原題:the messenger:the story of joan of arc

リュック・ベッソンが 伝説の美少女戦士”ジャンヌ・ダルク”を描く

全米公開:1999年11月5日

1999年/コロンビア映画作品/ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント配給/ スコープサイズ/全10巻/4,324m/2時間37分/ドルビーSR/字幕翻訳:松浦美奈

2000年7月28日よりDVD発売 2000年7月28日よりビデオレンタル開始 1999年12月11日より丸の内ピカデリー1ほかにて公開

公開初日 1999/12/11

配給会社名 0042

解説

救世主、聖処女、魔女、殉教者、戦士、狂人……。ジャンヌ・ダルクをどう呼ぼうが、彼女が驚くほどドラマティックで実りある人生を送ったことは間違いない。
たとえ20歳の誕生日を迎えることができなかったとしても…。
 ジャンヌ・ダルクは17歳にしてフランスの王太子シャルルに神からのメッセージを伝えた。2ヶ月後には軍を率いてオルレアンでイギリス軍を撃退し、打ちひしがれていたフランス国民に希望の光を当てた。しかし、18歳のとき捕らえられ、敵の手に売り渡され、19歳で魔女として火刑に処される。
 20年後、フランスはイギリスとの百年戦争に勝利した。死後25年たってジャンヌは教会から無罪を宣され、1920年には聖者の列にも加えられた。しかし、ジャンヌが見た幻影が本当に神の声なのか、ノイローゼの所産なのか、彼女を巡る議論は今も続いている。
 おそらくフランスの歴史の中で最も有名な女性ジャンヌ・ダルクを、フランス映画界で最も人気のある監督リュック・ベッソンが映像化した。その刺激的なビジュアル・センスで世界の若い映画ファンを虜にし、見る者の想像力をかき立ててきたベッソンは、ジャンヌ・ダルクというたぐいまれな少女の物語を、彼ならではのアプローチで華麗な映像の中につづり、聖像の奥にある”真実の姿”を描き出す。
 ジャンヌ・ダルクは実にドラマティックで魅力的で謎めいたキャラクターだ。とてつもないエネルギーや情熱の一方にある、汚れのない純粋さ。その複雑さゆえに彼女は5世紀もの長い間、歴史家から同世代の若者まですべての人を魅了してきた。舞台や映画化の数も枚挙に暇がない。映画は1900年のジョルジュ・メリエス作品に始まって、セシル・B・デミル監督版(1916)、カール・テホ・ドライヤーの「裁かるるジャンヌ」(28)、イングリッド・バーグマンが主演したヴィクター・フレミング監督作(48)、ロベール・ブレッソン監督の傑作「ジャンヌ・ダルク裁判」(62)、2部構成で作られたジャック・リヴェット監督作(94)……。
 けれど、従来の作品にこれほどヴィヴィッドな女性ジャンヌが登場したことがあっただろうか。ベッソンが創り上げたジャンヌは一人の生身の人間として悩み、自分自身を見つめ、行動する。姉の死を深く悲しみ、敵の矢に倒れる兵士たちを見て動揺する。そこでは情熱にかられた一途な思いと、裏切りに傷つく切なさが交錯し、現代にも通ずる普遍的な女性像が浮かび上がってくる。「ニキータ」のヒロイン、ニキータ、「レオン」の少女マチルダ、「フィフス・エレメント」の異星人リールーを思い出すまでもなく、ここにはベッソン映画お得意の、けなげでりりしい魅力的なヒロインの系譜が脈々と流れている。
 ベッソンの愛する”新しいジャンヌ”を体現するのは、「フィフス・エレメント」以来のミューズ、ミラ・ジョヴォヴィッチ。彼女曰くそもそもこの映画の企画がスタートしたのは、ボサボサ髪のミラの写真をベッソンと二人で見ていたとき、ミラが「これこそジャンヌ!」と叫んだのが始まりとか。男装もショート・ヘアーも彼女にかかるとファッショナブル。スリムでしなやかな肢体は中性的なイメージを醸し出し、ときに怒り、泣きもする生き生きとしたキャラクターを作り出している。
 ジョヴォヴィッチを取り巻くキャストの豪華さは驚くばかり。ジャンヌの”良心 “の象徴として黒い頭巾をかぶって印象的に登場するのは、「クレイマー、クレイマー」と「レインマン」で2度のオスカーに輝くダスティン・ホフマン。無気力で姑息な王シャルル7世には、「仮面の男」「ラウンダーズ」「コン・エアー」など個性派俳優として引っ張りだこのジョン・マルコヴィッチ。シャルルの妃の母ヨランド・ダラゴンには、「俺たちに明日はない」「ネットワーク」(アカデミー主演女優賞受賞)のほか、最近では自らの主演作「華麗なる賭け」をリメイクした「トーマス・クラウン・アフェアー」に出演しているフェイ・ダナウェイ。少ない出番でも強烈な存在感で画面を圧倒するのはさすがだ。
 こうしたハリウッドのスターに加え、フランスからは「王妃マルゴ」「愛する者よ、列車に乗れ」のパスカル・グレゴリー、「ドーベルマン」「エリザベス」で人気の若手スター、ヴァンサン・カッセル、「ニキータ」でベッソンと組み、「バッドボーイズ」「恋におぼれて」などアメリカ映画でも強いインパクトを残す名優チェッキー・カリョ、「憎しみ」「アサシンズ」の監督としても知られるマチュー・カソヴィッツらが出演。いつもジャンヌのそばで彼女を支えるジャン・ドーロン役に抜擢された注目の新人デズモンド・ハリントンをふくめ、まさに綺羅星のごとく華やかな顔ぶれだ。このような最高のキャスティングが決まった後、ベッソンは俳優たちとともに小さな城に閉じこもり、1週間にわたってリハーサルを繰り返したという。
 脚本はベッソン自身と、「薔薇の名前」「キング・ダビデ」の脚本のほか「ルナティック・ラブ〜禁断の姉弟〜」などの監督作もあるアンドリュー・バーキンが共同で執筆。プロデューサーのパトリス・ルドゥーは85年にフランスの最大手映画会社ゴーモンの社長に就任し、「グレート・ブルー」以降全作を手がけるベッソンのベスト・パートナーともいうべき人物。もちろん、音楽のエリック・セラは長編デビュー作「最後の戦い」以前の短編以来ずっとベッソンを支えてきたなくてはならないスタッフだ。また、撮影監督は「ニキータ」「レオン」「フィフス・エレメント」で組んでいるティエリー・アルボガスト。「おかしなおかしな訪問者」で知られるプロダクション・デザイナーのユーグ・ティサンディエ、衣裳のカトリーヌ・レトリエが、小道具、装飾からセットにいたるまで15世紀初めのフランスを忠実に再現している。

ストーリー

 1412年ころのフランス。ジャンヌ・ダルクはドンレミ村で小作農の末娘として生まれた。当時のフランスはヘンリー5世を戴くイギリスと”英仏百年戦争”のまっただ中にあった。しかも、ブルゴーニュ派がイギリスと組んで内戦状態にあり、まさに滅亡寸前。もはや、この状況を救えるのは奇跡だけだった。
 13歳の少女ジャンヌは暇さえあれば教会の告解室に入り浸っていた。彼女はここにいると心が落ち着いた。ここに来れば”彼”と話せるような気がした。
 ジャンヌはのどかな村で花畑を駆けめぐり、羊の群と戯れて遊んだ。そして、度々天上の声を聞き、不思議な幻影を見た。ある日、草原に寝転がって幻想の世界にいたジャンヌがふとわれに返ると、村がイギリス軍に襲われて火の海になっている。あわてて家に帰り着いたジャンヌを、姉カトリーヌは戸棚にかくまった。しかし、カトリーヌは兵士たちに見つかって殺された後、犯される。ジャンヌは怯えながら、その一部始終を板の裂け目から見ていた。
 ジャンヌは親戚に引き取られて隣村に行くことになった。彼女はここでも真っ先に教会に行って懺悔する。姉は自分を救うために殺された。自分を責めるジャンヌに神父は復讐の無益を説く。ジャンヌはこの時、神への帰依を誓うのだった。
 時は流れ、17歳になったジャンヌ(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は神の声を受けてシノンの城にいる王太子シャルル(ジョン・マルコヴィッチ)のもとへと向かった。彼女はもはや自分が神の使者であることを信じて疑わなかった。城には若い男爵ジル・ド・レ(ヴァンサン・カッセル)やジャン・ドーロン(デズモンド・ハリントン)、アランソン公(パスカル・グレゴリー)ら、主だった臣下が集められた。
 シャルルはジャンヌを警戒してドーロンに王を装わせるが、彼女はこれを見破り、太子をみつけて彼こそフランスの正統な君主であるとの神の意志を伝える。そして、オルレアンの敵の包囲を解くために自分に軍勢を与えるように言う。シャルルの義母ヨランド・ダラゴン(フェイ・ダナウェイ)や重臣たちは、怪しみながらもジャンヌの中に不思議な資質と抗うことのできない説得力があるのを認めざるを得なかった。彼らはジャンヌが処女であることを確認した上で、彼女が神の使者だと認め、軍を率いることを許す。
 前線では、”オルレアンの私生児”ことデュノワ伯ジャン(チェッキー・カリョ)や、”怒り”を意味する”ラ・イール”と通称されるエティエンヌ・ド・ヴィニョール(リチャード・ライディングス)らがジャンヌを待ち受けていた。ジル・ド・レ−やジャン・ドーロン、アランソン公らも隊に加わった。白い甲冑に身を固めたジャンヌは、少女の姿を笑う男たちに憤って髪を切り、沈滞ムードに浸っていた兵士たちを鼓舞する。そして、旗を携えて馬にまたがり先頭に立って敵陣に向かう。その勢いに押されて後退を始めるイギリス軍。砦の中に攻め込むフランス軍。それは劇的な勝利だった。

 ジャンヌは進軍を続けた。疲弊した兵士たちも彼女の霊感に勇気づけられ、活力を取り戻した。しかし、敵の逆襲は凄まじかった。城塞から放たれる石の砲弾。傷つき、倒れる味方の兵士。空を舞う血まみれの首……。戦況を開こうとして、城壁にかけたはしごを登り始めたジャンヌの胸を矢が貫く。遠のく意識の中で、ジャンヌはいつものように幻想を見、姉の死を思い出していた。
 翌朝、奇跡的に命をとりとめたジャンヌは、兵士たちを叩き起こして戦闘の再開を命ずる。敵は”甦った”ジャンヌに恐れおののいた。再び激しい戦いが始まった。ジャンヌは地獄のような光景を見ながら、神と対話していた。戦いはフランス軍の勝利に終わった。しかし、彼女の目の前にあるのは死体の山。これが”勝利”なのか? 彼女は懊悩する。そして、ヘンリー王に撤退を促す書簡を送ると、やがてイギリス軍は退却を始めた。
 町を解放したジャンヌを民衆は歓呼で迎えた。ランスでは荘厳な戴冠式が執り行われ、フランスの君主シャルル7世が誕生した。
 ジャンヌはさらにパリへと進撃を開始する。しかし、シャルルは十分な兵も兵糧も与えようとはしなかった。兵たちは疲弊していた。戦況は芳しくなく、一方、王の周りでは新たな思惑が進行していた。ジャンヌの人気が王の権威を傷つけることを恐れたヨランド・ダラゴンや重臣たちは、彼女を敵に売ろうとしていたのだ。
 コンピエーニュで孤独な戦いを続けていたジャンヌは、泥の中に倒れ込んだ。彼女は幻想の中にいた。”彼”や少女のころの自分、空を流れる星、壁を覆って広がる蔦……。やがてそこに、黒い頭巾をかぶった謎めいた男(ダスティン・ホフマン)が現れる。気がつくと、ジャンヌはブルゴーニュ派の囚われ人になっていた。
 ブルゴーニュ派からイギリス軍に売り渡されて牢獄に繋がれたジャンヌは、黒頭巾の男と対話していた。男は問いかける。本当に神が使者になるように言ったのか? 戦うよう命じたのか? 自分のエゴを満足させるため、姉の復讐をするための流血だったのではないか? それはジャンヌが自らに問いかける疑問だった。男はジャンヌの”良心”の象徴でもあった。
 ジャンヌは異端審問にかけられることになった。彼女は男装を解かれ、牢獄で獄吏たちから暴行の脅威にさらされ、法廷では脅迫や誘導尋問が続いた。そして、最後には命と引き換えに異端放棄宣誓書を書かされる。その間にも”良心”は度々ジャンヌの前に現れて、彼女の心の真実を突いた。ジャンヌは神と向き合い、自分と向き合い、そして、宣誓書を破り捨てた。それが、彼女が選び取った自分の運命だった。やがて、火刑台に上ったジャンヌの体を赤い炎が包み込んだ。1431年、ルーアン——。

スタッフ

監督:リュック・ベッソン
製作:パトリス・ルドゥー
脚本:アンドリュー・パーキン
撮影監督:ティエリー・アルボガスト
プロダクション・デザイナー:ユーグ・ティサンディエ
編集:シルビー・ランドラ
衣装:カトリーヌ・レトリエ
作曲:エリック・セラ

キャスト

ジャンヌ・ダルク:ミラ・ジョヴォヴィッチ
ジャンヌの良心:ダスティン・ホフマン
シャルル7世:ジョン・マルコヴィッチ
ヨランド・ダラゴン:フェイ・ダナウェイ
アランソン公:パスカル・グレゴリー
ジル・ド・レ:ヴァンサン:カッセル

LINK

□IMDb
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す