原題:卡拉是篠狗

2003年ベルリン国際映画祭正式出品 2003年香港国際映画祭クロージング作品

中国映画/2002年/本編尺100分/カラー/1.85ビスタ/ドルビーSR/日本語字幕:水野衛子 後援:中華人民共和国大使館 文化部 配給:ザジフィルムズ

中国映画の全貌 2007にて上映::http://www.ks-cinema.com/schedule.html 2005年12月07日よりDVDリリース 2005年4月30日、新宿武蔵野館にて公開決定!

公開初日 2005/04/30

配給会社名 0089

解説



中国第六世代の代表監督、中国随一のヒットメーカー、庶民派名優が組んだ
犬をめぐるヒューマン・ドラマ

第六世代の代表監督ルー・シュエチャン(路學長)が切り取った
現代中国の家族像

 中国映画の監督は、便宜上第一世代、第二世代…と年代に分けて区分呼称されている。その中で中国映画の存在を世界的に知らしめたのが、チャン・イーモウ(張芸謀)、チェン・カイコー(陳凱歌)をはじめとする50年代生まれの第五世代である。思春期に文化大革命を経験した彼らは、初期作品でその経験と中華民族の意識を重ね合わせた文芸作を輩出し、海外の権威ある国際映画祭で高評価を得、近年は世界規模で語られる存在となった。
 彼らに続く第六世代は、60年代から70年代生まれの監督を指す。日本でも『ふたりの人魚』のロー・イエ(婁?[火華])、『プラットホーム』のジャ・ジャンクー(賈[木章]柯)監督などの多くの作品が紹介されているが、自らの生活を投影した作風のためか、ダイナミックな作品群の多い第五世代と比べてこぶりという印象を受ける人も多い。だが、チャン・イーモウ、チェン・カイコーと同世代のティエン・チュアンチュアン(田壮壮/『春の惑い』)監督の強力なサポートもあり、80年代から現在までの中国の様相を映す作家性という点で、年々海外評価が高まっている。
 ルー・シュエチャン(路學長)監督もその第六世代を代表する監督の一人で、学生時代をおくった80年代の若者の生態を描いた前2作品で、評価を得ている。3作目にあたる『わが家の犬は世界一』も自分の日常から生まれた作品だが、主人公は生き急ぐ若者でもなければ、悩む虚無的な若者でもない。妻にも息子にもそっぽを向かれ、愛犬を唯一のいきがいにしている、日本にもよくいるお父さんなのである。若者世代といわれたルー監督も40代。世間を広く見る余裕がでてきたということだろうか。犬をモチーフに、中年男性の人生泣き笑いを凝縮した本作で、ヒューマン・ドラマへの一歩を踏み出した。

中国随一のヒット・メーカー、フォン・シャオガン(馮小剛)が、全面協力

ルー・シュエチャン監督を製作者として支えているのが、中国随一のヒットメーカー、フォン・シャオガン。日本では劇場公開された監督作が中国大陸では最も人気のある監督である。世相を反映させた泣いて笑える娯楽に撤した彼のヒューマン・ドラマは、正月映画の定番で、今年の『天下無賊』には、香港のスター、アンディ・ラウ(劉徳華)を主演に、製作に台湾のチェン・コクフー(陳國富/『ダブル・ビジョン』)を迎え、中国語圏一円を席巻する勢いである。テレビドラマで培った観客の感情のツボを押さえる手腕は、映画でも十分に発揮されており、知識階層や映画人はともかく、なんとなく敷居の高い第五世代監督の作品よりも彼の作品のほうが地元の一般人には好まれている。

中国の国民的スター、グォ・ヨウ(葛優)の魅力満載
演技派女優ディン・ジャーリー(丁嘉莉)、若手ナンバー1 シア・ユイ(夏雨)の
見事な助演にも注目

主演のグォ・ヨウは、日本を含め海外では『活きる』の素晴らしい演技で知られているが、先のフォン監督とはTVドラマ時代からのいわば盟友で、地元では誰もが知る庶民派の俳優(彼が名門の中央戯劇学院や北京電影学院の出身ではないあたりも親しみやすさを倍増しているようだ)。本作のラオ(老ニ。「老」は年長者につける呼び名で、この名前は本名というより平均的なおじさんを指すあだ名としてみたほうがいい)役はそんな彼にはもってこいの適役といえる。一方、職を失ったことや頼りない夫・ラオにいらだちながらも、カーラを取り上げられたことに責任を感じている妻役のディン・ジャーリーは、演技派として名高い女優。無愛想だが心根は温かい中年女性の役を得意としており、本作でのユイラン(玉蘭)も彼女にピタリとはまっている。
 そして、カーラを取り上げる若い公安・シャオチャン(小張/「小」は年少者につけるあだ名なので、名字は張/チャン)役のシア・ユイは、国民俳優のチアン・ウェン(姜文)の自伝的初監督作『太陽の少年』で鮮烈デビューした逸材。赤の他人とは思えないほどチアン・ウェンにそっくりの容貌でも知られている。演技に磨きをかけた彼は、中国版『ニュー・シネマ・パラダイス』ともいえる『西洋鏡 映画の夜明け』で、中国人で初めて映画興行を行なう好奇心旺盛なリウ青年を好演。2004年の東京国際映画祭アジアの風部門で上映された『独り、待っている』でも、前向きな現在の若者の心象を見事に体現し、実力派がひしめく中国の若手男優のなかでもピカ一の演技力の持ち主であることを証明している。

中国のごく普通の日常生活が見えてくる

とかく海外ニュースとして入ってくる中国の情報は、高度成長に伴う高学歴化や発展する企業と都会の豊かな生活ぶり、はたまた広い中国を象徴するかのような都会との格差がみえる『あの子をさがして』のような農村の生活だが、ごくごく一般的といえば、老二のように賃貸アパートに住み、学歴もそこそこで工場勤め。貧乏ではないけれど妻と共稼ぎで息子一人をなんとか育てているような核家族である。貯金も少々あるし、麻雀をする余裕もペットも買う余裕も少々ある。だが苦労しらずの息子は自分のことだけ、妻との関係も共同生活者のようになってかつての愛情も薄れてきている。そんな日常の中で彼に唯一純粋に寄り添ってくれるのが、愛犬のカーラなので、老二は彼女を溺愛している。だからこそ老二は、登録のトラブルで警察に取り上げられてしまったカーラを取り返そうと登録料の工面とカーラ探しに駈けずり回る。彼には、「犬はえさをくれる人には誰でもなつく」という知人のクールな意見も耳に入らず、カーラよりも格の高い血統書つきの犬も目に入らない。町じゅうを「カーラ、カーラ」と叫びながら走り回るグォ・ヨウのペーソス溢れる演技に共感し、思わず涙する人も多いだろう。

中国におけるペット犬事情

中国におけるペット犬事情だが、以前は北京のような都会では衛生上の理由で飼うのを厳禁されていた。だが開放政策に伴い、人々の生活が豊かになった90年代に入って、高所得者層を中心に犬をペットとして飼うようになった。血統書つきの高額犬が徐々に富裕層のステイタスシンボルのひとつになっていったのはいうまでもない。そして戌年の94年には、縁起を担ぐ人も加わって北京だけでも20万匹が飼われていたという。だが同時に衛生上の問題が再噴出し、95年からは都市部での大型犬の飼育が厳禁となった。
 登録に関しては、中国では公安(日本の警察にあたる)への登録が義務づけられている。劇中にもある通り、登録を済ませた飼い主には、写真、名前、犬種、飼い主を印した「犬証」が発行され、愛犬との散歩の時には、公安のチェックに備え携帯して出掛ける。だがこの登録料が、5000元(約65000円)と非常に高額だった。老二のような家庭では到底払えない金額で、カーラも未登録のまま飼われていたわけである。だが、カーラのような事件が多かったのか、2003年秋には登録料が5分の1の1000元まで引き下げられ、結果北京には現在42万匹ほどのペット犬が登録されている。

ストーリー



1994年北京市は犬の飼育の厳重制限を決定
翌95年5月1日より一斉取締りが始まった・・・

北京に暮らす中年労働者ラオ(老ニ)の家族はシンプルだ。リストラされた妻ユイラン(玉欄)。息子のリアン(亮亮)は高校生。そして愛犬カーラ。あの夜、何も起こらなければ、ずっとそのままだったろう。

あの夜、妻のユイランはいつものように暗くなってからカーラの散歩に出た。だが、「犬証」を持っていなかったため、愛犬のカーラは公安(警察)に捕まえられてしまった。ユイランはラオがあまりにもカーラをかわいがっているので、飼うのを承知しただけだった。カーラを取り戻すには、翌日の午後4時までに5,000元の登録料を払わなければならない。

息子のリアンはカーラがいなくなっても表面的には何の関心も示さなかった。いつも、父親がカーラばかりかわいがっていたからだ。それでも、リアンはカーラを好いていたので、友人に頼んで、警察署からカーラを救い出そうとした。友人の父親は地元の警察官だが、これをはねつけた。5,000元払うか、不法な手段を使うかしなければカーラを取り戻すことが出来ないとラオはわかっている。5,000元など、とても払う余裕はない。

ラオの友人のヤン(楊麗)は、30代で離婚していた。ラオは結婚生活に失望した彼女を慰めたものだった。カーラの母親は、ヤンの犬で、カーラととても似ていたので、ラオはヤンから「犬証」を借りて、警察に提出したが、嘘だと見破られてしまう。それでもラオはカーラを諦めきれない。ヤンにはカーラのような犬にラオにこれほど頑張る訳がわからない。ラオはカーラと一緒にいるときだけ、人間だと感じるのだと話した。仕事で疲れて帰ってきた彼をカーラだけは喜ばせようとする。

ヤンのコネクションを使ってもみた。だが、あらゆるコネを駆使したがうまくいかない。ついに、登録料を払うしかなくなった。ラオは妻にカーラのために倹約して作った1,500元を見せたが、喧嘩になってしまった。妻はラオがヤンと浮気していると疑っていた。ラオは5,000元が一家にとって大金で、犬のために使うことは出来ないとわかっていた。

一方、息子のリアンは喧嘩に巻き込まれ、ほかの子の腕を折ってしまう。被害者の両親は、リアンを傷害罪で告発し、警察に出頭を命じられる。

4時になった。警察署の前に家族がそろう。妻はカーラのために倹約した金を全部持ってきた。リアンは父親に反抗して、父親への尊敬を失った、という。カーラのクンクンと鳴く声がして、トラックに積み込まれる・・・。カーラを乗せたトラックは警察署を出て行った。だが、ラオはまだ、誰か今夜カーラを連れ帰ってくれないかと、思っている・・・。

スタッフ

監  督:ルー・シュエチャン
脚  本:ルー・シュエチャン
製  作:ワン・チョンジュン
製作総指揮:フォン・シャオガン
      ワン・チョンレイ
共同製作:ワン・イー
     ドゥ・ヤン
文學策劃:ウー・グランピン
撮  影:チャン・シーグイ
美 術:リュイ・ドン
音楽:ワン・シュエイー
作 曲:シャン・ミン
編  集:コン・ジンレイ
コーディネイター:ツァオ・ウェイ

キャスト

グォ・ヨウ(葛優)
ディン・ジャーリー(丁嘉莉)
シア・ユイ(夏雨)
リー・ビン(李濱)
リー・チンチン(李勤勤)

LINK

□公式サイト
□この作品のインタビューを見る
□この作品に関する情報をもっと探す