この街はどんな台をたてながら沈んでいくのだろう? 廃墟のような街、河、男のシャツから落ちる水滴、幼い子供の空虚な瞳…。 そこからたち昇る静かな絶望とエロティシズム。中国第6世代のゴダール誕生!!

☆1996年ベルリン国際映画祭フォーラム部門正式出品 ☆1996年釜山映画祭正式出品 ☆1996年パンクーバー映画祭ドラゴン・アンド・タイガー賞受賞 ☆1996年トリノ映画祭ベスト・フィルム賞受賞作品

1996年中国映画/カラー/99分/ドルビー/章明(ツァン・ミン)監督作品 製作:北京映画製作所+北京東方大地文化発展公司 配給:ポニーキャニオン+スローラーナー

1999年5月22日よりユーロスペースにて、モーニング&レイト・ロードショー!!

サブ題名 巫山雲雨

公開初日 1999/05/22

配給会社名 0068

解説

三峡ダム工事で水没する街。信号守チェンチン、彼らをろぐる様々な思惑と、愛が絡み、ひとつの強姦事件が告発される…。ありふれた一日。考え得る限り最もシンプルな映像。人の心の中にある闇。全てを受け入れる男。断片のように見えたストーリーは、やがて、ゆらくりと繋がり始め、人生、愛、幸せを期待する人々の姿を描き串していきます。美しく、繊細で、そして驚きに満ちあふれた傑作が、また中国から届けられました。会話は最小限にまで切リ詰められ、この映画には今までスタジオで作られた中国映画では見たことのない美しい映像と静かなトーンがあります。新しいダムのせいで水に沈む街の風景の中での川の信号操作員、ホテルの受付の女、そしてとても若い警察官がとてもシリアスで奇妙な事件に巻き込まれて…。
まるで廃堀のような街と、流れていく河の水、河を渡ってきた男のシャツから落ちる水滴に、惑う大人たちを見つめる幼い子供の空虚な瞳に静かな絶望が反映される。そして、そこからたち昇るかすかな男と女のエロティシズム。原題の“巫山雨雲”とは、男女の営みを暗瞼した言葉でもあります。新鮮な表現方法と強いリアリティヘの飽くなき挑戦。
監督はこの作品が劇場用初監督となる章明(ツアン・ミン)。北京電影学院の監督科を卒業、テレビのディレクターとして活躍。その後、『沈む街』の企画を製作所に持ち込みますが、実現せず、第五世代の監督である『青い凧』の田壮壮に相談したことがきっかけになリ北京製作所が製作に踏み切ることになりました。今までの中国映画とは違った表現で真実を描くこと。章明監督は、年間百本近く製作される中国映画の中に、庶民の普通の生活を描いた作品が少ないことに気付き、あえて俳優ではなく全て素人を起用し映画を作り上げました。新鮮な表現方法と強いリアリテイに挑戦したこの作品が持つ男と女がいれぱ映画は撮れるのだという不敵な姿勢は、「中国第6世代のゴダール誕生」と評され、ベルリンやバンクーバーを始めとする各国際映画祭で絶賛を浴びました。しかし、この作品は中国国内では公開されていません。「撮影現場では幸せだが撮影前と撮影後は悔しい思いをしているのだ」と監督は語っています。

ストーリー

TVのニュースは三峡ダムエ事竣工式の模様を映し出していた。川のほとりで信号守をするマイチャンは生真面目な男であリ、信号守をしながら書道をしたりテレビをみたり、非常に地昧な生活を送っていた。ある日、マイチャンが魚をさばいていると、友人のマービンがリリという女をつれてやってきた。マービンは、マイチャンとたわいもない会話を交わし、女とベットルームに消えていった。その夜、マイチャンは彼らと共に信号守をした。船の通過を伝える電話のベルが鳴る度に信号をかえるマイチャンのひたむきな姿を見て、リリは彼に少し興昧を持つ。夜も更け、マービンとリリは先にベッドルームヘ向かった。「マイチャン! ベットに蛇がいる」というマービンの叫び声を聞き、マイチヤンは二人の元へ向かった。しかし、それはマービンの嘘であった。マイチャンとリリの2人をベットルームに閉じこめる口実だったのである。マイチャンはリリから執拗な挑発を受けるのであるが全く動じない。そんな彼の態度にしびれを切らしたリリは、下着姿で川を泳ぎ始める。はじめは懸命に止めた彼も、楽しそうにはしゃぐ彼女の姿をみて止めることをやめた。そして、川からあがってきた彼女の肩に自分のシャツを掛けてやるのだった。
翌朝、リリとマービンが言い争っていた。リリがマービンにマイチャンと寝たんだから金を払えと迫っていたのだった。彼らばマイチャンを誘惑できるかどうかの賭をしていたのである。リリの言ったことばが信じられないマービンは、マイチャンに「本当に寝たのか? 」と問いただすと彼は「ああ」と答えるのだった。
川にほどちかい旅館のフロント係をつとめる未亡人チェンチンは再婚を考えていた。彼女の一日は、旅館のプラカードを持って観光名所に出向き、旅行者相手に宿泊客の呼び込みをすることで始まる。流行のホテルとは違い設備の整わない安旅館だけに、クレームをつけられることもしぱしばであったが、番頭のモーがうまく対処していた。モーとチェンチンはつきあっていた。モーはいつも彼女のことが気になってしようがなかった。再婚を望んでいる彼女に、同僚は度々縁談話を持ちかけていた。しかし、彼女自信はあまり乗り気ではなかった。ある日、チェンチンが魚をさばいていると、誰かが自分を呼ぶ声がした。外にでてみると、一人息子のリャンが帰ってきたところであった。チェンチンは彼に、誰かが自分を呼んだかと訪ねるのだが、誰も彼女の名を呼んでいなかった。
チェンチンがリャンの汚れた手を洗っていると、モーが訪ねてきた。彼は、リャンに新しい鞄を買ってきた。「もらっていい? 」母の様子をうかがいながらそう尋ねるリャンに、彼女は洗い物をしながら「もらいなさい」と不機嫌に答えるのであった。リャンが外に遊びに出かけると、彼女はモーに漁師の男と再婚を決めたことを伝えたら「これっきりか? 」というモーの間いにチェンチンは「そうよ」とだけ答えた。彼女がそれを望むのであればと、別れることを決心したモーは、最後に一度だけと言い彼女をベットに誘った。はじめは断った彼女も結局その誘いに応じるのであった。しかし、これによりモーのチェンチンに対する思いは、一層強くなるばかりであった。フロントで受け付けをしながら向かいの床屋でのやりとリを眺めているチェンチンの元に、モーがやってきた。簡単には別れられない、再婚は承知できないというのだった。
旅館の番頭モーが、警察官のウーガンのもとを訪れた。緒婚を聞近に控えたウーガンは、古びれた金物屋で結婚指輪をつくっているところであった。モーは店主に古くなった店の修理を勧めた。しかし店主はダム工事で水没する店を修理するのは無駄だと答えるのであった。金物屋をでるとモーは関を切ったようにしゃベリ始めた。強姦事件が起こったという。しかし、彼は被害者の名前をなかなか言わなかった。被害者がチェンチンだからである。彼女の部屋を訪ねたところ、兄覚えのある男があわてて飛び出してきたので、驚いて部屋をのぞいてみると素っ裸の彼女が泣いていたという。強姦に決まっている、法律で守ってやってくれというのだ。
ウーガンはチェンチンの働く旅館を訪ね、彼女に事件の件を尋ねた。しかし、彼女はそんなことは身に覚えがないという。「なにもないとはどういうことだ! 俺は忙しいんだ! 」旅館を出たウ一ガンはモーにたいしてそう言い放った。モーは「彼女は外聞を気にしているんだ! 俺がチェンチンを説得する。犯人は見たことがある男だった。見捨てないでくれ」と、必死にウーガンにすがるのだった。
モーが、床屋で順番待ちをしていた強姦犯を発見した。彼はウーガンと共に犯人を捕らえた。犯人とされた男は信号守のマイチャンであった。マイチャンの共犯として呼ばれたマービンは据え膳も食わない堅物の彼が強姦をしたということが信じられなかった。取り調べをしていくうちに、それは強姦ではなかったという事が発覚した。彼女を100元で買ったというのである。「彼女を好きになったのか? 」というウーガンの問いにマイチャンば「見覚えのある顔だった」とだけ答えるのであった。結局マイチャンは釈放されることになった、彼が連行された時、床屋の順番待ちをしていたことを思い出したウーガンは、引き出しからバリカンを収り出し「下手だけど」と言いながら彼の髪を刈ってやるのだった。
信号守をしている中、マイチャンはマーピンからチェンチンの再婚話がダメになった事を知らされる。今回の事件が街中の噂になったというのである。マイチャンは愕然とした。日がおちた頃、彼はマーピンに留守を頼み、川を泳いでチェンチンの元へ向かった。ずぶ濡れのままやってきた彼を、チェンチンは大粒の涙を流しながら叩き続けた。チェンチンの息子リャンはそんな2人の姿をただただ見つめているだけであった。

スタッフ

製作: 王心語、田壮壮、劉允洲、将原倫
監督: 章明
脚本: 朱文
撮影: 姚小峰、周明、丁建成

キャスト

張献民、王文強

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