2000年/日本映画/デジタル・ビデオ/カラー/91min 製作:シネロケット、日本トラスティック 配給:シネロケット/配給協力:ビターズ・エンド

2000年11月25日よりシネマ下北沢にてロードショー!

公開初日 2000/11/25

配給会社名 0593

解説

【ラブシネマとは…】

廣木隆一、三原光廣、行定勲、篠原哲雄、塩田明彦、三池崇史、日本映画の枠を超えて活躍する6人の俊英が、デジタルビデオを使って自由自在に撮りあげる“6つの純愛”物語「ラブシネマ」。今を生きる女性達の等身大の姿を捉えた、ちょっぴりエロティックで、ちょっぴりハートフルな物語は、きっとあなたの心に届きます。

母の変死、父の失跡と囁かれ、両親亡き後2人っきりで暮らしてきた作家、我妻名雪と、高校生の弟、拓海。
長い間2人が封じ込めてきた「ある過去」は、姉弟を強く・深く結び付け続ける。過去であると同時に・その拭い去れない現実から逃れようと、名雪はそれらを赤裸々に綴った小説を書き上げる…。
幼い頃の虐待経験…その呪縛から開放されようと、それぞれがそれぞれにもがく孤独な闘いを繊細に描き出したのは、岩井俊二監督作品で助監督を務め、映画のみならずあらゆる映像作品の制作に携わってきた俊英、行定勲。
2000年劇場公開作品『ひまわり』で広くその名を知られることとなった。
撮影には、行定との制作活動に継続して関わってきた『タイムレスメロディ』(199S年:奥原浩志監督)の福本淳。
絡まり合った過去と現実をじっくりとき解すようなストーリー展開は・益子昌一と行定勲の共同脚本による。冒頭から印象的な音楽は、UA、SugarSou1他、多数のアーティストを手掛ける音楽プロデューサーとして活躍している朝本浩文が手掛ける。
小説家、名雪には犬、『走る〜DOGRACE〜』(1938年:雀洋一監督)で高崎映画祭新人女優賞を受賞した冨樫真。
数々の舞台で培ったしなやかな表現力で、壊れそうなほど繊細な激しさをからだ一杯に演じている。また、名雪と身体を重ねてきた弟、拓海役に『オーディション』(1999年:三池崇史)で鮮烈なスクリーンデビューを果たした沢木哲。
若者独特の不安定さ、気持ちの揺らぎや優しさが切ないまでに伝わる演技が光る。
そんな拓海を危ういと知りつつも惹かれ、愛するようになる少女、悠里に綾花。
複雑な個性を持つ名雪の担当編集者、川上には永瀬正敏が扮し、冷たく乾いた理性が狂気に向かうさまを圧倒的な演技力で魅せている。
いずれも実力派のスタッフと役者との力がしっかりと縒り合わされて出来あがった本作は、人間のあらゆる感覚に訴えかける、まさに総合芸術と呼ぶに相応しい作品に仕上がった。

ストーリー

草原で、少女が中年男に付きまとわれている。
その側を走り去る2人乗りのバイク。「おい、あれ悠里じゃねえか?」。
戻ったバイクは少女を乗せて、走った。
少女を下ろし家に帰ると、小説家の姉、我妻名雪(冨樫真)は原稿が上がったところだった。
弟であり唯一の同居人である拓海(沢木哲)は、いつも一番最初の読者である。しかし、今回名雪は見せようとしない。
疲れて眠る弟の身体に唇を寄せ、今日も安らぎを覚えている。
寝室の壁には、2人が身体を重ねる度に刻まれていく、虫の死拓と日付が残されている。
学校での拓海は、いつもプールの底に沈んで静寂の世界に身を委ねている。
その姿をじっとみているのは、草原で拓海に助けてもらった少女、悠里(綾花)。
彼女は拓海に冷たくあたられながらも心惹かれ、近づいていく。
そんなある日、拓海はプールの底で息が途絶えそうなところを悠里に助けられたことから、次第に心を寄せ始めた。
一方、家には名雪の担当編集者、川上(永瀬正敏)が原稿を取りに来ている。
疲労気味の名雪を見て、車で原稿を読もうと部屋を出るが、名雪は川上についてきた。
その日、暗くなっても、拓海の姿は見えなかった。夜も更けた頃、拓海のバイクが悠里を乗せて通り過ぎる。
遣り切れず川上と身体を重ねた名雪は、明け方に帰宅する。そんな名雪に、拓海は「男の匂いがして汚い」と吐き棄てた。
翌日、拓海は学校から悠里を連れて帰ってきた。
すぐに部屋に閉じこもる2人を見て、名雪は激しく嫉妬する。しかし拓海は、ベランダ越しに見える名雪に充て付けるかのように悠里を押し倒す。…その日、2人は結ばれた。普段から一緒に居るようになった2人。
しかし、何気ない折にも姉のことを気にかけている拓海を見て、悠里は悲しみを覚える。
明(野村貴志)は、そんな2人を遠巻きに覗いていた。
拓海の幼馴染みであり、悠里に心惹かれている明は、2人の距離を見過ごせなかったのだ。
明のただならぬ視線に気付くと、説明もなく悠里の手を引き走り出す拓海。
悠里は何もかも不愉快になっていたそんな折、明は悠里を誘い出して言う。
拓海は母親が消えて以来、姉と2人っきりでいること。
その姉と「ヤバい」関係であるということ。消えた父親は殺されたという噂…。
…中学時代、父親に犯された。拓海は見ていた。絶望する名雪の横で、事を終え一服する父親。
そこに振り下ろされた刃。…拓海だ!傍らに苦しむ男がいる。
名雪はついに立ち上がって、自らを苦しめ続けた父親を刺す———。
小説を読んだ川上は戸惑いを隠せない。しかし名雪にはもう、何を言われても作り話はできなかった。書く事で、封じ込めた記憶を開放することしか、残されていないと思った。
過去の詰まった自分を崩壊するかのように、気が狂ったように壁に頭を叩き付ける名雪。
川上に殴られ我に返った名雪は、彼の身体に身を投じる。
階段で、誕生日のプレゼントを持ってきた拓海が見ていたことも知らずに。
拓海は悠里の母親が営むバーに彼女を探しに行くが、悠里には会えない。
カウンターには川上が座っている。「あの子、どうですか…」。母親に娘を売られて、川上は悠里を買った。
彼女を愛していることに気付いた拓海はその後を追う。
狂気を帯びた川上が、悠里を視姦する。追い詰められた悠里に逃げ場はない。
張り詰めた空気。それは拓海の一撃で一変した。倒れた川上を残し、2人は、金と原稿をもって飛び出した。
川上の手元にあった原稿を読んだ悠里は、真実を確かめるため、名雪のもとへと向かう。が、名雪は、自分が苦しみながらも求めてきた、安らかな逃げ場を壊していく悠里に逆上し、刃に手を掛ける。止めに入る拓海。
押さえつけた名雪から離れると、名雪の身体から血が溢れ出していた。
姉がどうしても見せるのを嫌がった原稿。読み終えた拓海は、ハンマーを手に、夢中で漆喰の壁を壊し始めた。記憶の中で、あの時、姉と一緒に父親を埋めた壁を…

スタッフ

監督:行定勲
製作:斎藤晃・遠藤久典
プロデューサー:烏澤晋・荒川礼子・中島進
脚本:行定勲・益子昌一
撮影:福本淳
照明:祷宮信
美術:佐々木尚
録音:伊藤裕規
音楽:朝本浩文(ram jam world)・MOKU
編集:大竹弥生・今井剛
助監督:片岡英子
スタイリスト:浜井貴子
衣装:荒木里江
メイク:山田今日子
制作担当:見嶋冬樹
MA:久保田敏之
タイトル曲ミキサー:吉村健一(ミキサーズ ラボ)
監督助手:小林聖太郎
照明助手:松尾文章
美術助手:足立努・渡辺大智
録音助手:深津智男
編集助手:横手三佐子
制作進行:伊刀嘉紘・渡辺幸一朗
制作応援:森満康巳・大日方教史
制作デスク:奈須美希
アソシエイトプロデューサー:菊田昌史
スチール:平野晋子

タイトル曲「聖なる脚」
作詞:売野雅勇
作曲:朝本浩文
唄:藤田アサミ

キャスト

名雪:冨樫真
拓海:沢木哲
悠里:綾花
川上:永瀬正敏(友情出演)

明:野村貴志
里美:筒井真理子
康男:大鷹明良

大野麻那
藤原康太
田中要次
藤田アサミ
横川タダヒコ

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