原題:小武/Xiao Wu

スリに生きる青年が、ある日、心を盗まれた。 世界が注目する若き先鋭、 ジャ・ジャンクー監督、27歳のデビュー作!

1998年ベルリン国際映画祭・最優秀新人監督賞・最優秀アジア映画賞 1998年プサン国際映画祭グランプリ 1998年バンクーバー国際映画祭・ドラゴン&タイガーヤングシネマ賞 1998年ナント三大陸映画祭グランプリ 1999年サンフランシスコ国際映画祭SKYY賞 1999年リミニ国際映画祭最優秀作品賞

1997年/中国=香港/カラー/35ミリ/スタンダード/108分 配給/ビターズ・エンド

中国映画の全貌 2007にて上映::http://www.ks-cinema.com/schedule.html 1999年12月25日よりユーロスペースにて モーニング&レイトロードショー (午前10時45分/午後9時より上映)

公開初日 1999/12/25

配給会社名 0071

解説

中国の「現在」を鮮烈に描き出す最も若き先鋭、ジャ・ジャンクー監督、27歳驚愕のデビュー作!
監督は、27歳にして長編デビューを果した、「中国新世代」の新たなる先鋭、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)。北京電影学院に学んだ監督は、陳凱歌、張藝謀に代表される第五世代以後の才能として現れた、張元(チャン・ユエン)[『北京バスターズ』(93)、『東宮西宮』(96)、99年ヴェネツィア国際映画祭最優秀監督賞受賞作「SEVENTEEN YEARS」など]、章明(ツァン・ミン)[『沈む街』(96)]ら「新世代」の精神を受け継ぎ、インディペンデントの立場で本作の製作を開始した。
それと前後して、卒業後に撮り上げた短編が香港インディペンデント・ショート・フィルム・コンテストでグランプリを獲得、香港の製作会社からの出資を得ることに成功した監督は、本作を中国本土の検閲を受けずに完成させた。すでに本作は、ベルリンで最優秀新人監督賞と最優秀アジア映画賞を、ナントではグランプリを受賞、その他各国の国際映画祭でもグランプリを次々と獲得し、この映画がもたらす衝撃は、世界を大きく揺るがせている。だが、中国本土では、検閲を受けない製作は、いわばアンダーグラウンドでの製作とみなされ、いまだ国内公式上映のメドは立っていない。
1999年10月1日、建国五十年を迎えた中国は、約二十年に及ぶ改革・開放政策の時代の中で市場経済の発展、消費の拡大を実現した。しかし、その一方で大都市と農村の落差は大幅に増大、失業者や犯罪者の問題も、事実として看過出来ないものとなっている。本作の舞台となった地方都市、山西省・汾陽(フェンヤン)は監督の出身地。「二年ぶりに帰郷した折に、人々の生活に心をゆさぶられるような変化を感じた」という監督は、その移りゆくさまをつぶさに捉えようと思い立ち、他の企画を急遽変更して『一瞬の夢』を撮ろうと決意したという。
映画は、そうした厳しい現実の姿を生々しく捉えながら、同時に、細部への卓越した描写力で登場人物たちの感情の機微をすくい取る。そして、社会に適応出来ない人間の愚かさや痛みを、人生を通過していく中で誰しもが直面したり、感じたりするような一つ一つの具体的な出来事の瞬間へと凝縮させていく。周到かつ繊細な思考と、その上で現場での即興を積極的に取り込んでいく懐の深い演出。第一作にしてジャ・ジャンクー監督は、その測り知れない才能をいかんなく見せつけている。

ストーリー

主人公の青年・小武(シャオウー)は、社会の現実と向かい合い、自立していくことを覚えていかなければならない年代を迎えている。スリ仲間だったヨンは、青年実業家として生まれ変わった。だが、小武は足を洗うこともなくスリを繰り返し、声のかからなかったヨンの結婚式にも、スリで作った祝い金を渡しに行く。だがヨンにとっては、それは迷惑でしかなかった。重い空気が流れる中、小武はヨンに金を叩き付けて出て行ってしまう。
ヨンとの一件の後、小武はカラオケ・バーでメイメイと出会う。小武にとって、彼女の歌う歌は、渇いていた心を癒してくれる思いがけない贈り物だった。小武はメイメイが病気だと知り、”見舞い”にアパートを訪ねる。警戒する彼女に、ぎこちなく、優しく振る舞おうとする小武。そんな彼を、メイメイは、孤独な心にふと手を差し伸べてくれた存在として、次第に受け止めていく。お互いのことを語り合い、一曲の歌を歌うメイメイと、それを聴く小武の間に、偶然のように訪れる小さな幸福。現実を忘れて、思いがけず二人は甘美な時間を共有する。小武の胸には、今まで考えてもみなかった、将来への「夢」が芽生えた。だが、お互いの抱える「現実」が、すぐさま二人の間に容赦なく立ちはだかっていくことになる…。

スタッフ

監督・脚本:ジャ・ジャンクー
撮影:ユー・リクウァイ

キャスト

ワン・ホンワァイ、ハオ・ホンジャン、ズオ・バイタオ、マー・ジンレイ

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