原題:THE DEEP END OF THE OCEAN

消えてしまった3歳の弟ベン。 9年後、彼は突然家族の前に表れた・・・・。

1999年度/アメリカ映画/マンダレイ・エンタテインメント作品/ソニー・ピクチャーズエンタテインメント配給/ カラー/ビスタサイズ/全6巻/2,974m/1時間48分/ドルビーSR・SDDS/字幕翻訳:松浦美奈

2000年4月21日よりビデオレンタル開始 2000年4月21日よりDVD発売 1999年11月6日よりシャンテシネにてロードショー公開

公開初日 1999/11/06

配給会社名 0042

解説

兄はいつも寂しさに耐えてきた。母親の愛情を求めても、かまってもらえない寂しさに。その愛情を浴びるほど受けてきた幼い弟が、突然失踪する。母親は絶望の底にたたき落され、心を閉ざす。父親はばらばらになった家族の気持ちをなんとか繋ぎとめようと努める。兄は人知れず罪の意識に悩まされ、孤独を深めていく。そして9年の歳月が流れたある日、彼らの前に、まるで奇跡のように成長した弟が現れた。だが彼は他人の息子として大切に育てられ、本当の肉親のことは何も覚えていなかった・・・・・・たったひとつ、兄と自分を結ぶかすかな記憶を除いては。
これは、3歳で失踪した息子の9年後の生還が家族に投げかける波紋と、彼らが必死に再生への道を探る姿を描き、全米で驚異的なベストセラーとなったジャクリーン・ミチャードの小説を映画化した上質の感動ドラマである。
ある日突然、他人同然の人々から肉親だと告げられた弟の戸惑い。9年前、弟が行方不明になったのは自分の責任だと、愛と罪のはざまで出口を求めてさまよう兄の苦悩。そんな不条理な人生の試練にさらされた家族の一人一人が、迷ったり間違いを侵したり勇気をふりしぼったりして、精一杯真摯に生きていこうとするヒューマンな姿が、深い洞察のもとに浮き彫りにされていく。観客はこうした人間的な等身大の人物たちと心の旅路をともにした末、再生への希望を約束するラストシーンへとたどりつくことになる。
これは誘拐という悲劇を発端とする物語だが、プロデューサーのケイト・ギンズバーグも言うように、最終的には“希望に満ちたすてきなドラマ”である。彼女は言う。“人間はどんなにつらい経験でも最後には乗り越えていくことができます。だから私たちがこのドラマの最も困難な部分を乗り切ることができるのです。この夫婦は危機を乗り越えるでしょうし、子供たちはこの経験によってひと回り大きくなることでしょう”。
決して人格者ではない、ごく普通の母親が、辛い経験を経て、他人の幸せを第一に考える人間へと成長しく様を迫真の演技で演じきったのは、『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』『アンカーウーマン』の演技派ミシェル・ファイファー。本作は原作に惚れ込んだ彼女が、自ら企画段階から深く携わって完成させた、入魂の一作である。『プリンス・オブ・シティ』『デンバーに死す時』などで絶賛されたトリート・ウィリアムズは、監督じきじきの指名に応えて、イタリア系の前向きな父親を誠実に演じてみせる。成長した兄ビンセントを演じるのはエミー賞を2度受賞している期待の若手ジョナサン・ジャクソン。12歳の弟サムには人気TVシリーズ『ザ・プリテンダー/仮面の逃亡者』のライアン・メリマン。また一家のよき友人となる女刑事役を、ウーピー・ゴールドバーグが演じている。
監督は『恋におちて』『ジョージア』といった秀作や、アーサー・ミラー、デイビッド・マメットなど数々の舞台の演出でも定評があるウール・グロスバード。脚本はエイドリアン・ライン監督の『ロリータ』を手がけた他、映画評論家としてピューリッツァー賞の最終選考にまで残ったこともあるスティーブン・シフ。撮影は『サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方』と『バットマン・フォーエヴァー』でアカデミー賞候補となっている名手スティーブン・ゴールドブラット。美術は『ユー・ガット・メール』やファイファー主演の『シークレット/嵐の夜に』を手がけているダン・デイビス。編集は『ガンジー』でアカデミー賞に輝いたジョン・ブルーム。衣裳デザインのスージー・デサントは『素晴らしき日』に続いてファイファー主演作を担当。
また音楽は、『荒野の七人』『エイジ・オブ・イノセンス/汚れなき情事』などで9度アカデミー作曲賞候補となり、うち『モダン・ミリー』で受賞に輝いている映画音楽界の巨匠エルマー・バーンスタイン。製作は『素晴らしき日』『シークレット/嵐の夜に』などでファイファーと組んできたケイト・ギンズバーグと、『スタンド・バイ・ミー』『恋人たちの予感』などロブ・ライナー監督作を多く手がけてきたスティーブ・ニコライデス。製作総指揮は『ブルワース』のフランク・キャプラ3世。

ストーリー

1988年、ウィスコンシン州マディソンのカッパドーラ家。7歳のビンセント(コリー・バック)が3歳の弟ベン(マイケル・マケルロイ)を探している。声を頼りに木製のチェストのふたを開けると、中に閉じ込められていたベンが無邪気に笑った。
その週末、ベス(ミシェル・ファイファー)は、ビンセント、ベン、赤ん坊のケリーを連れてシカゴで開かれる高校の同窓会に出席することになっていた。レストランの支配人をしている夫のパット(トリート・ウィリアムズ)に見送られ、彼女たちは出発する。
同窓生たちがごった返す会場に着くと、ベスはビンセントにベンの見張りを頼み、受付へ向かう。だが彼女が戻ってきた時、そこに待っていたのはビンセントひとりだった。やがてベンの靴の片方が発見され、彼が事件に巻き込まれたことが決定的となる。数時間後、警察が到着し、キャンディ・ブリス主任刑事(ウーピー・ゴールドバーグ)の指揮のもと捜索が始まるが、手がかりは何も得られないまま時間だけが空しく過ぎていった。
9年後、一家はシカゴで暮らすようになっていた。ある日、芝刈りのアルバイトに来た少年サム(ライアン・メリマン)の顔を見てベスの顔色が変わる。慌ててカメラのシャッターを切るベス。その夜、写真を見たパットもベスと同じ結論にたどりつく。この少年はベンに間違いない。
ビンセントがベスから事態の説明を受けたのは、翌日、学校から帰宅してからだった。彼はそっけなく答えた。「サムのことはベンとは知らずに何度か見かけたよ」。なぜ教えてくれなかったの、と責めるベスに、彼はひとこと、「信じた?」と返す。
ブリス刑事から逮捕状を示されて、サムの父親ジョージ(ジョン・カペロス)は呆然となる。その時、彼の妻の写真を見つけたベスが驚きの声をあげた。それは同窓生のセシル・ロックハートだった。
セシルは出産後間もなく、子供を亡くしていた。3年後、彼女は同窓会の会場からベンを連れ去った。その後、彼女と結婚したジョージは連れ子のベンを養子にした。そして5年前にセシルが自殺し、ジョージはベンの秘密を知らぬまま、実の父親にも劣らぬ愛情を彼に注いできたのだった。
事件はこうして解決し、サムはベスたちと暮らし始める。しかし9年の空白を埋めるのは容易なことではない。両親や兄妹のことを何も覚えていないサムにしてみれば、彼らは他人同然なのだから。ベスとパットは、彼らに溶け込もうと努力する一方で、ジョージを今まで同様、父と慕うサムにどう接してよいかわからない。サムにとってここは決して居心地のよい家庭とは言えなかった。
3ヶ月が過ぎた頃、サムが時折夜中に元の家へ帰って寝ていたことが発覚する。ビンセント(ジョナサン・ジャクソン)はそれを知っていたが、両親には黙っていた。この出来事を機に、ベスは辛い決断をする。パットの大反対を押し切って、サムをジョージのもとに返すことにしたのだ。
サムが養父のもとへ戻った夜、ビンセントが飲酒運転で事故を起こす。刑務所に面会に来たベスだったが、この9年間の彼とのぎくしゃくした関係を思うと気が重かった。「私は嫌われているわ」と言う彼女にブリス刑事が助言する。「彼を許してあげなさい。サムのことで責任を感じているのよ」。ベスは初めてビンセントに、寂しい思いをさせてきたことを詫びるのだった。
サムの面会はビンセントにとって予想外だった。サムは唐突に、チェストの香りを覚えていると言う。「隠れんぼでチェストに入ったような気がする」。「ああ、ふたが閉まっちゃったのに、君は怖がりもしなかった」。「やっぱり。君が来てくれるから安心だったんだ」。
数日後の真夜中。バスケットボールの音に気づいたビンセントが家の窓から外をのぞくと、サムが手招きをする。彼はジョージと話し合った上でこの家に戻ることにしたと言う。それを聞いたビンセントは、長く胸につかえていた言葉を口にした。「僕が悪いんだ。あの時、君の手を離した。“消えちゃえ”って言ったんだ」。サムはにっこり笑った。ふたりはプレーを続ける。いつの間に起きたのか、家の中からベスとパットが彼らを穏やかに見守っていた。

スタッフ

監督:ウール・グロスバード
脚本:スティーブン・シフ
原作:  ジャクリーン・ミチャード「青く深く沈んで」(新潮文庫刊)
製作:ケイト・ギンズバーグ
製作総指揮:フランク・キャプラ3世
撮影:  スティーブン・ゴールドブラット、A.S.C.
美術:ダン・デイビス
編集:ジョン・ブルーム
衣裳デザイン:スージー・デサント
音楽:エルマー・バーンスタイン

キャスト

ベス:ミシェル・ファイファー
パット:トリート・ウィリアムズ
キャンディ:ウーピー・ゴールドバーグ
ビンセント(16歳):ジョナサン・ジャクソン
ビンセント(7歳):コリー・バック
ジョージ:ジョン・カペロス
サム:ライアン・メリマン
アンジェロ:トニー・ムサンテ
ロージー:ローズ・グレゴリオ
ローリー:ルシンダ・ジェニー
バストコビッチ:ジョン・ロゼリウス
エレン:ジョン・ブレンダ・ストロング
テレサ:K・K・ドッズ
ケリー(9歳):アレクサ・ベガ

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