原題:Tea With Mussolini

フィレンツェに集う異国の5人の女たち—— イタリアを愛し、芸術を愛し、 そして1人の少年を「紳士」に創り上げた

1999年/アメリカ映画/上映時間1時間56分/製作:ユニヴァーサル/配給:UIP

2000年5月27日よりシャンテシネにて公開 (全米1999年3月14日公開) 2000年11月24日よりビデオ発売・レンタル開始

公開初日 2000/05/27

配給会社名 0081

解説

 1930年から40年代にかけて。イタリアのフィレンツェで、異邦人でありながら、自由奔放に生き、人生を調歌した5人の女性たちと、一人の孤独な少年とのふれあいを描いた物語。『ロミオとジュリエット』『ハムレット』などのシェイクスピア映画で知られるイタリアの名匠フランコ・ゼフィレヅリ監督が、英米両国の大女優を賛沢に使い、心温まる愛の讃歌を歌い上げる。
 大戦前夜の緊迫した空気をよそに、イギリスから来た女たちはあくまでもイギリス流を気取り、アメリカから来た女たちはどこまでもアメリカンであり続けた。かつ、彼女たちは、ルネサンスの香り豊かなフィレンツェを、イタリア人以上に愛していた。そんな個性的な女性たちが、母親を亡くし、父にも見捨てられた少年に、愛の尊さと芸術の素晴らしさを教えていく。トスカーナ地方の絵画のような風景の中で、頑固だけれどやさしい女性たちにはぐくまれ、やがて、少年は、“イタリア生まれのイギリス紳士”に成長する。
 『ムッソリーニとお茶を』というタイトルは、イギリス人女性たちがムッソリー二に会いに行き、お茶を共にするエピソードからとっている。と同時に、イタリアにファシズムが台頭し、世界が大きな戦争に向って走り出しているさなか、どこか飄々とした風情で、相変わらず“アフタヌーン・ティー”の習慣を守っている老婦人たちの、かわいい呑気さをも表している。まもなく、彼女たちの祖国であるアメリカ、イギリスは、彼女たちが愛するこの美しい国、イタリアとの激しい戦いに突入していく……。
 このコロニー(外国人居住区)のリーダー格、イギリス人のレディ・ヘスターを演じるのは、『ミス・ブロディの青春』と『カリフォルニア・スイート』で2度、アカデミー賞を受賞したマギー・スミス。並々ならぬ気位の高さがかえって微笑ましいという役ところだ。行き場のない少年を引き取り、英語とシェイクスピア劇を教えるメアリーには、『魅せられて四月』でアカデミー賞候補に上ったジョーン・フローライト。少年に最も大きな影響を与えた女性としての包容力を十分に感じさせてくれる。3人目のイギリス人、偉大なるイタリア芸術の信奉者アラベラは、『恋におちたシェイクスピア』でアカデミー賞を受賞したジュディ・デンチが演じる。前作でのエリザベス女王の風格や、『007』シリーズでのM役のクールさとはまるで違う、“翔んでるおばさん”ぶりが楽しい。また、アメリカ人考古学者ショージー役は、『9時から5時まで』などのリリー・トムリンが演じている。そして、『月の輝く夜に』でアカデミー賞を受賞した歌手のシェールが、物語の展開に重要な役割を果たす大富豪のエルサ役で登場し、強烈な個性を放っている。
 この5人に囲まれて育つのが、少年ルカだ。子役のルカは、イギリス人のチャーリー・ルーカス(10歳)。青年のルカは、ローマに住む17歳のアメリカ人、ヘアード・ウォレスが、英伊バイリンカルを生かしてさわやかな演技を見せる。どちらもゼフィレッリ監督が発掘した新人だ。レディ・ヘスターの孫、ウィルフレッドに扮するポール・チェッカーと女性記者コニー役のテッサ・プリチャードも映画初出演。また、エルザの弁護士ヴィットリオ役は、イタリアの映画俳優で、最近は『世界中がアイ・ラブ・ユー』『L.A.コンブィデンシャル』などのアメリカ映画にも出演しているパオロ・セガンティが演じている。その他、ルカの父、服地商パオロ役のマッシモ・ジニと、ムッソリー二そっくりのクラウディオ・スパダロは、数多くのイタリア映画に出演しているベテラン俳優だ。
 監督はフランコ・ゼフィレッリ。生れ故郷フィレンツェに対するノスタルジーと、イタリア人らしい酒落っ気を盛り込みつつ、文芸調の気品ある作品に仕上げた。今回は、『ジェイン・エア』で組んだスタッフの再起用が目立つ。製作は、『ジェイン・エア』で製作総指揮を務めたリカルド・トッツィ、同作では共同製作に名を連ねたショバネッラ・ザノーニ、そして、アメリカから『恋の選択』などのクライブ・パーソンズ。音楽も、『ジェイン・エア』のアレッシオ・プラドと、同作で編曲を担当したステファーノ・アルナルディが手掛けた。脚本は、ゼフィレッリと、イギリス人のジョン・モーティマー(『ジョンとメリー』)が共同で執筆した。さらに、撮影は、『愛と哀しみの果て』でアカデミー賞を受賞した実力派デビッド・ワトキン。ワトキンは、これまでに、『ハムレット』と『ジェイン・エア』でもゼフィレッリと組んでいる。衣装は、イギリス映画界の第一人者、『眺めのいい部屋』でアカデミー賞を受賞したジェニー・ビーバンらが担当した。イギリス人の19世紀風のドレスから、シェールの着こなす前衛的なドレスまで、多彩なデザインが登場する。そして、”花の都”と呼ばれるフィレンツェを初め、”美しい塔の都”サンジミニャーノ、フィレンツェ近郊の古都フィエーゾレと、それ自体が芸術ともいえるトスカーナ地方の美しいロケ地が、この作品を優雅に彩っている

ストーリー

 1935年。イタリアのフィレンツェ。この町に住むイギリス人たちが、花を手に外国人墓地へ向う。元大使の未亡人レディ・ヘスター(マギー・スミス)をリーダーとする一団は、毎年一回、こうして、この地で生涯を終えた英国詩人エリザベス・バーレット・ブラウニングを讃える式典を行っていた。19世紀風のドレスを着て闇歩し、毎日、決まって町のカフェで午後のお茶会をするイギリス人たち。町の人々は、彼女たちを、イギリス人特有のシニカルさで人に噛みつくことから”サソリ族”と呼んでいた。
 そこへ、服地商パオロ(マッシモ・ジニ)の秘書メアリー(ジョーン・フローライト)が、パオロが仕立屋の女に生ませた男の子ルカ(チャーリー・ルーカス)を連れてやってくる。幼いルカは母親の死を知らず、いつか母が戻ってくると信じて孤児院を脱走した。パオロはルカを実子として認知せず、イギリス人のメアリーに”英国紳士”に育ててくれと頼み込む。メアリーは困ったものの、ルカを見捨てられず、友人たちと協力して育てる決意をする。フレスコ画をこよなく愛する芸術家アラベラ(ジュディ・デンチ)は、ルカにイタリア美術の崇高さを伝えた。メアリー自身は、正しい英語と、シェイクスピア劇の素晴らしさを教える。ルカに母親の死を告げる辛い役目も、メアリーが果たした。
 同じ外国人でも、気取ったイギリス人と対照的なのがラフなアメリカ人たち。レスの考古学者ショージー(リリー・トムリン)は、いつもズボンをはいて、遺跡発掘に余念がない。さらに、元レビューの踊り子で、富豪との結婚を繰り返しているエルサ(シェール)が舞い戻ってくる。美貌の青年たちを従え、斬新なドレスで派手にふるまうエルサに、レディ・ヘスターは眉をひそめ、孫のウィルフレッド(ポール・チェッカー)を近づけないようにする。一方、エルサは、ルカの一件を知ると、彼の教育用の信託基金を提供する。
 やがて、フィレンツェで外国人に対する暴動が起きた。ムッソリーニ(クラウディオ・スパダロ)を紳士と信じているレディ・ヘスターたちは、イギリスから取材に来ている女性記者コニー(テッサ・プリチャード)の計らいで、ローマにいるムッソリーニに直談判に行く。ムッソリーニは、彼女たちに身の安全を約束し、英国式のお茶でもてなす。この模様は、コニーの記事を通じ下て々的に報道された。にも関わらず、彼女たちには暗雲がのしかかる。ウフィッツィ美術館で優雅に語らう自由は、兵士たちの力で奪い去られた。そして、時代を読んだパオロは、ルカに独語を学はせるため、オーストリアに留学させると言い出した。こうして、彼女たちは、恋しんで育てたルカさえも奪われてしまう。
 1936年、37年、38年…イタリア国内に軍靴の音が高鳴り、ムッソリーニは力を増していった。そして、1939年、イギリス、フランスがドイツとの戦争に突入。翌年の6月、ドイツ軍によるパリ占領を目前に、ムッソリーニはついに英仏両国に宣戦を布告する。イギリス人たちは、もはや完全にイタリアの敵になった。母国へ帰る者が相次ぐ中、レディ・ヘスターは、未だにムッソリーニとの約束を信じ、仲間たちとフィレンツェに居残っていた。成長したルカ(ヘアード・ウォレス)がオーストリアから帰ってきた時、メアリーたちは、今まさに外国人の強制収容所に移送されるところだった。
 行き先は、サンジミニャーノの町。廃屋同然の施設で、共同生活を強いられるイギリス人女性たち。レディ・ヘスターは、孫のウィルフレッドを兵役から守るため、女装をさせて連れてきていた。メデリーは追ってきたルカと、宵闇に紛れて久々に静かな語らいの時を持つ。その頃、エルサは、ユダヤ人を国外へ逃がすためにフィレンツェに戻っていた。実は、彼女自身もユダヤ人だったのだ。エルサが調達した偽造パスポートは、ルカが運んだ。イタリア人のルカは怪しまれにくい。そして、そんな危険な仕事も、ルカのエルサに対する幼い恋心を満足させた。だが、エルサは、財産管理を任せることになった弁護士ヴィットリオ(パオロ・セガンティ)と、珍しく真剣な恋に落ちていた。それを知ったルカは、裏切られた思いに沈む。ある日、イギリス人たちは、汚い施設から町のホテルに移される。ムッソリーニの計らいと大喜びのレディ・ヘスター。だが、メアリーだけは、それが、エルサが陰で大金を使って手配してくれたのだと知っていた。
 1941年。日本軍の真珠湾攻撃をきっかけに、アメリカが日独伊に宣戦し、アメリカ人のショージーとエルサもこの収容所にやってきた。レディ・ヘスターは、自分たちが助けられたことも知らず、相変わらずエルサを嫌っている。1943年になった。戦況はますます厳しさを増してくる。ウィルフレッドも女装を脱ぎ捨て、イギリス軍に志願していった。エルサは、ユダヤ人であることが発覚する前に、弁護士のヴィットリオとスイス経由でアメリカヘ逃げる約束になっていた。その頃、フィレンツェの美術学校にいたルカは、そのヴィットリオの密告で、何人ものユダヤ人が連行されていくのを目撃していた。エルサは騙されているのだ。エルサがあぶない。だが、エルサは、来るはずのない恋人をひたすら待ちわび、部屋を一歩も出ようとしなかった……。

スタッフ

監督:フランコ・ゼフィレッリ
製作:リカルド・トッツィ、ショバネッラ・ザノーニ、
     クライブ・パーソンズ
音楽:アレッシオ・プラド、ステファーノ・アルナルディ
脚本:ゼフィレッリ、ジョン・モーティマー
撮影:デビッド・ワトキン
衣裳:ジェニー・ビーバン

キャスト

エルサ:シェール
アラベラ:ジュディ・デンチ
メアリー:ジョーン・プローライト
レディ・ヘクター:マギー・スミス
ジョージー:リリー・トムリン
ルカ:ベアード・ウォレス

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