原題:Under The Skin

ほしいのは、痛み。ブリティッシュ・ルネッサンスの逆襲、カリーヌ・アドラー第一回監督作品

☆1997年トロント国際映画祭批評家賞受賞 ☆1997年エディンバラ国際映画祭イギリス映画最優秀作品賞受賞 ☆1998年ヴェネチアおよびサンダンス映画祭公式上映作品

1997年/イギリス映画/カラー/ドルビーステレオ/ヴィスタサイズ 82分/配給:(株)ケイブルホーグ

2000年11月2日よりビデオ発売・レンタル開始 1999年6月26日より渋谷・Bunkamuraル・シネマにてロードショー

公開初日 1999/06/26

配給会社名 0029

解説

『トレインスポッティング』『フル・モンティ』『ブラス!』などを初めとするファッショナブルかつ軽快な、そしていま現在のイギリスを描き出す数々の秀作たら。それらは“ブリティッシ・ルネッサンス”と称されるほどの一大ムーブメントを起こしつつあります。そこへ既存のムーブメントを打ち砕くかのように現れたのは、短編ドキュメンタリーテレビドラマで実力をつけたイギリス映画界期待の新人女流監督、カリーヌ・アドラー。彼女が初めて世に産み落としさ長編作品は、コメディでも、ロマンスでもありません。ドラッグよりも人間の奥深くに沈み、凶器よりも銚く鋭く肌を突き刺して、その傷みはいつまでも消え失せるこはない。誰にも伝えられない感惰そのもの描く衝撃の作品…それが『アンダー・ザ・スキン』です。
やるせない狐独を抱え、アイデンティティを探しさまよい、揺れ動く女心がせつなく、力強く描かれています。しかしそこには女性による女性のための物語……などと一言で片づけるわけにはいかないその魅力が溢れています。監督同様、本作が映画デビューとなる新人女優、サマンサ・モ一トンの瑞々しくも大胆な表情、そして強烈な躍動感と透明感、スタイルだけを追及せず、あくまでも青春に出来ない何かを探し求める映像は、ケン・ローチ監督とのコンビで知られるベテラン、バリー・エクロイド、秋の手持ちらのスーパー16mmカメラが織り成すシーンば立人公を演じるサマンサの心情そのままに、時に揺れ、波打つかのようにスローモーションとなり、そして混沌とした現実が押し寄せるかのようにストップ・モーションとなります。サウンドには日本ではもらろんのこと、ロンドンで大ブレイク中のマッシヴ・アタックやアルーフなどのヒップな顧触れが登場しています。
また新人監督、新人主演女優というリスクの大きい本作の製作を堂々たる力量で支えたのは、女性プロデューサー、ケイト・オグボーン。驚くことに彼自身も長編映画は今回が初めて。BBCやチャンネル4などのテレビ短編ドキュメンを作り上げてきた実力が存分に発揮されたといえます。
真摯な物語であるのに関わらず、固定観念から開放されたパワーに溢れ、観る者の心と体を揺さぶる『アンダーザ・スキン』。それは本来の意味での“ブリティッシュ・ルネッサンス”であるに違いないでしょう。

ストーリー

19歳のアイリスと24歳のローズは、母視の愛情を幼い頭から競いあってきたアイリスは、成績も良く優等生、ツアーコンダクターという定職に就いたあと、甘い結婚…申し分のない夫に愛され、経済的にも問題なし、そして現在は、幸せいっぱいの妊娠中の姉こそが母親のお気にいりだと思いこんでいる。自分は何をやっても続かず、いつまでも自立しない。出来の悪い妹に違いないと。
ある日、哀しみは突然やってきた。体調を崩した母親が癌に冒され、死期が今、すぐそこにあるという。2人は視孝行も出来ぬまま、あっけなく最愛の母を失ってしまった。
ただ、ひたすら泣き崩れる姉、泣くことも出来ない自分を責め立てる妹。母に愛されることを強く求め続けてきた2人はに深い喪失感が襲いかかってくる。ローズは夫の励ましで少しずつ哀しみを受け入れていく。一方アイリスは、ぽっかりあいてしまった風穴を埋められない。そして何もかも捨ててしまいたい行動と母の不在を受け入れられない気持ちが彼女の感情と感覚を少しずつ破壊していくのだった。
自分をコントロール出来なくなったアイリスは、暗闇の映画館で偶然出会った男、トムとセックスをする。トムとの衝動的な時間は、彼女にとって一時的にしても母の存在を忘れさせ、刺激を与えるものであった。その束の間の出会いをきっかけに彼女は仕事を辞め長く同棲していたボーイフレンドのゲアリーのもとを去りひとり暮らしを始めるのだった。アイリスの親友ヴロンし彼女のために新しい仕事を探してきた。しかしアイリスの心はどんどん掻き乱れ持てあまるほど、消し去ることのできない母視のイメージら取り憑かれてしまう。トムとの関係は軽薄なものになってゆき、2人が時間を共有するのは何気ない会話ではなく深夜のテレフォン・セックスだけ。
アイリスほ心から心配し、やり直そうと哀願するゲアリーにも目をくれず、彼女は徐々に友人とも距離を置くようになっていった。その反面、狐独に堪えられす毎晩、クラブ通いに身と投じているアイリスの哀れな姿に、唯一の相談相手のヴロンも、目を覆うばかり。やっと落ら着きを取り戻したローズは、妹が自分のまったく知らない人格に変わってしまったことに気がつく。アイリスを助けようとするが、ついに激しく非難してしまうローズ。二の次には母親のことを口にして、いつまでたってもメソメソ泣き出し、しまいには母親ぶって説教する姉の存在が堪えられないアイリス。2人で分け合う約束となっていた遺灰を無くしたと、ローズは嘘をついてしまった。
妹にも見放され、荒んだ生活から抜け出せアイリスは、母の形見のかつらと毛皮のコートを身につけ、視線を交わした男との行きずりのセックスに救いを求める、が、その虚しさは、抱えきれぬほど膨大に脹れ上がり彼女の心を押しつぶしていった。駅のホーム、少女のスリ集団に襲われたアイリスは無一文となり、お金を借りるためローズを追っていった、姉をみつけたアイリスは、彼女の指に輝く形見の指輪に気づく。無くしたと言っていた筈なのに…。ローズは「母が私にくれたの。あなたに言えば傷つくから…内緒にしていたの」という。その言葉にアイリスは、母に愛されてなかったのだ、という気持ちがついに爆発してしまうのだった。
救いの相手もいなくなったアイリスはフラフラとさまよい、気がつくとゲアリーのもとへたどり着いていた。そこには待ち合わせに来なかったヴロンの姿が…。彼と同性し始めたのだという。母親の愛を失い、姉と親友に裏切られ、自分を理解してくれた恋人をも奪われたアイリス、この深い傷は彼女を底無しの泥沼へ沈めるのだった。
ローズは妹の傷みを感じたい、と勇気を出してアイリスのもとへ向かっていた、ローズはいつも母の心配のタネであり、必ずアイリスのことばかり気にかけていた母の姿に、妹を羨ましく妬んでいたと告白する。本当は指輪も自分でみっそり持ち出したのだと…。姉の気持ちを知ったアイリスは、言葉もなく泣き出してしまう。そしてずっと心の奥にしまい込んでいた気持ち、「ママに会いたい」とローズの胸の中で呟くのだった。
まもなくしてローズが無事、出産を終えた。母はもういない。でも姉妹の心のなかに永遠に生き続けている。似たもの同士である姉妹は、母の死の現実を2人は受け入れたのだ。そしてアイリスは自らの力で立ち上がった。「そうだ。母の好きだった花の名前をすべて覚えよう。そして世界中の花の名前も…」。ここから自分は自分であるため生きていこう、そう誓うのだった。

スタッフ

脚本・監督: カリーヌ・アドラー
製作: ケイト・オグボーン
製作総指揮: ベン・ギブソン
撮影監督: バリー・エクロイド
編集: イヴァ・J・リンド
美術: ジョン=ポール・ケリー
音楽: イオナ・セカッツ
衣裳: フランシス・テンペスト
キャスティング: バネッサ・ペレイラー/シモーヌ・アイルランド

キャスト

アイリス: サマンサ・モートン
ローズ: クレア・ラッシュブルック
ママ: リタ・トゥシンハム
トム: スチュアート・タウンゼント
ヴロン: クリスティーン・トレマルコ
ゲアリー: マシュー・デラメェア
フランク: マーク・ウォーマック
エレナ: クレール・フランシス
マックス: ダニエル・オメイラ
バーの店員: クリッシー・ロック
サム: ジョー・タッカー

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