原題:DV

『コンセント』『櫻の園』の中原俊監督が描く、歪んだ愛…DV。

2004年/日本映画/カラー/ビスタサイズ/ステレオ/85分/ 配給:バイオタイド

2005年07月15日よりDVDリリース 2005年07月15日よりビデオリリース 2005年2月5日よりシアター・イメージフォーラムにてロードショー

(C)2004フルメディア/バイオタイド

公開初日 2005/02/05

配給会社名 0330

解説


 ここ数年、日本において「DV」という言葉はすっかり市民権を得た。「DV」とはすなわち“ドメスティック・バイオレンス”を意味する。一般的に日本では「夫やパートナーが、妻や恋人に対してふるう暴力」と説明されている。
 現在、国内のDV被害者はおよそ40万人にのぼるといわれている。また、殺人事件の被害者女性のうち約3割は夫や内縁の夫の手によって命を落としているのだという。このショッキングな数字からもわかるように、DVは病める現代日本が抱えるもっとも大きな社会問題のひとつだといえるのではないだろうか。
 平成13年10月13日、配偶者からの暴力および被害者の保護に関する法律——DV防止法が施行された。この法律により、かつては犯罪とまで認識されていなかった夫婦間の暴力が、はっきりと犯罪であることが規定されてのである。また平成16年5月にはこのDV防止法の改正法案が成立、同年12月から施行される運びとなった。新たなDV防止法では、配偶者からの暴力の定義がより拡大されている。
 本作『DV』は、そんな混迷する現代が抱える社会問題を正面からとらえた社会派ドラマである。結婚3年、会社での仕事も順調、一回り年下の妻を心から愛する夫。仕事と家庭を上手に両立させてきたはずの妻。だが、ある日を境に、妻は夫の執拗な干渉や激しい嫉妬心に気づく、そしてそれは信じられないほどの速度でエスカレートしていき、やがて恐るべき暴力の日々に発展していく。なぜ夫は豹変したのか? 愛し合っていたはずの年の差カップルの日常を恐怖に変えた要因とはいったい?
 DVの当事者である夫・昭吾役には、今やこの人なしでは日本映画は語れない、遠藤憲一。その確かな演技力と個性あふれる風貌で日本映画界を背負って立つ存在となった彼のバイオレンスかつセクシャルな演技は多くの大人の女性客のハートをがっちり掴むだろう。夫の暴力におびえる妻・泰子には多数の候補の中からオーディションを経て選ばれた新人・英由佳。スラリとしたプロポーションに憂いを含んだ表情が印象的。体当たりの暴力シーンやラブシーンも見逃せない。その他、脚本も手がけた小沢和義、若手映画俳優として成長著しい高野八誠ら、魅力的なキャストが脇を固めている。
 そしてメガホンを取ったのは中原俊監督。『櫻の園』『12人の優しい日本人』などで鮮やかに人間模様を活写した俊英が、本作では現代社会や大都市が抱える闇に真っ向から挑み、ひいては結婚制度のあり方まで、数々の問題定義を観客に投げかけている。また、『コンセント』や遠藤憲一主演で高い評価を得た『歯科医』などでのインモラルで独特の男女な愛の世界の描写も記憶に新しい中原演出は、社会問題というテーマの枠に留まらず、歪んだ、しかしある種のディープな愛の形ををスクリーンに刻み込むことに成功した。

ストーリー


ジュエリーショップに勤務する29歳の鬼頭泰子(英由佳)は結婚3年目。子供はまだいない。ひと回り年の違うサラリーマンの夫・昭吾(遠藤憲一)は泰子を心から愛していた。そしてもちろん泰子も。
 3回目の結婚記念日、会社帰り、花束を手に妻の勤めるジュエリーショップの前に立つ昭吾。自分を見つめる昭吾の視線に気づかない泰子は、年下のハンサムな同僚・前田(高野八誠)と親しげに言葉を交わす。やがて昭吾は携帯で体調が悪いと妻に伝えると、その場を立ち去るのだった。その夜、眠っている妻を見下ろす昭吾は、頭上の蛍光灯を点けては消し、消しては点ける。そんな動作を延々と続ける昭吾。それがすべての始まりだった。
 数日後、リビングに飾ってあった泰子の友人との思い出の写真や、実家から持ってきたアルバムがすべて捨てられていた。泰子の知らない間に銀行口座を解約し、仕事をやめて欲しいと通勤定期を抜き取る。そして風邪で寝込んだ妻の体調もかまわず体を求め、調味料が気に入らないと怒鳴り、友人との楽しそうな電話のやり取りを耳にしてテーブルをひっくり返す、カラオケボックスの店内で力いっぱい殴りつける……。短期間のうちにどんどんエスカレートしていく夫の暴力。泰子はやはり夫の暴力に苦しむ中年女性・霧島(りりィ)の紹介で宗方(小沢和義)という男の事務所を訪ねる。宗方は言う。「殺してもいいんですよ、正当防衛なら。あなたが死ぬことはない」。宗方はさらに続ける。「DV被害者が一番に乗り越えなくてはならないこと。それは“自分自身が被害者である”ということに気づくことです」と……。

スタッフ

監督:中原俊
製作:関正博/松井建始
原案・プロデューサー:永森裕二
プロデューサー:尾西要一郎
脚本:KAZU/永森裕二
音楽:小宮山聖
撮影監督:下元哲
美術:古積弘二
編集:今井俊裕
録音:永口靖
助監督:村田啓一郎
制作担当:岡村忠征
キャスティング:小川真司
スタイリスト:北條訓子
ヘアメイク:宗村幸絵
スチール:中岡美樹
メイキング:本田隆一
音響効果:丹雄二
整音:永口靖
制作協力:有限会社ブロッコリ
製作:株式会社フルメディア/株式会社バイオタイド
配給:バイオタイド

キャスト

遠藤憲一
英由佳
高野八誠
中原和宏
高橋かすみ
山本浩司
松田祥一
三上真史
でんでん
りりィ
小沢和義

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