原題:ONE TRUE THING

かけがえのないラスト・クリスマス…

1998年/ビスタ・ビジョン/翻訳:吉田由紀子/2時間8分 ユニバーサル映画提供/UIP配給/90分

2008年03月13日よりDVDリリース 2000年5月26日よりビデオレンタル開始 1999年11月13日より日比谷シャンテシネにて公開

公開初日 1999/11/13

配給会社名 0081

解説

その時まで、娘は、母の本当の姿を知らなかった。まるで奇跡のように、娘は母の人生に真実を見い出し、その愛と強さを知った。永遠の別れが迫った、その時に…。理解しようという努力すら払わずに過ごしてきた母の人生なのに、今は、こんなにも多くのことを教えてくれる。病に倒れた母のため、都会生活を犠牲にして帰郷した娘は、女同士でありながら、まったく違う道を歩んできた母の生き方をあらためて直視する。
この映画が語るものは、女の生き方、母と娘の関係、家族の在り方、夫婦の絆…さらに、一人の女性が人生の最後に迎える尊い瞬問と、その死の謎を、娘の目を通して確実に描き出しています。ピューリッツァー賞を受賞したジャーナリスト、アナ・クィンドレンの小説を原作に、アカデミー賞に輝く二大スターを得て、人生の深さと愛の実りでしっとりと人を包み込む秀作ドラマが誕生しました。町の婦人会がつきあいのすべて。エプロン姿で過ごすキッチン。家族の世話に明け暮れる日々。仕事本位の夫の帰りを待つだけの夜。それが母の人生。大都会ニューヨークでの暮らし。誰にも頼らない白立した生活。ジャーナリストとして男と肩を並べる精力的な日々。それが娘エレンの求める人生。娘の口からは、母の一生は、ささやか過ぎるほどささやかで、平凡すぎるほど平凡だった。しかしその看病のため、キャリアを中断して帰郷せざるをえなくなったその時から、エレンの考えは少しずつ変わり始める。紅葉の秋から木枯らしの冬。そして、美しいクリスマスの夜へ。うつろいゆく季節の中で、死を目前にした母と見つめ合うエレンは、決して人を一家を常に大きな愛情で守ってきた母の真実の姿を知る。そして、母は、つの謎を残して眠りについた…。
身近なテーマを扱いながら、このドラマを奥深いものにしているのは、メリル・ストリープ、ウィリアム・ハートというアカデミー賞受賞の二大スターの果たす役割は大きなものがあります。メリル・ストリープは素朴で土臭い、だが妻としての賢さと母としてのやさしさに満ちた女性ケイトを演じています。決して派手な役柄ではありませんが、クライマックスでは圧倒的な力強さを見せ、本作で実に11回目のアカデミー賞ノミネート(内2回受賞)を飾りました。
監督は『運命の引き金』『青いドレスの女』に次ぎ、これが長編第3作目となるカール・フランクリン。これまでアクション、ミステリー路線から一転、静かでヒューマスティックなこの作品で見事に新境地を開きました。製作は『最後の誘惑』を世に放ったハリー・アフランドと『運命の引き金』以来、フランクリン監督と組んできたジェシ・ビートンが手掛けています。脚本のカレン・クローナーは長編作品はこれが初めてですが、ドキュメンタリー映画の脚本家・監督として国際的に評価を得てきているだけにリアルできめ細かい筆致を感じさせます。

ストーリー

母の死には、謎があった。最期を看取った娘エレン(レニー・ゼルウィガー)は、検事(ジェイムズ・エクハウス)に証言を始める。話は、紅葉の秋から始まった。その秋、エレンは母ケイト(メリル・ストリープ)に呼ばれ、久々に帰郷した。父ジョージ(ウィリアム・パート)の誕生パーティーをこっそり計画していたからだ。ニューヨークで暮らすエレンは、ジャーナリストとして、毎日、夢中になって特ダネを追いかけていた。今は、ある上院議員のスキャンダルを物にできるかもしれない大事な時。パーティーの準備にも気が入らない。しかし、無邪気にはしゃぐ母の顔、大勢の客に驚き、喜ぶ父の顔に、そんな思いも紛れていった。大学教授で、1O年かけて書き上げた小説で国民文学賞を受賞した父は偉大な存在。だから、弟のブライアン(トム・エベレット・スコット)も、ハーバード大学で留年したことを父に打ち明けられない。エレンが書いた最近の記事についても、父は、的確に批評してくれた。パーティーが終わった後、お気に入りの曲にあわせてダンスを踊る父と母の姿を、エレンと弟は笑顔で見守った。
だが、翌日、エレンは父から思いがけないことを告げられる。母が腫瘍を取る手術をするので、退院後の世語のため、エレンに家に戻って来いというのだ。真っ先に仕事のことが頭に浮かんだ。しかし、他に母の世話をする人もいない。選択の余地はなかった。エレンはニューヨークのアパートを引き払って、再び故郷へ戻ってきた。エレンにとって、家事の得意な母は、確かに良い母ではあった。かといって、夫や子供の世語と町内のつき合いで一生を終える母のような生き方を、白分はしたくなかった。だが、実際に、やってみると、なかなか母のようにうまくはできないことが多い。婦人クラブの昼食会でコックを務めたエレンは、自分の料理のあまりのひどさに惰けなくなった。秋が深まった。母は、鎮痛剤が効かなくなり始め、夜通し苦しむことも多くなった。だが、父は、仕事が忙しいと言い、毎晩のように、深夜、誰かの車で送られて帰ってくる。不倫? 父は勝手なことをしているのに、なぜ自分だけが母の看病をし、婦人クラブのハロウィンにつき合わされなければならないのか。エレンの心に、父への疑惑と不満が芽生えた。感謝祭がきた。
久しぶりに会った恋人ジョーダン(ニッキー・カット)も交え、家族だけの夕食を取ろうとした時、父が、“尊敬する詩人”だという客を連れてくる。しかし、上機嫌で話に興じていた父は、その詩人が、かつて高く評価してくれたはずの白分の小説を、覚えてさえいなかったことにひどく落胆する。一方、イライラが募っていたエレンは、気晴らしに出かけたナイトクラプで、ささいなことからジョーダンと大喧嘩。そんなエレンに、母は「そろそろニューヨークヘ帰った方がいい」と、静かな口調で語る。
ある日、エレンは、狙っていた上院議員の記者会見があるときいて、飛んで行った。しかし、着いた時には会見はすでに終わっていた。こうなったらと、議員の泊まっているホテルの前で張り込み、ついに接触に成功。大学の同級生だと名乗り、記者であることは隠し、うまく議員の車に乗り込んだ。特ダネはいただきだ。だが、苦境に立たされ、妻子のことを思い遣る議員の話を聞くうち、エレンの脳裏に幼い日の家族の光景が甦った。そして、エレンは、その特ダネを記事にはしなかった。
ついに、エレンは父と衝突した。反抗的なエレンの態度を間いただす父。エレンは、仕事中心で家族を犠牲にしてきた父を激しくなじった。そんなことがあって、父との問はぎくしゃくしていった。そして、クリスマス・イブ。エレンと弟は、車椅子の母を連れて町の広場へ出かけていった。婦人クラブの一員として、母も参加して飾った大きな、たくさんのツリーに灯が点った。美しかった。輝くそのツリーは、母の人生のささやかな栄光だった。そして、それが、3人揃って眺めることができる最後のクリスマス・ツリーであることを、エレンも弟も、母白身も知っていた。新年を迎えると、母の病状は目に見えて悪化した。ある日、母は、珍しく苛立ちをあらわにした。父に対し、非難がましい視線を向けているエレンに、母は「パパのことはすべて知っている」と叫んだ。結婚とは、夫婦とは何か。幸せになるには今を愛せばいい。母の言葉には命の重みがあった。数日後、エレンは身勝手だとばかり思っていた父が、母を失う苦しみから、場末の酒場で酔いどれている姿を目のあたりにする。それは、エレンの知らない父だった。家にたどり着いた父は、まるで幼子のように、母の胸に抱かれて眠った。まもなく、母はバスタブからも一人では出られないほど、体力を失っていった。「もう生きるのはいや」という母の悲痛な叫び。エレンの頭に医師の言葉が浮かんだ。鎮痛剤のモルヒネを噛むと中毒を起こす。このモルヒネを、食べ物に混ぜれば…。それからまもなく、母は、永遠の眠りについた…。

スタッフ

音楽: クリフ・エイデルマン
編集: キャロル・クラベッツ
プロダクションデザイナー: ポール・ピータース
撮影: デクラン・クイン
製作総指揮: ウィリアケ・W・ウィルソンIII、レスリー・モーガン
製作: ハリー・アフランド、ジェシ・ビートン
原作: アナ・クィンドレン
脚本: カレン・クローナー
監督: カール・フランクリン

キャスト

メリル・ストリープ、レニー・ゼルウィガー、ウィリアム・ハート
トム・エベレット・スコット、ニッキー・カット、ローレン・グラハム

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