原題:The Edukators

彼らの今は、あなたが純粋だったあの頃

2004年/フランス/カラー/127分/ 配給:コムストック、キネティック

2005年10月28日よりDVDリリース 2005年4月29日、bunkamuraル・シネマほか全国ロードショー

公開初日 2005/04/29

配給会社名 0028/0026

解説



2004年、ドイツ映画として11年ぶりにカンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、斬新なドラマの面白さで世界中の観客を魅了した『ベルリン、僕らの革命』。現代ベルリンに生きる若者たちの愛と友情、そして社会への怒りを鮮烈に伝える青春映画として、ここ数年、世界的に成功したドイツ映画、『ラン・ローラ・ラン』や『グッバイ、レーニン!』に続き、本国ドイツを始めとするヨーロッパ各地で大ヒットを記録している。

内向的に見えるが、実は情熱的で人一倍正義感の強い主人公ヤン。彼の15年来の親友ピーター。そしてピーターの恋人、ユール。彼らは世界のどこの都市にもいるごく普通の若者だが、ヤンとピーターにはユールの思いもよらない秘密があった。
ここ最近、”エデュケーターズ”と名乗る者たちが、金持ちの留守宅に不法侵入する事件が相次ぎ世間を騒がせていたが、ヤンとピーターこそこの事件の首謀者だったのだ。彼らは厳重なセキュリティ・システムを突破して大邸宅に忍び込むが、一切盗みは働かず、家財道具を広間に積み上げたり、調度品をめちゃくちゃに配置換えして、帰宅した者たちを恐怖に陥れていた。「財産がありすぎる」「ぜいたくは終りだ」という犯行声明に託された彼らの行為は、金持ちばかりが優遇される現代社会への精一杯のレジスタンスだった。

一方、ユールは以前、ある会社重役のベンツと交通事故を起こし、多額な賠償金の支払いに苦しめられていた。ボーイフレンドのピーターの旅行中、ユールを元気づけるために自分たちの秘密を明かしたヤンは、その事実に驚き、興奮するユールに懇願され、ベンツの所有者だったハーデンベルクという男の邸宅に二人きりで忍び込む。ところが後日、無くした携帯電話を探しに再び邸宅に戻った彼らは、旅先から戻ったハーデンベルクに見つかってしまう。衝動的に彼を拉致し、ピーターを巻き込んだ誘拐事件へと発展する逃避行のなかで、彼らの愛と友情、そして社会に対する信念は微妙に揺らぎはじめる。
ヤンと二人でハーデンベルクの家に侵入するという冒険を犯し、ユールが束の間の解放感を味わった夜から、彼女の心は次第にヤンに傾きはじめる。二人の男の間で揺れ動く一人の女性という三角関係は、現代ドイツ版『突然炎のごとく』とも評されているが、ありきたりな破局に終わらせず、友情や信念を勝利させた演出が鑑賞後の爽やかな後味を生み出している。

知人の山小屋に身を隠したヤン、ピーター、ユールと、誘拐されたハーデンベルクの対話のなかで、彼が若いころは過激な左翼学生だったという皮肉な事実が明らかになっていく。現代の怒れる若者と、かつてそうでありながら現在は体制側の人間として搾取している世代。誘拐という状況下でユーモアを交えて語られる二世代間の対話の面白さが、この作品の後半の醍醐味でもある。
ナイーブで純粋なヤンを演じるのは『グッバイ、レーニン!』で世界的な人気を博したドイツ映画界の若手No.1実力派俳優、ダニエル・ブリュール。相棒のピーターには、ドイツの権威あるマックス・オフュルス賞で最優秀新人賞を受賞したクロアチア出身の俳優スタイプ・エルツェグ。ユールに扮するのは、ベルリン演劇界で輝かしいデビューを飾り、映画、舞台で活躍中の女優、ジュリア・ジェンチ。また、『グッバイ、レーニン!』で家族を捨てて西側に亡命する父親役を演じたベテラン俳優、ブルクハルト・クラウスナーが、若者たちの世代に共感を示し、ときには男女関係において彼らよりラディカルだった過去を語る人質、ハーデンベルクを好演。彼の存在が若者の行為に客観的視点をもたらすとともに、ただの青春映画ではない人生の深みを与えている。

ダニエル・ブリュールがドイツ最優秀男優賞に輝いた2002年作品「The White Sound」で監督デビューしたハンス・ワインガルトナーは、第2作目にあたる本作で現代ドイツの若者の感受性を鋭く切り取って見せた。
30歳で夭逝し、世界中に熱狂的なファンを持つジェフ・バックリィのデビュー・アルバム「グレース」の中のヒット・ナンバー「Hallelujah」の痛々しいまでに切なく、癒されるような優しさが、映画の後半、彼ら三人の友情を繋ぎ止め、世代間の対立を緩やかな和解へと運ぶと思いきや、エンディングにはなんとも痛快などんでん返しが待っている。

ストーリー




理想家肌で正義感の強いヤン、彼の15年来の親友ピーター、そしてピーターの恋人ユール。彼らはベルリンで生きる一見ごく普通の若者に見えた。
ヤンとピーターは、ベルリンのアパートで一緒に暮らしている。ユールは高級レストランでスノッブな客の嫌味に耐えながらウエイトレスとして働き、ときおり路上でデモやチラシ配りをする毎日。ある日ヤンはバスの中で、無賃乗車の貧しい老人がリンチにあっているところを目撃する。老人に自分の切符を渡しバスを降りるヤン。追いかけてきた男に怒りをぶつけるヤンは、アパートへ帰ってもまだ怒りを抑えきれない。ユールは、そんなヤンが苦手だった。ユールには以前、交通事故で多額の賠償責任を追ってしまった過去があり、家賃を滞納して大家に立ち退きを通告されていた。ピーターは彼女に自分の部屋への引っ越しを勧めるが、ピーターとヤンの二人との共同生活には気が進まない。

ヤンの世界変革の情熱は、金持ちが牛耳る不公平な社会への怒りに向けられている。ピーターも同じ理想を掲げてはいるが、彼はヤンと違って人生を楽しむ気楽な性格。そんな彼らにはユールでさえも予想のつかない秘密があった。ここ最近、巷でニュースになっている”エデュケーターズ”としての暗躍だ。金持ちの留守宅に厳重なセキュリティ・システムを突破して忍び込み、何も盗まずに、家の中のあらゆる物を広間に積み上げ、地元の金持ち連中に’ぜいたくは終わりだ”財産がありすぎる’と警告し、エデュケーターズの署名を残して立ち去る。それは彼らにとって、金持ちばかりが優遇される現代社会への精一杯のレジスタンスだった。

ある日、ヤンとピーターは、エデュケーターズとしての下見で街を走っていた。ピーターのバッグから高級な腕時計を見つけたヤンは、彼がどこかの屋敷から着服した品物であることを悟り「僕らの主義に反する」と、窓から投げ捨ててしまう。一方ユールは、楽しみにしていたピーターとのバルセロナ旅行の時期に大家に部屋を空け渡す羽目になり、旅行を断念する。しかたなくピーターが一人で旅立った後、ヤンとユールはふたりで彼女の部屋のペンキを塗りながら、社会への不満を語りあう。交通事故の相手、会社重役のハーデンベルクにユールが毎月大金を支払っていることを知ったヤンは、やつらなら小遣い銭で買えるベンツの賠償のために人生を台無しにするな、と彼女を諭す。翌日、ユールは理不尽な理由でウエイトレスを首になり、ヤンは落ち込んでいる彼女を元気づけるために自分達の秘密を明かす。その事実に驚き、興奮したユールは、自分を苦しめているハーデンベルクの邸宅に忍びこみたいとヤンを説得する。首尾よく侵入に成功したふたりは、豪華な室内をめちゃくちゃにいじりまわし、ハーデンベルクに”教育”を施す。久しぶりに解放感を味わい、羽目を外したユールはプールにソファを投げ落とし、水の中でヤンと戯れるうちに、ふたりは自然とキスをかわす。
その翌日、スペインから帰国したピーターに接する二人は後ろめたさを隠し切れない。そして大問題が発覚する。ユールが携帯電話を犯行現場で無くしてしまったのだ。ふたりは夜を待って再び大邸宅へ忍び込むが、運悪くハーデンバーグに見つかってしまう。切羽詰まった彼らは秘密のロマンスがバレるのを覚悟で、ピーターに助けを求める。

3人は成り行きでハーデンバーグを誘拐し、ベルリンから遠く離れた親戚の山荘に立てこもる。若者たちが危害を及ぼさないことを知ったハ?デンベルクは、次第に彼らと打ち解け、誘拐者と人質の奇妙な共同生活がはじまった。その二世代の対話のなかで、皮肉にもハーデンベルクが学生時代には過激な左翼運動家だったという事実を知る。一方、ユールの心は、二人でハーデンベルク宅へ侵入した夜からヤンへと傾きはじめていた。彼らの微妙な三角関係を察したハーデンベルクは、自分の革命グループは性的な関係ももっとラディカルだったと語り、その一言から初めてピーターはふたりの裏切りを知り、激怒して一人下山してしまう。

思いもよらぬ誘拐逃避行のなかで、権力を握る世代の価値観と正面から向き合うことになった若き理想主義者たちは、自分たちの愛や友情、そして社会への信念を試されることになるが・・・。

スタッフ

監督:ハンス・ワインガルトナー
製作:アントニン・スヴォボダ、ハンス・ワインガルトナー
脚本:ハンス・ワインガルトナー
撮影:ダニーラ・ナップ、マティアス・シェレンベルク
音楽:アンドレアス・ヴォドラシュケ

キャスト

ダニエル・ブリュール
ジュリア・ジェンチ
スタイプ・エルツェッグ
ブルクハルト・クラウスナー

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