長編劇映画<ふるさとシネマ>誕生

1999年/カラー/スタンダード/80分

解説

待望の長編劇映画<ふるさとシネマ>『こむぎいろの天使 すがれ追い』は巨匠・山本薩夫監督に師事し『あゝ野麦峠』などの助監督を務め、78年の『こむぎいろの天使−雀と少年』で監督デビューした後藤俊夫監督が、故郷の伊那市に居をかまえ、『こむぎいろの天使−雀と少年』のパート2として製作中の映画で、監督が3年間じっくり温めてきた企画です。
人と自然と生き物と、生き生きとした子ども世界人は誕生以来、生活・文化の創造と営みを自然と共生することによって培かってきました。映画は、長野の特産品すがれ(クロスズメバチ)追いを縦糸に、自然の中を駆け回り、自分の頭で考え行動して友情と知恵と勇気を育てていく子どもたちの姿を通して、自然との共生の大切さを示唆しています。殺伐とした子ども世界が語られているいま、暖かく優しい心は良い環境で育つということを、教育や家庭問題をかかえている大人たちに大きな問題を提起します。
後藤監督の熱意に、地元伊那市、駒ヶ根市をはじめ四町四村の行政・民間団体・企業・住民の人たちが『「こむぎいろの天使」を成功させる一念発起100人会』を結成、共に創る〈ふるさとシネマ〉として映画づくりに乗り出しました。地域の連携による手づくり文化の創造を通して、伊那谷の自然と暮らしの素晴らしさを再発見し、広く全国発信するために運動をすすめています。製作資金や上映・配給に至るまで、多くの困難を抱えている現在、映画人と地域・市民が共同協力して地城文化を発信することは、映画製作の一つのあり方として大きな意味をもっています。

ストーリー

「オレ、夏休み申に絶対ずがれの巣をとってみせるからな」と、クラス一の元気青サブ。伊那谷の山ふところにある八坂小学校五年二組の夏休みが始まった。すがれ追い名人・熊太郎と、孫娘のカレンが、すがれを追っている。すがれには、熊太郎が結びつけた目印の白い真綿が見える。巣に帰るすがれを見逃すまいと必死で走る熊太郎。そんな様子をサブと健一が草むらからそっと見ていた。カレンはブラジル生まれのハーフ。健一はぜんそくの転地療養のため東京からやってきた。ふたりとも、五年二組の同級生だ。
熊太郎が見失ったすがれの巣をまんまと見つけたサブは、仲間のマサルを呼び、すがれの巣捕獲作戦開始。発煙筒を巣の中に入れ、蜂たちが気を失っている間に士を掘ると、土の中からまだら模様の美しいすがれの巣が現れた。蜂の子をおいしそうに食べるサブとマサル。はじめて目にする蜂の子を健一はどうしても食べることができない。
そんなある日、捨てられた老犬に出会う。一度は見捨てようとしたものの、健一の必死な思いに動かされ面倒を見ることに。自分の夕食を減らしたり、卵の調達など知恵をしぼって、老犬カメオの世話をするサブと健一。そして、すっかり元気になったカメオは、サブたちのすがれ追いの先導役もこなせるようになった。健一もカメオに負けまいとすがれを追って走る、走る。
二学期。学校の庭にサブたちが捕ってきたずがれの飼育箱が置かれている。すがれを追うだけでなく、飼って巣を大きく育てるのは、サブのカレンとの約束。やはりすがれの話題から秋も始まった。カメオの大活躍でサブたちが優勝するという大波乱のマツタケ狩り大会。マツタケ犬として大々的に紹介されるカメオ。カメオ誘拐事件、そして再開。秋もにぎやかに過ぎた。やがて、健一が東京へ帰る日がやってくる。サブたちと遊び回ったおかげで、健一は予想以上に早く健康を取り戻し、予定より早く帰京することになったのだ。健一への士産に、すがれ追いをプレゼントずるサブ。実はそのすがれの巣は、サブが熊太郎に頼んで教えてもらった秘密の場所だった。
紅葉の大自然から飛び立つ女王蜂。それを追うオス蜂たちの大群。サブと健一にも、新しい旅立ちの季節がやってきた。

スタッフ

製作: 岡村光雄、後藤俊夫、小室暗充
原作: 後藤俊夫〔汐文社刊〕
脚本: 後藤俊夫、加藤盟
脚本協力: 橘祐典、吉田憲二
監督: 後藤俊夫
撮影: 山崎尭也
音楽: 大島ミチル
照明: 岩崎定雄
美術: 遠藤光男
録音: 本田孜、矢野勝久
編集: 鍋島惇
助監督: 根本保夫
プロデューサー: 加藤賢治
宣伝プロデューサー: 木上清敏
アソシエイトプロデューサー: 桑山和之
製作経理: 田中百合子
製作デスク: 畑美樹、田村ノリ
地蜂協カ: 富永朝和
音楽プロデューサー: 本地大輔
音楽制作: 日本コロンビア株式会社
協力: 伊那市地蜂愛好会、天然記念物北海道犬猟熊会
制作: (株)プロデュースセンター

キャスト

熊太郎: 田村高廣
辰次郎: 常田富士男
とよ: 斉藤とも子
勝治: 中本賢
春子: 浜名実貴
鈴木: 稲川淳二
テツ: 鈴木光枝
土屋先生: 浜田光夫

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