ふたりの夏休みがやって来る_ 北野武が初めて挑む笑いと感動のロードムービー

☆大阪シネマドリームいずみさの映画祭'99出品作品::http://forum.nifty.com/fanta/izumisano/

1999年作品/カラー/ヴィスタサイズ/ドルビーSR/121分 製作:バンダイビジュアル、TOKYO・FM、日本ヘラルド映画、オフィス北野 配給:日本ヘラルド映画・オフィス北野

2007年10月26日よりDVDリリース 1999年12月18日よりビデオレンタル開始 2000年1月25日よりビデオ付きDVD発売 1999年6月5日より、丸の内ピカデリー2他、全国松竹洋画系にてロードショー!

公開初日 1999/06/05

配給会社名 0058/0020

解説

明日から楽しい夏休み。でも正男(関口雄介)には宿題を見てくれたり、どこかに遊びに連れていってくれる人もいない。たったひとりの家族であるおばあちゃんは仕事で忙しい。そこで正男は写真でしか見たことのないお母さんに会いに行くことを決心、お小遣いを握り締めて家を飛び出す。心配した近所のおぱさんは旦那(ビートたけし)に、正男を母親の元まで送り届けるように命令する。そんなこんなで始まったふたりの珍道中! どんなことになるのやら…。
一作ごとに新たな境地を切り開き『HANA-BI』でベネチア映画祭グランプリに輝いた監督北野武が贈る夏休み。誰にでもある思い出の絵目記を、浅草、浜松、天竜川といった日本の美しい風景とともに、久石譲の透明な音の調べに乗せて笑いと涙だっぷりに描きます。主演はもちろんビートたけし。暇をもてあますあまり正男の相棒となって仕方なく旅をともにするはめになる、浅草のしがない中年をユーモアと優しさをこめて演じています。そして母に会いたい一心で家を飛び出す少年正男役は、現在9歳の元気な小学生関口雄介。旅の中で、少しづつ現実の厳しさと人々の優しさに触れたくましく成長していく様子をのびのびと好演しています。世界の北野武という緊張感漂うイメージからは少し離れたところにある、この温かな眼差しと緩やかな時間の中で、観るものを懐かしく、優しい気持ちにさせてくれます。
主人公・菊次郎のネーミングは、北野監督の実父・菊次郎さんからとったもの。しかし、監督から見た菊次郎さんの存在というのは、小さい頃は「おやじがいると一気に家庭が締まる」存在でしたが、「最近になって、孤独だったんだって思うようになった…。自分の思っていることを素直に出せないだけ。」だからこそ家族で夏休みを楽しく過ごすことはしないし、できない、そんな不器用で照れ屋な男性の代表として名付けたのだそうです。
映画の中では、正男の旅のお供だったはずだった菊次郎が、自分の夏休みを楽しんでしまうわけですが、その楽しみ方の半分は、父親と過ごした遠い夏の日の想い出で、残りの半分は望みながら果たせなかった夢の現実として描かれています。

ストーリー

楽しい夏休みが始まった。でも、小学校3年生の正男(関口雄介)の心は少しも弾まない。通いなれた通学路もなんだか他人の町に見えたりする。遊び友達はみんな一家で海へ行ったり、両親の田舎に里帰りしてしまった。サッカー教室もお休みになって、絵日記帳には天気を書き入れたらおしまい。書くことがないのだ。お父さんは正男が生まれてすぐ交通事故で亡くなり、お母さん(大家由祐子)はどこか遠くで働いている。いつものようにおばあちゃん(吉行和子)がバートに出ていった後、正男は冒険旅行の決心をした。目的地は愛知県豊橘市。そこには写真でしか見たことのないお母さんがいるはずだ。絵日記帳と宿題をリュックに入れ、お小遣いを握りしめて、正男は家を飛び出した。菊次郎(ビートたけし)は根っからの自由人、といえば聞こえはいいが、若い頃から遊び人暮らしが身に付いていて真面目な暮らしが性にあわない。人生なんて思うようにいくわけない、風の向きが変わりさえすれば世間があっと驚くような暮らしをして見せる。そのための元手がままならなくて、今の所はかみさん(岸本加世子)に食わせてもらっているが、いつかはきっとと想い続けて今日まで来た。そんな菊次郎が正男の母親探しの旅に付き合うことになる。
「どうせ家でゴロゴロしているだけなんだから、あんた一緒に行ってやんな。」いつだって俺の都合なんてお構いなしだ。「そんなに心配なら自分が行ってやりゃいい。」と言いたいのをぐっとこらえたのは、5万円の旅費。たちまち菊次郎の頭の中で、計画が広がった。正男にすれば小学生の一人旅は心細いし、菊次郎の他に頼る人もいない。顔つきはおっかないし言葉は悪いけど、おじさん、案外人は良さそうだ。ところが出発するなり競輪場に寄り道。一度は正男のヤマカンで大穴を当て、ドンチャン騒ぎしたものの、気がつけば正男のお小遣いまで使い果たしてすっからかん。頭に来た菊次郎がヤケ酒を飲んでいるうちに、正男は危ないオヤジにいたずらされそうになった。泣き顔の正男にさいずの菊次郎も正気になって、オヤジから財布を奪い、真面目に旅をする気に。しかし、どこをどういっていいのやら、夜も遅いのでまずはヒッチハイク。ようやく、スタートしたものの、菊次郎ときたら車を拾う為に、長距離トラックの運転手とケンカしたり、来るはずも無いバスを待ってみたり。てんやわんやで始まったふたりの「少年たち」の母親探しの旅だが、なんとか目的地まで辿り着いたのは奇蹟に近い。

しかしその住所にあったのは名字が異なる表札。遠くから不安そうに眺める正男の前に、幸せそうな幼い少女が両親とともに家から現れる。呆然と眺める正男に菊次郎が言えたのは、「人違いみたいだ」という言葉だけ。落ち込む正男を慰めようとする菊次郎の脳裏にひらめいたのは、ハーレー野郎二人組が持っていた“天使の鈴”。彼らのバイクから鈴を奪って正男に渡す。「お母さんは引っ越してしまっていて、正男が来たらこれを渡してくれって。困った時に鳴らすと、天使が降りてきて助けてくれるって…。」鈴を鳴らしても天使は見えない。こうなったら徹底的に遊んじゃおう。帰る道中、まずは夏祭で屋台の醍醐味を。とうもろこし畑では盗み食いを。またまた出会ったハーレー野郎たちと作家志望のあんちゃんとはキャンプだ。青く萌える夏の緑の中での“だるまさんが転んだ”や“スイカ割”。ここでは大人も子供も関係無く楽しい時が過ぎて行く。
菊次郎は、旅の始めから心のどこかに潜んでいたある場所に遂に立ち寄ることを決心する。そこは老人ホーム。一人の老女が仲聞の老人たちから離れて座っていた。彼女の顔に宿る影は、正男の母親の顔にあったのと同じ子供を捨てた女の孤独な影。声をかけられずに戻る菊次郎…。
それぞれの夏も終わりが近づき、出会った人々との別れの時がやってきた。車は走り、いつもの浅草の風景が戻ってくる。そういえば…「おじちゃん、おじちゃんの名前なんていうの?」「菊次郎だよ、バカヤロウ」

スタッフ

監督・脚本・編集: 北野武
音響監督: 久石譲(サウンドトラック:ポリドール)
プロデューサー: 森昌行、吉田多喜男
ラインプロデューサー: 小宮慎二
協力プロデューサー: 坂上直行、古川一博、川城和実
撮影: 柳島克己
照明: 高屋齋
美術: 磯田典宏
録音: 堀内戦治
編集: 太田義則
記録: 中田秀子
助監督: 清水浩
キャスティング: 古川威史
製作担当: 山本章

キャスト

菊次郎: ビートたけし
正男: 関口雄介
菊次郎の妻: 岸本加世子
正男くんのおばさん: 吉行和子
優しいお姉さん: 細川ふみえ
こわいおじさん: 麿赤臼
エンターテイメント・グループ: ザ・コンボイ
デブのおじちゃん: グレート義太夫
ハゲのおじちゃん: 井出らっきょ

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