原題:shikai

日本映画に”嵐”が吹き荒れる! 5人の監督による5色のセクシャル・ストーリー

2000年日本映画/71分/カラー/ヴィスタサイズ/モノラル/ 製作・配給:ギャガコミュニケーションズ/制作協力:ボノボ/配給協力:リベロ

2000年5月26日よりビデオレンタル発売 2000年”MOVIE STORM”新春第2弾、2月19日よりBOX中野にてレイトショー決定!

公開初日 2000/05/26

配給会社名 0025

解説

 日本映画界が、新たなる千年紀に向けて発進する新レーベル”MOVlE STORM”。”エロス”という同一テーマのもとに、個性豊かな日本映画界の異才監督たちがその手腕を競う、ヴィシュアル新世紀のアナーキーなプロジェクトだ。
 全5作品の第2弾に放つ、『歯科医』を監督したのは中原俊。開幕直前の名門女手高演劇部員たちのときめきをリリカルに描いた『櫻の園』で’90年度のあらゆる映画賞、作品賞、監督賞を独占したのはまだ記憶に新しい。つづく陪審員制度を題材にしたリアルタイム群像劇『12人の優しい日本人』(’91)では、フランスのオルレアン映画祭”金の百合賞”(グランプリ)を受賞するなど、海外でも評価の高い、日本映画界の得難い駿馬である。
 ’99年も『コキーユ 貝殻』という、同窓会で再会した中年男女の<清潔な不倫>とも呼ふべき、初々しい隠れた傑作をものにした中原俊監督だが、ここでは一転、全編デジタル・カメラ撮りによる露出性に重点に置き、その暴きたてる生々しさでエロスとタナトスに肉迫、性と死のエロスの王道に挑むのだ。
 とある町の歯科医・松永友也。慎ましい妻・紀子と平穏に暮らしてはいたが、厳格で過剰な愛情を注がれた母親の死以来、性的不能におちいっていた。だが、ふとした事から、夫婦は特別な愛し合い方を覚え、快楽の果てへと突き進む。友也は紀子を籍に詰め、縛り上げ、のどを締め−−−サディズム/マゾヒズム。夫婦の絆を確かめあう行為をどこに発表するともなく夫は文章にしたためた。文章はいつしか小説にエスカレートし、そこで男が女の肉体をずたずたに切り裂くに至る。それを読んだ妻は、異様な嫉妬を覚えるのだった。時を同じく、同様な手口の殺人事件が発生する−−−。
 愛は幻覚であり、虚妄の産物でる。そして、死と殺人によって初めて美しく実体化される…。こんなふうにしかできないの。これが私たちの、愛なの…。愛しているからここまでやるのか、愛しているから殺すのか−−−!?
 監督デビュー作『犯され志願』(’82)や『奴隷契約書・鞭とハイヒール』(’82)で当時のロマン・ポルノに新風を吹き込んだ中原監督が、久々にエロティシズムの原点に復帰した注目作。しかも当時以上に若々しくアナーキーな視点で、男と女の深淵を覗き込むのだ。
 めくり上げられる白い女尻の美しさ、いやらしさ。やわらかい肌をはう、死よりも美しいステンレスの医療器具。歯科医が禁断のメスを手に切り裂く愛と性の”メディカルエロス”!

 主演は崔洋一監督『犬、走る』(’98)や長崎俊一監督『ドッグス』(’98)、そして原田眞人監督『金融腐蝕列島・呪縛』(’99)での検事役が光る遠藤憲一。過激な愛に溺れるサディスティックな歯科医を冷ややかに熱演する。
 妻・紀子に、望月六郎監督『新極道記者・逃げ馬伝説』(’96)『極道懺悔録』(’98)や、TV、グラビアで活躍の金谷亜未子。魅惑の女尻に、剃毛やSM傷をいとわず体当たり演技をみせる。温泉での長い素潜りフェラや、のぼせた裸体のなまめかしさは、谷崎文学『鍵』の風呂場のエロティシズムをも越えた。
 また、紀子の友人でライターの律子を、TVやラジオの司会で人気を集める井上彩名、厳格な母親役を大方斐妙手がそれぞれ演じている。そして、一切顔を見せないものの、検事の声として、『12人の優しい日本人』(’91)の3号、上田耕一の渋い語りが、出演以上にインパクトのある基調底音となって観る者の心に響く。
 勝目梓の同名原作を、及川章太郎がシャープに脚本化。撮影は前田智、照明は吉角荘介が担当。音楽のTATSUYAが切ないスコアで泣かせてくれる。
 異常と正常、憎しみと愛情、痛みと快感の境界が静かに崩れゆく今を、”メディカル・エロス”がやさしく癒す。

ストーリー

 アスリウムの花って知ってますか。女性器のように開いた花弁に、男性器のような花芯が突き出た。あの毒々しい形と色が、僕のマグマを噴き出させたんでしょうね−−−検事に対して、松永友也(遠藤憲一)の供述がつづいている。

 松永はとある町も歯科医。慎ましやかな妻・紀子(金谷亜未子)と、一見、平穏な暮らしぶりだが、過剰な愛情で育てられた母親の死以来、インポテンツになっていた。紀子の親友でフリーライターの野田律子(井上彩名)は”セックスレス・カップル”に関する取材中。気乗りしない紀子だったが、旧友の頼みを拒みきれず取材に応じた。
 その取材テープを、松永は偶然聞いてしまう。知人に自分の恥をさらした妻の紀子に激昂し、松永は紀子を激し<殴りつけた。紀子と律子はどうやら過去に肉体の関係もあったらしい。松永は妻を殴りつづけるうちに、異様なたかぷりを感じた。めくれ上がったいやらしい尻を激しく打った。そして下着を裂き、後ろから−−−。紀子は抵抗せずに松永を受け入れる。床にはアスリウムの花が散らばっていた。結婚から2年、この夜が本当の意味で2人の初夜だったのかもしれない。  紀子は松永の父と母が新婚旅行に行った温泉を訪ねる事を希望した。義母に勝った事を、そしてやっと、2人で見つけた特別な愛しあい方を確認するかのように。湯ぶねの中で、松永はフェラチオする紀子の頭を押さえつけ湯中に沈めた。水没した紀子の顔が苦悶と愉悦に歪む。洗い場に、失神した紀子の裸身が横たわる。  あのまま死んでたら…自分でも怖いほどのエクスタシーだった…。  2人の愛の絆の確認は、いよいよ激しさを増してくる。治療椅子に両手足を縛られ自由のとれない紀子を、松永は冷たい医療器具で責め、熱いタバコの火で責め、淫らな言葉で責めさいなむ。  胎児のように身をかがめ、裸で箱に入れられ土中に埋められる"箱詰め"は、紀子の一番のお気に入りだった。首を絞められるのもまた、得も言われぬ暮びがあった。  松永はそんな一部始終をワープロに打った。妻にラブ・レターを書くように。そして、想像力をふり絞り、空想の中で紀子を凌辱し始めた。そろそろ次のステップに踏み込まなければ−−−。そんな時に、松永はインターネットで"殺人"サイトを目にする。  猟奇殺人を参考に、松永は"ラブ・レター"で、見知らぬ女を絞殺し、白い裸身をズタズタに切り裂いた。それを読んだ紀子は激しく非難した。だが、松永は言う。愛しているから殺すんだ、愛しているからここまでやるんだ。  解らなくなった紀子は、律子に原稿を読んでもらうのだった。そして、彼女たちの身の回りで、同様の手口の殺人事件が発生するが−−−。

スタッフ

監督:中原俊
脚本:及川章太郎
原作:勝目梓『歯科医』(講談社文庫刊)
音楽:TATSUYA
撮影:前田智
照明:吉角荘介
録音:長口靖
編集:塙幸成
エグゼクティブプロデューサー:伊藤秀裕
プロデューサー:成田尚哉

キャスト

松永友也:遠藤憲一
松永紀子:金谷亜未子
野田律子:井上彩名

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