原題:THE LEGEND 0F THE PIANIST

97年『シャイン』 98年『タイタニック』 99年『ライフ・イズ・ビューティフル』 そして2000年 『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督により20世紀最後の感動が生まれる。 大西洋の上で生まれ、一度も船を下りたことがないピアニストの伝説

1999年 イタリア・シルヴァー・リボン賞“最優秀作品賞”ほか6部門受賞 1999年 ダヴィッド・デ・ドナッテロ(イタリア・アカデミー)賞5部門受賞

1999年/アメリカ=イタリア合作/ファイン・ライン・フィーチャーズズ提供/メデューサ・フィルム・プロダクション作品/ 125min/カラー/スコープ・サイズ/ドルビー・デジタル/日本版字幕:戸田奈津子 提供:日本ビクター、アスミック・エース エンタテインメント、テレビ東京、三菱商事/ 配給:アスミック・エース エンタテインメント、日本ビクター テレビ東京開局35周年記念映画 原作:『海の上のピアニスト』白水社刊/サントラ盤:ソニー・クラシカル

2000年9月22日よりDVD発売 2000年8月11日よりビデオレンタル開始 1999年12月18日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹系劇場にてロードショー!

公開初日 1999/12/18

配給会社名 0007/0059

解説

『ニュー・シネマ・パラダイス』『みんな元気』そして『明日を夢見て』…ある時は映画へのあふれる愛を、ある時はせつなく胸にしみる愛の物語を描き、全世界を涙と感動で包んだジュゼッペ・トルナトーレ監督。今やイタリア映画界を代表する名称として映画ファンが最も新作を待ち焦がれたトルナトーレが、5年の歳月をかけここに新作を完成させた。愛すべき映画館、そしてシチリアの大地を心を込めて描いてきた彼は、今までで最もスケールの大きな大作として、舞台に“海”を選んだ。

舞台は大西洋巨大海上都市ヴァージニアン号。
海で生まれ船の上で生きたピアニストの愛の奇跡。

時代は世紀の変わり目・1900年。大西洋を果てしなく往復する豪華客船ヴァージニアン号でひとつの伝説が生まれようとしていた。
自由の女神が目前に迫り、人々が「アメリカ!」と大歓声を上げ、長い航海が終ろうとしている時だった。ダンスホールのピアノの上にレモン箱に入れられた生まれたばかりの赤ん坊が置き去りにされていた。発見した黒人機関士はその子に生まれた年にちなんでナインティーン・ハンドレッド(=1900年)と名付け、船底で育てることにした。

やがて一度も船を下りたことがないナインティーン・ハンドレッドはとてつもない才能を発揮する。楽譜を読まずに即興でピアノを演奏するのだ。ある時は船上バンドの一員として、ある時は嵐の夜大きく揺れるダンスホールで、床を滑るピアノに乗って、またある時は三等客船の貧しい移民たちのために…。彼はそこにいる乗客たちの表情を読み取って音楽に変えていたのだった。
「まるで4本の手を持っているかのような演奏なんだ。それはこの世のものではない音楽なんだ」と、陸地では噂が広がっていった。やがてジャズの創始者ジェリー・ロール・モートンまでが噂を聞きつけ、決闘を申し込みに乗船してきた。

ナインティーン・ハンドレッドはふと「陸地から見る海はどうなのだろう」と思い巡らす事もあった。そんな時、舷窓越しに美しい少女を見る。その瞬間、彼はやさしいメロディを弾き、かってないほど感動的な音楽を奏でた。その少女の姿を船中探し回り、三等客室で見つけるが、ごった返す群集の渦に引き離され、彼女は消えていった。
その後、ナインティーン・ハンドレッドは突然船から下りる事を決意し、タラップに向かうのだが…。

時代は変わり、第二次大戦後。港に繋がれている錆び付いた船が、今まさに沖で爆破されようとしている。変わり果てたヴァージニアン号だった。彼は知っていた、今や伝説となったピアニストが、かっての親友がきっとこの船にいる事を。間もなく爆破される運命の船に、彼は乗り込むのだった…。

かってないスケールとロマンのイタリア映画。“チャップリン”を彷彿とさせるティム・ロスの名演。そしてエンニオ・モリコーネの名曲。今世紀最後の感動大作がここに誕生した。

またひとつ伝説となる名作がここに誕生した。本国イタリアでは、心を揺さぶる感動作として『ライフ・イズ・ビューティフル』『イル・ポスティーノ』を、胸を打つ音楽として『シャイン』を、そして『タイタニック』を越えたスケールと絶賛され、大ヒットを記録したのだ。
見渡す限りの広い大西洋上、一度も陸に足をつけた事がない、まるで果てしない海の上を永遠に漂うピアニスト。彼の姿に人間の哀しさやはかなさを映し、ひとつの時代の終わりと新しい時代の始まりの間で揺れる人間像を見事に描き出した。

その伝説のピアニストを演じるのは、『パルプ・フィクション』『フォー・ルームス』『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』のティム・ロス。激しい特訓の末に生まれた驚異的なピアノの演奏シーンと同時に、淋しげな眼差しが強烈な印象を残す。情熱に満ちた彼の演技は、トルナトーレが「まるでチャーリー・チャップリンのようだ」と絶賛するほど。まぎれもなく彼の代表作となろう。さらに、トランペッターのマックスには、『エンド・オブ・バイオレンス』『ノーバディズ・フール』のプルート・テイラー・ヴィンス。エミー賞の実力派だ。また、本作の“ミューズ”である船上の少女には、400人以上のオーディションから選ばれたメラニー・ティエリー。フランスで活躍しているファッション・モデルで、今回が映画デビューとなる。

そして音楽はイタリア音楽会の巨匠エンニオ・モリコーネ。「すべてはエンニオと音楽を作ることから始まった」という様に、脚本を書く前に音楽を完成させるという異例のスタートで、切ないメロディから主人公が奏でるジャズまで、すべてオリジナル・スコア。「楽譜を読むことも書くこともできないピアニストの音楽。人間の表情から創り出し、演奏した次の瞬間にはもう消えてしまう」、まさに伝説的な人物のような音楽を作曲した。

撮影はアカデミー賞受賞作『メフィスト』を担当したロシア人のラヨシュ・コルタイ。ダイナミックであると同時に官能的ですらある映像を実現。ゴージャスな衣装の数々はフェリーニの『そして船は行く』のマウリツィオ・ミネロッティ。

また豪華客船“ヴァージニアン号”のスケール感も今回の見せ場の一つだ。美術監督のフランチェスコ・フリジェリは、イタリア、イギリス、スペイン等、約10の大きな港町を探し回り、ついにオデッサにあった全長154メートルのポーランド製の元貨物船を見つけ、大幅に改造、半世紀に渡るそれぞれの時代を忠実に再現した。さらにイタリアのスタジオ・チネチッタでは、ヨーロッパ最大の“スタジオNO.5”が選ばれ、船中のダンス・ホールが作り出された。また、このスタジオから10キロ離れたローマの港には、6階建てのアパートに相当する船体と、ボストン、ニューヨーク、リヴァプール等の今世紀初頭の港町が建造された。
この実物の貨物船と驚くべき巨大なセットにより雄大な時代の流れが再現されたのだ。

原作は、イタリアのベストセラー作家アレッサンドロ・バリッコの『海の上のピアニスト』(白水社刊)。一人芝居の戯曲形式の小説で、ミラノ他200回以上上演されている作品だ。

ストーリー

1946年。
裏通りにある楽器屋に一人の男が入ってくる。「この大切なトランペットを買って欲しい」。今は落ちぶれたトランペッターのマックスだ。
しぶしぶ応じる店の老人に頼んで、マックスはトランペットを手放す前にもう一度だけ演奏する。
すると、老人はそれが何の曲か気が付き、傷だらけの古いレコードを取り出した。
マックスのトランペットとレコードから聞こえてくるピアノの旋律が重なる…。
「魔法のピアノが大海原の真ん中で奏でた音楽だ」。
マックスは語り始める…その曲を弾いた伝説のピアニストの物語を。

1900年。
ヴァージニアン号。世界中のありとあらゆる人種がやって来ては去っていく豪華客船。そして今、多くの移民たちをアメリカに運んでいた。
目の前に巨大な自由の女神が現れ、「アメリカだ!」と人々が歓声を上げている時、黒人機関士ダニー・ブードマンは、一等船客用のダンス・ホールのピアノの上に置き去りにされた赤ん坊を見つける。ダニーはその子にダニー・ブードマン・T.D.レモン・ナインティーン・ハンドレッド〈通称ナインティーン・ハンドレッド〉と名付けた。赤ん坊の入っていたレモン用の木箱にT.D.レモンと印刷されていたからだ。ダニーは生涯そのT.D.を“Thanks Danny”と思い込んでいた。そして名の最後に———「新世紀の最初の年に見つけたんだから!」———1900年=ナインティーン・ハンドレッドと名付け、自分で育て始めたのだ。

年月が経ち、ナインティーン・ハンドレッドは船というゆりかごですくすくと成長した。しかしある日、事故でダニーが死んでしまう。我が子のように大切に育ててくれたダニーの死。甲板で行われた別れのセレモニーで聞こえてきた悲し気なメロディ。船底で隠れて育てられたナインティーン・ハンドレッドは、その時生まれて初めて音楽を耳にする。
ダニーを失い、一人担った8歳のナインティーン・ハンドレッドは三等客室から出て、一等客室へ忍び込んだ。豪華な廊下を通ると、目の前にはダンスホールがあった。ガラス越しに覗いてみると、そこには軽やかな音楽を奏でるバンドと美しい衣装を身にまといダンスを楽しむ人々の姿があった。
そして、その晩、ダンスホールのグランド・ピアノの椅子に座って、床に届かない足をぶらぶらさせながら弾いている少年———ナインティーン・ハンドレッドだった。

1927年。
マックスはトランペット奏者として、希望に目を輝かす人々と共に、“巨大な海上都市”に乗船した。
嵐の夜、船酔いに苦しむマックスは不思議な男と出会う。激しく大きく揺れる船内を優雅に歩いてきたその男は「ついておいでよ」と言った。ナインティーン・ハンドレッドだ。
左右に大きく揺れる船の誰もいないダンス・ホールで、ナインティーン・ハンドレッドはグランドピアノのストッパーを外し、滑り出したピアノを弾き始めた。
並みの動きに合わせ、板張りの床の上を行ったり来たり、くるりと回るピアノと一体化して、ナインティーン・ハンドレッドはまるで操るように心地よい音楽を弾いた。大海原と共に踊っているかのように。

ナインティーン・ハンドレッドとマックスは船の楽団と共に、一等船客のために演奏した。しかし、ナインティーン・ハンドレッドは、三等に詰め込まれた貧しい移民たちのために演奏する方を好んだ。

鍵盤の上を行ったり来たり…楽譜を読まずに即興演奏するナインティーン・ハンドレッドは、いまだかってこの世に存在したことのないようなメロディを奏でた。
彼は弾こうとするその瞬間、そこにいる乗客たちの表情を感じ、楽譜のように読んで、メロディにする。そのため二度と同じメロディを弾くことはできなかった。
ナインティーン・ハンドレッドは乗客たちの顔を通して世界を見ていたのだった。

ある夜、ナインティーン・ハンドレッドが誰もいなくなったホールでピアノを弾いていると、アコーディオンを持った男が話し掛けてきた。「いい音楽に惹かれて…」。その初老の男はアメリカを目指す移民であった。土地を失い、妻には逃げられ、子供達を病気で亡くした彼に残されたのは、生き残った末娘だけであった。絶望の淵にいた彼はその娘のために人生をやり直そうと旅を始める。そしてその途中で彼の目の前に広がったもの——見たこともない美しいもの——それが“海”だった。生まれて始めて海を見た彼の耳には、“海の声”が聞こえた。
「人生は無限だ!」繰り返し繰り返し海は男に向かって叫んだという。そして男は生き方を変えようと決心した。「最初から人生をやり直す」。そう告げて男は去っていった。
1931年。
ジャズの創始者ジェリー・ロール・モートンがナインティーン・ハンドレッドの噂を聞きつけ、ピアノ対決のために乗船してきた。当時流行りの、難曲を交替で弾いて最後に勝者を決める“決闘”だった。
全身白ずくめで大きなダイヤモンドをはめたジェリー・ロール・モートン。乗客が固唾を呑む中、二人のピアニストが順番に鍵盤に向かう。ハデなパフォーマンスのモートンに対し、ためらいがちに弾いているナインティーン・ハンドレッド。
しかし、偉大なジャズ・ピアニストより、この無名の青年ピアニストの方がより輝いていることは明らかだった…。

あるレコード会社の男がナインティーン・ハンドレッドの演奏をレコード録音するために乗船した。録音機を前にしぶしぶと弾き始めた彼は、ふと窓越しに美しい少女を見る。その瞬間、明らかに彼女に向かって音楽は走り出した。そしてかってないほど感動的な音楽を奏でた。
弾き終わると彼は、録音したレコードを渡すことを拒む。「自分のいない所で自分の音楽を聴かれたくない」と。
雨の中、その少女は甲板に佇み、海を眺めていた。彼女が友人と話しているのが聞こえてくる。「私の父は言ってたわ。“海の声を聞いた”と…」。
彼は広い船の中、その美しい少女を探し回った。彼女は三等船室にいた。
船が波止場に着き、彼は彼女にレコードを渡そうとするが、ごったがえす群衆の渦に引き離されてしまう。「いつか訪ねて来て…」と言い残し、彼女は消えていった。

その後数年が経ち、ナインティーン・ハンドレッドは船から下りる決心をする。マックスはあのいつかの少女に会いに行きたいのではと思うが、彼はただ「陸から海を見てみたい」と言う。
盛大な見送りを受けるが、タラップの端まで降りたところで、ナインティーン・ハンドレッドは足を止める。目の前に広がるニューヨークの果てしない町並み。まるで世界のあまりの大きさにおそれをなしたかのように彼は動かなかった。結局陸地には下りず、彼はヴァージニアン号に逆戻りしてしまうのだった。

1946年。
以上の話が、マックスが船を下りるまで、共にいたピアニストとの思い出だ。店の老人はマックスに奥にある一台の古いピアノを見せる。港にある、間もなく爆破されることになっている船から運び出された物だという。
マックスは急いで港に行く。やはりそれはヴァージニアン号だった。第二次大戦下、病院船として酷使された挙句、廃棄処分となり、今まさに海に沈められる運命にあった。
彼は作業員たちに爆破を中止するように頼む。ボロボロになった船にまだ誰かが残っていることを知っているのだ。
マックスは蓄音機とあのレコードを片手に、錆び付いたヴァージニアン号に乗り込むのだった。

スタッフ

監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
原作:アレッサンドロ・バリッコ(白水社刊)
撮影:ラヨシュ・コルタイ
音楽:エンリオ・モリコーネ(サントラ盤:ソニー・クラシカル)
プロダクション・デザイナー:フランチェスコ・フリジェリ
衣装:マウリツィオ・ミネロッティ
アート・ディレクター:ドメニコ・シーカ
編集:マッシモ・カグリア
キャスティング:ファブリツィオ・セルジェンティ・カステラーニ
ヴァレリー・マッキャフリィ、ジェレミー・ジマーマン
特殊効果スーパヴァイザー:デイヴィッド・ブッシュ
製作:ローラ・ファットーリ
製作総指揮:フランチェスコ・トルナトーレ

キャスト

ナインティーン・ハンドレッド:ティム・ロス
マックス:プルート・テイラー・ヴァンス
少女:メラニー・ティエリー
ジェリー・ロール・モートン:クラレンス・ウィリアムズ三世
ダニー・ブードマン:ビル・ナン
楽器店主:ピーター・ヴォーン
港湾のチーフ:ナイオール・オブライアン
農夫(アコーディオンを持った男):ガブリエレ・ラヴィア
メキシコ人技師:アルヴェルト・ヴァスケス
船長:ハリー・ディッスン
ナインティーン・ハンドレッド(4歳):イーストン・ゲイジ
ナインティーン・ハンドレッド(8歳):コリー・バック

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