日本アカデミー賞受賞の小泉堯史監督、寺尾聰主演最新作 第一回本屋大賞に輝く大ベストセラー、待望の映画化 永遠に心に生き続ける、「至高の愛」の物語。

2005年/日本/カラー/117分/ 製作:アスミック・エース エンタテインメント プロダクション:アスミック・エース エンタテインメント 配給:アスミック・エース

2006年07月07日よりDVDリリース 2006年1月21日、渋谷東急ほか全国松竹・東急系にてロードショー!

© 「博士の愛した数式」製作委員会

公開初日 2006/01/21

配給会社名 0007

解説


博士はいつも数字のそばにいた。
まるで愛おしいものに寄り添うように、じっとそこに佇んでいる。
数字と愛を語っている間は、じゃまされるのを許さない。
博士と数字の語らいは、それほど尊く慈しみに満ちていた。

本作『博士の愛した数式』には清明な心が描かれ、博士の指先から導かれる数式のように、美しく流麗でさえある。
原作は、芥川賞作家 小川洋子の大ベストセラー「博士の愛した数式」。本屋さんが選ぶ第一回本屋大賞、第55回読売文学賞を見事受賞した名著を、『雨あがる』で2001年日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞、『阿弥陀堂だより』で日本中に優しさと感動を届けた小泉尭史監督が映画化。その下に集まったのは、日本アカデミー賞受賞俳優寺尾聰、深津絵里、齋藤隆成、吉岡秀隆、浅丘ルリ子といった日本を代表する豪華キャストと最高のスタッフ陣。
数式という一見小難しく思われるものから溢れる美しく温かい愛。そして、日本人が本来持っている「美しさ」「清らかさ」。「今」という時間の喜びと、心に生き続ける大切な人の存在——。
本物の映画として全ての日本人に観て欲しい、永遠に心に刻まれる日本映画が誕生した。

80分しか記憶が持たない天才数学博士と家政婦とその10歳の息子
驚きと歓びに満ちた日々が始まった
不慮の交通事故で、天才数学者の博士は記憶がたった80分しかもたない。何を喋っていいか混乱した時、言葉の代わりに数字を持ち出す。それが、他人と話すために博士が編み出した方法だった。相手を慈しみ、無償で尽くし、敬いの心を忘れず、常に数字のそばから離れようとはしなかった。その博士のもとで働くことになった家政婦の杏子と、幼い頃から母親と二人で生きてきた10歳の息子。博士は息子を、ルート(√)と呼んだ。博士が教えてくれた数式の美しさ、キラキラと輝く世界。母子は、純粋に数学を愛する博士に魅せられ、次第に、数式の中に秘められた、美しい言葉の意味を知る——。

日本を代表する実力派俳優の競演
そのまっすぐな演技が伝える、一途な生き方、人間のぬくもり
80分しか記憶がもたない博士を演じるのは、『雨あがる』『阿弥陀堂だより』に引き続き小泉作品主演3本目となる寺尾聰。第24回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞(『雨あがる』)、第28回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞(『半落ち』)と、2度の栄冠に輝く実力に裏付けられた圧倒的な存在感と演技力は、今まさに日本を代表する俳優の一人。博士の家で働くことになる家政婦・杏子役には『阿修羅のごとく』で第27回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞した深津絵里。その透明感のある爽やかな演技が本作に新鮮な風を吹き込んでいる。杏子の息子ルート役には、今回映画初出演となる斉藤隆成、初々しい演技が光る。物語を推し進める重要な役柄、大人になったルートを演じるのは『ALWAYS 三丁目の夕日』『隠し剣 鬼の爪』の吉岡秀隆。小泉作品には3作品連続の出演、欠かせない存在である。そして、博士の義姉である未亡人には『四十七人の刺客』『木曜組曲』の浅丘ルリ子。本作が実に154本目の出演作となる。静謐ながら、役者陣の堂々たる演技が、この作品を確かなものにし胸を打つ。

素晴らしい匠の才能が創り出した、美しく輝く映像世界
初監督作品の『雨あがる』が2001年第24回日本アカデミー賞最優秀賞主要8部門受賞、第56回ヴェネチア映画祭、緑の獅子賞受賞と世界中で高い評価を受けている小泉堯史監督。原作は「妊娠カレンダー」で第104回芥川賞を受賞した小川洋子が書き下ろし、本屋さんが選ぶ第一回本屋大賞、第55回読売文学賞を見事受賞した「博士の愛した数式」。音楽は『阿弥陀堂だより』に続き2度目、『大河の一滴』やNHKのドキュメンタリー番組、フジテレビ「白い巨塔」などを手掛けた加古隆が担当。今回はソプラノとして、あのパバロッティとの競演も務める森麻季がその透明で厚みのある声を響かせる。撮影は『雨あがる』で日本アカデミー賞最優秀撮影賞を受賞した上田正治、録音に『八月の狂詩曲』で最優秀録音賞を受賞の紅谷愃一、照明を『カンゾー先生』で最優秀照明賞を受賞した山川英明、衣装アドバイザーに黒澤和子と、小泉監督作品には絶対不可欠のベテランスタッフが顔を揃えた。

ストーリー




ある日、若いシングルマザーの家政婦は、ここ数年間で担当が9人も替わったという顧客を紹介される。面接のために派遣先を訪れた彼女を迎えたのは上品な身なりのご婦人—未亡人だった。母屋に住む未亡人は、世話をするのは離れに暮らす義弟であること、離れの問題は決して母屋に持ち込まないこと、そして、義弟は事故で記憶が80分しかもたないこと、を説明した。

博士は、学費を出してくれた兄の元で勉強し、イギリスのケンブリッジ大学へ留学、博士号を取得し大学の数学研究所への就職も決まっていた。しかし兄が亡くなると、残された兄嫁は未亡人となり、夫が経営していた織物工場をたたむ事に。そして工場の跡地にマンションを建てて別荘に移り住み、家賃収入の暮らしを始めた。しかし、未亡人と博士の穏やかな生活は交通事故で一変。博士は自らの記憶と共に大学の職を失い、未亡人の援助を受けて生活することになったのだった。

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「こんにちは! 新しい家政婦です!」
働き始めの日、玄関に現れた博士が家政婦に一番に尋ねたのは、名前ではなく靴のサイズだった。「君の靴のサイズはいくつかね」「24です」「ほお、実に潔い数字だ。4の階乗だ」
博士が着ていた背広には、あちらこちらにクリップでメモ用紙が留められていた。80分の記憶を補うため、忘れてはならない事柄をメモし、そのメモをどこへやったか忘れないため、身体に貼り付けているのだった。

その日から、二人は毎朝、玄関で数字の会話を繰り返すこととなった。80分で記憶の消えてしまう博士にとって、家政婦は常に初対面の相手だった。博士は、何を喋っていいか混乱した時、言葉の代わりに数字を用いた。それが他人と交流するために、彼が編み出した方法だった。しかし博士の口からでてくる数式は、一見小難しいと思われがちな数字の印象とは全く異なっていた。どれもこれも、温かくて美しい──ワクワクした驚きと、キラキラした発見に胸躍らされるものばかりだった。

そんなある日、博士はふとした会話から家政婦に10歳の息子がいることを知る。小さな子どもがたった一人で留守番をしていることに居ても立っていられなくなった彼は、今後は学校帰りに、直接ここに来させるよう彼女に約束させ、すぐさま、袖口のメモにその事を付け加えたのだった。
《 新しい家政婦さん その10歳の息子 》 

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博士は息子を、√(ルート)と呼んだ。
「どんな数字でも嫌がらずに自分の中にかくまってやる、実に寛大な記号、ルートだよ」
ルートが訪れるようになってからというもの、離れには絶え間なく笑い声が溢れるようになった。

その様子を母屋の窓辺からそっと窺う未亡人は、本棚から1通の手紙を取り出し、思いを馳せていた。そこには、愛する者へと向けられた意味深い文章とともに、ある一つの数式が綴られていたのだった・・・・・・。

《e( πi)=−1 》

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すっかり博士と打ち解けたルートは、博士が高校時代に野球で活躍していたことを知り、自分の野球チームの試合に来て欲しいとお願いをする。数日後、家政婦と一緒にルートの野球の応援に行く博士。しかし、炎天下での応援のせいか、博士は熱を出し寝込んでしまう。熱は一向に下がらなかった。ただひたすら眠りつづける博士を心配し、家政婦紹介所の規則を破って二人は泊り込みで看病をし続けた。

朝。ようやく起き上がった博士を見て、家政婦はいつものように声を掛けた。いつになく取り乱した博士の口から発せられたのは、まぎれもない現実──。
「ぼくの記憶は、80分しかもたない・・・・・・」
その言葉の意味する苦しみを、彼女ははじめて目の当たりにしたのだった。

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数日後、紹介所に呼び出された家政婦は、突然、解雇の通告を受ける。二人が離れに泊り込んでいたことに対して、未亡人がクレームをいれたのが理由だった。家政婦は、看病のためには必然であったこと、離れの問題を母屋に持ち込むなという命令を忠実に守ってきたのだ、ということを必死に訴え、解雇を取り下げるようにお願いした。しかし、願いが聞き入れられることはなかった。

新たな派遣先で働き始めた家政婦は、電話番号や冷蔵庫の製造番号など実生活に溢れる数字たちを見て、博士と過ごした宝物のような楽しい日々を懐かしんでいた。そして、ふとした瞬間に博士の言葉を思い出す度に、博士に会いたい気持ちを募らせていた。

そして彼女のもとに、またもや一本の電話が入る。それは、あの未亡人からだった──。

スタッフ

監督/脚本:小泉堯史
原作:小川洋子
プロデューサー:荒木美也子

キャスト

寺尾聰
深津絵里
吉岡秀隆
浅岡ルリ子

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