原題:Jarhead

『アメリカン・ビューティー』のアカデミー賞受賞監督最新作 戦場は、あなたの中にある。

本国アメリカにて2005年11月11日公開

2005/アメリカ/カラー/上映時間:2時間3分 配給:UIP映画

2010年12月02日よりDVDリリース 2010年08月04日よりDVDリリース 2006年07月28日よりDVDリリース 2006年2月11日、日劇1他全国東宝洋画系にて公開

公開初日 2006/02/11

配給会社名 0081

解説


□かつてない戦争映画、観たこともない人間ドラマ

「ディア・ハンター」「地獄の黙示録」「フルメタル・ジャケット」「プライベート・ライアン」——数々の戦争映画の傑作が、私たちの魂を揺さぶってきた。そして2006年、「ジャーヘッド」が遂に上陸する。海兵隊員に憧れ、厳しい訓練に耐え、狙撃の名手として戦場に来たひとりの若き兵士。しかし、そこには、銃を向けるべき敵がいない。戦闘によってエネルギーを発散することもできず、欲求を内側に爆発させる兵士たちは、砂漠でひたすら”待つ”ことで、自分自身、そして仲間との戦いを強いられる。この映画では、主人公が一人も殺さない——かつての戦争映画とは一線を画し、観たこともない人間ドラマが展開する。
戦争に直面しない平和な日本人は、他国の戦争をテレビで見ている。そして、戦争を語り、兵士に同情する。テレビの存在によって、私たちは、食事をしながら湾岸戦争を見た。
しかしテレビは、戦争の真実を伝えたわけではなく、むしろ、それを隠した。『ジャーヘッド』は、報道されなかった現代戦の真実を暴く、”今、観なければいけない映画”である。
2006年1月17日は湾岸戦争勃発から15年目——忘れ去られた、風化しつつある”湾岸戦争”−メディアによって操作された現代の戦争を扱った『ジャーヘッド』は、9・11以降のテロへと続く、アメリカ自身、そして私たちにも関係する”まさにタイムリーな映画”である。

□全米で大絶賛されたベストセラーにエキスパートが集結

1990年の夏、20歳の志願兵アンソニー・スオフォードは湾岸戦争で戦うため、サウジ・アラビアの砂漠に送り込まれた。2003年、あの時、あの場所での彼の記憶は、「ジャーヘッド/アメリカ海兵隊員の告白」として記され、全米ベストセラーとなった。このノンフィクションを超えた原作は、ニューヨークタイムズから、”戦場の兵士たちの恐怖と退屈、孤独と猥雑と絶望を描ききった、戦争文学の最高峰”と絶賛された。この原作の権利を獲得した『グラディエーター』のプロデューサー、ダグラス・ウィックは、『アポロ13』『キャスト・アウェイ』の脚本家であり元海兵隊員でもあったウィリアム・ブロイルズに脚色を託した。そして、これを映像化できる唯一の監督として、サム・メンデスの名を上げた。デビュー作『アメリカン・ビューティー』で作品賞、監督賞他5部門のアカデミー賞を獲得した彼は、その独特な視線で、常に観客を惑わせてきた。今回は湾岸戦争をテーマにしながら、単なる戦争映画の枠を超え、戦争自体の変貌と虚無、そしてアメリカをまたしても惑わす。
そして、メンデス作品を支えるエキスパートが終結した。撮影は、5回のオスカーノミネートを誇る名手ロジャー・ディーキンス。兵士の目から見た戦場を見事に映像化している。編集は、『地獄の黙示録』でオスカーを獲得したウォルター・マーチ。製作総指揮には、ナイト・シャマラン作品のサム・マーサー、『SAYURI』のボビー・コーエンが名を連ねた。音楽スーパバイザーに、『アビエイター』のランドール・ポスター、メンデス作品にはかかせない7回のオスカーノミネートのトーマス・ニューマンも担当している。

□若き兵士の内面を見事に表現した名演と音楽
若き海兵隊員アンソニー・スオフォードの憧れ、苦悩、挫折、孤独を完璧に表現しきったのは、役柄の志願兵を象徴するかのようにサム・メンデスにキャスティングを自ら志願したジェイク・ギレンホール。『遠い空の向こうに』『デイ・アフター・トゥモロー』などで日本中にその顔を広めた彼の、底知れぬ才能が本作で披露される。そして、偵察狙撃隊のスオフォードのパートナー、トロイ役には、『ニュースの天才』での演技が批評家から絶賛されたピーター・サースガード。そして、『8月のメモワール』の子役から充実した成長を果たしたルーカス・ブラック。若手をしっかり援護するのは、2大オスカー俳優『シー・ビスケット』のクリス・クーパーと『Ray/レイ』のジェイミー・フォックス。若手からベテランまで、単なる戦争映画に終わらない深い人間ドラマを創り上げている。
また、90年代初頭にティーンだった兵士の気分を表現する材料として、トーキング・ヘッズ、C+Cミュージック・ファクトリー、ノーティ・バイ・ネイチャー、ソーシャル・ディストーション、パブリック・エネミー、トム・ウェイツなどの曲が使用される。特に、エンドロールに流れる、2005年のグラミー賞を騒然とさせたカニエ・ウェストの”ジーザス・ウォークス”は圧巻である。

□ジャーヘッドとは
高く刈り上げてお湯を入れるジャーの形をしている髪型を称して、海兵隊員の呼び名となった。うすのろ、バカ、大酒飲みという軽蔑的意味もある。完全志願制の海兵隊のエリート意識を皮肉ってもいる。

ストーリー




祖父が海兵隊出身であり、父がベトナム戦争休暇中に生まれた、ひとりの青年アンソニー・スオフォード。18歳になった彼も、一人前になるという憧れと共に、彼女を故郷に残し、何の迷いもなく海兵隊に入隊し、3代目の”ジャーヘッド”となった。
しかし、現実は厳しかった。スオフォードに待っていたのは、虐待と変わらない新兵訓練。とめどなく浴びせられる教官の汚い言葉と肉体的苦痛。大学へ行くべきだったかという疑問が頭をかすめる。とはいえ、何とか乗り越えたスオフォード。この先にこそ、得体の知れない苦悩が待っていることも知らずに・・・。

1989年、カリフォルニア州ペンドルトン基地。第2小隊に配属となったスオフォードは、またもや厳しい洗礼を受けることになる。それは、仲間の兵士たちに熱した針金で焼印を押されること。途中で失神したスオフォードが目覚めると、焼印の跡はなく、トロイと名乗る兵士から、新兵を歓迎するセレモニーだと聞かされる。
ある日、トイレでカミュの”異邦人”を呼んでいたスオフォードの前に、偵察狙撃隊STAのサイクス三等曹長が現れ、斥候狙撃隊の候補となったことを告げるが、意欲を見せないスオフォード。

60名の内、8名のエキスパートを選ぶ教育訓練の朝、サイクスに最初に命令されたのは、口笛でラッパを吹くことだった。射程距離と風向きを一瞬にして判断する能力が求められ、訓練の難易度も上がる。「些細なことで、敵を殺すか殺されるかが決まる」というサイクス。過酷な訓練は続き、気の弱い兵士が事故死するという事件まで起きてしまう。
そして、最後に残った8名の中に、スオフォードとトロイの姿があった。2人は、標的を的確に見定める監視員としてトロイ、狙撃員としてスオフォードというコンビを組むことになる。歩兵は15000発を乱射するが、狙撃兵は1発に命をかける。2人は訓練を重ねた。
1990年8月2日、CBSニュースが、イラクのクェート侵攻を告げている。そして、基地内で歓声を上げながら「地獄の黙示録」を観て、アドレナリンを発散させる兵士たち。そこに突然スピーカーから、STA隊員たちの本部招集のアナウンス。遂に、サウジアラビアに派遣される日がやってきた。
砂漠に来て14分、軍勢5000人——テントに集合した兵士たちの前に現れたカジンスキー中佐は、”砂漠の盾作戦”開始を告げる。しかし当面の任務は、盟友サウジ王国の油田警備と聞かされ、はやる士気を押さえきれない兵士たちに、長い待機の日々が始まろうとしていた。
フセインを倒すことに正義感を燃やす兵士たちが談笑する中、サイクスが毒ガス発生訓練の号令をかける。規定の時間内で装備できなかった兵士たちに罰として、防護服のまま炎天下の砂漠を走らせた。
原油価格は2倍になり、大統領は軍を増強した。スオフォードたちは、見渡す限りの砂漠を偵察し、敵のいない砂丘に手榴弾を投げ、想像の地雷原を進む。敵を”待つ”、それが果てしなく続く仕事だった。
砂漠に来て60日19時間16秒、軍勢115000人——兵士たちは、退屈や孤独を忘れるため、マスを掻き、彼女を想い、女の話に興じ、人生について議論する。そんなある日、CNNの取材が入る。45度の灼熱の中、防護服のままフットボールをしてみせる兵士たち。
 ある夜。母からのテープを聞くファーガス。ポルノ雑誌が届いたクルーガーと子供が生まれた朗報が届いたコルテス。そんな中、彼女に男の友人ができたとの手紙を受け取るスオフォード。
 ある日、トロイが仲間のデットマンの妻から届いたという「ディア・ハンター」のビデオを観ようと兵士たちを集めた。画面をみつめる彼らの前に現れた映像は、デットマンの妻の浮気の生々しい現場。スオフォードは、戦争に嫌気がさしたが、戦いは始まっていない。
 砂漠に来て122日5時間22分、軍勢39万人——Xマス・イブの夜。スオフォードはファーガスに夜警を頼み、テントの中で酒宴に興じていたことがバレて、罰としてトイレの汚物処理をするはめになる。精神状態が限界まできたスオフォードは、ファーガスに銃を向け、罵倒し、我に返り泣いた。
砂漠に来て175日14時間5分、軍勢57万5千人——いよいよ国境に進撃する時がきた。”砂漠の嵐作戦”の開始だ。スオフォードたちは、後遺症が出ても文句は言うなと、化学兵器に備えて錠剤を飲まされた。
戦いを目前に、誰よりも海兵隊を愛するトロイの帰国後の除隊の知らせ、彼女からの想い出のTシャツの返品と、気が滅入るスオフォード。そして遂に実戦の時。興奮の只中で我に返ったスオフォードは、恐怖で失禁していた。追い討ちをかけるように、米軍の戦闘機からの誤爆。その後、クエートの国境近くで、スオフォードたちは空爆によるイラク兵たちの無残な死体を目の当たりにする。そして、イラク軍が油田に火を放ったため、原油が黒い雨となって降り注ぐ。そんな異様な夜、サイクスはスオフォードに、海兵隊にいる毎日を神に感謝していると告げる。
朝になり、スオフォードとトロイに命令が届いた。管制塔にいる敵の将校をしとめること。待機の仕事に耐え抜き、戦場に来た証となる、遂に、その時がきた。射程距離820メートル、西の風3メートル。獲物を捕らえた2人のエキスパート。「撃て」の許可。しかし・・・

スタッフ

監督:サム・メンデス
製作:ルーシー・フィッシャー、ダグラス・ウィック
製作総指揮:ボビー・コーエン、サム・マーサー
原作:アンソニー・スオフォード『ジャーヘッド アメリカ海兵隊員の告白』(アスペクト)
脚本:ウィリアム・D・ブロイルズ・Jr
撮影:ロジャー・ディーキンス
プロダクションデザイン:デニス・ガスナー
編集:ウォルター・マーチ
音楽:トーマス・ニューマン

キャスト

ジェイク・ギレンホール
ピーター・サースガード
ジェイミー・フォックス
ブライアン・ケイシー
ジェイコブ・ヴァーガス
ルーカス・ブラック
クリスティン・リチャードソン
エヴァン・ジョーンズ
クリス・クーパー

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