原題:Turtles Can Fly/Lakposhtha ham parvaz mikonand

2004サンセバスチャン国際映画祭グランプリ 2005 ベルリン国際映画祭平和映画賞 2004シカゴ国際映画祭審査員特別賞 2004サンパウロ国際映画祭特別観客賞 2005 ロッテルダム国際映画祭観客賞 第5回東京フィルメックス審査員特別賞、アニエスベー観客賞ダブル受賞

2004/イラク、イラン/カラー/ビスタ1:1.85/SRD/97分 配給:オフィスサンマルサン

2008年05月31日よりDVDリリース 2005年9月17日、岩波ホールにて公開

公開初日 2004/11/20

公開終了日 2004/11/28

配給会社名 0424

解説


戦争で荒廃した大地にたくましく生きる子どもたちと、彼らが経験する破局を、リアリズムと幻想を混在させた力強いタッチで描いた、イランのクルド人監督バフマン・ゴバディの最新作。2003年3月に始まったアメリカ軍のイラク侵攻を背景に、ニュース映像では知ることの出来ないイラクの悲痛な現状を映し出しながら、ユーモアを忘れない温かいまなざしと、マジック・リアリズムの手法で、見る者を魅了していく。
デビュー作『酔っぱらった馬の時間』(00)に続き、再び子どもたちの世界を描くことに回帰したゴバディは、そこに未だ収束の道が見えないイラク戦争という歴史的事実を重ね合わせ、21世紀の新たな叙事詩を完成させた。

舞台は2003年春、イラク北部クルディスタン地方の小さな村。イラン・イラク戦争、湾岸戦争などで荒廃したこの地方に、再び新たな戦争が始まろうとしている。大人たちはアメリカ軍の動向を知ろうと、衛星放送を受信するためのパラボラ・アンテナを利発な孤児の少年サテライトに買いに行かせる。彼は近在の村々を巡る便利屋として大人たちに重宝されている。またこの村では、子どもたちが地雷を掘り出して国連の出先機関に買ってもらっている。サテライトはこの仕事の元締めもしていて、国連の出先機関との値段交渉から、地雷除去を依頼する地主たちとの交渉までを一手に引き受けて、子どもたちから慕われている。この危険な仕事で子どもたちが得るわずかな金は、大切な現金収入なのだ。
サテライトは村のモスクにパラボラ・アンテナを設置し、衛星放送を受信するが、肝心のニュースは英語放送で誰も理解できない。開戦の情報はどうやったら得ることができるのか…。
ある日サテライトは、ハラブジャから来たという、赤ん坊を連れた難民の少女に恋をする。かたくなに心を閉ざす彼女には、両腕のない兄がいた。開戦が刻々と迫る中、サテライトは彼が予知能力を持っていることに気付く…。

主人公のサテライトは、アメリカびいきで、掘り出す地雷もアメリカ製のものと決めている。そしてアメリカ軍の侵攻にもかすかな期待を抱く。しかし、村の世話役エスマイルや青空学校の教師は、故郷が戦場になることの意味を身にしみて知っていて、サテライトに危うさを感じている。そんなことは意に介さず、嬉々として銃を買い、淡い恋もするサテライトだが、終幕にひとつの破局を経験することで、心に大きな傷を受け、彼の少年時代は終焉する。茫然と道端に立つサテライトの前を、待望していた米軍の車列が行き過ぎるが、彼はただ虚ろな視線を送るだけである。
イラク戦争ほど世界で「戦争の大義」が問題にされたことはないだろう。しかし大義を持とうと持つまいと、戦争に巻き込まれる悲劇には何ら変わりはないということ、さらに真っ先に子どもたちを犠牲にし、その心に生涯消えない傷を残すことを、この映画は気付かせてくれる。

2004年9月、ワールド・プレミアとなったスペインのサンセバスチャン国際映画祭で、グランプリを受賞し、その後も欧州、アジア、北南米各地の映画祭で受賞。特に観客賞の受賞が多いことは、この「リアルタイムの叙事詩」への大きな勲章である。2005年にはベルリン国際映画祭のユース審査員部門に招待され、映画祭の全作品の中から選出される「平和映画賞」を受賞している。

ストーリー

スタッフ

脚本・監督:バフマン・ゴバディ
撮影:シャーリヤル・アサディ
音楽:ホセイン・アリザデー
録音:バフマン・バニ・アルダラン
ミキシング:マスード・ベーナム、ハミド・ナギビ
編集:モスタファ・ケルゲ・プーシュ、ハイデ・サフィヤリ
企画・助監督:シャーラム・シャーホセイニ

キャスト

サテライト:ソラン・エブラヒム
ヘンゴウ:ヒラシュ・ファシル・ラーマン
アグリン:アワズ・ラティフ
リガー(赤ん坊):アブドルラーマン・キャリム
パショー(松葉杖の少年):サダムホセイン・ファイサル
シルクー(子分肌の少年):アジル・ジバリ

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