に強い愛情が芽生え“家族”となっていく姿は、モンゴル独特の結び方—ほどけそうでほどけない“モンゴル結び”によく似ている。
人間愛に溢れたモンゴル草原で展開するこのドラマは、忙しい現代社会に生きる私たちに草原の風のようなやさしい感動を運んでくれることだろう。
監督の塞夫（サイフ）と麦麗絲（マイリース）は共に内モンゴル生まれで、映画界きってのおしどり夫婦。呂麗萍（ロイ・ライピン）主演の『危険的蜜月旅行（危険なハネムーン）』（87）からコンビを組み始め、数々の優れた作品を世に送り出している。彼らの手掛ける作品はどれもモンゴルの人々の暮らし、祖国や草原への愛情を描いて大反響を呼び国内の映画賞を独占した。
主演の娜仁花（ナーレンホア）は1962年生まれのモンゴル族の女優。その名は「ひまわり」という意味である。助監督なども経験し、『草原の愛 モンゴリアン・テール』ではいっそう深みが増した演技を見せている。また、作品の音楽を手掛ける三宝（サンパオ）も内モンゴル自治区の出身である。『あの子を探して』『初恋のきた道』をはじめ、最近の中国映画のヒット作の音楽を次々と手がけている。
モンゴル族の手によるモンゴル族を描いた映画はそれ程多くはない。この作品はモンゴルに住む人々の素朴で寛容な民族性、彼らの原風景である草原の情景を忠実に描いた映画として語り継がれていくことだろう。
ストーリー
僕の心を癒してくれた、あのやさしい草原…
母親に捨てられ、失語症に陥ってしまった少年・フーズは、父親の友人であるモンゴル族のシェリガンに連れられて草原にやって来た。
父親も監獄に入れられているフーズは天涯孤独の身。今日から自分が全く知らない草原での生活が始まるのだ。不安と恐れを感じるフーズだが、シェリガンと5年前に離婚した草原の女性・バルマとシェリガンの弟・テングリは、彼を温かく迎え入れてくれた。町から来たフーズにとって広大な大地にポツンと佇むゲルでの生活は戸惑いの連続だった。しかし、そんな彼をシェリガンは荒々しく、バルマとテングリは優しく包み込んでやるのだった。年が近いこともあって、フーズは除々にテングリに対して心を開いていく。だが、バルマに想いをよせるテングリは、彼女の気持ちが兄から離れないことを悟り、解放軍に入隊、草原を去ってしまう。バルマは心を乱しながらも、彼を見送るのだった。
ある日、シェリガンが泥酔して生死の境をさまよい、バルマの看病で命を取りとめる事件が起こった。２人はお互いの大切さを知り、再び結婚式をあげる。まるで草原の嵐のような１日。人々が舞い踊り、幸せに酔いしれる様はフーズの心を高揚させてくれた。
大地が白銀におおわれ寒さが厳しくなった晦日の夜、客人がゲルを訪れた。その男は顔面が焼けただれ、マスクをしている。誰もがテングリであることを直感した。テングリの傷は火事に巻き込まれた人々を助けるために負ったものだった。しかし、彼は名乗ることをしない。彼の気持ちを汲んだシェリガンらは、あえて問うことをせず温かく客人をもてなし、涙をこらえてテングリが立ち去っていくのを見守るのだった。
そんな草原の生活の中でフーズは除々に回復の兆しを見せていた。大地を元気に駆け回り、笑顔を浮かべることが多くなった。
そして、祭典の日。フーズは騎馬に出場し、なんと１位でゴールする。歓喜するバルマとシェリガン。わきあがる歓声の中、彼はついに声を発したのだった…。
スタッフ
製作：楊歩亭（ヤン・ブーティン）、閻暁明（イェン・シャオミン）、塞夫（サイフ）
製作総指揮：童剛（トン・ガン）、張国民（チャン・グオミン）、魏民（ウェイ・ミン）
企画：韓三平（ハン・サンピン）、劉端（リウ・ルイ）
脚本：陳坪（チェン・ピン）
撮影：格日図（グーリートゥ）
美術：劉心剛（リウ・シンガン）
録音：胡濱（フー・ビン）
音楽：三宝（サンパオ）
編集：張建華（チャン・ジエンホア）
照明：巴特爾（バトール）
キャスト
バルマ：娜仁花（ナーレンホア）
シェリガン：寧才（ニンツァイ）
虎子（フーズ）：古爾斯楞（グアルスーロン）
テングリ：（アユンガ）
サロン：（トゥメン）
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