年下のひと
原題:LES ENFANTS DU SIECLE
愛されるよりも、愛したい 女流作家ジョルジュ・サンドが美貌の詩人ミュッセに捧げた至上の愛 それは、ふたりの人生を永遠に変えた
1999年/フランス映画/レ・フィルム・アラン・サルド、アレクサンドル・フィルム、フランス2シネマ提供 138min/カラー/スコープサイズ/ドルビーSRD/日本語字幕:松浦美奈 ノヴェライズ:角川文庫/サウンドトラック:ユニバーサル ミュージック 提供:アスミック・エース エンタテインメント、角川書店 配給:アスミック・エース エンタテインメント
2000年4月29日より渋谷Bunkamuraル・シネマにて愛のロードショー! 2000年12月08日よりDVD発売開始!
公開初日 2000/04/29
配給会社名 0007
解説
情熱の女性作家ジョルジュ・サンドが燃えた真実の愛
奔放で恋多き女性作家ジョルジュ・サンドが、その生涯で最も激しく情念を燃やしたのが詩人ミュッセとの愛であった。一般に知られている後のショパンとの穏やかな愛とは違い、この愛は互いの人生を決定的に変えてしまうほど影響を与えあうものであった。結婚に幻滅するが法律で離婚が認められていなかったため夫とは別居、パリで小説を発表し始めたサンド29歳。天才ともてはやされ、放蕩にあけくれていた文壇の寵児ミュッセ23歳。本作『年下のひと』は、ふたりの愛の葛藤を描いた真実の物語である。
「私の全てを捧げたい」
19世紀、ロマン主義花咲くフランス。情熱的な女性作家ジョルジュ・サンドは、美貌の詩人ミュッセと出逢い、激しい恋に落ちる。ふたりの恋は一躍文壇のスキャンダルとなる。二人で出掛けた旅先のヴェネチアでミュッセが病に倒れてしまい、サンドは献身的に看病をするが、一方でイタリア人医師パジェッロと親密になっていく。狂おしいほどの嫉妬に駆られたミュッセは、サンドを残し単身パリへ戻るが…。
ジョルジュ・サンドといえば、これまで男装の麗人、何人もの愛人を持つ奔放な女性作家というスキャンダラスなイメージがあった。しかし実際の素顔のサンドは、精力的に仕事をこなし、2児の母としての良き家庭人でもあり、なおかつ有り余る母性で多くの若き芸術家たちを愛し育てた“母性愛”の人であった。6歳年下の放蕩児ミュッセは、そんなサンドに心を癒され理想の女性像を見い出す。
サンドもミュッセに愛されることによって恋のときめきと歓びに目覚めていく。
ミュッセの若さと美貌と才能に惜しみない愛を注ぎ込むサンド。しかし“恋の詩人”ミュッセは、ふたりの関係に絶望を見いだしていく。「貴女は恋人なのか、それとも母親なのか——」。ミュッセの嫉妬心と独占欲に振り回されながら別れと再会を繰り返し、結局は別れていくふたり。破局の痛手は若いミュッセにおいてより深かったが、それは後に彼の傑作小説『世紀児の告白』や数々の詩の名篇に昇華する。「真実の愛はひとつだけ」。サンドにとっても、その後の生き方を決定づける運命的な愛であった。
誰よりも自由に生きて、愛した女性
サンドは1804年に生まれ1875年没。19歳でデュドバン男爵夫人となり2児をもうけるが、愛のない結婚生活に厭き、当時は法的に離婚が認められていなかったため夫と別居、1年の半分をパリで過ごすようになる。ミュッセと出会ったのは、パリで新聞への寄稿や小説の執筆を始めた矢先だった。その後サンドは、パリの社交界を中心に、多くの著名人と交流を持っていく。ヨーロッパの激動の時代、手紙を交わした相手だけでも2300人にも及ぶほど(書簡相手にはドストエフスキー、バルザック、ユゴー、ゾラ、ドラクロワ、フロベール、リスト、サラ・ベルナールからマルクスやバクーニン、ナポレオンまで、芸術家や政治家、実業家に皇族と、ありとあらゆる有名人がいた)実に多彩な交友関係を誇った彼女は、“サンドを知ることは時代を知ること”といわれるように、19世紀そのものであった。一方、女性の立場が著しく弱かった封建的な社会の中で、誰よりも自由に生きようとした、20世紀の先駆けのような女性でもあった。1900年代半ばにフランスでサンドの書簡集が発表されるや、時代を先取りする豊かな感性と知性、多くの友人を惹きつけた人間的な魅力に、世界中で彼女の再評価の気運が高まっている。恋愛、仕事、家庭、その全てにエネルギーを注ぎ、なおかつ多くの若い芸術家を愛し育てていった包容力に満ちたサンドの生き方は、世紀末の現代に生きる我々にこそ深い感銘を与える。本作の最大の魅力は、このサンドのポジティブな生き様そのものである。たくさんの人々との出逢いと別れを繰り返しながら愛することを生きる原動力とし、相手を優しく癒すような大きな愛を与え続けたサンド。150年の時を経たいま、その原点ともなったミュッセとの悲恋の軌跡を追うことにより、現代の我々はサンドの情熱と勇気に生きる力を見い出すだろう。
永遠の愛に息吹を与えた精鋭のキャスト、スタッフ
サンドを再発見し現代にその生き様を蘇らせたのは、『愛のあとに』、『彼女たちの関係』と大人の女の愛を描き続ける女性監督ディアーヌ・キュリス。サンドの大胆な生き方の中に、全てを包み込む度量と繊細な女性らしさを表現している。
ヒロインのジョルジュ・サンドには『イングリッシュ・ペイシェント』のオスカー女優ジュリエット・ビノシュ。美貌の放蕩児ミュッセには『人生は長く静かな河』のブノワ・マジメルが抜擢され、その甘い美男子ぶりで全欧の女性を虜にした。彼はまたビノシュをも魅了し、ふたりは本作がきっかけで実生活でも恋人同士となった。99年12月にはふたりの愛児も生まれているという。実際にもビノシュ35歳、マジメル23歳という作品を地で行くカップルでもある。サンドとミュッセの別離の遠因とも言えるイタリア人医師パジェッロには『カストラート』のステファノ・ディオニジ。サンドの娘ソランジュには『ポネット』で4歳にしてヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞したヴィクトワール。衣装はフランスを代表するトップデザイナー、クリスチャン・ラクロワ。美術は『王妃マルゴ』のマキシム・ルビエール、撮影監督は『アンダーグラウンド』のヴィルコ・フィラチ。
19世紀の風俗考証に基づいた絵画のように美しい映像、伊達者ミュッセや、パリの社交界で洗練されていくサンドの豪華な衣装は、目を奪われる秀麗さだ。音楽は『イル・ポスティーノ』でアカデミー賞を受賞したベテラン、ルイス・バカロフが担当、ベルリオーズ、リスト、シューマンなどロマン主義の名曲の数々がドラマを盛り上げる。そしてドラクロワ、ユゴーなどの友人たちが登場、若き才能が集まる19世紀の空気を活写している。時代を超えて輝き続けるサンドの魅力に、当代の才能が集まった。パリ、ヴェネチアに一大ロケーションを敢行、スケールのある文芸大作が完成した。
ストーリー
廃墟のただ中に 我々は生まれた戦争は終わり 栄光も理想も死に絶えた絶望が唯一の信仰となり 侮蔑が情熱となった女たちは花嫁のような白い服若い男たちは 孤児のような黒い服で女を見つめ空虚な心で冒涜の言葉を吐いた私は高慢で自堕落な日々をすごしていたあの日 彼女と出会うまでは…
“世紀児の告白” アルフレッド・ド・ミュッセ
1830年代のパリは、ロマン主義と革命の空気に溢れていた。1832年6月、学生が暴動を起こし、多数の死傷者が出る事件が起きる。逃げまどう群衆の中に、ひとりの女性がいた。愛を感じられない夫の元から離れ、ふたりの子供を連れていた。
彼女の名前はジョルジュ・サンド。女性作家の少ない時代、結婚制度を否定し、タブーとされていたものを堂々と描くその強さと勇気は、賞賛と憧憬、そして嫉妬をもって迎えられ、作品の内容とともにサンド自身もスキャンダラスな存在として世間を騒がせていた。
ある日、出版社から勧められた朗読会で、サンドは批評家から激しく罵倒される。
気丈に振る舞いながらも、動揺を隠せないサンド。その時彼女に話しかけ、優しく慰めてくれたひとりの男がいた。これがサンドとアルフレッド・ド・ミュッセの運命の出逢いであった。最も才能に溢れた天才詩人といわれた文壇の寵児ミュッセは、弱冠23歳。その才能と美貌で常に人々の熱い視線を浴びていた。しかし彼は希望も理想もなく、ただ放蕩に明け暮れる日々を送っていた。コレラに倒れた父親の最期にも会えず、自責の念にかられて友人にも女にも心を閉ざしていた。
お互いの作品を読み、書簡を交す。こうしてふたりの関係が始まった。ミュッセの言葉はサンドの言葉となり、才能がお互いを高めていった。ミュッセが訪れたサンドの家は、評論家や編集者などの取り巻きでいつも賑わっていた。ふたりの子供と楽しそうに戯れるサンド。彼女の笑顔は、全てを否定してきたミュッセの人生を照らす一筋の光となって輝いた。ふたりが激しい恋に落ちるのに時間はかからなかった。29歳のサンドと23歳のミュッセ。6歳年下の天才詩人の情熱的な愛によって、それまで相手の愛を受け入れ、相手をよろこばせることしか知らなかったサンドは、自ら愛し、愛の歓びを得ることに目覚めていく。
スキャンダラスな女性作家と天才詩人。ふたりの恋の行方は社交界の話題の的となっていた。そうした周囲の雑音から離れ、お互いの本当の気持ちを確かめるために、ふたりはイタリアへ旅立つ。しかし旅の途中、サンドは病に倒れてしまう。
ヴェネチアに着くや、サンドはイタリア人のパジェッロ医師の診察を受けることになる。それでもサンドは旅費のために病床で精力的に執筆活動を続けていた。
しかしミュッセはそんなサンドを放ったまま、毎晩女遊びに出掛けてしまう。子供のようにサンドを慕い、そして激しく愛を求めるミュッセ。そんなミュッセについ手を差し伸べてしまうサンド。ミュッセの若さと才能は、サンドの感性を大きく揺り動かす。やがてミュッセは酒とアヘンに溺れ、重症に陥ってしまう。錯乱状態に襲われ、生と死の間を彷徨うミュッセを、サンドは2週間もの間、昼も夜も献身的に看病した。しかしミュッセの精神の危うさを見せつけられ深く傷つくサンドは、パジェッロの優しさに身を委ねてしまう。ミュッセが回復した時には、ふたりは深い関係になっていた。パジェッロへの恋文を発見し、狂おしいほどの嫉妬に駆られたミュッセは、単身パリに戻ることにする。別れを決意し、離れ離れになるふたり。それでもミュッセはサンドに手紙を書かずにはいられなかった。「君との別れのくちづけが人生最後のくちづけかもしれない 今でも君を愛している」。ミュッセはサンドへ不滅の愛を誓うのであった。
ミュッセとの情熱の日々より、心の平和を選んだサンドは、パジェッロと共にパリに戻ってきた。知らせを聞いたミュッセは、サンドへの募る想いを押さえられずに、サンドの家で彼女を待ち続ける。「僕は変わった 愛している」そう叫ぶミュッセを頑なに拒むサンド。拒みながらも、込み上げるミュッセへの熱い想いにサンドも苦しんでいた。生まれながらの“詩人”ミュッセの情熱はつねに過剰であり、人々の前でも、サンドに対して、嫉妬と憧れの感情を爆発させた。ついにサンドはそんなミュッセに絶望して二度と会わない決意をする。大切な髪を切り、ミュッセに送った…。
スタッフ
監督:ディアーヌ・キュリス
脚本:フランソワ・オリヴィエ・ルソー、マレー・ヘッド、ディアーヌ・キュリス
製作:アラン・サルド、ディアーヌ・キュリス
音楽:ルイス・バカロフ
美術:マキシム・ルビエール
プロダクション・デザイン:ベルナール・ヴェザ
撮影:ヴィルコ・フィラチ
衣装:クリスチャン・ラクロフ
キャスト
ジョルジュ・サンド:ジュリエット・ビノシュ
アルフレッド・ド・ミュッセ:ブノワ・マジメル
ピエトロ・パジェッロ:ステファノ・ディオニジ
エーメ・ダルトン:イザベル・カレ
マリ・ドルヴァル:キャリン・ヴィアール
ポール・ド・ミュッセ:オリヴィエ・フベール
サント=プーヴ:ドゥニ・ポダリード
マダム・ド・ミュッセ:マリー=フランス・ミニール
ソランジュ:ヴィクトワール
モーリス:ジュリアン・レアル
LINK
□IMDb□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す