原題:Delbaran

2000年/製作:ティー・マーク、フィルム・エ・アヴァル/提供:オフィス北野、バンダイビジュアル

2001年公開

解説

 1990年代以降、イランは優れた映画をコンスタントに送り出す国として、国際的に注目を集めてきた。この流れは1997年のカンヌ映画祭でアッバス・キアロスタミ監督の『桜桃の味』が最高賞パルム・ドールを獲得し、1999年の米アカデミー賞でマジッド・マジディ監督の『運動靴と赤い金魚』がイラン映画史上初めて外国語映画賞にノミネートされたことにより、日本はもとより全世界の人々の知るところとなっている。『デルバラン』は、そのイラン映画界においてキアロスタミに続く才能として大きな注目を集めているアボルファズル・ジャリリ監督の最新作である。常に過酷な環境の中で生きる少年たちを主人公に選んできたジャリり監督の作品は、説明的表現を一切排し、ある種ドキュメンタリーを思わせる独特のスタイルのため、イラン国内では新作を発表するたびに賛否両論の議論を呼んできた。一方で、フランスを中心とする海外においてはイランの現状を最もリアルに表現する映画作家として高い評価を獲得、シャりリ監督の評価は高まる一方である。
 心ならずも自分の行った行動がもたらした事態を償おうとするひとりの少年、そして最後に訪れる”奇跡”を感動的に描く『デルバラン』は、ジャリリ監督の映像的な世界の集大成として位置づけられ、2000年を迎えた世界の映画界の注目を集める話題作となるに違いない。

ストーリー

 イラン北東部のホラサン地方。砂漠の中の人里離れた曲がりくねった道沿いに古い宿屋がある。14歳の少年が住み込みで働いている。少年は母親の死後、父親にここに連れてこられたのである。宿屋の客のほとんどはトラックの運転手たちだ。客たちにトラックに乗せてもらい、近くの村にパンや肉や野菜の買い出しにでかけ、夕暮れまでに戻ってくるのが少年の日課であった。
 地方長官が新しいハイウェイの建設を発表するまでは、全てが順調だった。そのハイウェイができると、多くのトラックは新しい道を通るようになり、その宿屋に立ち寄る者はほとんどいなくなった。宿屋の夫婦の家計は次第に逼迫した。宿屋の主人は釘を買い、少年に毎晩釘を道路に立てるように命令した。たまたま通りかかった車をパンクさせ、宿屋に泊まらざるを得ない状況に追い込むというわけだ。
 ある夜、若い田舎教師が町の病院を目指して古いフォルクスワーゲンを走らせていた。車には出産を間近に控えた妻が乗っていた。宿屋の近くにさしかかった時、車はパンクし、彼らは宿屋に泊まらざるを得なくなった。やがて妻は陣痛に苦しみ始めたが、病院まで彼女を送ってゆく手だては何もない。宿屋の夫婦は出産を手伝おうとするが、時間ばかりが空しく過ぎ、教師の妻は体力的にも精神的にも消耗しきって目に見えて衰弱していった。
 夜明けが迫ってきた。少年は隣の村に行き、年老いた産婆を宿屋に連れて来る。太陽が昇り始めた時、産婆は母親が危険な状態にあると言った。教師は母親と赤ん坊かどちらを生かすかの選択を迫られる。産婆のその言葉を聞き、罪の意識にさいなまれた少年は狂ったように外へ飛び出して行った。

スタッフ

プロデューサー:市山尚三、アボルファズル・ジャリリ
エグゼクティヴ・プロデューサー:森昌行
監督・脚本:アボルファズル・シャりリ
撮影:モハマッド・アハマディ
製作:ティー・マーク、フィルム・エ・アヴァル
提供:オフィス北野、バンダイビジュアル

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