原題:The Ninth Gate

『ノイズ』『スリーピー・ホロウ』と 2000年を迎え主演作絶好調のジョニー・デッブ最新作。 「神に聖書があるように、悪魔にも秘密の書があった」 3冊の本 9枚の挿し絵——禁断の書がいざなう究極の恐怖迷宮

1999年/スペイン=フランス合作/133min/8巻・3,644m/カラー スコープサイズ/ドルビーデジタル/字幕翻訳:関美冬 サントラCD:カルチュア・パブリッシャーズ/原作:集英社文庫刊 提供:パイオニアLDC、ギャガ・コミュニケーションズ ギャガ・ヒューマックス共同配給

2000年6月3日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急洋画系にてロ一ドショー!

公開初日 2000/06/03

配給会社名 0025

解説

およそ言語というものが生まれてから、書物は人類とともに長い歴史を歩んできた。崇高な理念や英知、深い洞察と思考、激情や諦観、感情と理性を綴り、知識と娯楽を求める人間の渇きを充たしてきた膨大な数におよぶそうした書物のなかには、人間の心の闇を暗黒面に導く、紐解いてはならない禁断の書があった……。
収集家のために世界中を股にかけて稀覯書を探し出す辣腕の本の探偵、ディーン・コルソは、ニューヨークの書物愛好家ボリス・バルカンの依頼を受けて、1666年に発表された伝説の悪魔の祈祷書『影の王国への九つの扉』を探し出すことになる。
世界に3冊現存しているこの本の一冊を入手したバルカンは、残りの2冊と照合して、3冊全てが本物かどうか鑑定したがっていた。コルソの書物捜査の旅はニューヨークからスペイン、ポルトガル、フランスに及ぶにしたがい、邪悪な意志に満ちた暴力と死の彩りをみせていく。それは人間のあくなき欲望と人知を超えた凶凶しい存在とのせめぎあいでもあった……。
1962年に『水の中のナイフ』で衝撃的なデビューを飾り、『反撥』『袋小路』『吸血鬼』など群を抜いた演出力と映像感性で、鬼才の名をほしいままにしてきた稀代の匠ロマン・ポランスキー。私生活でもスキャンダラスな事件を巻き起こし、どこかしら悪魔的な雰囲気を持つこの監督が、6年の沈黙を破って送り出した本作品は、彼にとって1968年の『ローズマリーの赤ちゃん』以来のひさびさの“オカルト映画”。三冊の奇書に秘められた謎を巡って本の探偵、コルソがいざなう世界は、ミステリーの体裁で始まりながら、次第にデモニッシュな装いを見せはじめ、思いもつかぬ結末に導く。サスペンスに溢れ、趣味性充分、官能的で、ウィットに富んだその語り口はまさにポランスキーならではである。
主人公のコルソを演じるのは、ポランスキー自身が原作を読んだ時から頭に描いていたというジョニー・デップ。『ノイズ』『スリーピー・ホロウ』『GO!GO!L.A.』と出演作目白押しの彼だが、今回はポランスキーの指導のもと、もみあげに白髪をたくわえた扮装で、謎に挑む情熱的な探求者を巧みに演じてみせる。好奇心に富み、人好きがする表情を持つ、したたかなヒーロー。この役が彼の新しい一面を引き出したことは間違いない。共演はポランスキーの永遠のミューズ、『フランティック』や『赤い航路』のエマニュエル・セイナー。『ドラキュラ』のフランク・ランジェラ、『蜘蛛女』のレナ・オリン、『フェイク』ノジェームズ・ルッソといった個性派たちがミステリアスな登場人物を熱演している。
原作はスペインの“知”のミステリーの旗手、アルトゥーロ・ベレス・レベルテの『呪デュマ倶楽部』(集英社刊)だが、大胆に脚色が施されている。ポランスキーは、『テス』や『赤い航路』で仕事をしてきたジョン・ブラウンジョン、アンリック・ユルビズーとともに、ペダンチックな原作の枝葉を刈り取り、より映像的で引き締まったスリリング満点のストーリーに変えている。スペイン、ポルトガルの風光明媚な風景の中からすばらしいテクニックで陰影に富んだ映像を切り取った撮影は『セブン』のダリウス・コンディ、オカルティックな意匠を揃えたプロダクション・デザインは『地獄の黙示録』のディーン・タヴラリス。
冒頭のクレジット・タイトルの悪夢のようなシーンからぐいぐい引き込まれる迷宮のような世界。これぞポランスキーが世紀末に贈る、圧倒的に面白い黙示録エンターテインメントだ。

ストーリー

★ニューヨーク——幅広い知識と鋭い観察眼、さらには他を出し抜く機動力を兼ね備える本の探偵(ブック・ハンター)のディーン・コルソ(ジョニー・デップ)は、バルカン出版の社長ボリス・バルカン(フランク・ランジェラ)から仕事を依頼される。悪魔研究者としても名高いバルカンの注文は、最近彼が入手した一冊の本——コレクター仲間のアンドリュー・テルファーから譲られた17世紀の悪魔書『ナインスゲート(影の王国への九つの門)』」にまつわることだった。悪魔自身の作とされ、翻訳した作家アリスティデ・トルキアが火あぶりの刑に処せられたことでも知られるこの伝説の書は、世界中に3冊しか存在していない。ようやく入手したバルカンは、残り2冊を探し出し、あらゆる角度から比較して真贋を判断するように、コルソに依頼した。
コルソはまず、テルファーの屋敷を訪ねる。しかしテルファーはバルカンに本を譲った翌日に謎の首吊り自殺を遂げていた。コルソは危険な匂いを感じつつ『ナインスゲート』を稀覯書専門の本屋を営む友人のバーニー(ジェームズ・ルッソ)に預ける。そして、帰宅した彼を待っていたのは、テルファーの未亡人リアナ(レナ・オリン)。彼女はコルソを誘惑し、情事の余韻に浸るふりをして『ナインスゲート』を取り戻そうとするが、コルソが本を持っていないことを知ると逆上する。
図書館へ出かけたコルソは、バルカンの悪霊学の講義に出席していたブロンドの美女(エマニュエル・セイナー)を見かける。声をかけようとしたが、次の瞬間、彼女の姿は消えていた。翌日バーニーの店に立ち寄ったコルソは、第2の死に遭遇する。バーニーは『ナインスゲート』に挿入されている版画のとおりの奇妙な姿で殺されていたのだ。コルソは隠しておいた『ナインスゲート』を抱えて空港へ向かった。

★トレド(スペイン)——コルソは、テルファーが『ナインスゲート』を購入したというセニサ兄弟(ホセ・ロペス・ロデロ)の店を訪れた。そこは製本屋と書店を兼ねていて、話好きの兄弟は『ナインスゲート』にまつわる多くの情報と、テルファー夫妻に関する興味深い事実を教えてくれた。実は、本を欲しがっていたのはテルファーではなくリアナだったこと。そして挿し絵の版画には、ある秘密が隠されていること。

★シントラ(ポルトガル)——2冊目の『ナインスゲート』を求めて、コルソは裕福な一族の子孫であるヴィクター・ファルガス(ジャック・テイラー)の屋敷を訪ねた。何かに憑かれたようにヴァイオリンを弾きつづけるファルガスの横で、コルソは詳細に2冊目の『ナインスゲート』を調べていく。そして、版画のサインが微妙に違っていることに気がついた。
調査を済ませて門を出たコルソは、猛スピードの車に突っ込まれそうになる。車から降り立った屈強な男は、テルファーの屋敷でみかけたボディガード(トニー・アモーニ)によく似ていた。その後ホテルに戻った彼は、またもやブロンド美女とラウンジで遭遇する。彼女に導かれるままファルガスの屋敷を再訪すると、池にはファルガスの遺体が。急いで書斎に駆け込むと、暖炉の中では2冊目の『ナインスゲート』が燃え尽きかけている。しかも、挿し絵の部分は破り取られていた……。

★パリ——最後の1冊を所有するケスラー男爵夫人は悪魔崇拝者だった。『ナインスゲート』についての歴史をレクチャーしてくれた上、その教えを伝える秘密結社“銀蛇教団”の存在についても及んだ。翌日、秘書の留守を狙ってコルソはケスラーのオフィスに押し入るが、気づくと周囲は炎と煙に包まれ、ケスラーは絶命していた。肝心の本は、ファルガスの時と同じように挿し絵の部分だけが盗まれていた。
いまや、コルソは完全に『ナインスゲート』に取り憑かれていた。守護天使とも呼べるブロンド美女に導かれ、彼は稀覯本の闇の世界をさまよい続ける。そして“9番目の扉”は、彼の到着を静かに待っていた——。

スタッフ

製作・監督:ロマン・ポランスキー
脚本:アンリック・ユルズビー、ジョン・ブラウンジョン、ロマン・ポランスキー
原作:アルトゥーロ・ペレス・レベルテ
ライン・プロデューサー:スザンヌ・ワイセンフェルド
製作総指揮:ウォルフガング・グラッテス、マイケル・チェイコ
共同プロデューサー:イヌキ・ヌユナズ、アントニオ・カーディナル
アレイン・ヴェニエ
撮影:ダリウス・コンディA.F.C.,A.S.C.
美術:ディーン・タヴラリス
編集:ハーヴ・デルーズ
音楽:ヴォイチェック・・キラール
衣裳:アンソニー・パウエル
キャスティング:ハワード・フィヤー

キャスト

ディーン・コルソ:ジョニー・デップ
ボリス・バルカン:フランク・ランジェラ
リアナ・テルファー:レナ・オリン
謎の女:エマニュエル・セイナー
ケスラー男爵婦人:バーバラ・ジェフォード
ヴィクター・ファルガス:ジャック・テイラー
ボディガード:トニー・アモーニ
バーニー:ジェームズ・ルッソ
パブロ、ペドロ(セニサ兄弟):ホセ・ロベス・ロデロ

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