原題:Baron Prásil

SFの始祖ジュール・ヴェルヌを愛した<少年の心>を持つ カレル・ゼマン監督の伝説の作品

*1962年口力ルノ国際映画祭・大賞・銀の帆賞 *1962年モスクワ国際技術大会・第1位 *1962年労働者映画祭・演出家個入賞・音楽賞 *1962年コシツェチェコスロヴァキア映画祭・名誉賞 *1963年ボルジゲラ喜劇国際映画祭・金の椰子賞 *1963年ボストン映画祭・国際審査委員会賞 *1964年力ンヌ青年映画の集い・長編映画大賞

1961年/チェコスロヴァキア/83分/カラー 配給:日本スカイウェイ、ケーブルホーグ

2005年08月05日よりDVDリリース 2005年08月05日よりビデオリリース 2004年12月25日シアターイメージフォーラムにて、待望のクリスマスロードショー!!

公開初日 2004/12/25

配給会社名 0107/0029

解説

巨匠・名匠を生んだアニメ大国チェコにおいて、トルンカやティール[コヴァーと並び先駆的存在として世界的に愛され親しまれたカレル・ゼマン。愉快な風来坊、潜水艦飛行船、恐竜時代に魔法の世界と、ゼマンが生み出した数々の愛すべきキャラクター、心に留める美しいシーン、詩情とロマン溢れる、不思議で奇想天外な物語に誰もがワクワク!ドキドキ1トリックの元祖ジョルジュ・メリエスに魅せられ、SFの始祖ジュール・ヴェルヌを愛した〈少年の心〉を持つカレル・ゼマンの伝説の2作品『悪魔の発明』『ほら男爵の冒険』が、ついに公開!

今から100年前に書かれたジュール・ヴェルヌの小説を映画化した、ゼマン代表作『悪魔の発明』。まるで挿し絵のような銅版画の昧わい深いモノクロ映像。セットから小道具まで細部にわたるこだわりの数々。ここまで手の込んだ美術品のような映像は、公開当時はもちろん、コンピュータで何でも作れてしまう現在だからこそ、この独創性と手作業の素晴らしさに驚かされることだろう。19世紀末から20世紀初頭、科学と技術が新たな人間の夢を実現しようとしていく時代。人々はきっと夢と希望に満ち溢れていたのだろう。SL、自動車、飛行船、潜水艦、気球、大空と深い海を駆けめぐる冒険の数々。しかし、科学と技術の発展は豊かさだけではなく、危険性を孕んでいるのだ。ゼマンはそれを、ユーモアもまじえて警告する。

おしゃれで大らかなユーモア満載の冒険ファンタジー!空想の大好きなほら男爵が、想像=創造の世界を自由に遊ぶ『ほら男爵の冒険』。宇宙飛行士のトニークはようやく月面に降り立った。人類最初の月面着陸、のはずが、月面にめり込んだ古風なロケットを発見する。そこには【ジュール・ヴェルヌ、月世界探検1865】と記載されている。卜二一クは空想の力ですでに月に到着していたシラノ・ド・ベルジュラックとほら男爵ことミュンヒ八ウゼン男爵に出迎えられる。そして、トニークは男爵の案内でペガサスの引く帆船に乗り、地球へと旅立つ…。なんとも奇想天外なプロローグ。『ミュヒ八ウゼン男爵の眩惑』を監督したジョルジュ・メリエスヘのオマージュともいえる詩心と、イマジネーションに溢れた傑作!背景にギュスターヴ・ドレの挿絵が使われたり、エスプリのきいた剣豪詩人シラノ・ド・ベルジュラックの存在、囚われの美女ビアン力王女の美しさもお見逃し無きように。
2003年に開催の「カレル・ゼマンレトロスペクティヴ」に続く、この2作品の公開。是非、カレル・ゼマンの世界に酔いしれてほしい。

ストーリー

人類初の快挙!月面に足跡を残す宇宙飛行士のトニークは感動にふるえていた。ところが!卜二一クより先に足跡が残っている。
蓄音機から音楽が流れ、卜二一クは月面にめり込んだ古風なロケットを発見する。そこには【ジュール・ヴェルヌ、月世界探検
1865】と記されているのだった。シャンパンで乾杯をと先人たち、ジュール・ヴェルヌ、シラノ・ド・ベルジュラック、ほら男爵フォン・ミュンヒ八ウゼンが、にぎにぎしくトニークを歓迎してくれる。さあ、ほら男爵がエスコートしてくれるステキな夢のファンタジーの始まりだ。
男爵はトニークを誘い、愛らしいペガサスたちが引く帆船に乗って地球へと旅立つ。やがて、帆船は地球の夕日に染まったオレンジ色の空の中、トルコの宮殿に到着するが、そこには王が絶対的な権力で君臨していた。ある日、卜二一クは囚われの美女、ビアン力姫に助けを求められる。姫を救うため男爵とトニークは剣を持って兵士たちと戦う。必死の戦いに勝ったトニークは、勝利のメロディを奏でる。その音楽を聞きつけた姫が彼の元に駆け寄って来る。二人は恋に落ちていた。男爵も姫に花を渡し、三人はこの国からの脱出を始める。三人は馬に乗り必死に逃げるが、大勢の追っ手がついてくる。三日三晩逃げ続けるが、まだ数人の追っ手がついてきている。そしてついに、崖にかかる古い壊れかかった橋を三人が渡りきった後、橋が壊れ追っ手の一人が地の底に落ちる。追っ手たちはようやく諦めて去っていった。
岸壁にたどり着いた三人は一隻の船を見つける。大声で呼びかけるが警戒してか返事が来ない。男爵は馬ごと海に飛び込んで船に向かう。卜二一クも姫を抱きかかえ馬に乗ったまま海に飛び込んだ。三人は無事、船の乗組員たちに迎えられた。船上の紳士たちはタバコが大好きなようだ。しかし、たくさんの帆船に囲まれ攻撃され、海は戦場となる。タバコと大砲の煙の中、船は沈んでいく。
月明かりの中、男爵と姫、卜二一クは分かれて二隻の小さなボートに乗り、戦乱からの脱出に成功した。と思っていたら、男爵と姫のボートは大きな魚に飲み込まれてしまう。その魚の口の中には沈没したと思われた船が何隻も入っていた。しばらく続く漂流に不安を感じた姫を男爵は慰め、彼女のために美しい音楽を演奏させ、ダンスパーティを開く。そんな時、突然の嵐がやってきた。船は大揺れで立っていることも出来ない。とうとう、大きな魚は陸に打ち上げられてしまった。大きな魚の口から大勢の人々がパラソルを持って出てくる。外はすっかり晴れている。海岸には蒸気船が流れ着いていた。近付くとその船は爆発し部品が飛び散りバラバラになってしまう。その中からトニークの姿が現れた。姫はトニークに駆け寄り彼を抱きしめる。
三入が一緒になれたと思った矢先、大きな鷲が男爵を爪でつかみ飛び立ってしまう。逃れようともがいていると鷲の爪が離れ、男爵は海底に落ちてしまう。恐ろしい鮫から逃げて、男爵はタツノオトシゴのような馬にまたがり、太刀魚のような先の尖った角を持つ魚にジヤケットを運ばせている。ラブリーなマーメイドもいる。海の底も不思議な魅力に溢れている。男爵がようやく海上に顔を出したとき、姫とトニークは船上で夜空の星を見上げていた。ロマンチックな夜だ。船は崖にそびえ立つ城にたどり着き、三人は歓迎される。しかし、この船の人々も勲章が大好きで争いが絶えない人々だった。
ある時、敵が砲弾を撃ち込んできた。敵の様子を偵察しようと、男爵が砲弾に乗って空を飛んでいく。偵察を終えた男爵は敵の砲弾に乗り換えて城に戻るが、姫とトニークがいる部屋近くの壁にぶつかってしまう。でも、もちろん男爵は無事だ。見事に偵察を終えたお礼にと、城主はさっそく男爵に勲章を与えるのだった。
この世の大勢の美女の中でも、ビアン力姫は最も美しい姫である。姫を奪おうと敵が攻めてきた。機械仕掛けの大砲が動かないので、男爵は砲弾を足で蹴っ飛ぱすと、敵達は恐れおののき去っていった。一方、姫の心を虜にしているトニークも牢屋に閉じこめられてしまう。こっそりとトニークに会いに来る姫。二人の心は深く結ばれている。そこに監視の兵がやってきて、姫は素早く姿を消した。ただ、姫のドレスの一部が残されていた。卜二一クはその布をうまく使い、まるで牢屋の中に姫がいるように見せかける。すっかりだまされ牢屋に入って来た兵隊たちをうまくかわし、牢屋の外に逃げることに成功した。姫とトニークは手に手を取って、ここから逃げようとする。姿を隠すのにピッタリの鎧を見つけて身にまとい、じっと隠れていた。そこへ男爵が火のついたろうそくをポーンと外に放つと、城は大爆発を起こした!
鎧をまとった二人はどんどん空に飛んでいく。途中で鎧は宇宙服に替わり、どんどんどんどん、二人は月に向かっていく。男爵も椅子に座ったまま、ぐんぐん飛んで月に戻った。彼らを待っている先人たち。卜二一クは地球からずっと持ってきた花束をビアン力姫に渡す。二人の愛をみんなが祝福している。シラノ・ド・ベルジュラックの投げた帽子が空高く舞い上がる。

スタッフ

監督・脚本・美術・演出:カレル・ゼマン
原作:ゴットフリート・ビュルガー「ほら男爵の冒険」(小学館刊)
台詞:ヨゼフ・カイナル
撮影:イジー・タランチーク
セット:スデニェク・ロスコパル
トリック:アルノシュト・クプチーク、インドジッヒ・リシュカ、
     フランチシェク・クルチマージュ
特殊セット:ズデニェク・オストゥルチル、ヨゼフ・ゼマン
衣装:リーダ・ノヴォトナー、ミロスラヴァ・シュミードヴァー
音楽:スデニェク・リシュ力
編集:ヴェラ・クチロヴァ
助監督:ズデニェク・ロスコパル
製作:ゴットヴァルドフ映画スタジオ

キャスト

ミュンヒパウゼン男爵(ほら男爵):ミロシュ・コペツキー
ビアン力王女:ヤナ・ブレイホヴァー
宇宙飛行士卜二一ク:ルドルフ・イェリーネク
シラノ・ド・ベルジュラック:カレル・へ一グル
船長:ヤン・ヴエリッヒ
スルタン:ルドルフ・フルシーンスキー
要塞の司令官:エドゥアルト・コホウト
海賊の親玉:ボフシュ・ザーホルスキー
将校:カレル・エファ
ナレーション:イジー・ブルデチュカ

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