原題:Rosetta

”普通”の生活をするために必要なもの、それは仕事。だから私は仕事が欲しい。

1999年カンヌ国際映画祭 パルムドール大賞 1999年カンヌ国際映画祭 主演女優賞

1999年/仏=ベルギー合作/カラー/94分/ビスタ 配給:ビターズ・エンド 

2000年10月27日よりビデオ発売・レンタル開始 2000年4月8日よりbunkamuraル・シネマにて公開 2000年10月27日よりDVD発売開始

公開初日 2000/04/08

配給会社名 0071

解説

”普通”の生活をするために必要なもの、それは仕事。だから私は仕事が欲しい。
少女ロゼッタのささやかな願いと、強固な決意の記録。
理由もなく、工場での仕事を奪われた少女ロゼッタ。
キャンプ場のトレーラーハウスで酒浸りの母親と暮らす、そんな貧しい生活から抜け出したい。
ここで仕事を奪われてしまったら、そんなささやかな願いすらかなえられなくなってしまう、とロセッタは必死に抵抗する。
しかし懇願してみても、暴れてロッカーの中に閉じこもってみても、やはり仕事を取り戻すことはできない。
怒りと絶望をはっきりと表情に刻みながらも、ロゼッタは涙を見せない。
大きく息をつくと、怒ったような早足で歩き始めるのだ。ただ新しい仕事を探すために。
ロゼッタは仕事を見つけることができるのだろうか?ロゼッタの頑なな心が、開かれる時は訪れるのだろうか?
自分を招き入れない世界を相手に、独りで闘いを挑み続け、そして絶望を通り越してまでも生き抜こうとするロゼッタ。
その一途さと懸命さは、観る者すべての心を震わせることだろう。

計算し尽くされた衝撃と、愛すべき少女ロゼッタの誕生。リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督の挑戦。

心理的な解釈を与えることを拒絶するかのように、至近距離から手持ちのカメラで、ロゼッタの日常を記録するように撮影する。
この監督ダルデンヌ兄弟のスタイルは、観る者にロゼッタのすぐ側にいて、ロゼッタと一緒に行動しているような気持ちを生み出す。
全く予想もできない事態に直面するたびに、ロゼッタとともに私たちも「何とかして乗りこえよう」と身構えさせられるだろう。
ストーリーを語らずに、登場人物に不可欠な瞬間を捉えようとする大胆な手法が、ロゼッタの仕事探しという生き残りをかけた闘いの切実さを赤裸々に浮き彫りにし、映画史上に残るであろう「ロゼッタ」という頑なで懸命な愛すべき少女を誕生させた。
生まれた国や境遇がどれだけ違っていても、ロゼッタの仕事に向ける情熱が理解に苦しむ激しさを見せようとも、映画が終わるまでには誰もがロゼッタを理解し、いとおしく思うことだろう。

1999年カンヌ国際映画祭 パルムドール大賞/エミリー・デュケンヌ主演女優賞 ダブル受賞の快挙。

レオス・カラックス監督『ポーラX』、ジム・ジャームッシュ監督『ゴースト・ドッグ』、北野武監督『菊次郎の夏』、デイヴィッドーリンチ監督『ストレイト’ストーリー』、ペドロ・アルモドバル監督『オール・アバウト・マイ・マザー』など、ここ数年の中でも最も豪華な顔ぶれと作品が揃った1999年カンヌ国際映画祭コンペティション部門。その中から最優秀賞であるパルムドールに輝いたのが、ベルギー出身の兄弟、リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ監督の『ロゼッタ』である。
作品の背景に、失業問題という現代社会の抱える深刻な問題を描きつつも、人間に対する大きな希望を含んだ『ロゼッタ』の作品内容と、映画表現の新たな可能性を極限まで突き詰めた、監督ダルデンヌ兄弟の大胆なスタイルが、多くの観客に衝撃と興奮を巻き起こした。
そして主人公ロゼッタとして、映画初出演ながら堂々たる演技を見せ、主演女優賞を受賞したエミリー・デュケンヌ。
彼女の「ロゼッタとして映画の中で生きよう」という決心が、『ロゼッタ』に小さな奇跡を起こしてのタプル受賞となった。

ストーリー

 突然、工場での仕事を奪われた少女ロゼッタ(エミリー・デュケンヌ)。
 解雇される理由が分からない、と暴れるが警備員につまみ出されてしまう。

 いつも持ち歩いている水筒から水を飲み、バスに乗って家へ帰るロゼッタ。バスを降り、誰にも見つからないように一度身を隠してから、車道を横切り森の中に入っていく。ここが彼女の住むキャンプ場への近道だ。隠してある長靴にはきかえ泥道を歩き、フェンスを破って作った秘密の入り口から、キャンプ場へ入る。ここに置かれたトレーラーハウスで、ロゼッタは酒浸りの母親(アンヌ・イェルノー)と暮らしている。

 酒のことで母親とけんかをし、「乞食じゃない」と母親がもらってきた食べ物を投げ捨てる。「すぐに出て行くから必要ない」と母親が植えた花までも引き抜いてしまう。

 ミミズをフォークで掘り出し、池に沈めてあるボトルの仕掛けで魚を釣るロゼッタ。

 母親が繕い直した、古着を売りに街へ出る。ロゼッタはいつも同じ洋服を着たまま。
 役所で求職届けを受け取ってもらえず、生活保護を受けるように言われるロゼッタ。

 いつものワッフル・スタンドに立ち寄り、新入りの店員リケ(ファブリツィオ・ロンギーヌ)からワッフルとビールを買う。居合わせたワッフル・スタンドの社長(オリヴィエ・グルメ)に仕事を求めるロゼッタ。

 トレイラーハウスに戻ると、ロゼッタをいつもの原因不明の腹痛が襲う。その隙にビールを飲もうとする母親。ロゼッタは、お腹をドライヤーで優しく温める。

 母親がトレイラーハウスに男を連れ込んだ。酒瓶を割り、男に石を投げつけるロゼッタ。
 仕事に空きができた、とリケがロゼッタを訊ねて来る。トレーラーハウスに住んでいる事を知られたくなかったロゼッタは、リケに殴りかかる。

 新しいエプロンを付けて、ワッフルの生地作りを社長に習うロゼッタ。

 管理人にも体を売ろうとする母親を、病院に入院させようとするロゼッタ。そんなロゼッタを母親は池に突き落として走り去る。戻ってこない母親に助けを求めながら、ロゼッタは池から一人這いあがる。

 その夜、リケの家を訊ねるロゼッタ。食事をつくり、自分の叩いたドラムにあわせてダンスを教えるリケ。ダンスの途中で腹痛を起こすロゼッタ。

 車で寝たくない、とリケの家に泊めてくれるよう頼むロゼッタ。

 翌朝リケとバイクで出勤してきてみると、社長の息子に仕事を奪われていた。小麦粉の袋にしがみつき、暴れるロゼッタ。ロゼッタの新しい仕事探しが、また始まる。

 リケのバイクの音を管理人のものと勘違いして、魚釣りの仕掛けを投げ捨てるロゼッタ。仕掛けを拾おうとしたリケは池に落ちてしまう。このまま溺れてしまえば、ワッフル・スタンドでの仕事が手に入るかもしれない、と考え、リケを助けるのを躊躇するロゼッタ。

 社長にリケがワッフルの数をごまかしていると、告げ口するロゼッタ。リケはスタンドを追い出されるが、ロゼッタは喜びに満ちた表情で働き始める。
 リケにバイクでつけ回されるロゼッタ。「なぜ裏切ったのか」、と問い詰めるリケに、「仕事のために」とロゼッタは答える。

 いつものようにトレーラーハウスに戻ると、外で母親が泥酔して眠り込んでいた。ベッドに運び、「仕事を辞める」と社長に電話をするロゼッタ。ガス栓をひねり、ゆで卵を食べながらベッドに横たわるが、ガスは途中で切れてしまう。

 重いガスボンベを抱えて歩くロゼッタ。そこにリケのバイクの耳障りな音が聞こえてくる。すべてがうまくゆかず、倒れ込み泣き出すロゼッタ。リケが優しくロゼッタを抱き起こす。

スタッフ

監督・脚本:リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ
プロデューサー:リュック&ジャン=ピエール・ダルデンヌ、ミシェール&ローラン・ペタン
撮影監督:アラン・マルクーン
カメラ・オペレーター:ブノワ・デルヴォー
録音:ジャン=ピエール・デュレ
編集:マリー=エレーヌ・ドゾ
整音:トマス・ゴデ
美術:イゴール・ガブリエル
衣装:モニック・パレール
メイク:ティナ・コペカ
アソシエイト・プロデューサー:アルレット・ジルバーベルグ
プロダクション・ディレクター:ベロニク・マリ

キャスト

ロゼッタ:エミリー・デュケンヌ
リケ:ファブリツィオ・ロンギオーヌ
母:アンヌ・イェルノー
社長:オリヴィエ・グルメ

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