原題:Lautrec

ワインを浴びるほど愛し、死ぬほどシュザンヌに恋した天才画家ロートレック。 ムーラン街24番地、娼婦の館に住む男_。 フランスの屈指の名門、ロートレック家の摘男として約束されていた薔薇色の 人生を捨て、ムーラシ街24番地、娼婦の館で葡萄酒のような味わいに富んだ生涯 を描き、本年度セザール賞衣裳賞・美術賞を受賞した話題作。

☆フランス映画祭横浜'99出品作品::file://Hotaru/Cinema/cinema/online/new1999/france/990610.htm#LAUTREC ☆1999年セザール賞・最優秀衣裳賞・美術賞受賞

1998年フランス・スペイン合作映画/カラー/スコープサイズ/日本ヘラルド映画

2000年8月4日よりビデオレンタル開始 1999年9月3日(金)より、渋谷ル・シネマにて<10周年記念>ロードショー!

公開初日 1999/09/03

配給会社名 0058

解説

「一メートル分のワインがあればいい」と、こよなく葡萄酒とシュザンヌと人生を愛した、天才画家アンリ・マリ・レイモン・ド・トゥールーズ=ロートレック。彼はフランスの屈指の名門、ロートレック家の嫡男として、約束されていた薔薇色の人生を自らの意志で捨て去り、ムーラン街24番地、娼婦の館で葡萄酒のような味わいに富んだ生涯を駆け抜けまし。彼が愛したのは、ルノワールのモデルとして、既にモンマルトルで名を馳せていたシュザンヌ・ヴァラドン。彼女はその魅力でルノワール、ドガ、サティ等当代一の芸術家を狂わせ、未婚の母としてユトリロを生み、自らも女流画家として認められるようになる数奇な運命を辿るミューズでした。彼女はロートレックを愛しながらも、彼の才能に嫉妬するほど二人の天才同士の生活は破綻にむかっていきました。
演劇界の巨匠であり『ルイ、少年王』を監督したロジェ・ブランションはロートレックの人生をシュザンヌとのラヴ・ストーリーとして、描きたかったと語っています。プランション監督は、ロートレックがキャンバスに描いたように、映像を筆にして、ロートレックの生きた19世紀末の風俗を華麗に狸雑に蘇らせ、99年度セザール賞美術賞、衣裳賞を受賞しました。本作はロートレックがゴッホ、ルノワール、ドガとの交友にインスパイヤーされ、1889年、パリ万博の華やかな時代の中で、独自の画風を開花していき、人生を涙と笑いの中で謳歌していく姿が描がれます。誰もが目にしたことがある代表作《ムーラン・ルージュラ・グリュ》《アンバサドゥールのアリスティド・プリュアン》《ムーラン街のサロンにて》などが本作の中で鮮やかに躍動して描かれる時、私達はロートレックの魅力に引きずり込まれてゆきます。フレンチカンカン・ダンサーの躍動する姿、街角の女たちの歪んだ顔、人生に疲れきっていく娼婦達。ロートレックが何よりも描きたかった、その一瞬の時がスクリーンで動き出します。
監督に当たるのは、シェイクスピア、マーロウ、ブレヒトなどの舞台演出家として知られ、93年には映画『ルイ、少年王』を監督したロジェ・ブランション。彼は「アンドロマック」等の舞台演出で、爆笑に次ぐ爆笑と大掛かりな回転セットで喝采を浴びた手法を本作につぎ込み、今までにない軽快で切ないエッセンスに満ちた新しいロートレック像を描きました。主役のロートレックを演じるのはブランション監督作品『ルイ、少年王』でも出演したレジス・ロワイエ。彼は『読書する女』での好演を監督たかわれての連続起用となりました。ロートレックの恋人であり、気性の激しいシュザンヌ・ヴァラドンには『ミナ』『カストラート』のエルザ・ジルベルシュタイン。気位の高いロートレックの父アルフォンス伯爵にはフランス映画には欠かせない名優クロード・リッシュ。彼は55年の『夜の騎士道』から近年では『伴奏者』まで、出演するベテランで、生まれながらの伯爵を好演しました。赤いマフラーの男のポスターで有名なアリスティドを演じるのはコント、作詞作曲家俳優として常に語題を呼ぶ人気タレント、ジャン=マリー・ビガールが本作では歌も披露し、その多芸ぶりを見せました。音楽を担当するのはピアニスト、作曲家としても名高いジャン=ピエール・フケイが当時のカフェ・コンスの雰囲気を見事に再現しました。華麗なロートレックの絵画の世界を蘇らせたのは、『プロヴァンスの恋』でセザール賞にノミネートされたこともあるジャック・ルクセルが美術を担当。衣裳には『シラノ・ド・ベルジュラック』のピエール=ジャン・ラロックによるもので、本作は本年度セザール賞最優秀衣裳賞、美術賞を見事受賞しました。

ストーリー

1864年11月24日、天候は雨。アルフォンス=ド・トゥールーズ=ロートレック=モンファ伯爵は出産間近の妻アデルに男子を生んでくれと懇願していた。南フランス、トゥールーズの名門ロートレック家の血筋を絶やさぬ為にも、是非とも男子出産が必要だった。ロートレック伯爵の世継ぎを待つ貴族たちが大広間でその知らせを待ちかね、屋敷はごったがえしていた。そして、待望の男子が出産されると伯爵は感極まって涙を流し、神に祈りを棒げた。アンリ・マリ・レイモン・ド・トゥールーズ=ロートレック=モンファ、19世紀末の画家ロートレックの誕生であった。
彼は、陽気な性格でロートレック家の嫡男として両親の愛情を一身に浴びて成長した。しかし、15歳の時、屋敷の森で足を骨折し、その後の成長が止まってしまう。だが生来の陽気さは変わらず、好きだった絵画の才能を伸ばしていく。パリで絵の勉強をするように薦められたロートレックは、肖像画家フェルナン=コルモンのアトリエで学び始める。モンマルトルのキャバレー、シャ・ノワールやムーラン・ルージュに通いつめ、芸人達やムール街の娼婦達の生活はアルビの屋敷よりもロートレックにとっては安らぎを与えてくれる場所となった。ある日、行き付けのシャ・ノワールで激しく口論をする、気の強い女、シュザンヌ・ヴァラドンと出会う。彼女はルノワール、ドガといった当時の一流画家のモデルで、貧しい母に育てられ、私生児を抱えていた。その子こそ後の画家ユトリロである。ロートレックはひと目でシュザンヌに恋に落ち、彼女も、本物の貴族で、優しい彼に強く惹かれたのだ。激しい恋が始まる。二人は深い孤独感と才能を共有する双生児のようでもあり、一方、互いに自由奔放な性格から常に口喧嘩が絶えなかった。
コルモンのアトリエでは伝統的様式と対立する、ルノワール、モネ、ドガ、スーラ、が描く印象派の波が押し寄せ、時代は確かに変ろうとしていた。コルモンに対立するエミール・ベルナールとロートレックは印象派の影響があると罵倒され、アトリエを破門されるが、彼が目指すドガの躍動感や印象派の新しい画風が、これからの本物の絵だと信じることに変わりはなかった。愛を重ねるヴァラドンはロートレックに結婚を迫るが業を煮やして、傷心のまま老ルノワール宅にいき、慰めを受け、一夜を過ごすのだった。老いたルノワールにとって、彼女は可愛い孫のような存在であり、失った若さを取り戻せる唯一のモデルであり、女だった。画家としての自分の才能を感じ始めていたヴァラドンはルノワールの絵には嫉妬しないが、ロートレックの絵の才能に嫉妬し、苦しむことに気付き、金持ちの男、ガストンとリモージュに旅立っていった。
やがてロートレックは失意のなかでゴッホと運命的な出会いをし衝撃を受け友好を結ぶ。1892年、新しい試みとしてロートレックは《アンバサドゥールのアリスティド・ブリュアン》のポスターの印刷に立ちあう。1892年。彼の代表作が誕生した。そして、《ムーラン・ルージュラ・グリュ》を発表しパリ中を沸かせるが、エリゼ・モンマルトルという娼婦宿で働く“赤毛のローザ”ことローザ・ラ・レージュと付き合ううちに梅毒を移されていく。当時不治の病だった梅毒とアルコール中毒の症状も悪化し、アトリエに火をつけたり奇行を繰り返すようになる。母は病を知り、彼を精神病院に入院させることをようやく決意する。父は家名を傷つけた息子を許すことができず、父と息子の溝は一層深くなっていった。
心身ともに疲れ累てたロートレックは母の住む城に戻り、母はようやく自分の元に戻った息子を抱きかかえ馬車の中で泣いていた。しかし、父はそんな事を知ることもなく、呑気に自動車でパリから戻ってきた。初めて見る自動車に屋敷の者達は、ニワトリが巻き込まれると大変、ひどい騒音だ、とてもきれい、とそれぞれに驚いた。新しい時代が始まるのだ。やがて死の床にあって、彼は美しい海を夢見ていた。「海、ホメロスが言った。海…あなただ。母さん。あなたは海。」彼の棺は美しい馬車に乗せられ森の中を走った。36歳の人生。ロートレックの葡萄酒色の人生を森の妖精たちが祝福していた。

スタッフ

監督: ロジェ・プランション
製作: マルガレート・メネゴズ
脚本・台詞: ロジェ・プランション
美術: ジャック・ルクセル
撮影: ジェラール・シモンAFC
メイク: ジャック・メストル
衣装: ピエール=ジャン・ラロック
音声: ジャン・ミノンド
結髪: アニー・マランダン
音編集: ジャン=ピエール・アルブヴァシュ
編集: イザベル・ドヴァンク
音楽: ジャン=ピエール・フケイ
調整: ティエリー・ルボン
第一助監: マルガレート・メネゴズ、エルヴェ・リュエ
製作担当: マルガレート・メネゴズ、ナタリー・ネット

キャスト

トゥールーズ=ロートレック: レジス・ロワイエ
シュザンヌ・ヴァラドン: エルザ・ジルベルシュタイン
ロートレックの母: アネモーヌ
ロートレックの父: クロード・リッシュ
ラ・グリュ: エレーヌ・パビュ
エレーヌ: クレール・ボロトラ
王妃シャルロット: アレクサンドラ・バンデフ
ミレイユ: アマンダ・ルビンシュタイン
ローザ: フロランス・ヴィアラ
歌手アリスティド・ブリュアン: ジャン=マリー・ビガール
「LaSou1arde」を唄う歌手: ベル・ド・ベリ
「L'epervier farouche」を唄う歌手: ナタリー・セルダ
ガブリエル: ミシャ・レスコー
マリー・シャルレ: ヴァネッサ・ゲジ
レオンティーヌ: ナタリー・クレプス
画家ルノワール: フィリップ・クレイ
ブールジュ: イヴォン・バック
ドガ: ヴィクトール・ガリヴィエ
エミール・ベルナール: ニコラ・モロー
コルモン: フィリップ・モリエ=ジュヌー
老役者: ロジェ・プランション
ヴァン・ゴッホ: カレル・ヴァンジェールオエー
ヴィオー: バンジャマン・ラトー

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