原題:MINAZUKI

自分では輝くことの出来ない“月”たち 旅の終わりに彼らは、何をみつけだすのだろう?

ロッテルダム国際映画祭・ペサロ映画祭正式出品作品

1999年/日本映画/ビスタサイズ/カラー/モノラル/114min 配給・宣伝:日活株式会社/宣伝協力:スロー・ラーナー

2007年09月21日よりDVDリリース 2000年5月25日よりビデオレンタル開始 1999年10月23日より、テアトル新宿にて“お月見?”ロードショー

公開初日 1999/10/23

配給会社名 0006

解説

自分では輝くことの出来ない“月”たち
旅の終わりに彼らは、何をみつけだすのだろう?

「みんな月でした。がまんの限界です。さようなら。」
ある日、そんな謎だらけの手紙を残して妻が失踪した。橋梁設計士の諏訪は冴えない四十男。すべてを失った彼は、チンピラの義弟、彼を愛するソープ嬢由美と共に妻を捜す旅に出る…。愚劣で惨めな現実。いつもすぐ側にいた妻とさえ本気で関わることのできなかった諏訪。愛ではなく打算で諏訪と暮らし始めた由美。
そして、アキラの心の中に秘められたひとつの“愛”、様々な愛し方、様々な愛の形…。彼らは、この旅の終わりに何を見つけ出すのだろう。しかし旅は文字どおりの“旅”ではない。三人は旅の終わりに、それぞれ自分にとっての「愛」と「再生」を、汚辱の中から見つけ出すことができるのだろうか?

“暴力”から“愛”へ
人の心の軋みと癒しがたい傷からの再生を描き出す!花村萬月作品、待望の映画化!
『ゲルマニウムの夜』で第119回芥川賞を受賞した花村萬月の傑作『皆月』、待望の完全映画化である。第19回吉川英治文学新人賞を受賞した本作品は、花村氏自身が小説の中で「暴力」から「愛」を描くようになった記念碑的な作品でもあるのだ。純愛と新たな出発を描き、まさに大人のためのファンタジーともいえるこの作品を監督するのは、『鬼火』で97年度キネマ旬報監督賞を受賞し、国内だけでなく海外の国際映画祭でも注目を集める望月六郎。原作の花村氏は、最も好きな映画の一本に望月監督の『鬼火』を選んでいたこともあり、最も理想的な組み合わせが実現した。一見、汚辱の中にあるような激しさと猥雑さを持つ花村作品。彼の描く世界はセックスと暴力に満ち溢れているかのように見える。しかし、読者はその根底に、あまりにも繊細で純粋な感情を読み取ることが出来るだろう。望月監督は、この作品の中の最も“優しい”部分から映画を出発させた。
類希なパワーで人々をひきつける“中年男”達と初々しい才能との出会いから、純愛と新たな出発を描く大人のためのファンタジーは誕生した。
脚本は、97年『身も心も』で自らも監督デビューを果たし、人間の繊細な感情をすくい上げる名手、荒井晴彦。主演は、すでに『極道記者』(93年)『恋極道』(97年)等といったアウトローを描いた望月作品でコンビを組んでいる奥田瑛二。
そして、どこの組にも属さないアウトローのヤクザ者、義弟アキラに『CLOSING TIME』(96年)『日本黒社会 LEY LINES』で脚光を浴びる新鋭の北村一輝。自分では輝くことのできない「月」の人々の中で一人だけ光を放つ「太陽」由美を演じるのは、JR東海『クリスマスエキスプレス』の五代目ヒロインとして新鮮なデビューを果たし、『リップスティック』『らせん』等TVドラマで活躍する一方『樹の上の草魚』(97年)で映画主演デビューした吉本多香美。失踪する妻、沙夜子に『いつかギラギラする日』(92年)『忠臣蔵外伝四谷怪談』(94年)の演技派、荻野目慶子が出演。厚みと新鮮味を合わせ持ったキャスティングとなった。類希なパワーで人々を引きつける“中年男”たち、花村萬月、望月六郎、荒井晴彦、奥田瑛二と若く柔軟な才能との出会い。この出会いが、諏訪、アキラ、由美、沙夜子それぞれの「心の軋み」と「癒しがたい傷から再生」する姿を鮮烈に描き出した。

ストーリー

「みんな月でした。がまんの限界です。さようなら。」
ある日、そんな謎だらけの置き手紙を残して妻・沙夜子が現金と預金通帳を持って失踪した。橋梁設計士の諏訪憲雄は、コンピューターおたくの冴えない四十男だ。複雑な力学計算の仕事に夢中になっていた彼にとって、見合い結婚した沙夜子が初めての女でもあった。子供はできなかったが、結婚生活は順調だと思っていたのに…。
警察には届けないが、沙夜子を取り戻したいと願う諏訪に、沙夜子のヤクザ者の弟、アキラは協力を申し出た。アキラは気晴らしにソープ嬢、由美をあてがうが、沙夜子にこだわる諏訪は果てることができなかった。
愚劣で惨めな現実。諏訪は心身ともにズタズタだった。会社を辞めてアキラの部屋に居候することになった諏訪。アキラは諏訪の部屋のものを勝手に処分し、ヤクザの戸賀沢組の事務所でコンピューターを操作する新しい仕事を紹介した。実は戸賀沢組・組長、我孫子は幼なじみのアキラの強引な頼みを、引き受けてくれたのだ。
何もかもが諏訪にとっては新しい経験だった。新宿二丁目のゲイに殴られたこと。ヤクザの組で働くこと。どこの組にも属せないアウトローなアキラの姿。そのアキラが話す、諏訪の知らない沙夜子の一面。
諏訪は少しづつ変わり始めたのかもしれない。ソープで再び諏訪の相手をした由美は、「さばけたオッサンになった」と諏訪に言った。由美には、沙夜子にはない気安さがあった。思いに沈む諏訪に対して、挑発するような言葉を投げかける由美。結婚指輪をはずさせようとする由美ともみ合ううちに、諏訪はいつしかからめちられるように諏訪と交わった。今度は果てることができた諏訪。そして由美が「一緒に暮らさない?」と言った。

アパートで諏訪と由美との新しい生活が始まった。由美はソープ嬢を辞めた。二人が一緒に暮らすと告白した時、由美を侮辱して去ったアキラとも和解することができた。諏訪は由美を愛していた。アキラからも、沙夜子が実は高岡という芸能人くずれのヤクザと駆け落ちしたと聞かされても、それは変わらなかった。しかし、由美は以前、千葉の養鶏業者、萩原という男に二千万円を騙し取られ、その借金返済に追われていたのだ。

諏訪、アキラ、由美の三人は萩原の養鶏場に乗り込んだ。アキラに締められ、萩原は残っている金の所在を吐いた。しかし一度火がついたアキラは、もう止まらなかった。手にしたスコップで萩原を滅多打ちにして殺してしまったのだ。「アキラ君、東京にいない方がいいよ、だったら沙夜子を探しに行こう。金取り返したら、全部あげるよ。その金で外国に逃げればいいよ」それが、諏訪の提案だった。

沙夜子に会い、全てのケリをつけるため、三人はアキラの車で出発した。最初は諏訪の金を目当てに集ったアキラと由美だったが、今では家族のような存在になっていた。金沢で高岡が借金取りに追われ、彼の故郷「皆月」で目撃されたという情報を掴んだ三人。石川県能登半島の輪島にほど近い、「皆月」。その地名は、沙夜子の置手紙の「みんな月でした」という言葉に呼応していた…。
諏訪、アキラ、由美は「皆月」に向かう。それぞれの答えを探し出すために。

スタッフ

製作総指揮:中村雅哉
企画:吉田 達
プロデューサー:角田 豊、半沢 浩
ライン・プロデューサー:新津岳人
企画協力:植 木実
原作:花村萬月(吉川英治文学新人賞『皆月』講談社・刊)
脚本:荒井晴彦
撮影:石井浩一
照明:櫻井雅章
録音:西岡正巳
美術:山崎 輝
編集:島村泰司
音楽:遠藤浩二
スクリプター:永坂由起子
助監督:中村和彦
製作担当:黛 威久
キャスティング:窪田昭子
テーマ曲:『早く抱いて』
作詞・作曲:下田逸郎
歌:山崎ハコ
演奏:下田逸郎と内田勘太郎
製作協力:(株)フィルム・シティ
製作:日活株式会社
監督:望月六郎

キャスト

諏訪憲雄:奥田瑛二
アキラ:北村一輝
由美:吉本多香美
我孫子:柳ユーレイ
荻原:斉藤 暁
高岡:篠原さとし
沙夜子:荻野目慶子

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